花火大会

『リエーフ、ここどこだろ?』
「どこだろな?」
『迷子?』
「夜久さん達がな!」
『困ったねぇ』
「帰る場所は一緒だし大丈夫だって」
『あ、確かに』


夜久さん達と約束して連れてきてもらった花火大会。お婆ちゃんがみんなの分の浴衣まで用意してくれてたから浴衣姿だ。川原沿いの屋台をみんなで楽しみながら歩いてたら沢山ヒトがいて気付いたらリエーフ以外みんな居なかった。


『電話してみる?』
「なんか電波が混線してるのか繋がらないんだって」
『待ち合わせ場所決めといたら良かったね』
「そうだよなぁ」
『あ、タコ焼き食べたい』
「とりあえずタコ焼き食べて考えればいいよな!」
『うん』


考えても黒尾さん達と合流出来るわけじゃないからとりあえずリエーフと腹拵えをすることにした。腹が減っては戦は出来ぬって言うし。


「すみません、タコ焼き1つください!」
「おー兄ちゃんイケメンだな」
「あざーっす!」
「隣の彼女も可愛いしオマケしてやっから!」
『彼女?』
「未来、オマケしてくれるって!良かったな!」
『オマケは嬉しい。ありがとうございます』
「んじゃこれで500円な」
『あ、リエーフ出すよ』
「俺が出すからいいって!未来はそれで他に好きなの買えばいいだろ?」
『んーじゃあありがとリエーフ』
「仲良しでいいねぇ。花火大会楽しんでな!」
「『はーい』」


八個入りのパックの中にタコ焼きが十個ギュウギュウ詰めになってる。ソースとマヨネーズの良い匂いがするー。


「未来ほれタコ焼き」
『熱くない?』
「あー猫舌だもんな」
『熱いと火傷する』
「んじゃちょっと待って」
『うん』


ヒト混みを避けて道から外れるとリエーフがタコ焼きのパックを開けてくれた。タコ焼きの良い匂いがするけれどこのまま食べたら絶対に火傷する。そしたら爪楊枝をタコ焼きに刺してリエーフがふうふうと冷ましてくれた。


「これくらいで大丈夫だろ」
『んー多分』
「んじゃ未来あーん」
『あーん』


口を開けたらリエーフがそっとタコ焼きを口の中に入れてくれる。ちょっとまだ熱いけど火傷するような熱さじゃないからはふはふしながらタコ焼きを噛みしめる。外はカリカリで中はトロトロだ。


『美味しい』
「熱さは?大丈夫だったか?」
『ん、平気』
「なら良かった。俺も食べよ!」


そうやって二人ではふはふしながらタコ焼きを食べてたら頭上でドーンと大きな音が鳴った。音に釣られて空を見上げたらそこには見たこともないくらい大きな花火が見える。


『花火?リエーフリエーフ!これが打上花火?』
「あ、そっか。未来は見たこと無かったんだっけ」
『凄いね!すっごい大きい!』


カラフルに空がピカピカしている。こんなに大きいとは思ってなくて本当にびっくりした。音は大きくてびっくりしたけどそんなこと気にならないくらい綺麗だ。


「未来、最後の1つとりあえず食べろよ」
『んー』
「食べてそろそろ夜久さん達探さないと」
『うん』


空を見上げながら口を開けたらリエーフが最後のタコ焼きを入れてくれた。程好く冷めてたからもうはふはふしなくても食べれる。これくらいふにゃふにゃの方が美味しいかも。今度タコ焼きを食べる時は冷ましてから食べよう。


「ほら行くぞ」
『空が凄い綺麗だよリエーフ』
「はいはい。俺は毎年見てるんだって」
『え、ズルい』
「また来年もみんなで見にくればいいだろ?」
『約束だよリエーフ?』
「黒尾さん達も来てくれるから大丈夫だって!」
『じゃあ来年も楽しみだねぇ』
「絶対にみんなで行こうな!」


空ばっかり見上げていたらリエーフが手を繋いでくれた。あ、リエーフと手繋ぐの初めてかもしれない。いつもは優生か走と繋ぐことが多いもんなぁ。


『リエーフの手大きいね?』
「普通だって!」
『そうかなぁ?優生より大きい気がする』
「芝山は小さいからだろー?俺アイツより大きいしな!」
『黒尾さんよりも大きい?』
「どうだろ?そんな変わんないってきっと。あ、でも夜久さんよりは大きいと思う!」
『それ夜久さんに直接言ったら駄目だよ』
「え?何で?」
『怒られるよきっと』
「背のことじゃないから平気平気!」


