気づいて

『はじめちゃーん!何してるのー?』
「パン買いに来た。みきは?」
『金田一と国見にフラれたから飲み物とおやつ買いに来たの!』


いつものように金田一と国見と昼御飯を食べて小腹が空いたから購買に行こうと誘ったらあっさりフラれた。
まぁいつものことだけど。
購買限定のフレンチトースト美味しいのに。もう分けてやらないんだから!
一人でふらふらと購買に辿り着いた所ではじめちゃんを発見した。
勢いよく後ろから飛び付く。
周りの人達はギョッとしてたけどそんなことは気にしない。


「お前らほんとに仲良いな」
『マブダチってやつだよね』
「岩泉、この可愛いこは彼女?」
「いや、ちげぇ。こいつは及川のいとこ」
『こんにちは!そのうち彼女にしてもらう予定です!』
「は?」
「そうなんだ、頑張れよ」
『はい!』
「いや、おいみき冗談でもそんなこと言うなよ」


はじめちゃんの隣に居たクラスメイトらしき人に話しかけられる。
はじめちゃんがあっさり否定するから彼女候補だとアピールしておいた。


『冗談じゃありませんー本気ですー』
「はぁ?」
「いいじゃん、岩泉付き合ってあげれば」
「あのなぁ、こんなとこでこんな風に言われて信じる男がいるか?」
『作戦失敗か』
「岩泉はきっと手強いから頑張ってね」
『はい!ありがとうございます』


やっぱりこんな風にしても駄目か。
まぁ好きだなんてまだ言ったことないもんなぁ。
ひょいとはじめちゃんの背中から降りる。
周りの視線を浴びていたけど私は一切そんなこと気にしない。
はじめちゃんの友達に頑張れって言ってもらっただけで充分だ。


『おばちゃん!フレンチトーストまだあるー?』
「はーい、最後の一個だよー」
『わ、ください!』
「はいよー」


はじめちゃんの反応はさておき目的のフレンチトーストを購買で買う。
最後の一個とか危なかった。
後はレモンティー買って教室に戻ろう。
国見に飲み物を頼まれた気がしなくもないけどそこはスルーしとく。
はじめちゃんは何だか小難しい顔をしている。
どうしたんだろうか?
購買でパンを買ってレモンティーを買った私の所へとずんずん歩いてくる。


「みき、あぁいうことを誰にでもすんなよ」
『しないよ。はじめちゃんだけだよ』
「ならいい。じゃまた放課後な」
『またねー』


ならいいんだ。はじめちゃんの返事に一人嬉しくなってにやにやしちゃう。
作戦失敗とも言えないかな。
よし、国見と金田一にも飲み物を買って言ってあげよう。


「で、そういうニヤニヤ顔なわけね」
『そうなの!ならいいって言ってくれたの!』
「恥ずかしいことすんなよって意味じゃないの?」
『はじめちゃん自身にするなよって言われなかったらいいんだよ』
「まぁ、良かったな」
「ちゃんと真剣に告白しなよ。回りくどいんだよ」
『無理だよ!フラれたら死んじゃうよ!』
「フラれたくらいで死なないと思うよ」
『金田一お願いだからそんなこと言わないでよ』
「さっさとフラれちゃえばいいのに」
『国見が反抗期です!』


二人のいる教室に戻って先程の話を流れに沿って話す。
なんだよ!国見も金田一も冷たい!
チャイムが鳴ったからそこで話は終わって解散した。
なんだよなんだよ、友達ならもっと応援してくれてもいいじゃんか。


あぁ、今思うと私は酷いことをしていたんだなぁ。
謝るなって言われたから謝らないけど。
今でも友達で居てくれる二人には感謝感謝だ。


「みき、岩ちゃんに公開告白したってほんと?」
「ブッ!ゲホッ!おい及川!」
『トオルちゃん情報回るの早いね』
「結構回りに人が居たでしょ」
『確かに居たなぁ』
「おい、その話ここでする必要あるのかよ」
「だって気になるよ岩ちゃん!」
『告白はしてないかも』
「あ、そうなの?」
『うん、彼女にしてもらう予定って言っただけ』
「なんだ、つまんないの」
「おい、お前ら俺の話聞いてんのか」
「『勿論』」


部活の帰り道。
トオルちゃんがいきなり話をぶっこんできた。
その質問にはじめちゃんが盛大にむせる。あ、きっとはじめちゃんがお茶を飲むタイミングで言ったんだな。
ニヤニヤ楽しそうだ。


はじめちゃんの言葉をスルーして話を二人で続けていく。
ちょっとは照れたりしてくれてるのかな?


「お前本気で言ってんの?」
『本気だって言ったよ。今はまだ無理だろうけど。頑張るもん』
「俺も応援してるからね」
『うん、トオルちゃんありがとう』
「お前らなぁ」
『今すぐに彼女にしてって言ってないからいいじゃんか』
「そうだよ岩ちゃん!何が嫌なのさ!」
「勝手にしろ」


私達の勢いに負けてついに許可が降りた。
トオルちゃんとヤッターとハイタッチを交わす。
それを見てはじめちゃんは仕方無いなと言うように息を吐いて笑った。
トオルちゃんに対して怒ることはあってもはじめちゃんは私に対して怒ることは滅多にない。
あぁ一回だけあったけど。それはまた別の話。


はじめちゃんと別れてトオルちゃんとうちまでの道を歩く。


「良かったね」
『止めろって言われるかと思った』
「岩ちゃんがみきに止めろなんて言うわけないでしょ」
『そうかなぁ』
「お前はね、俺達の可愛い可愛い妹なんだから」
『その妹から卒業したいんだよ』
「岩ちゃんはねー疎いからなぁ」
『中学の時に彼女居たじゃん』
「あれだって手を繋いだくらいじゃない?」
『そうなの?』
「うーん、多分」
『いっそ押し倒してしまえば』
「ちょっと!何を言ってるの!」
『えぇ、駄目?』
「それは許しません!まだみきは駄目!」
『何でさ』


良い案だと思ったのに。
押し倒すことには何故か猛烈に反対された。
トオルちゃんは変なとこ厳しい。
こういう時って漫画とかだと既成事実を作っちゃえって周りは言うのに。


この日から私の猛アピールは始まる。
長い長い道のりだったよねぇほんとに。
はじめちゃんのスルースキルはほんとにほんとに凄かった。
あぁでも懐かしいなぁ。

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