そうだプールに行こう

「ねぇ!今度の月曜日みんなでプール行こうよ!」
『祝日だもんねぇ。行きたい行きたい行きたい!』
「国見、京谷嫌な顔すんなよ」
「面倒っす」
「俺も」
『国見も狂犬ちゃんも行こうよ!楽しいよ!』
「最近暑いですもんね」
「金田一はOKだね」
『私も行くー!』
「岩ちゃんも行くよね?」
「まぁ暇だしな」
「矢巾と渡も行くよね?」
「「っす」」


季節は夏だ。あっという間に季節は巡る。
狂犬ちゃんも部活に顔を出すようになってきてる。
まだ土日は毎回来てくれないけど。
たまに顔出す様になってくれるだけ良くなってるよね。


「京谷と国見も行こうぜ」
「松川さんてそんなプール好きでしたっけ?」
「こうやってみんなで出かけるのもそうないだろ」
「そうだぞ国見ー」
『行こうぜ国見ー』
「はぁ」
「国見、断ったって無駄だぞきっと」
「分かりました」
『後は狂犬ちゃんだよ』
「行かね」
『はじめちゃんと迎えに行くね』
「及川さんも行くよ」
「お前は来んな」
『トオルちゃんは先にプール行っててー』
「狂犬ちゃん酷いよ酷いよ!」
「じゃあこれで決まりな」
『来週の月曜日はプールだぁ!』


トオルちゃんが言い出したプールはさくさくと話がまとまった。
国見と狂犬ちゃんは嫌そうだったけどどうせなら大勢がいいよね。
渋々OKしてくれたから良かった良かった。
新しい水着お母さんに買ってもらおー!


『はじめちゃんおはよー!』
「おお、及川は?」
『金田一と国見と駅まで行くって』
「アイツ京谷に嫌われてっからなぁ」
『さ、狂犬ちゃんを迎えに行きましょー』


そういえば高校に入ってはじめちゃんと二人なのって初めてかな?
部活帰りはトオルちゃんもいるし月曜日は国見と金田一と一緒だし。
何か久々で嬉しいかもしれない。


『狂犬ちゃんー迎えに来たよー!』
「うっせーべ。行くから静かにしろ」
『わ、良かった!』
「じゃ、行くぞ」
『はーい!』
「京谷、行くなら楽しめよ」
「岩泉さんには負けねっす」
『狂犬ちゃん、また負けるよ』
「負けね」
「じゃ、50m勝負な」


こないだも球技大会で負けてなかったっけ?
まぁはじめちゃんになついているならいっか。
プール楽しみだなぁ!


「人が多いっすね」
『祝日だからねぇ』
「みんな迷子にならないようにしてね」
『トオルちゃんはナンパに夢中にならないようにしてねー』
「間違いない」
「ですね」
「今日くらいは止めろよ」
「三回はナンパするに賭けるわ俺」
「俺もー」
「しないよそんなこと!」
『ナンパなぁ。トオルちゃんだしなぁ』
「みきちゃん酷いよ!」
「お前も気を付けろよ」
『私ですか?』
「及川さんみたいなの沢山いるぞ」
「ちょ!矢巾!何てこと言うの!」
「ナンパされちゃわないようにね」
『気を付けます!』
「じゃ着替えて更衣室出たとこで集合なー」
『はーい!』
「迷子になるなよ!」
『ならないよ!』


更衣室出たとこ集合なら迷子になんてならないよ!大丈夫だよ!
金田一は心配症だなぁほんとに。
お母さんに新しく買ってもらった水着は黒のワンピースタイプ。
張り切ってビキニにしたかったのにまだ早いって言われてしまった。
何ならこのまま買い物に行けちゃいそうなワンピースだな。
貴女は素材が良いからシンプルな水着で大丈夫よってお母さんの言葉を信じよう。


『お待たせお待たせー』
「遅いべ。迷子かと思っただろ」
『女子は支度に時間がかかるんですー』
「まぁまぁ。狂犬ちゃん落ち着いて」
『見て見て可愛い?』
「可愛い可愛い!みきちゃんは何でも似合うよ!」
「背中のリボンが可愛いな」
「それ水着っぽくないよね」
『このまま外歩けちゃいそうだよね!』
「場所取り行くぞ」
『はーい』


総勢10人の大所帯だ。
プールのオープンと同時に入れて良かった良かった。
流れるプールの真ん前にパラソル付きの四人掛けテーブルが2つ並んでいてその両脇にビーチチェアが2つある所を拠点にすることに決めた。
ここなら10人集まってもみんな座れるもんね。
国見と松川さんが既にビーチチェアに陣取っている。
国見は泳ぐ気ないんだろなぁ。


