クレッシェンドのラブロマンス

ついてない。
まさか部活に入ってないって理由だけで文化祭の実行委員に選ばれちゃうなんて。
夏休みもあれこれ動かなきゃいけないから大変だ。やだなぁ、高校最後の夏休みは思いっきり遊びたかったのになぁ。
夏休み前から九月の文化祭に向けての集まりがあるなんて本当についてない。
仕方無く指定された多目的ホールへと向かうことにした。
しかも今日は顔合わせだから男女どちらかだけの参加でいいらしく私の片割れの男子は意気揚々と私にこれを任せて部活に行ってしまった。
サッカー部のエースが何故文化祭実行委員なんてやりたがったのか謎である。
他にも適役いたんじゃないの男子。


「みょうじ?」
『え』
「お、やっぱりみょうじだ」
『や、夜久?』


しょんぼりと多目的ホールへの扉を開くと懐かしい声が耳に響いた。
声の出所を探すと主が手をあげている。
まさか夜久が文化祭の実行委員になってるだなんて。
さっきまでがっつり落ち込んでた心が夜久を見付けただけでほんわり温かくなった。
手招きされたので夜久が座ってる席の隣へとお邪魔させてもらうことにした。


「久しぶりだよなみょうじー」
『私1組だからなかなか会えないもんね』
「5組と1組じゃ接点無いからなー」
『教室も離れてるし』
「ま、みょうじが居て良かったわ俺。顔見知りが居なくて居心地悪かったんだよ」
『もう一人の実行委員さんは?』
「今日どうしても外せない用事があるんだと」
『夜久は何で?』
「俺?それがジャンケンに負けちゃったんだよなー。かなり運が悪い」


夜久がジャンケン負けてくれて良かった。
私からしたらとっても運が良かったよ夜久。


「1組は?男子誰?」
『太田君って分かる?』
「あーサッカー部のエースだっけ?」
『そう』
「サッカー部なんて夏かなり忙しいんじゃねぇの?全国決まっただろ?」
『らしいけどなんか張り切って立候補してたよ』
「ふーん。みょうじは何で?」
『うちのクラスで部活入ってないの私だけで強制的に決まっちゃったの』
「んじゃその後に太田ってこと?」
『うん』
「へぇ。ま、九月までの付き合いだけどよろしな!」
『こちらこそ。久しぶりに夜久に会えて良かったー』


去年同じクラスだった夜久とは3年になってクラスが分かれてしまった。
本当は会えない分部活観に行ったりしたかったんだけどバレー部に見学に行く女の子って珍しいからなかなか行けなかったのだ。
1組だから5組の前を通ることもなくて3年になって三ヶ月たって夜久のことを諦めようかと悶々していたところだった。
それがまたこうやって会えたことで萎みつつあった夜久への気持ちがムクムクと疼いてくる。
あぁやっぱり諦めようとしてたのに会ったら駄目だなぁ。私まだ夜久のこと大好きだ。


「んじゃ俺部活行くわ」
『あ』
「どうした?」
『この時間まで学校にいることないしたまにはバレー部の見学に行きたいなーなんて』
「来てもあんま面白くないかもよ?」
『そ、そうだよね』
「それでもいいなら観にこいよ。女子が居た方がヤル気出るやつばっかだし」
『じゃあお言葉に甘えまして』


20分程で顔合わせと文化祭の説明が終わる。
本格的な活動は明日かららしい。
夜久と多目的ホールを出た所でつい部活を観に行きたいと言ってしまった。
勝手に観に行くんじゃなくてバレー部の許可出たしいいよね?目立つ気がするけどいいよね?
久しぶりに夜久に会えたからもう少し話していたかったんだ。


「みょうじ?何やってんの?」
『あ、黒尾だ』
「みょうじは部活の見学」
「へぇ」
「みょうじ、俺着替えてくるから体育館まで黒尾と先行ってて」
『分かったー』


夜久と他愛もない話をしながら部室まで向かうとちょうど黒尾が出てきたところだった。
1年の時に同じクラスだったから面識はあるけれど何でニヤニヤしながらこっち見てるの。
夜久が部室へと入ってしまったから気不味い。


「やっくんとどんな感じなの?」
『は?な、なっ!どうして』
「あ、やっぱりそんな感じなんだな」


核心を突くようなことを黒尾に言われて思わず動揺してしまった。
そんな私を見て黒尾は満足げだ。
カマをかけられたらしい。
そうだった、黒尾はこういう人間だった。


「バレーやってるやっくんは格好良いからちゃんと観てくといいよみょうじ」
『黒尾!しっ!静かにして!』
「みょうじの声のが大きいんだけど。ほら、体育館行くぞ」
『あ、ちょっと待ってよ!』


さっきの中に聞こえてないよね?大丈夫だよね?
黒尾の背中を追いかけながらちらちらと部室の扉を気にするもそれが開くことは無かった。
着替えるって言ってたし大丈夫だよね?


