松川一静の独白

これは色々面倒なことになってんな。
ってのが俺が最初に思ったこと。
及川に首を突っ込むなって言ったからには俺も何もするつもりはねえけど。
まさか岩泉も気付いてるとはなぁ。
ぐちゃぐちゃしてるよな、みきちゃんの周りって。


俺はあくまでも中立だ。
その気持ちは変わらない。
みきちゃんが岩泉と付き合おうが国見と付き合おうがどっちでもいいと本気で思ってる。
投げやりとかじゃなくて本当にどっちと付き合っても幸せにはなれると思うから。


ただ及川の気持ちを考えるとなぁ。
俺はこないだアイツに言った言葉を思い出した。


「お前ってみきちゃんのこと好きなんじゃねぇの?」


俺の言葉に及川は笑って否定してたし、花巻もそれを信じてるみたいだったけどどう考えてもそうとしか考えられなかった。
みきちゃんのこと考えて身を引いたんだよなアイツ。
そっからプールの時に岩泉がみきちゃんに言った言葉だ。


岩泉は岩泉で及川がみきちゃんのこと好きなことに何となく気付いてるんだと思う。
だからあんなことみきちゃんに聞いたんだろうしな。
それがあるからアイツはアイツで身動きが取れねえんだなって分かった。


あいつら三人揃って不毛な恋愛してるよな。
国見はみきちゃんが岩泉のことを好きだから動けないんだろ。
及川はみきちゃんの気持ち優先して動けない。
んで岩泉は及川の気持ちを考えて動けない。
どーするんだろなアイツら。
別に岩泉がみきちゃんのことを恋愛対象外にしてるとは思わない。
けどアイツバカ真面目だからな。
及川のこと考えたらみきちゃんと付き合うなんて選択肢選ばないよなきっと。


国見もみきちゃんの気持ち優先に考えてるだろうしなぁ。
まぁアイツの場合まだ何を考えてんのか分かんない所あるけど。
ちょっとはぐいぐい押してみれば良かったのにな。
それこそ中2中3の間に。


及川は及川で聞いてみた所で自分の気持ちを素直に認めるとは思わない。
言った所で全力で否定するだろ。
それがみきちゃんの兄としての及川だもんな。


積極的に動いてんのみきちゃんだけじゃねえか。


岩泉は及川の気持ちに気付いてて自分の気持ちと向き合うことはしないだろうし。
まだ別に気持ちが固まってねえから余計に及川のこと考えちまうんだろな。


これからどうなってくんだろな?
俺は何もするつもりは無い。
今でさえアンバランスなんだ。
俺が動いた結果最悪のことが起こるかもしれないし。
それに動くってどう動いていいのかよくわからなかった。
何が最善なのか見えないんだよな。


だから俺は中立。
アイツらをそっと見守ってやることにする。
誰の相談にも乗ってやろうとは思うけどきっとみきちゃんくらいしか言ってこないだろうな。


俺の言葉も悪かったよな。
及川は岩泉派だろなんて言っちまったから余計にアイツはそこから動けなくなったんだ。
花巻も花巻で俺は国見派とか言うんだもんなぁ。


これがどう流れていくのかなんて分からない。
ただ全員が幸せにはなれないもんな。
恋愛って辛いよなほんと。


みきちゃんが泣く様なことにならなきゃいいけどな。


俺はただそっと四人を見守ることにする。
それしか出来ないから。


金田一もこんな気持ちなんだろうか?
きっとアイツも国見の気持ちには気付いてるんだろなぁ。


『松川さーん!休憩終わりますよー』
「へーい」


一人で考え事をしてたらみきちゃんが呼びにきた。
相変わらず今日も元気だな。


『一人で休憩してるの珍しいですね』
「ちょっと考え事してたの」
『恋の悩みだったり?』
「んーまぁそんな感じ」
『松川さんも私と一緒ですねー』
「そんなにごちゃごちゃしてないけどな」
『何がですか?』
「や、こっちの話」


みきちゃんが周りの気持ちに疎い子で良かったよな。
敏感だったらそれこそしんどくなるのはみきちゃんだ。


「さて後半も頑張りますかね」
『打倒白鳥沢ですもんね!』
「そうだねー」


無邪気なみきちゃんの頭をポンと触り体育館へと戻ることにした。
俺は部活に集中しよう。
全国連れてってやりたいもんな。

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