烏野高校排球部

『え?烏野と練習試合するの?』
「飛雄がチームメイトと仲良くやれてるのか気になるでしょ」
『トオルちゃん、顔が悪い顔してるよ』
「お前がそんな親切で言ってるわけねぇよな」
「二人して酷いよ酷い!」
『影山を正セッターとして使うなら練習試合してもいいなんて』
「お前ほんと性格わりぃよ」


いつもの帰り道。
上機嫌なトオルちゃんに理由を聞いたら来週の火曜に烏野との練習試合をすることを報告された。
監督と何やら話してたのはこのことか。
トオルちゃんは何でこんなに影山のこと嫌いなのかなぁ?
あぁでも久々に影山に会えるのか。
元気にしてるかなー?


「みき、何でそんなにニヤニヤしてるの?」
『久々に影山に会えるなぁって思って』
「岩ちゃん!聞いた!?」
「お前、影山とも仲良かったもんな」
『バレー続けてるとは思ってたけどちゃんと見れるのは嬉しいよねぇ』
「ちょっと!ちゃんとうちの応援してよ!」
『分かってるよー。烏野強いといいねぇ』
「どうだろうな?」
「飛雄をけちょんけちょんにするんだから」


国見と金田一のことは可愛がってるのに何故にこうも影山を嫌うのか。
やっぱりポジション被ってるからかな?
ふと中1の時のことを思い出す。
同族嫌悪みたいな感じか。
影山とトオルちゃんにも仲良くしてほしいのになぁ。
影山は嫌ってはなさそうだけど。


練習試合当日。
うちの高校に烏野が来るらしい。
何やらギャラリーの数もいつもより多い気がする。
またトオルちゃんが宣伝したんだな。
なのに本人はまだ居ない。
自分が練習試合したいとか言っておいて足を痛めるとかお馬鹿さんだと思う。
はじめちゃんにもかなり怒られていたし。


体育館に真っ黒ジャージの集団が現れた。
おお、烏野って言うだけある。
烏っぽい。坊主の人怖そう。
あ、影山を発見。隣に顔色の悪いオレンジ頭のこがいる。リベロかな?
見たことがあるようなないような…?
うーん、分からない。
準備をしながらちらちらと向こうの様子を盗み見る。
どうやらちゃんと馴染めてるっぽい。


「香坂、向こう見すぎ」
『ヤキモチだね国見』
「何でもかんでもヤキモチにするのやめなよ」
『たまにはヤキモチやいてよ!』
「何でだよ」
「あいつ馴染めてるのかな?」
『見た感じは大丈夫そうじゃない?』
「王様がそんな簡単に変わるわけねぇよ」
「まぁな」
『大丈夫だよきっと。向こうの先輩達しっかりしてそうだもん』
「あっそ」


私の言葉に二人は不服そうに眉間に皺を寄せた。
そのままアップに戻っていく。
影山の話になると不機嫌になるのは二人とも変わらないのか。
まだ駄目なのかなぁ。寂しいなぁ。


練習試合が始まった。
あのオレンジ頭君MBなの?てっきりリベロだと思ったのに。
顔色もまだ悪い。下手くそだし。試合慣れしてないのかな?
なんであんなに下手くそなこが試合に出てるんだろう?他にも部員いるのになぁ。
1セット目はさくさくとうちが取れた。
オレンジ頭君がサーブを盛大に影山の頭にぶつけたのだ。
あれはちょっと笑ってしまった。影山ごめんよ。


「みき」
『何、はじめちゃん』
「及川を探してこい」
『トオルちゃんまだ来ないのか』
「軽い捻挫くらいだと思うんだけどな」
『サボってますね』
「そうだろうな」
『では行ってきます』


はじめちゃんに言われてトオルちゃんを探しに体育館を出る。
2セット目見たかったのになぁ。
まぁこのままだとストレートでうちが勝つだろうな。


トオルちゃんを探すのは比較的簡単だ。
キャーキャー騒がしい所に向かって行けばいいから。
さて今日はどこかなぁ?


