Sunny Day Sunday(田島)

『あっついねー』
「すげぇあちい」
「も、猛暑だって田島君」
「お前らさ、そんなだらけてるけど次の英語のプリントやったわけ?」
「「『?』」」
「その顔は覚えてねーのな。英語のプリント前の授業で出ただろ」


こんな暑くちゃ授業にだって集中出来ないよ!
と休み時間にユウと三橋とだらだらしてたら泉に突っ込まれた。
英語のプリント?


『あ!』
「ゲ」
「……」
「三人してやってないのかよ」
『いいいい泉様!』
「そんなのスッカリ忘れてたよな!」
「うん、忘れてた」
「早く写しちゃいなよ」
『ありがと泉!』
「サンキュウ泉」
「泉君ありがとう」


逆に何で泉は覚えてたんだ!
余計なことを言うとプリント見せて貰えなくなるから言わないけど。
泉からありがたくプリントを受け取り三人でせっせと写させてもらうことにした。


『あ、ユウそこスペル間違ってる』
「どこだよ」
『ほらここ』
「bとdややこしいんだって!ついでにpとqも!」
「や、そこは中学の時に完璧にしとこうよ田島」
『ユウは英語苦手だもんね』
「体育以外苦手だろ」
「泉ひっでぇ!俺には三橋がいるからいいもんなー!」


ユウに肩を組まれて三橋がこくこく頷いてるけどそれ駄目だよ二人とも。
そんな二人を泉が呆れたように見つめている。
こんな関係が三年間続いているのだ。
泉も私も慣れたものだよね。


「んで椎名は明後日の試合応援にくるの?」
『甲子園の地区予選の決勝でしょ?行くに決まってるじゃん!』
「この暑いのによく応援に来るよなお前」
『ユウも三橋も泉も出るんだから行くに決まってるでしょー』
「そりゃ当たり前だよな」
『ねー』
「はいはい、相変わらず仲良しだよなお前ら」
「お前らもだろ?何言ってんだよコースケ!」
「突然名前呼びにすんの止めろ」
「いいじゃん!なぁ廉」
「うん、いつもは孝介君だよ?」
『そうだよ、コースケ何照れてるんだよ』
「お前らなぁ」


教室だと私達は何故か苗字で呼び合う癖がついていて(私とユウは腐れ縁だから違うけど)たまにこうやって突然名前で呼んで泉をからかうのが私とユウの密かな楽しみだった。
三橋は私達に釣られて呼ぶだけなんだけどね。


『ほんっとにあっつい』


二日後、埼玉の地区予選決勝の応援に私はやってきた。
浜田は相変わらず応援団長頑張ってるなぁ。
三塁側がうちの高校だから守ってる時のユウが近くで見れるのは良かったかもしれない。


「凛ー!」
『ユウ!試合頑張ってね!』
「おお!ゲンミツに頑張るからちゃんとそこで応援しとけな!」
『勿論!』


決勝の相手は宿敵美丞大狭山高校だ。
1年以来公式で試合することは無かったからドキドキする。
阿部君大丈夫かな?まぁあの阿部君だし大丈夫だよね。
あれ以来三橋との約束守って怪我することも無かったし。
ユウも三橋も泉もみんなみーんな頑張って!
あの時より確実に強くなってるはずだから大丈夫だよみんな!


試合は一進一退だった。
点を取っては取られの大接戦。
私も応援団のみんなと声が枯れるくらい応援した。
昔からずっと見てるけどやっぱり野球をしてる姿はユウが誰よりも一番カッコいい。
どのスポーツもそれこそ難なくこなしちゃうけれど野球をしてる時が一番キラキラしてるんだ。


「凛ちゃん!」
『あ、ルリちゃん!』
「間に合った!良かったー!」
『ルリちゃんは?試合だったんでしょ?』
「勿論勝ったよ!レンレンは?」
『今日もいつも通り楽しそうだよ』
「レンレンらしいなぁ」


この三年間で野球の応援を通じて仲良くなった三橋の従姉妹のルリちゃんが隣にやってきた。
群馬で自分の試合を終わらせてからここまで応援にやってくるとか本当に仲良しなんだなぁ。


「凛ちゃんは田島君と進展あった?」
『えぇ!?久しぶりに会ってそれ一番に聞くの?』
「だってレンレンに聞いてもよく分かんなかったし」
『三橋に聞いてもそりゃ駄目だよ』
「レンレン相変わらず恋愛には疎い感じなの?」
『阿部君と付き合ってんじゃないかって噂されるくらいだよ』
「何それ!面白い!」
『叶君に言ったら駄目だよルリちゃん』
「レンレン絶対に怒るよねそれ」


