神セブンお披露目


「はーい、んじゃ神セブン総選挙2020の御披露目っすよー」
「…」
「んだよ月島その目」
「やる気なさそうだなと思って」
「はぁ?当たり前だろ!何で俺がこんなことしなきゃいけねぇんだよ」
「別に。言いたいことはわかりますけど切原さんの先輩達もそこで見てるんじゃないんですか?」
「ぐ」
「二人ともその辺にしとき。もう始まっとるんやでちゃんとしいや」


そんなこと言われても俺が司会に立候補したわけでも何でもねぇし。
…一言言いたかったのに北さんの圧が凄くてやめといた。なんだこの人、見た目そんな怖そうじゃねーのに逆らっちゃいけない気がする。


「北さんが仕切ってくれても僕は構わないんですけど」
「俺は二人の監督役を任されただけやから二人で頑張り」
「…わかりました」
「へーい」


隣の月島も北さんにびびってんのか?素直に頷いている。つーことは二人でやらないといけないってことだ。
まぁ幸村先輩達に怒られんのも嫌だしちゃんとやってみるか。


「カンペはここや。これに沿ってやったらええからな」
「はい」
「へーい」
「じゃあ改めまして、司会の月島蛍と」
「切原赤也。んじゃ早速一位の発表っす」


北さんに手渡された紙を二人で覗き込む。
総選挙の上位七人を発表するだけだしさっさと終わらせて帰っちまおう。
北さんは俺らの少し後ろに下がって見守っている。視線が背中にグサグサ刺さるからちゃんとやらねーと後から怒られる気がする。


「一位は梟谷の赤葦京治さんです」
「此方にどうぞー」
「おおお!あかぁーし!」
「キャー!赤葦ー!一位おめでとー!」
「ミミズクヘッドの片腕〜!」


一位の発表と共にテーブル席の一角から熱烈な歓声が聞こえてくる。
その歓声をガン無視して赤葦は出てきた。
普通喜ぶとか嫌なら嫌そうにするとかあると思うんだけど赤葦は無表情のままだ。
あ、これ他人を装ってるっつーやつかもしんねぇ。


「一位の赤葦さん一言どうぞ」
「赤葦ー!なんか面白いこと言えって!」
「いいぞいいぞ〜木兎の言う通りだ〜」
「会場全体が赤葦に期待してるからね!」
「お前なら出来るぞ赤葦!」
「アンタあの人達と一緒で疲れねーの?」
「もう慣れたよ」
「木兎さん達の歓声でこっちの声客席に届かないんですけど」
「ちょっとマイク貸して月島」
「はい」


月島が赤葦にマイクを渡すと観客達は静かになった。つっても赤葦のいる梟谷のいるテーブルだけだけど。その一角がすげー期待した目で赤葦のこと見てっけど多分アンタ達が期待する展開にはならないと思う。


「一位の赤葦京治です。投票してくださった方ありがとうございました。今年はどんなコンセプトになるかわかりませんが選ばれたからには役目を全うしようと思います。以上です」
「えー赤葦もうちょっと頑張りなよ!」
「かおりんの言う通りだぞあかぁーし!」
「そーだそーだ!」
「以上」


不満げな声が上がるもぴしゃりと締めて赤葦の挨拶が終わった。月島にマイクを戻して赤葦は北さんの横に並ぶ。あ、北さんが神セブン用のマイク赤葦に渡してんな。


「とっとと二位に行くか月島」
「そうですね」
「赤葦は司会の二人の横や。一位なんやから前におりや」
「…わかりました」
「えーと次は?」
「あぁ、次は三人まとめて発表みたいですよ切原さん」
「三人同時?まぁいいけど」
「全員同じ学校なんで」
「あぁ、そういうことな」


司会進行の紙は月島に預けてあるから次の流れを教えて貰う。
三人同時なら時短出来るし楽チンだよな。
よし、んじゃさくさく発表してくか。


「次は二位三位四位の発表っす」
「音駒の孤爪さん黒尾さん夜久さん此方にどうぞ」
「黒尾さーん!」
「研磨さーん!」
「夜久さんカッコいいっす!夜久さん!」


どこの学校も盛り上がってんなぁ。黒尾さんは歓声に手を振る余裕がある。孤爪はすげぇ嫌そうだ。あーコイツ確か去年来年はやりたくないっつってたっけ?夜久さんは歓声を聞いて眉間に皺が寄った。選ばれたのがっつーよりは歓声が嫌みたいに見える。