どうしよう、久しぶりに会ったのもあるし夜久がバレーしてるのを観るのも久々でキュンキュンしてしまう。
都大会の応援にも友達の都合がつかなくて行けなかったからなんか、凄いよ夜久。
格好良くて死んじゃいそうなんだけど。


「なまえせんぱーい!今から試合形式の練習なんでちゃんと俺の格好良いとこ観ててくださいねー!」
『はーい!』


体育館で黒尾がみんなに私を紹介してくれたことですんなりと見学に入れた。
今私に声を掛けたのは1年の灰羽君だ。
ギャラリーにいる私を見上げて手をぶんぶんと振っている。
弟が居たらあんな感じなのかな?
と、思ってたら灰羽君は夜久に思いっきり蹴られてずるずると引っ張られてコートへと行ってしまった。
何やら夜久が灰羽君に言ってるけどその声はこちらまで届かなかった。
何をあんなに夜久は怒ってたんだろ?


試合形式の練習をしてる夜久はそれはもう格好良かった!
灰羽君に観ててくださいねって言われたけれど私の目にはもう夜久しか写らなかった。
灰羽君ごめんね。でもこんな夜久滅多に見られないから他のこと気にしてる暇無いの。
瞬きする一瞬すら惜しかったのだ。
その日は何だか寝るのすら勿体無く感じた。
寝たら眼に焼き付いた夜久の姿が薄れちゃう気がしたんだ。結局睡魔に負けて寝ちゃったけど。


「みょうじ」
『あ、夜久』
「みょうじのクラスはもう何やるか決まった?」
『うん、うちは』
「お、夜久じゃん!」
「おー。太田も久しぶりだな」
「久しぶりー。あ、そうそううちはメイド喫茶やんの」
「メイド喫茶?」
『う、うん。みんな張り切っちゃって』


週に二度の実行委員の集まりで夜久に会える。
ついこないだまで諦めようと思ってたのになぁ。週二回だけでも夜久の顔が見られるなんて嬉しい。
夜久の質問に太田君が笑顔で返事をしている。


「男子は何すんの?」
「執事に決まってんだろ。な?」
『みんな何であんなに張り切ってるんだろね?』
「そりゃメイド服じゃね?服飾が趣味のやつが居て良かったよなぁ」
『買うより作った方が安いしね』
「みょうじもメイドすんの?」
『え、まだ決まって』
「みょうじは強制って決まっただろ?」
『あれ本気だったの?』
「うちの看板娘にするって委員長が張り切ってただろ」
『冗談かと』
「ふーん」
「みょうじのメイド服絶対可愛いから夜久も見に来いよ」
「暇があったらな」


あれ?太田君と夜久って仲悪いのかな?
顔見知りみたいだけどなんだか空気が悪い、気がする。私の気のせい?
まだ話してたかったのに夜久は5組のもう一人の実行委員に呼ばれてそこで会話は終わってしまった。
あの子は夜久と同じクラスなんだよなぁ。いいなぁ。


「みょうじ、始まるぞ」
『あ、うん』


太田君に呼ばれたので夜久から意識を戻すことにした。そう言えば5組は何をするのか結局聞けなかったな。


太田君がサッカー部の全国大会に出場したせいで八月前半の準備は結構ハードだった。
先に部活を引退したクラスメイト達が続々と準備に参加してくれるけれど実行委員の仕事は減ったりしないのだ。
けれど合間合間に夜久に会えるから私は準備を頑張れた。
夜久が居なかったら毎日ぐったりしていた気がする。
好きな人と会えるってだけで頑張れちゃうんだから不思議だよね。
後半は全国大会を終えた太田君も合流してくれたから仕事も半分に減ったけれど。


『これ本気なの!?』
「おーみょうじやっぱ可愛いじゃん!」
『え?本気?』


八月後半のある日、衣装組が作ってくれた衣装合わせの日だ。
男子は制服に衣装組が作ったベストを着てるけど女子のは完全に全て手作りらしい。
絶対これ誰かの趣味が入ってる気がする。
何でこんなにスカート短いの!?
周りを見てもみんなメイド服を着て楽しそうだけど恥ずかしくないのかな?


