Choose one out of the seven.


『お父様それ本気?』
「あぁ、早いうちに婚約者を決めておいた方が良いと思ってな」
『私、恋愛結婚じゃなかったら一生お嫁にはいかないってお父様に言いませんでした?』
「ねーちゃん、そりゃ無理な話な」
『跡取りが赤也でお父様は良いわけ?』
「かと言って爵位は女には継げないのはお前もわかっているだろう?」
『それはそうだけど…でも』
「お前が好きに選べるように候補は七人いるんだ。会ってから考えてみるといい。明日には皆さん此方に到着するからな」
『は?』
「失礼のないようにするのだよ。私は仕事で居ないが北、頼んだよ」
「旦那様の仰せのままに」


勝手に婚約者候補を呼んでおいて当の本人は仕事でしばらく留守にするとかどういうこと!?
私恋愛結婚じゃなきゃ嫌だって常々言ってたのに!お父様とお母様みたいな大恋愛の末の結婚を夢見てたのに!
呆然としているうちにお父様は旅立ってしまった。


「姉ちゃんドンマイ」
『私が男なら爵位を継げたのに!』
「今更んなこと言ったって無理だろ?諦めろって」
「二人とも話し方に気ぃつけや」
「北だって俺達といるとき話し方雑になってんじゃん」
『北、私の恋愛結婚は?夢はどうなるの?』
「七人のうちの誰かと恋愛すればええやろ。気落ちせんと前向きに頑張り」
「お、北やっぱり良いこと言うな!ってことでねーちゃん明日から頑張れよ!」
「とりあえず今日の予定からや。二人ともこの後月島先生と勉強やで」
「げ」
『ツッキーか』
「待たせとるんやからはよ朝食食べ」


赤也のあの顔からして昨日の課題をやってないんだろう。ツッキーそういうの厳しいからなぁ。かと言って私もピアノの練習をしていない。二人してこんな感じだからツッキー怒るだろうなぁ。


「北さん僕この家の家庭教師辞めてもいいですか」
「高い金払っとるんやからアカン。それに仕送りせんとアカンのやろ?まだ弟達小さいんとちゃうかったか?うち以上に高い金払うとこ他にないやろなぁ」
『北、あんまりツッキー苛めたらダメだよ』
「げ、全然ラテン語わかんねぇ」
「凛様にだけは言われたくないですけどね」
『えぇ』
「ピアノがそんなポンコツじゃバイオリンもダメでしょうね」
『そ、そんなことないよ!フルートは得意だし!』
「今、フルートの話はしてないです」


ツッキーは天才だ。多分出来ないことないんじゃないかってくらい色んなことをこなす。
だからこそお父様が高いお金を払って家庭教師として雇っているんだけど、当の私達の出来が悪くて宝の持ち腐れ状態だ。
せっかく北のお小言から庇ってあげたのにツッキーは嫌そうに眉間に皺を寄せた。


「あ、んで七人の詳細って届いてねーの?」
「俺は知っとるで、二人の執事やからな」
『え、そうなの?』
「君こんなんで本当に結婚出来るの?相手方の家に迷惑かけるだけじゃない?」
『煩いなぁ、いいの。結婚するつもりないんだから』
「ねーちゃんが小姑として居座る家なんて嫌だぜ俺。婚約者泣かせんだろ」
『あんたの婚約者とは仲良くやってるでしょうが!』
「話が脱線していくばっかやなぁ」
「いつものことですよね」


赤也と言い合いをしてたら二人は呆れ顔だ。
あ、そうだ!そんなことしてる場合じゃない!婚約者候補達の情報聞き出しておかなくちゃ!
向こうから断ってくれたらそれでいいしね。


『で、情報は?』
「教えるわけないやろ、自分の目で見て直接判断しいや」
『北のケチ』
「北さんの性格からして教えるわけないでしょ」
「よし!ラテン語の書き取り終わった!」
「それ半分以上間違ってるよ」
「は?ちゃんと見ろって!」
「一目見たらどこが間違ってるかくらい直ぐにわかる」


ツッキーの言うことは正しい。赤也が差し出したラテン語の書き取りを目の前でわかるように採点してあげてるけど本当に半分以上間違っていた。ドンマイ赤也。


「追い返そうとせんとちゃんと相手のことを見るんやで」
『えー』
「君みたいな女性を嫁に貰おうとしてくれてるんだから逆に感謝しないと」
『ツッキーは黙ってて!』
「けど恋愛出来りゃいいんだろ?可能性がねぇわけじゃないんだからねーちゃんも北の言う通り前向きに考えてみろって」
『だからね、前向きに考えるまでの時間が無さすぎじゃない?明日にはみんな到着するんだよ?』


ついこないだまでお父様だっていつまでも家に居てくれていいって言ってたのに何でこんな急に話が変わっちゃうわけ?
おかげでツッキーにどれだけ怒られても勉強は捗らなかった。


『赤也、明日が嫌だよう』
「腹くくった方がいいんじゃね?つーかもしねーちゃんが男だったら恋愛結婚出来てねーんだしお父様に感謝した方がいいだろ」
『ぐ』
「俺だってそこに関しては文句言ってねぇし、やっぱり感謝するべきだと思う」
『不細工ばっかり来たら責任取れるの赤也』
「いや、大丈夫だろ」
『あんたの婚約者は綺麗だから良いでしょうけどねぇ!』
「俺に怒っても仕方無いだろ!明日の顔合わせ俺は先生と勉強だけどしっかりやれよ」
『は?』
「や、当たり前だろ。北は多分ねーちゃんに付いててくれるから頑張れよ」
『え、赤也ほんとに?嫌だよ』
「いやいや俺いる意味ねーし」
『え、一人なの?』
「北はいるぜ」
『赤也も居てよ!嫌だよ!』
「無理言うなって!」


どれだけ駄々をこねても赤也は一緒に居てくれる約束をしてくれなかった。
昔は私から離れようとしなかったのに冷たい。
明日一気に七人がこの家にやってくる。
本当に誰か一人のことを好きになれるんだろうか?選べるのだろうか?
もやもやして今日は全然眠れそうにもなかった。


2020/01/18


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