『あ!背中!』
「背中?」
『日焼け止め塗れなかったとこ誰か塗って!』
「誰かって誰にするかちゃんと決めろよ」
「及川さんが塗るよー!」
「及川は駄目」
「まっきー!何でさ!」
「何となく」
「みきちゃん俺が塗ってあげるー」
『じゃあ松川さんお願いします!』


ウォータープルーフタイプの日焼け止めを松川さんへと手渡す。
髪の毛は高いところでポニーテールにしてるから邪魔になることもないだろう。


「この辺?」
『はい、宜しくお願いします』
「松川が塗ってもやらしく無いのは何でだろ?」
「お父さんみたいっすよね」
「確かに」
「及川と花巻じゃこうはならねえな」
「ちょ!岩ちゃん!」
「及川と一緒にすんなよ岩泉ー」
「岩泉さん約束っすよ」
「あー50m勝負か」
「そうっす」
「んじゃ行くか」
『松川さんありがとうございました!』
「俺、荷物番してるから遊んでおいでー」
『国見!金田一!ウォータースライダー行こうよ!』
「えぇ」
『嫌そうな顔しないでよ!』
「行こうよ国見」
「国見ちゃんも遊んでおいでー」
「矢巾さんと渡さんは?」
「岩ちゃんと狂犬ちゃんに着いて行ったよー」
『さぁ国見行こう!』
「もー」


日焼け止めをバッグに閉まって国見の腕を掴むと渋々立ち上がってくれた。
せっかくプールに来たのに遊ばないなんて絶対に勿体無い。
今日は一日みんなで遊び尽くすって決めたのだ。
二人を連れて一番高いウォータースライダーへと向かうことにした。


『やっぱり最初は一番高いやつだよね』
「これ結構高くない?」
「うわ」
『大丈夫さ!あっという間だよ!』
「すげーな」
「凄い嫌だ」
『大丈夫大丈夫ー』


三人でウォータースライダーの階段を上っていく。
はじめちゃんと狂犬ちゃんが勝負してるであろう50mのプールも見えた。
流れるプールもいいなぁ。


『三人いっぺんに滑れるね』
「だな」
『国見、そんな嫌そうな顔初めて見たよ』
「凄く高くない?」
「まぁもう滑るしかないだろ」
『んじゃ行きますか!』
「おい」
「香坂早すぎだって」
『下で待ってまーす!』


後ろが詰まってるよ二人とも。
さっさと滑っちゃうことにした。
確かに高い。でもきっとあっという間だ。
私が滑ったらきっと二人も着いてきてくれるだろう。
思った通り下まではあっという間だった。
バシャンと水飛沫を上げて身体が下のプールまで到達したのが分かる。
やっぱりプールと言えばウォータースライダーだよね。
水が冷たくて気持ちいい。
プールの際で二人を待ってたらほぼ同時に落ちてきた。


『お疲れお疲れー』
「髪の毛までずぶ濡れなんだけど」
「楽しかったな」
『次あれ行こうあれ!』
「あーゴムボートに乗るやつ?」
『それそれ』
「国見、もう諦めなって」
『あれならきっと顔に水かからないから大丈夫だよ!』
「分かったよ」


金田一の言葉に腹をくくったのだろう。
小さく溜め息を吐いて私と金田一の後に着いてきた。
きっとあれも楽しいだろう。
四人乗りのゴムボート。
確か六人乗りのもあったはずだ。
後から2年生三人も誘って乗りに行こう。


『三人でお願いしまーす!』
「これなら顔濡れないだろ」
「そうだね」
『国見、顔が怖いぞー』
「せっかくだし楽しんで帰るぞ」
「俺いつもこんな顔だし」
『眉間にしーわー』


四人乗りのゴムボートに乗ると直ぐにスライダーに落とされた。
わくわくしちゃうよね。


『おお、結構揺れますな』
「ちゃんと捕まっておかないと落ちるぞ」
『大丈夫でーすー』
「おい!」
『おっと!』
「言ってる側から手を離してバランス崩すとか馬鹿じゃないの」
『手放してみたいじゃん』
「ジェットコースターじゃないんだからね」
『遊園地も行きたいねぇ』
「さっき落ちかけた自覚ある?」
『んー無い!』


