国見と金田一とわたし

春休みの練習にも毎日参加して無事に青葉城西に入学した私達。
部活にも慣れてきましたよー。
そんなある日の月曜の午後のお話。
今日は何をするでもなく帰り道をふらふらと歩いている。


「岩泉さんと帰ったりしねーの?」
『え?何で?』
「お前岩泉さんにべったりだと思ってた」
『なんだよ、ヤキモチですか金田一』
「ちげーよ!」
「高校からは頑張るって言ってたじゃん」
『毎朝一緒だし部活のある日は帰りも一緒だからなぁ。たまには国見と金田一と遊びたいじゃん』


月曜の帰りは金田一と国見と帰るのが私達のサイクルになりつつあった。
国見は最初嫌そうな顔してたけど。
毎週月曜にお迎えに行くようになって諦めたようだ。


「及川さん達ってなんて呼ばれてるか知ってる?」
『何それ何それー』
「あ、それ俺も聞いた」
『私知らないよ!』
「香坂は友達居ねぇもんな」
『国見それ酷くない!』
「少しは女子の友達作れよいい加減に」
『少しくらいはいるよ!大丈夫だよ!』


二人が疑った様に私を見てる。
え、何その視線。あからさまにそれ嘘でしょみたいな目をするのやめてよ!


「女子の友達は一人も居ないと思ってた」
『中学はそうだったけど!今はいるよ!』
「そいつらと帰ったりしねーの?」
『んーしない。一緒に居てもつまらないし』
「「お前なー」」
『だってやれ誰それ先輩がかっこいいとかサッカー部の誰それ君が好きだとかそれしかないのかと』
「お前もだろ」
『違いますー。てかさっきの話なんだったの?』
「何が?」
『トオルちゃん達が何て呼ばれてるかって話だよ!』
「あぁ、お前が話変えたんだろ」
『国見が友達少ないとか言うから悪いんだよ!』
「少ないんじゃなくて居ないって言ってたよね」
『金田一が国見みたいになっていくー』
「香坂といるとね」
「突っ込みたくはなるよな」


中学の時金田一はもっと純粋だった気がするのに。
国見の影響なのか、お母さん悲しい。


「誰がお母さんだ」
『えっ何でバレた?』
「そんな様な気がした」
『国見凄いね。あ、だからトオルちゃんの話だって!』
「及川さんと岩泉さんと花巻さんと松川さんで四天王だと」
『微妙』
「なんでだよ」
『チャンピオンに挑戦するための噛ませ犬感がある』
「それゲームの話だろ」
『四天王ってそれより上がいそうじゃん』
「まぁ」
「確かにな」


はじめちゃんとトオルちゃんの上に人がいるとなやだなぁ。
誰だよそんなダサいあだな付けた人。
確かにトオルちゃん目当てで部活の応援に来る女子は沢山いる。
こないだその声援にはじめちゃんがぶちキレてたけど。
トオルちゃんだけじゃなくてはじめちゃんと花巻さんと松川さん合わせて四天王ねぇ。
てことははじめちゃんと花巻さんと松川さんも人気があるってことなんだよねきっと。
うーん、はじめちゃんもやっぱり人気あるのかぁ。ますます微妙だ。
お腹空いたなぁ。


「お前何急に食ってんだよ」
『ん?これ帰りに花巻さんと会った時に貰った』
「なんだかんだ甘やかされてるよなぁ」


帰り際に二人を迎えに行く前に花巻さんと偶然会った時にシュークリームを頂戴したのだ。
お腹空いた流れで思い出した。
今日はコンビニに寄らずに済みそうだ。
シュークリームを頬張る私を呆れた顔をしてる二人がいる。
この表情にも慣れたものだ。


『食べる?』
「なっ!いらねぇよ!」
「あ、俺食べたい」
「おい!」
『んじゃ国見にはあげようではないか』
「それお前のシュークリームじゃないだろ」
『今は私のものでーす』


二人に聞くと金田一は顔を赤くして首を横に振った。
なんだよ、そんなに全力で否定しなくてもいいじゃん。
国見の口元までシュークリームを運んであげる。


『え、何で嫌そうな顔してるの』
「何か餌付けされてるみたいじゃない?」
『いいじゃん。お食べお食べー』


国見は渋々と私が持ったままのシュークリームを一口食べた。
食べづらそうだなぁ。ほっぺにクリームついちゃったよ。


「国見、クリームついてるぞ」
「香坂のせいだよ」
『そんな怒らないでよ。でも美味しいよねこれ』
「まぁ確かに」


そのほっぺのクリームどうするんだろ?
まぁでも放っておいても可哀相な気がしたから指で掬ってあげる。
よし、ちゃんと綺麗に取れた。
その指をぺろりと舐めた。
やっぱりこのシュークリームのカスタード美味しいな。


一人で満足して再び手の中のシュークリームにぱくついた。
あれ?二人が静かだな?
何なら隣に居ないぞと後ろを向く。
金田一はさらに顔を赤くして口をあんぐりと開けている。
国見は…あれ、国見も珍しく顔が赤い。
照れてる国見とか貴重だ。


『どうしたのさ』
「バーカ」
『は?いきなりバカとは何?酷くない?』
「まぁ香坂が悪いな」
『金田一まで!?』


一言だけ発すると国見はスタスタと私を追い抜いて歩きだした。
バカとはいきなり何事なのか。
金田一も私と国見を交互に見て歩き出す。
置いてかれるのも寂しいので私もそれに続く。


『大変です。二人が反抗期です』
「俺は別に反抗期とかじゃないよ」
「金田一、俺が反抗期みたいに言うの止めてよ」
「すまん」
『反抗期じゃんーシュークリームあげたのにさー』
「ぶくぶくに太ってしまえ」
「まぁそろそろ太りそうだよね」
『えっ』


そんなに甘いもの沢山食べてるつもりはないんだけど…太ったかな?
うーん、と首をひねりつつ自分のお腹回りを確認する。
別に大丈夫だと思うんだけどなぁ。


「香坂、俺ら別に太ったとは言ってないけど」
『ん?』


その様子を見てたらしく金田一が困った様に声をかけてきた。
国見は笑い声を抑えるように口元に手を当てている。
またからかったなこのやろう。


『ちょっと!笑いすぎ!』
「仕返しだよ」
『何のだよ!』
「お前って鶏みたいだよなぁ」
『ニワトリとか褒めてるのか貶してるのかちょっと分かんないよ』
「貶してるんだよ。三歩歩いたら忘れるよねって意味で」
「国見が正解かな」
『金田一の反抗期がやっぱり始まったぁぁぁ!』


いつもの月曜の帰り道。
私と国見と金田一。


ちなみに弄られるのは私か金田一のどちらかだ。
国見は大体弄る側。
私達が国見を弄ると後から面倒臭いのだ。
それは今でも変わらない。

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