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「で、朝っぱらからなんだテメーら」
「社長にお話がありまして」
「アーン?そこにマネージャーの青根がいるじゃねぇか」
「青根に相談したらやっぱ社長に相談すんのが一番だって決まったんだよな!」
「まぁ、そんな感じだな」


早朝からマネージャーの青根を呼び出して昨日のことを説明した。
ちなみに今社長とはテレビ電話で話している。
この場にいるのは俺と夜久さんと西谷だけで後のメンバーはまだ寝ているんだろう。
彼女の姿もまだリビングには見えない。


「で、なんだ話ってのは。まさか誰か問題を起こしたんじゃねぇよな」
「問題と言うわけではないと、思います」


リビングの大画面のテレビでテレビ電話をしているためかギロリとこちらを睨む跡部さんがいつもより迫力があるように見える。…問題ではない、はずだ。


「昨日、ここのマンションの一階で女性を拾ったらしいです」
「青根いきなりそんなこと言うのかよ!」
「テメーらは馬鹿か!あれほど女はマンションに連れ込むなって言っただろ!」
「跡部、そんなんじゃねぇし俺と赤葦は反対したぞ」
「免許証は持ってましたから今青根さんに素性を探ってもらってます」
「あぁ、今こっちにも詳細が届いた」


画面の向こうで社長秘書の樺地が跡部さんに何やら差し出している。もう調べがついたのか、相変わらずやることが迅速だ。


「まぁ、怪しい人物じゃねぇな」
「行くとこないってこの寒い中言うからさ、放っておけないだろ?」
「危機管理ゼロなのは俺と夜久さんと孤爪以外ですからね」
「お前も言うようになったなぁ赤葦」
「無駄に叱られたくないだけです」


西谷がまたもや余計なことを言ったので社長が口を開く前に弁明しておいた。
叱るならば危機管理ゼロ組だけにしてほしい。


「仕方無ぇな、おい青根その椎名凛ってのが起きたら俺のところに一度連れてこい。こうなったらそいつをイデアルエクラ専属のマネージャーにする」
「は?」
「まぁ跡部がそう言うならいいんじゃね?マネージャーならマンションの場所をバラしたり出来ないし」
「あいつも仕事と帰る場所が出来て一石二鳥っスね!」
「分かりました、昼には伺います」
「じゃあまた後でな。危機管理ゼロ組は再講習するから伝えとけ」


返事をする前にそこでテレビ電話が切れた。どうにか怒られずに済んだらしい。
ゼロ組は再講習だから知らないけど。一応上手くまとまったと言っていいのかもな。


「んでそいつは青根と跡部のとこ行ったってこと?」
「そうですね」
「ちょっと待ってよ赤葦!その再講習俺も?俺も受けるの?」
「どんまいじゃ黒尾」
「ざまぁみろだな」
「クロはリーダーの自覚皆無だからね」
「黒尾さん四人で頑張りましょうね!」
「いやいやいや!今回のは西谷の責任でしょ!」
「止めなかったお前が悪いな」


彼女は起きて直ぐに青根が連れていった。細かいことすら話してなかったからかなりビクついていたような気がする。
二度手間になるから省いたんだろうけど大丈夫だろうか?まぁ悪いようにはならないからいいか。


「じゃあやっと専属のマネージャー出来るんだね」
「青根は掛け持ちだったからなぁ」
「パシリが増えるナリ」
「仁王さんパシリって言ったら可哀想っスよ」
「黒尾腹減ったー」
「今日のメシ当番お前だろ丸井」
「そうなってますね」
「バレちまったか、んじゃ何か作ってやるよ!」
「ブンちゃん何でそんな偉そうなんじゃ」
「丸井さんが当番ですから作るのは当たり前ですよ」
「ノリが悪いなぁ、パスタでいいか」
「俺も手伝う」
「お、やっくんサンキュー!」


「俺カルボナーラ」「俺ミートソースがいいっス!」「ボンゴレ食いたい」「まーくんはナポリタンがいいぜよ」「俺は何でもいいですよ」「赤葦天使!」「はいはい、赤葦のこと褒めてないでさっさと手を動かせよ」


好き勝手注文したものの結局出てきたのはアマトリチャーナだった。まぁ簡単だしわざと全員の注文から外したものを作ったんだろう。もしくは夜久さんか丸井さんが食べたかったのがアマトリチャーナだったのかもしれない。
これもいつものことなので誰もそれには文句は言わなかった。


昼過ぎに青根が椎名さんを連れて戻ってきた。何やら荷物が大量だ。


「皆さん集まってますか」
「おーみんないるぜ!」
「彼女は今日からイデアルエクラ専属のマネージャーになりました。しばらくは自分と二人で付きますがそのうち一人で応対してもらいます」
「その荷物だとここに住むんかのう」
「お目付け役が居た方が良いと社長が判断しました」
『椎名凛です、精一杯頑張らせていただきますので宜しくお願いします』
「良かったな!住むとこと仕事が決まって!」
『本当に、あの迷惑をおかけしまして…』
「俺、西谷夕!宜しくな!」