体育館からそう遠くない場所にトオルちゃんを発見した。
相変わらず女の子に囲まれている。
楽しそうだなぁ。
女の子の輪の中にずいずいと入っていく。
こういうのは遠慮したら駄目なのだ。
周りから不満そうな視線がこっちに向いているが気にしない。


『トオルちゃん』
「みき、どうしたの?」
『1セット目終わったよ』
「ちゃんととれた?」
『うん、大丈夫』
「まぁ心配はしてないけどね」
『はじめちゃんが呼んでる』
「岩ちゃんせっかちなんだからー」
『怒られるよ』


最後に一言良い放ってさっさとその場を後にした。
試合見たいんだもん。
後ろからトオルちゃんが自分を呼ぶ声がしたけど無視無視。
その方が気になって早目に切り上げることも私は知っている。


『嘘でしょ』


体育館に戻って驚いた。
さっきと全然違うオレンジ頭君がそこに居たからだ。
監督とコーチの隣に座る。
二人の話を聞くに1セット目に使い物にならなかったオレンジ頭君が使い物になってるらしい。
そしてそのオレンジ頭君に影山が完璧に合わせてることも。
それだけ聞いて烏野のコートに視線を向ける。
ちゃんと馴染んでるし周りに合わせることを覚えた影山を見て嬉しくなった。


結局2セット目は烏野に取られた。
悔しかったけど、私はご機嫌だったと思う。
トオルちゃんもやっと体育館に来た。
監督と二言三言交わしてアップに向かう。


3セット目は烏野にあげたくないなぁ。
影山が元気に仲良くバレーしてるのは嬉しいけどうちが負けるのは嫌だ。
負けたらトオルちゃんのせいだ。
バレーの応援に熱が入った。


結局練習試合は負けた。
ピンチサーバーとしてトオルちゃんが入ったけど少し遅かったみたいだ。
悔しい。かなり悔しい。
がしゃんがしゃんとスクイズボトルを洗っていく。


「何でお前が一番悔しそうなんだよ」
『だって悔しいじゃんか金田一!』
「あいつ変わってたな」
『それは嬉しいけど。でも悔しいんだよ!』


くそー。トオルちゃんのせいだよ本当に!
あぁ駄目だ。スクイズボトルに当たっても壊れるだけだ。監督に怒られてしまう。
落ち着け落ち着くんだ私。


「金田一、香坂」


ふと名前を呼ばれてそちらを向くと影山が居た。
金田一もそっちを向いている。
大丈夫かな?喧嘩とかしないでよ?


何か言った方がいいのだろうかと迷ってたら金田一が矢継早に話し出す。
影山はそれに相槌をするだけだ。
途中でオレンジ頭君の変な歌が聞こえる。
ムード台無しだよ。それに隠れてないよそれバレてるよ。
笑うの堪えなきゃいけないんだよ私。


「次戦う時も勝つのは俺達だ」


その言葉にハッとする。
隣の金田一も驚いたみたいだった。
「じゃあな」と最後に言って影山は去っていった。


「何話してたの」
『国見!』
「あいつ俺達って言ったよ」
『うん』
「あ?」
「いっつも俺は俺がって一人で戦ってるみたいな言い方してたくせに」
『成長してたね』
「………」
「…くそ、なんか悔しいな」


金田一はそう言ったけど何だか晴れやかな顔をしてたと思う。
国見に突っ込まれてたけど。
あぁ影山だけじゃない。ちゃんとこっちも変わってる。


「何ニヤニヤしてるのさ」
『何でもないよ。さぁ洗ったやつ運んでおいて』
「何で俺達が」
『友達じゃん手伝ってようー』
「分かった。国見、さっさと終わらすぞ」
「えぇ」
『金田一ありがとう!』
「お前の言ってた通りだったからな」
『大丈夫、金田一も国見もちゃんと変わってるよ』
「はぁ?」
「なんだよそれ」


何なら洗うのまで手伝ってくれた。
さくさく仕事が終わったから良かった良かった。
三人の仲直りのきっかけになったらいいな。


今日は二人にも肉まんをご馳走してあげよう。
私の心もなんだか晴れやかだった。

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