「何で俺が今年も選ばれなきゃいけないのさ」
「こら、去年より順位が上がったんだからそんなこと言うのは止めなさい」
「黒尾は下がったんだっけ?」
「ちょ!やっくん!そう言うこと言うのは止めて!」
「二位の孤爪さん、一言ください」
「…」
「さっさと言っちまえば済む話だろ、早くしろって」
「…ありがと。でも来年はほんと嫌だからね。そもそもここに立つのが嫌だし」
「それって来年は神セブンに入ってもここに立たなきゃ大丈夫ってことだよね」


赤葦のツッコミで孤爪の眉間の皺が深くなった。そう言うことじゃねーの?赤葦が言ってなかったら俺がそうやって突っ込んでた気がする。マイクを通さず孤爪と赤葦が何やら喋ってっけどとりあえず三位のコメントを貰うか。


「んじゃ次は三位の黒尾さんすね」
「どーも、去年に引き続き神セブン選ばれた黒尾鉄朗です。今年も沢山の投票ありがとな。んで来年も研磨共々宜しくお願いしまーす」
「クロ、いきなり巻き込まないでよ」
「別にいーだろ。あ、やっくんもね」
「ついでみたいに言うなよ黒尾」
「いやいや、そんなことないですよ?」


笑顔で夜久さんに返事をしてるけど、黒尾さんは結局尻を蹴られていた。夜久さん容赦ねーのな。うちの副部長と良い勝負かもしんねぇ。


「次は四位の夜久さんです」
「あぁ、ありがとな月島」
「いえ、これも仕事なんで」
「夜久さーん!夜久さんおめでとうございます!!!」
「うるせーぞリエーフ!」
「夜久さんマイクに入ってるっす」
「っと、わりい。四位の夜久衛輔。今年も入れるとは思ってなかったから投票ありがとな。今年も曲者揃いな気がするけどまぁ頑張ってみるな」


曲者揃い?今のところそんなヤツ居そうにねーけど誰のこと言ってんだ?仁王先輩も今年は選ばれなかったし誰のことを言ってんだ?まさか丸井先輩のことか?あの人もワガママとこあるからなぁ。


「切原さん次どうぞ」
「ん?あぁ、そっか。んじゃ五位の発表な!五位は立海丸井ブン太!丸井先輩どぞー!」
「おー」


拍手と共に丸井先輩が出てきた。前の四人と違って歓声が何もねぇ。
あーでもうちの先輩達そういうのするタイプじゃねぇしなぁ。あれ?そういや丸井先輩大好きなあの人はどうしたんだ?来てねぇとか多分ないと思うんだけど。
ステージからそれらしき人物を探すと直ぐに見付かった。隣の向日さんにちょうど起こされてるところだ。まぁ寝てたら歓声は上げられねぇもんなぁ。あ、起きた。


「丸井くーん!五位おめでとおめでとー!俺ぜったいに丸井くんが選ばれるって思ってたC〜!」
「おお、ジロくんサンキュー!」
「二年連続っすね」
「まぁ俺だけじゃなくて前の四人もだけどな」
「丸井さん一言お願いします」
「投票サンキュ!今年も面白そうなメンバーになったから楽しみにしてろよ。んで来年の投票もシクヨロ!」
「ありがとうございました」


「丸井くーん!俺ぜってー投票するから!」っていやいやアンタに投票の権利ないから。丸井先輩もそれに反応してにこやかに手を振らないでくださいよ。去年からの付き合いからか丸井先輩は夜久さん達と喋りはじめた。赤葦黒尾さん夜久さんは普通に話してるけど孤爪は少し嫌そうにも見える。


「切原さん次」
「っと次か、六位は箱学の東堂、…なぁこれ何て読むんだ月島」
「じんぱちですね、多分」
「ワッハッハ!待ちくたびれたではないか!オレが箱学のエースクライマー東堂尽八だ!」
「……」
「…げ」