「太田ーそろそろ実行委員の集まりの時間じゃね?」
「やべ、みょうじ行こうぜ」
『は?こ、このまま!?』
「着替えてる時間無いだろ?」
『でも』
「大丈夫だって!可愛いんだから。ほら行くぞ行くぞー」
『ちょ!太田君!?』


急いで着替えようとしたのに太田君はそれを許してくれなかった。
そればかりかメイド服を着たクラスメイト達についでにメイド喫茶の宣伝をしてこいと送り出されてしまう。
文化祭の準備で賑わう廊下を執事とメイド服の格好で歩いているので私達はかなり目立っている。
しかも太田君は私の腕を掴んだまんまだ。
逃げないようにされている気がする。
歩くたびに太田君へと誰かしらから声がかかりそれに笑顔で答えている。
宣伝は太田君だけでも充分だったよきっと。


実行委員会の集まりでも私達はとっても浮いていた。
足は何だかスースーするし視線は集まってくるしほんっと恥ずかしい。


「みょうじ?」
『夜久?』
「お、夜久だ。見てーみょうじ可愛くね?」
『太田君!立たせなくても』


背中から声を掛けられてびくっと震える。
一番見られたくない人が驚いたように後ろに立っていた。
なるべく目立たないようにって座ってたのに太田君が私の腕を掴んでわざわざ立たせる。
恥ずかしすぎて顔が上げられない。


「一から手作りとか凄くね?」
「それは、確かに凄いな」
「みょうじさんその格好可愛いー!ねぇ、夜久!二人にも写真頼んだら?」
「写真ってなんだよ?」
『え』
「うちのクラスはコンテストやるんだよー。当日のお客さんに投票してもらうの」
「ま、そんな感じ」
「カップル部門の参加者が足りてなくてさー。太田とみょうじさんお願い出来ないかな」
『え』


何その絶望的なお願い。
この格好で写真撮られなきゃいけないの?


「お、んじゃちゃんとそこに3年1組の執事メイド喫茶って書いてくれんの?」
「太田は相変わらず抜け目ないなぁ。それくらいならいいよ」
「それなら宣伝になるよな?な、みょうじ」
『う、うん』


夜久は口数も少いし目も合わせてくれない。
やっぱり似合ってないよね。
こんな短いスカートみっともないよね。
内心がっつり凹んで太田君達の会話をちゃんと聞かないまま返事をしてしまった。


「でも別に俺らそんなんじゃねぇよ?」
「数合わせになればいいからさ!それにこの先は分かんないでしょ?」
「それはみょうじさん次第じゃね?」
『そんな冗談言わないでよ太田君』
「だってさ」
「はいはい、太田残念でした。じゃあ撮るからねー」


実行委員会の会議が終わってから太田君と二人で写真を撮られる。
5組の女の子と夜久がいるけれどやっぱり最後まで目が合うことは無かった。
喋れなかったしみっともないとこ見せちゃったよね。
しかも他の男の子とコンテストのカップル部門に参加とか。
あぁ、やっぱりついていない。


それから文化祭当日まで私が夜久と話すことは無かった。
忙しかったのもあるしたまに目が合っても話し掛ける前にそらされてしまうのだ。
そのまま文化祭当日がやってきた。
私は午前の当番だから午後からは時間が空いている。
けれどあんまりその自由時間も欲しくなかった。


憂鬱な気分で午前中ひたすら自分のクラスで働く。
5組のコンテストの写真が良い宣伝になったのかそこそこに忙しい。
ひたすら雑念を飛ばすように働いた。


「みょうじ可愛い格好してんね」
『黒尾』
「俺お客さんなんですけどー」
『し、失礼しました。お帰りなさいませ御主人様』
「夜久、御主人様だって」
「黒尾うるせーな」
「なまえ先輩めっちゃ可愛いッスね!俺の好みです!」
『せっ!席に案内します』


突然のバレー部の訪問に死ぬほどびっくりした。心臓が止まるかと思ったし。
しかも黒尾だけならまだしも夜久がいるとか!聞いてない!
頭が真っ白になりながらも何とか接客をする。
灰羽君があれこれ褒めてくれているけどその内容すら私の頭に入って来なかった。


「みょうじ、ここ何時まで?」
『えっと12時までかな』
「誰かと予定ある?」
『無いよ』
「じゃその時間に迎えに来るから」
『え』
「ちゃんと待ってろよ」


帰り際に夜久が早口で私にだけ聞こえるように告げて去っていった。
え、嘘でしょ?夜久本気?