二人して試合から目を離さずに話を続ける。
試合の行方と言うより私はユウから目が離せないわけなんだけど。
これ絶対ルリちゃんは叶君に今の話するだろうな。三橋ごめんよ。


相手の攻撃が終わって次は西浦の攻撃だ。
さっきからベンチに戻るたびにユウが私に笑顔で手を振ってくれている。
あぁもうなんだよなんだよ!
暑くて暑くて溶けそうに暑いけどやっぱりきて良かった。


「相変わらず田島君とは仲良しそうだね凛ちゃん」
『うん、なんかねユウの笑顔見てるだけで幸せだ』
「ひゃー、聞いてるだけで熱いよ熱い!」
『ルリちゃんが聞いたんでしょ!』


試合は最後まで大接戦で目が離せなかった。
そうじゃなかったとしてもユウから目は離せなかったわけだけど。
その大接戦を制して西浦高校は甲子園の埼玉大会を優勝した。
ルリちゃんと手を取り合ってキャアキャアと喜んだ。
やっとだ、この三年間みんなが目指した甲子園優勝がやっと近付いてきた。


三塁側の応援団の所へ西浦ナインがやってきた。
みんな本当に嬉しそうだ。
花井君なんて今にも泣きそうになっている。
応援団側はみんながみんな口々に「おめでとう」と伝えている。
私もルリちゃんもそれに負けないようにみんなへとお祝いの言葉を伝えた。


「「「アザーッス!」」」


この三年間ただひたすらユウ達の応援をしてきて良かった。
みんな本当に良い笑顔をしている。
沖君と西広君は完全に泣いちゃってるなぁ。


「凛!俺約束守ったかんな!」
『約束?』
「約束って何凛ちゃん」
『え?なんだろ?』
「甲子園連れてったら結婚するって約束!俺ちゃーんと覚えてたからな!守れよ!」


え、何それ。それって小学校の時の約束じゃなかったっけ?
私の返事も聞かずにユウはみんなと行ってしまった。泉がこっちを見て今にも吹き出しそうだ。アイツ知ってたな。
隣のルリちゃんを始めとして周りの視線が私に突き刺さる。


「ヒュー!やったな椎名!」
「結婚の約束っていつしてたの凛ちゃん!」
『ち、違くて。小学校の時の話だから』
「え、んじゃお前今の告白断るのかよ」


浜田の一言により周りからの視線が更に私に突き刺さった。
いやあの、そうじゃなくてですね。


「凛ちゃんはずっと田島君のこと好きだったんだから断るわけないでしょ!」


ルリちゃん!?
何みんなの前でばらしてくれちゃってるんですか!?
その後はもう何を言ってもみんな聞いてくれなかった。
ユウのお母さんだって居たのにだ。


「悠一郎のことこれからも宜しくね」


だなんて言われてしまった。
何ならお母さん軍団の中にうちのお母さんまで居てかなり驚いた。
そうだ、うちのお母さんユウのお母さんと仲良しだった。
こんなの公開処刑もいいとこだよユウ!


「凛、怒ってんのか?」
『あんなとこで言わなくたって良かったじゃん!』
「俺、絶対にあっこで言うって決めてたし」
『うちのお母さんもユウのお母さんも居たし』
「話が早くていいだろ?こーゆーのは早い方がいいんだって!」
『ちゃんと責任取ってよ』
「あったり前だろ。何言ってんだお前」


今までそんな素振り全く無かった癖に突然何を言い出したのか。
しかも私すら忘れてた約束覚えてるとか。
あぁもう幸せだよ大好きだよユウのバカ!


「知らなかったの椎名だけな」
『何それ』
「ユウ君、告白はいつも幼馴染みが好きだからって…断ってたよ」
『は?』
「学校中知ってたぞ」
『何で私知らないの?』
「知らね」
「俺もそれは…」


私だけ知らなかったとか!
何それ何それ何それ!
私がバカみたいじゃないか!


「あ、もしかしてさ周りはお前らが付き合ってると思ってたんじゃね?」
「俺もそう思う」
『マジか』
「凛!帰んぞ!廉も今日はうちでメシな」
『はーい』
「分かった」
「コースケも食ってく?」
「んじゃ俺も行くー」


あれから私達に特に変化があったわけじゃない。
周りから公認のカップルになったってだけだ。
でも責任は取ってくれるらしいからまぁいいかな。


田島君2作目。
野球漫画が好きになったのは彼のおかげでブン太と夜久さんと並ぶくらいの好きキャラになりつつある。
最初に書くのは彼って決めてたのです。
2018/07/27




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