隣で凄い楽観的に笑ってるけど背も手も小さいって言ったら夜久さん怒りそうだけどなぁ。それでまたリエーフ蹴られるんだろなぁ。


「未来、林檎飴食べようぜ!」
『林檎飴?』
「ほらあれ」
『わ!ほんとに林檎の飴だ!』
「これ1つくたさい!」
『あ!リエーフ!私が出すよ!』
「別にこのくらい俺が」
『駄目!タコ焼きはさっきリエーフが払ったでしょ!今度は私が払うのー』
「じゃあ未来に買ってもらお」
『小さいのと大きいのどっちがいい?』
「小さいの二つでいいだろ」
『分かったー』


屋台のお姉さんにお金を払って小さい林檎飴を二つ買う。こんなに小さい林檎あるんだって呟いたら姫リンゴだって教えてくれた。普通に売ってたりするのかな?


『美味しいねリエーフ』
「なーんか食べたくなるんだよな林檎飴って。姉ちゃんが好きなんだけどさ」
『お姉さん?』
「今度試合の応援来るって言ってたから未来も会えるぞ」
『リエーフのお姉さんに会うの楽しみにしとく』
「おー、楽しみにしとけしとけ!」
「すみませーん!ちょっといいですか?」
「『?』」


屋台から離れて堤防で打上花火を眺めながら林檎飴を食べてたら突然話しかけられた。振り返ると知らないヒトが二人立っている。びっくりしすぎて咄嗟にリエーフの後ろに隠れてしまった。


「何ですか?」
「今、花火大会の取材をしていてカップルにお話を聞いて回ってたんですよー。おにーさん格好良いし彼女さんも可愛いんでちょっとお話いいですか?」
「あー未来はそういうんじゃないんですみません」


取材?取材って何?リエーフが人見知りじゃなくて良かった。花火大会の取材ならヒトより花火だと思うんだけどな。そろっとリエーフの後ろから顔を出すと男女二人組みたいだ。一人は大きなカメラを持っている。花火の写真でもきっと撮ったんだろな。


「わ、やっぱりお姉さんも可愛いね!」
『あ』
「あのコイツちょっと人見知りなんですみません」
「この二人絵になりますよ。写真だけでも欲しいです」
「写真だけでも撮らせてくれないかな?二人とも浴衣が似合ってるし」
「本当にそれで終わりますか?」
「本当はあれこれ取材したいとこだけど我慢しようかな?あ、雑誌に掲載されても大丈夫?」
「俺は別にいいっすけど。未来、お前は?」


女のヒトがこちらの顔を覗きこむから再びリエーフの後ろへと隠れる。学校とかバレーとからならだいぶ平気になったけど他はやっぱり苦手だ。ヒトは基本的に苦手だ。そんなことを思ってたら頭上から声がかけられた。ぽふぽふと私の頭をリエーフが触っている。


『写真だけ?』
「だって」
『それ終わったら黒尾さん達探しに行く?』
「花火終わっちゃったし帰った方が早いかもな」
『帰れるならいいよ』
「じゃ写真だけで」
「わ!二人ともありがとう!ちゃっちゃと撮るからね」


女のヒトの言われた通りにリエーフと写真を撮ってもらう。カメラのフラッシュがピカピカ眩しくて結局大変だった。後は名前だけ名乗ってリエーフが女のヒトから名刺をもらってそれで終わり。


「大丈夫か?」
『目がチカチカする』
「眩しかったもんなー」
『花火終わっちゃったね』
「また来年もみんなで来るから大丈夫だって!」
『うん、またみんなで来ようね』


帰るヒト混みに紛れて家までリエーフと歩く。ちゃんと優生みたいに手を繋いでくれるから良かった。迷子になったら大変だ。それにこのヒト混みを一人で歩くのは大変だし。


「あ!灰羽君と未来だ!」
『優生!ただいまー!』
「芝山ただいま!」
「夜久さん!未来と灰羽君帰って来ましたよ!」


林檎飴を舐めながらのんびりと歩いていたら途中で優生に遭遇した。直ぐそこの角を曲がったらもう家だ。こんなとこで優生何してんだろ?と思ったらスマホで夜久さんと話してる最中らしい。