「みょうじー交代でいいよー。午前の当番お疲れ!」
『あ、じゃあ着替えても』
「それは駄目。宣伝にもなるから、ね?」
『う、はい』
「みょうじだけだよな。結局メイド服に慣れなかったの」
『太田君!だってスカート短いんだよ!』
「他のみんなはノリノリだったのにさ」
「太田も交代でいーよ」
「へーい。みょうじ、良かったら俺と」
『あのそれは』
「太田、みょうじは俺が先約」
「はいはい。わかったよ、んな怖い顔すんなって夜久」


当番が終わって廊下に出ると太田君が居た。
またもや私のことを頭のてっぺんから爪先まで見てニコニコしている。
人に見られるのは苦手なんだよ太田君。
流れで私を誘ってくれたんだろうけどそれを断る前に夜久が太田君と私の前に壁を作った。
「邪魔者なんで退散しまーす」と楽しそうに太田君は歩いていってしまう。
結局私をからかいたかっただけなんだよね。


「みょうじ、当番はもう終わった?」
『うん、今ちょうど終わったとこ』
「じゃあとりあえずちょっと来て」
『何処にいくの?』
「いいから」


夜久に腕を引かれて廊下をひたすら歩く。
何処に行くんだろ?前を歩いているから夜久の表情は見えない。


「中、入って」
『5組?』
「とりあえず今は誰もいねぇと思うから」


ズンズンと歩いて夜久に連れられて入ったのは3年5組の教室だった。
どうして教室?と言うかここにはコンテストの写真があるんじゃ。


『あれ?コンテストは?』
「うちは規模がでかくなりすぎて多目的ホールでやってんだよ」
『えぇとじゃあ何でここに』


夜久は自分の席で何やらがさごそとやっている。
結局視線は今日も一回も合わせてもらっていなくてせっかく二人きりなのに何だか居心地が悪く感じた。


「みょうじ」
『何ー?』
「これ腰に巻いてて」
『え』
「ちょっとその格好目に毒なんだよ」


学校指定のカーディガンを渡しながら夜久は気まずそうにポツリと呟いた。
相変わらず夜久の視線は私を捉えない。
あぁそっか。やっぱりこの格好みっともないよね。
誰にどれだけ褒めてもらえても夜久がこんな風だから私は周りからの褒め言葉全く信じられなかった。
言われるがままに夜久から渡されたカーディガンを腰へと巻く。
まだそんなに寒くも無いのに夜久は何でカーディガンなんて持ってるのだろう?
意外と寒がりなのかな?


『お見苦しいものを見せまして』
「はぁ?」
『やっぱりこんな格好みっともないよね。似合ってないだろうし』
「みょうじ何言ってんの」
『え、でもだからこれ貸してくれたんでしょ?』


久しぶりに夜久と視線が重なった。
その表情はどこか戸惑ってるようにも見える。
何で?私間違ったこと言ってないよね?
私の言葉に返事をしないまま夜久は視線を落とし大きく息を吐いた。


「違うよみょうじ」
『じゃあ何で?』
「俺がその格好他の男に見せたくなかったんだよ」
『え』
「あー、あのな実行委員会でその格好してきた日あっただろ?」
『あぁ、あの日。ごめんねびっくりしたよね。見苦』
「だから違うってみょうじ」
『でも』


違うって何が違うの夜久。
不思議に思って夜久を見てると再び視線が重なる。
さっきもだけど夜久と視線が合うだけでドキドキしてしまう。
この心臓をどうにか黙らせたいけれどそれは到底無理そうだった。


「確かにいきなりそんな格好してきたからすげぇびっくりした。でも見苦しいとかじゃなくてさ、俺はお前がすげぇ可愛いって思ったんだよ」
『夜久?』
「同時にお前を可愛いって簡単に言う太田にも腹立った。みょうじが可愛いのは前からなのに今更何言ってんだコイツって」
『それは』
「だから、俺はお前のこと去年から好きだったんだよみょうじ」
『嘘でしょ』