すげー癖の強そうな人が名前を呼ぶ前に出てきた。颯爽と登場して月島のマイクを奪っていく。


「巻ちゃん!俺はやったぞ巻ちゃん!」
「東堂うるせーぞ!一人だけ浮いてンじゃねェか!」
「バカを言うな荒北!オレが浮くわけなかろう!そうだ挨拶をせねばならんな?オレに投票してくれた皆は見る目があるぞ!礼を言おう!選ばれたからには全力で楽しませるからな!そして来年は巻ちゃんと二人で神セブンに入ることをここに誓おうではないか!」


巻ちゃんと呼ばれたであろう緑色の頭をした人が客席で頭を抱えている。
夜久さんの言ってた曲者揃いの一人はこの東堂さんで決まりだな。放っておいたらいつまでも喋ってそうなのでその手からマイクをもぎ取って月島へと返す。
東堂さんが口を開く前に北さんが話しかけてくれたのでその隙に最後の六位の発表をしちまおう。こういう時のために北さん居てくれたのかもなー。


「大丈夫か月島」
「少し驚いただけです。最後の一人も立海なので切原さんどうぞ」
「おお、んじゃ最後の一人の発表行くぞ。七位は立海の幸村精市!幸村先輩お願いします!」
「やぁ、みんな待たせたね」


盛大な拍手と共に幸村先輩が出てきた。丸井先輩の時とちげーのは真田先輩が張り切って手を叩いてるからだろう。仁王先輩も真田先輩に言われて拍手をさせられている。


「幸村さん一言どうぞ」
「あぁ、ありがとう。俺が神セブンに選ばれるなんて驚いたよ。投票してくれたみんなありがとう。なかなか個性的なメンバーが揃ったから今から楽しみだよ。来年も俺共々立海のみんなを宜しく頼むよ」


自分だけじゃなくて俺達のことにまで言及すんのが幸村先輩らしい。おかげで今度は真田先輩だけじゃなくて沢山の拍手を貰ってた。
はぁ、ここまですげぇ長かったし。


「この後どーすんだ?」
「締めの言葉ですね」
「それ俺達が言うことかよ」
「書いてあるのでそれを僕に言われても」
「後ちょっとで終わるんやから最後までちゃんとやり」
「うーっす」
「わかりました」


ぐだぐだする俺達の背中に北さんの激が飛ぶ。ちらっと幸村先輩の方を見たら頷いている。あの笑顔はちゃんとやれっつー笑顔だよ、な。


「赤也、君の方が彼より年上なんだから」
「あーもうわかりました!わかったっす!神セブン御披露目これで終わり!去年とはまたメンバーが違うので今年の神セブンも楽しみにしておくといいっすよ!終わり!」
「参加してくれた皆さんありがとうございました」
「あ、北さんもあざっす!」
「大したことしてへんからええよ」
「ありがとうございました」


つーか誰だよ、八位九位十位に司会やらせるって決めたの。もやっとしたしどっと疲れたじゃねーか。


「月島もお疲れさん」
「切原さんもお疲れ様です」
「ラーメン食いに行かね?」
「僕甘い物が食べたいです」
「はぁ?丸井先輩みたいなこと言うんだな」
「疲れた時は甘いものでしょ」
「んじゃケーキにすっか」
「ありがとうございます」
「あ、奢らねーからな」
「僕だってそれくらい出しますよ」


あ、それならジャッカル先輩連れてこ。んで俺も月島もジャッカル先輩に奢ってもらえばいいよな!


「なかなか個性的なメンバーですね」
「まぁそんなに心配すんなって赤葦」
「今年は何やらされるんだろ」
「お前もいい加減人見知り直せよ研磨」
「無理、それは無理」
「そうか、丸井と幸村はオレと同い年なのだな!」
「ついでに黒尾と夜久もな」
「宜しく頼むよ東堂」
「オレからも頼むぞ、何せ全員初対面だからな」
「まぁお前なら大丈夫じゃね?」
「心配はしていないが、まぁ付き合い方もあるからな」
「良かった、東堂って案外しっかりしてそうだね」
「案外とはなんだ、オレは元よりしっかりしておるぞ」
「最初の印象悪すぎだろい」


2020/01/13


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