手を離して乗ってたら案の定バランスを崩した。
両側から国見と金田一に支えて貰ったから良かったものの落ちかけたよね。
それならそれで楽しいとは思うんだけど。
二人から呆れてる空気が漂ってくるけど気にしない。
楽しんだもの勝ちだ。


『金田一ー!』
「ちょ!水かけんなって!」
「金田一」
「お前もかよ国見」
『楽しいねー』


金田一が私と国見にも水をかけてくるけどもう国見も嫌な顔はしてなかった。
良い方にスイッチ入ったみたいだ。
これなら最後まで楽しんでくれるだろう。
四人乗りのゴムボートは何事もなく終わった。
水飛沫をもろに被ることもなくて良かった。
後からはじめちゃんとトオルちゃんも誘ってみよう。
時間足りるかな?やりたいことが沢山だ。


疲れたと国見が言うから一度戻ることにした。
あんまり最初から飛ばすと国見の体力なくなっちゃうもんね。
戻ると松川さんと狂犬ちゃんとはじめちゃんが居た。


『トオルちゃん達はー?』
「及川と花巻と矢巾と渡と流れるプール行ったぞ」
「俺、休憩します」
『狂犬ちゃん、はじめちゃんとの勝負はー?』
「負けた」
「ギリギリだったけどな」
『はじめちゃん!狂犬ちゃん!次は私と遊ぼー』
「おお、いいぞ」
「あ?嫌だべ」
『まぁまぁ。遊ばないと損だよ。金田一と松川さんはどうするー?』
「俺はまだパス」
「俺も少し休憩する」
『松川さんも後から一緒に遊びましょうねー!』
「後からな」
『さ、狂犬ちゃん行こう!』
「分かったから腕を離せ!」


サーフヒルスライダー?ってやつを目指して向かう。
ボディボードみたいなやつかな?
狂犬ちゃんとはじめちゃんに負けないようにしなくちゃな。


「面白そうだなこれ」
『でしょー?』
「勝負っす」
「またかよ」
「岩泉さんには負けたくねえっす」
『狂犬ちゃん、楽しまないとだよ!』
「みきもこう言ってるし勝負は無しな」
「チッ」
『おお!水着姿の舌打ちも迫力ありますね』
「馬鹿にしてんのか」
『たまには楽しめばいいのにー』
「うっせ」
『じゃあ一番最後の人がかき氷奢りで!』
「お、いいなそれ」
「はぁ?」
『たまにはいいじゃん!』


私が言い出したことだけど、勝負事に二人が手を抜くことはない。
運動神経抜群の二人だ。
別に滑るくらい負けないだろうと思ってたのにサーフヒルスライダーでの勝負はあっさり私が負けた。
ちなみに一番ははじめちゃんだ。
何でも出来ちゃうってある意味才能だよねもう。


「みき、どん臭いのに良く勝負するって言ったよな」
『これくらいなら大丈夫だと思ったんだもん』
「馬鹿だべ」
『狂犬ちゃんまで酷い!』
「俺、メロンな」
「レモンにする」
『分かったよ。買いに行ってきーまーすー!』


戻ると国見と金田一が居ない。
代わりに矢巾さんと渡さんが戻ってる。
トオルちゃんと花巻さんに連れてかれたらしい。
お財布だけ持ってかき氷を買いに行くことにした。


『メロンとレモンとイチゴのかき氷1つずつくださーい』


流れるプールの一番近くにあるレストランへと向かう。
近くにあって良かった。あんまり遠くだとね、迷子になりそうだよね。


「ねーねー可愛いねー」
「何処から来たのー?」


無事にかき氷を買って戻ろうとした所に見知らぬ男が二人現れた。
おお、ナンパなんて久々だ。


『かき氷溶けちゃうんですみません』
「少しくらいいいじゃん」
「誰と来たのー?友達?」
『そんなものです』


私の向かいたい方向に二人が立ってるせいで通せんぼ状態だ。
かき氷溶けたら狂犬ちゃんに怒られちゃうじゃないか。どうしてくれるんだ。


「じゃあさじゃあさ、友達も一緒に遊ぼうよ」
『10人いるんで大丈夫です』
「なら一人居なくなっても大丈夫だよ」
『きっと心配するので』


嘘でも彼氏と来たって言えば良かった気がする。
前はそうやって断ってたのに。
久々過ぎてナンパ対応マニュアルのこと忘れてたよ。
しかしこの人達しつこいなぁ。
どうやって戻ればいいのかさっぱりだ。
松川さんが着いていこうかって言ってくれたのに断ってしまったことが悔やまれる。
でもねぇ、先輩の手を煩わせるのもねぇ。
あぁもうほんとかき氷が溶けちゃうよ!