時折視線を彷徨わせながらも夜久はポツポツと話している。
私が夜久を好きだったように夜久が私を好きだったなんて信じられなかった。
だってそんな素振り全然無かったよ。


「嘘でわざわざ告白なんか俺がすると思うか?お前のためにそのカーディガンだって持ってきたんだぞ。まぁカーディガンは俺のためだけど」
『そうだけど、でも』
「俺の言うこと信じれない?」
『うぅん、夜久は嘘をつく人間じゃない』
「なら信じろよ。その反応だとやっぱり俺のこと何とも思ってないんだろうけど」


違うよ、夜久。
私も夜久のこと大好きなんだよ。
そうやって早く言いたいのに夜久からの告白で胸がいっぱいになってしまって想いが言葉にならない。


「じゃあ俺行くから。とりあえずその格好それ以上他のヤツに見せないで欲しい。俺のワガママだけどさ」


それだけ言うと夜久は教室を出て行こうとする。待って、違うんだよ夜久。
何とも思ってなくないんだよ。
言いたいことは沢山あるのになかなか言葉が出てこない。
どうしようこのままじゃ夜久が誤解したまま行ってしまう。
私が咄嗟に取れた行動は夜久の腕を掴むことだけだった。


「みょうじ?どうした?」
『ちが、違うの夜久』
「違うって何がだよ。カーディガンは俺の勝手なお願いだけどさ今日くらいそのお願い聞いてくんね?」
『そうじゃないの』
「だから何がだよ。カーディガンなんていらないとか言『私も夜久と同じ気持ちなの』


夜久が言い切る前に言葉を重ねる。
ちゃんと伝わったのだろうか?
けれど恥ずかしくて夜久の表情を確認することは出来ない。
私の気持ちが伝わるようにと掴んだ腕をきゅっと握る。
ここから私の気持ちが全部全部夜久に伝わればいいのに。そしたらきっと私がどれだけ夜久のこと好きだったか理解してくれるだろうに。


「みょうじそれって」
『私も夜久と同じ気持ちなの』


好きだなんて恥ずかしくて死にそうで言えない。だからせめて気持ちだけは伝わるように二度目はちゃんと夜久の目を見て伝えた。
あぁもう目を合わせるだけで恥ずかしくて死んじゃいそうだ。


「俺そんなことされたら勘違いするよみょうじ」
『や、夜久だからしていいよ。それでいいよ』


恥ずかしさに全身が沸騰しちゃいそうだ。
けれど私の気持ちはちゃんと分かってほしい。
私はこんなにも夜久のことが好きなんだから。


「みょうじ、それって俺と付き合ってくれんの?」
『う、…うん』
「マジか、俺てっきりみょうじは他に好きなやついると思ってた」
『そ、そんなことない!私だって去年から夜久のこと!』


夜久が変な勘違いをしてるから思わず自分の気持ちを口走ってしまった。
しまった!つい言っちゃったけどこれはかなり恥ずかしい。
あまりの気恥ずかしさに再び視線を足元へと落とす。


「そんな照れなくてもよくねぇ?」
『だって夜久が好きとかいきなり言うから』
「ほんとのこと。ついでにその格好ほんっと他の男には見せたくない。けど高校最後の文化祭だしなーそろそろ行くか」
『へ?』
「一緒に回ろうぜ。俺ももう仕事無いし」
『でも』
「さっきまでは誰にも見せたく無かったけど彼女なら別だよな」
『別?』
「俺の彼女可愛いだろって自慢したくなった。ほら、腹減ったし行くぞ」
『夜久?ちょっと待って!』
「嫌」


やんわりと私が掴んだ手を腕から離し私の手を引いて夜久は歩き出す。
彼女?私が夜久の彼女?
本当にいいのだろうか?
けれど隣の夜久はさっきと違いとても素敵な笑顔で居たのでもう疑うのは止めた。
周りからの「可愛いこ連れてんな」って言葉に「俺の彼女!」って張り切って言うのは止めてほしい。
恥ずかしくて嬉しくて死にそうだ。


誰そ彼様より
モナ様リクエスト。
同じ学年で違うクラス。
2年の時に同じクラスで夢主の片想い。
文化祭の実行委員で再びお近づきになる。とのリクエストでした。
長くなってしまった(゚Д゚≡゚Д゚)
夜久さんリクエスト来て良かったね!
リクエストありがとうございました!

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