恐縮しきりな彼女に西谷が率先して自己紹介をしている。まぁアイツが拾ったようなものだしな。西谷も嬉しいんだろ。


「それと、彼女の肩書きは自分の妹と言うことになりました」
「それがいいかもな」
「青根の妹だったら仕事もしやすいだろうし」
「んじゃ、ややこしいしお前のこと凛って呼ぶぜ!あ、俺は丸井ブン太。シクヨロ!」
『分かりました』
「俺は赤葦京治です」
「俺は夜久衛輔!早くお前も挨拶しろよ、リーダーだろ!」
「痛っ!やっくん暴力反対!俺はリーダーやってる黒尾鉄朗な。凛ちゃん仲良くしような?」
「んでそこのコミュ症のゲームやってる金髪が孤爪研磨で、そっちの銀髪が仁王雅治」


最後に夜久さんが孤爪と仁王さんの紹介をして一通りの面通しが終わった。
孤爪は視線を椎名さんへとやって頭を下げただけ、仁王さんに関しては目も合わせずに手をヒラヒラと振っただけだ。
孤爪みたいにコミュ症ってわけでも無いだろうに相変わらず気まぐれだ。


「とりあえず部屋に荷物を運びましょうか」
『はい』
「赤葦!俺も手伝う!」
「こんだけあるし俺も手伝うな赤葦ー」
「助かります、青根は?」
「生放送の前に迎えにきます」
「んじゃまた後でな青根ー」
「あ、それと荷物がまだ届きますので」
「はぁ?」
「社長の言い付けなので」


青根と入れ違いで大量の荷物が届いた。ベッドすら買い替えるとか特別待遇すぎやしません?
まぁ俺達の時も似たようなものだったか。
結果的に彼女の部屋は俺達の部屋と大差無いほどに豪華なものとなった。


「それで、なんで昨日マンションの下に居たんだよ」
「夜久さんいきなりそんなこと聞かなくても」
「いや、お前も気になってんだろ赤葦」
「まぁ」


部屋が整って仕事前に全員揃ってのティータイムだ。孤爪と西谷、丸井さん仁王さんは大画面でゲームをしている。
ソファに座っているのは俺と夜久さんと黒尾さん、そして椎名さんの四人。
夜久さんの問い掛けに彼女の紅茶を飲む手が止まった。


「言いたくないならおいおいで良いんじゃね?やっくんも無理やり聞く気は無いでしょ?」
「かと言ってこの商売信用が大事だろ?」
「それは間違いないですね、けど跡部さんは事情を知ってるんですよね?」
『はい』
「跡部はやっぱ知ってんのな」
「ここは黒尾さんの言うようにおいおい分かればいいと思います」
「まぁそうなるか、よっぽどの事情だろうしなぁ」
『すみません』
「やっくんも言ってみたかっただけだから気にしないでね?」
『確かに怪しいですよね私』


ティーカップをテーブルへと置いて椎名さんは俯いてしまった。まぁ怪しくないとは確かに言い切れないけど。


「社長が判断したならいいんじゃない」


少しだけ気まずい空気が流れる。その間を縫って孤爪がぽつりと呟いた。ゲームに集中してると思ってたけどやっぱり聞いてたな。


「跡部が大丈夫って判断したのから大丈夫だろい」
「社長の情報収集能力凄いっスもんね!」
「のんびり仲良くなってけば良かろ」
「お前ら全員聞いてたのかよ」
「多数決ですしね夜久さん」
「俺も別にそこまで真剣に聞き出そうとは思ってねぇよ。まぁ、みんなもこう言ってることだし宜しくな凛」
『はい、宜しくお願いします!』
「話もまとまったことだしそろそろ準備なー」
「生放送ですから仁王さんと西谷は発言に注意してください」
「研磨はちゃんと喋れよ」
「俺は俺はー?」
「丸井は別にいつも通りでいいだろ」
「それなんかつまんねぇし」
「凛さんは青根に付いて仕事を覚えてくださいね」
『分かりました』


「俺ちゃんと喋ってるし」「俺そんなまずい発言するか?しないだろ」「夕は喋りすぎな、研磨は喋らなさすぎ」「おまんら足して二で割ったらちょうどいいぜよ」「お、上手いこと言ったな仁王!」「ねぇ赤葦、俺もうリーダー面倒」「黒尾さんしか居ないので」


俺達のやり取りを聞いて椎名さんの強張った表情がやっと緩んだのだった。


えぇと今日は新曲の御披露目とアルバムの宣伝だな。ライブツアーが決まったことはまだ俺と黒尾さんと夜久さんしか知らないから西谷への注意も軽くでいいと。
頭の中で今日やるべきことを組み立てながら準備に向かう。
あ、孤爪の携帯ゲーム機は没収しとこ。


久しぶりの更新。
いや、人が沢山だと書きわけ大変ね。
でもそれが楽しい!
2019/03/22


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