「お前ら電話にも出ないで何やってんだ!」
「『ごめんなさい』」
「さっさと帰ってこいよ」
「『はい』」


スピーカーに切り替えた向こう側から夜久さんの怒鳴り声が聞こえて二人で身を竦める。えー!夜久さん怒ってるー!そのままブチッと電話が切れた。


『夜久さん怒ってる?』
「二人とも電話に出ないから心配してたんだよ。探しに行こうかって話が出てたんだから。それで俺と犬岡君が両角で待ってたわけ」
『ごめんー』
「電話とか全然気付かなかったな?」
『花火に夢中だった』
「みんなが探しに出る前で良かったよ」


優生が隣で走に電話をかけている。私達が見付かった報告みたいで丁度家の前で走とも合流出来た。


「一応電話したんだよな?」
『うん、した』
「でも混線してるみたいでかからなかったんだよ」
「俺達花火大会終わってからもかけたんだけどな」
『んーと林檎飴食べてた?』
「あ、後なんか取材とかで写真撮ってもらったよな!」
『うん』
「「はぁ?」」


帰ってからもリエーフと二人で夜久さんのお叱りを受けることになった。え、お爺ちゃんとお婆ちゃんもいるけど二人ともニコニコしてこっちを見てるだけだ。研磨達はゲームしてるし猛虎さん達もかき氷機でかき氷作ってるし。え、誰も助けてくれないの?正座だから足が痺れてきたよ?


「お!帰ってきたな不良娘ー」
『黒尾さん!』
「何で風呂上がりなんすか!」
「何でって風呂入った後だからだろ?」
「おい黒尾、まだ説教の最中だぞ」
「やっくんそろそろその辺にしといたら?」
「まだ全然言い足りない」
「夜久、次風呂お前の番だから行ってこいよ」
「海のが先だろ」
「まぁほら未来とリエーフには俺からも言っておくからさ」
「ちゃんと反省させとけよ」
「勿論」


黒尾さんが助けてくれると思ったのに駄目で落ち込んでいたら海さんが救いの手を差し伸べてくれた。良かったー!足がピリピリして歩けなくなるとこだったし。夜久さんはイライラ顔のままお風呂に行ってしまった。


『海さん、夜久さんどうしたら許してくれるかな?』
「激おこっすね夜久さん」
「今度からはちゃんと報連相覚えておきなよ二人とも」
『「ホウレン草?」』
「海が言ってるのは報告連絡相談の報連相な?」
『「ホウコクレンラクソウダン」』
「俺達もじーさんばーさんも心配したんだからな。次からはちゃんと連絡すること」
「二人とも分かった?」
『「はい」』


そうか、心配させちゃったのか。リエーフいるからいいと思ってたけどそれだけじゃ駄目らしい。確かに私とリエーフは一緒に居たけど黒尾さん達にはそれ分かんないもんね。だから余計に心配になったって海さんが教えてくれた。ちゃんと後から夜久さんにも謝らないとだな。


「んで、取材って何の取材だったんだよ」
『「花火?」』
「何でそこ疑問系なの二人とも」
「あ!俺ちゃんと名刺貰いました!」
「あ」
「へぇ、凄いね」
『「?」』
「東京の情報誌じゃん。しかも結構大きいとこ」
「本当に載ったら凄いね」


雑誌に載っただけで何が凄いんだろ?まぁいいか。夜久さんに謝るのは早い方がいいってリエーフとの話し合いで決まったからその後は廊下で正座して夜久さんの出待ちをした。二人で以後報連相には気を付けますって頭を下げたら夜久さんは渋々許してくれた。
珍しく渋々だったからまた日を改めてちゃんと謝ることにする。
それからみんなでかき氷を食べていつものように十人で寝ることになった。
今日もみんなで寝れるの嬉しい!お爺ちゃんお婆ちゃんも良かったって喜んでくれたし。
今日も本当に楽しかったなぁ。また来年みんなで花火見れますように。


久しぶりに音駒に帰ってきましたよ!合宿編長かったー!しばらくは音駒メインに戻ります!
2018/11/01
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