『ほんとにかき氷溶けちゃうのですみません!』
「後ちょっとだからさ」
「かき氷くらいまた買ってあげるって」
『ちょ!離してください』


強引に突破しようと思ったのが間違いだった。
自分から二人に向かってった様なものだ。
一人から腕を掴まれてしまった。
無理に抵抗するとかき氷が落ちてしまう。
これは困ったぞ。


「みき!お前そんなとこで何やってんだよ」
『はじめちゃん!』
「あ?男連れかよ」
「なら最初からそう言えってんだ」
『すみません』


はじめちゃんの声が聞こえてそっちを向くと真っ先にこちらへと向かって来てくれる。
はじめちゃんを見て二人も諦めてくれたのだろう。掴まれた腕が解放された。
はじめちゃんが私の所に来たときには二人はもう周りに紛れてしまっていた。


「お前、一人で行ったら危ねえだろ」
『ごめんなさい』
「次からはちゃんと誰か連れてけよ」
『分かった』
「松川が一緒に行くっつったの断って俺の話も聞かずに出てって馬鹿か」
『だって国見と金田一居なかったし』
「他にも居ただろ」
『先輩達だし、はじめちゃんと狂犬ちゃんは勝者だったから』
「んな遠慮今更すんなよ。心配させんな」
『ごめんなさい』
「かき氷食ったら昼メシ食って午後も遊ぶんだろ」
『うん』
「んじゃそんな落ち込むな。国見と金田一じゃなくてもお前が言えばみんな付き合ってくれっから」
『分かった!』


はじめちゃんに注意されて少しだけ気落ちしたけどそれも一瞬だ。
はじめちゃんが迎えに来てくれたことも「心配させんな」の一言も午後にまた遊んでくれるって言葉も全部嬉しくて単純な私の頭は直ぐにプラス方向に動き始めた。


『狂犬ちゃんお待たせ!』
「遅え」
「一人で行くから心配してたんだよな」
「違うっす」
「心配してたじゃねえか」
「うっせーな」
「二人とも喧嘩しないで」
「及川達そろそろ戻って来ねえかな?」
「さっき四人で流れるプールを流れてましたよ」
「んじゃもうちょっと後か」
「矢巾と渡と松川昼メシ行ってきたら」
「じゃ先に行ってくるか」
「「っす」」


松川さんが矢巾さんと渡さんとお昼に向かったので座っていたビーチチェアに座ってかき氷を堪能することにした。
やっぱりかき氷はイチゴでしょ!
プールはやっぱり楽しいよねー。


「京谷、夏の合宿ちゃんと来いよ」
『夏に合宿あるの?』
「学校でな」
『狂犬ちゃんちゃんと来る?』
「行かね」
「お前居ねえと白鳥沢に勝てねーだろ」


はじめちゃんの言葉に狂犬ちゃんは一瞬目を丸くした様に見えた。
はじめちゃんにそうやって言われたら嬉しいよねぇ。
分かるよ分かる。


『じゃあまた迎えに行くね!』
「は?」
『今日で狂犬ちゃんのうちインプットしたし!』
「来なくていいべ」
「じゃあちゃんと来いよ」
「………うす」


トオルちゃんとの関係はあんまり良くないのにはじめちゃんには素直になりつつあるなぁ。
ここでからかうと怒るので何も言わないでおいた。
私、意外と空気読めるんです!


「あー楽しかったー!」
「及川は後輩振り回し過ぎな」
「疲れた」
「俺も少しだけ」
『おかえりー!』


かき氷を堪能してたらぐったりした国見と金田一とトオルちゃんと花巻さんが戻ってきた。
トオルちゃん二人に何をしたのか。


「香坂、そこどいてー」
『いいよー』


あまりに国見が疲れていたのでビーチチェアを譲ってあげた。
お昼ご飯も買ってきてあげようかしら?


「及川、昼メシ行ってこいよ」
「いいの岩ちゃん?」
「俺のも買ってこい」
「やっぱりそっちか!」
『国見ー国見のも買ってこようか?』
「うん」
「及川俺のもー」
「まっきーまで!?」
『狂犬ちゃんはー?』
「俺は行く」
「金田一は行くよね?」
「っす」


はじめちゃんと花巻さんと国見を残してお昼を買いに行くことにした。
トオルちゃんが行くのに狂犬ちゃんが行くって言うとは思わなかったなぁ。
お昼を食べて午後も沢山遊んじゃおう。

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