夜ご飯に寝そうになりながらも頑張って睡魔と戦って良かったと思う。
ワクワクするなぁ。
森然のヒトに言われた通りに三人ずつくじ引き通りに分かれてる最中だ。
優生大丈夫かな?って様子を伺ってたら菅原さんと一緒になれたみたいだからホッとした。
「未来何番?」
『7番だよ』
「じゃあ俺と一緒だね」
『京治と一緒なら良かった』
「赤葦!俺も7番!」
優生のことばっかり気にしてて自分が誰と一緒か確認して無かったから京治が聞いてくれて良かった。
そしたらタイミング良く西谷さんもやってきた。
「肝試し楽しみだな!」
『はい!』
「二人ともはしゃぎ過ぎないでよ」
「なんだよー!赤葦もせっかくだから楽しめって!な!」
『京治は肝試し嫌なの?』
「嫌と言うか嫌な予感がするから」
「赤葦って怖いの苦手なのか?」
「そういうんじゃなくて森然の部員プラス監督達で肝試しを計画したみたいだからちょっとね」
確かに京治の言う通りレクリエーションに対して監督達も張り切ってるみたいだよね。
三日目もそうだったし今日のお昼も審判しながら楽しんでるみたいだったし。
「それって良いことなんじゃないのか?」
『そうだよ京治、大丈夫だよ』
「まぁ俺達は大丈夫そうですけど」
小さく息を吐いて京治がちらりと他の組の様子を確認した。
その視線の先を追うと木兎さんと仁花ちゃんと研磨がいる。
わぁ、かなりちぐはぐな三人な気がする。
仁花ちゃん大丈夫かな?研磨がいるから大丈夫だよね。多分。
「木兎さんか?」
「まぁ孤爪がいるから大丈夫だとは思う」
『肝試しって何するの?』
「一ノ瀬そこからなのかよ」
『仁花ちゃんが肝試しよりお化け屋敷の方が怖いとは言ってた』
「暗い学校の中を回るだけだよ」
『そうなの?』
「ま、行ってみれば分かるだろ!」
そういえば西谷さんとこうやってちゃんとお話するの初めてかもしれない。
猛虎さんとは仲良くしてるみたいだけれど。
私も仲良くなれたらいいなぁ。
一番の組から順番に第一体育館からスタートして行く。
ぐるっと校舎を回って第三体育館へと辿り着いてゴールらしい。
『怖いかな?』
「一ノ瀬は怖いの苦手なのか?」
『多分大丈夫だと思います』
「んじゃ楽勝だな」
『はい』
「未来、西谷に対して余所余所しくない?」
『え』
「こんなもんじゃねーのか?」
『んーとまだあんまり話したことが無かったから』
「んじゃこれを期に仲良くしような!」
『わ、ありがとうございます』
どう西谷さんと仲良くなろうか考えてたら京治が助け舟を出してくれた。
これできっと仲良くなれるはずだ!
「西谷にも友達になってもらったら未来」
『いいのかな?』
「いきなり何言ってんだよ赤葦」
「未来って友達少ないんだよ。クラスだって犬岡くらいだよね?」
『うん』
「西谷は友達多そうだし仲良くなれたら未来も少しは成長出来るかと思ったから」
「お前友達少ないのか?」
『ちょっと人見知りだから。あ、でも烏野の一年のみんなとは仲良く出来てるはず』
京治が助け舟以上のことをしてる気がする。
友達少ないのは事実だけどいきなりそんなこと西谷さんに言わなくてもいいのに。
「んじゃ俺もその輪に入れろよ!な!」
『ありがとうございます』
「良かったね未来」
『うん、京治ありがとう』
「あ、だから赤葦は京治って呼んでるのか?」
『はい。研磨も友達だから研磨です』
「んじゃ俺のことも夕って呼んでもいいぞ」
「そしたら西谷も未来って呼んであげなよ」
「おー!そしたらもう俺達友達な!」
『はい!』
西谷さんは木兎さんや走と翔陽と同じ感じがする。
京治のおかげでまた友達が増えたから良かったのかもしれない。
太陽属性のヒト達にもだいぶ慣れてきた気がするし。
『ツッキーが夕はガリガリ君が好きって言ってた』
「月島?そうそう!ソーダ味が一番好きなんだよ!」
『私もガリガリくんがアイスの中で一番好き』
「お!なんだよ!同士か!ガリガリ君美味しいよなぁ!」
『シャリシャリしてて好きです』
「未来は何味が一番好きなんだ?」
『どれも好きだけど今だと梨味が一番かも』
「梨味も美味しいよなぁ!限定なのがほんと惜しい!」
『京治は?』
「そうだよ、お前は何味が好きなんだ?」
「俺はガリガリ君そんなに好きじゃない」
京治の言葉に二人して衝撃を受ける。
まさか世の中にガリガリ君が好きじゃないヒトがいるなんて!
二人で京治に何で好きじゃないのかを詰めよってたら「次は7番だよー」と森然のマネさんに呼ばれた。
まだ話終わってないのに。
「さ、二人とも行こう」
「まだ終わってないぞ赤葦!」
『そうだよ京治!』
「ガリガリ君効果なのかもう息ぴったりだね二人とも」
スタスタと歩く京治の後ろを夕と二人で着いていく。
こうなったら京治にもガリガリ君好きになってもらわないと!
「はーい、これが経路が乗ってる地図ね」
「分かりました」
「ちゃんとこの通りに行かないと駄目だよ。後チェックポイントにこのシールを貼ってきてね」
「ズルしたらバレるんだな」
「だからちゃーんと順路通り行かなきゃだよー」
『はーい』
経路が乗ってる校内の地図と7と書かれたシールを貰って体育館を三人で出る。
今日は珍しくなんだかムシムシしてる気がする。昨日まで夜涼しかったのになぁ。
「最初はどこに行くんだ?」
「本館一階の保健室だって」
『保健室?』
経路の地図を三人で覗きこむと最初は「保健室」までのルートが書かれている。
『何で保健室?』
「さぁ」
「七ヶ所も回るとこあるんだなー」
『あ、学校の七不思議?』
「あぁ、そうかもね」
「森然の七不思議?赤葦何か知ってるか?」
「全然」
『花子さんいるかな?』
「女子トイレもちゃんと経路に入ってんな!」
「花子さん居たら怖くない?」
「やっぱり赤葦怖いんだろー」
「こんな時間に小学生の女の子がもし女子トイレに居たら普通に怖いと思う」
『そうなの?じゃあ京治手を繋いでてあげるね』
「んじゃ俺も未来と手繋ぐ!」
「そういう問題じゃ」
『手繋いでたら怖くないよ』って京治に伝えたら渋々手を差し出してくれた。
え、何で渋々なんだろ?
反対の手を夕が握ってくれたから私は必然的に真ん中だ。
福永さんと猛虎さんと三人で繋いだ以来だ!
両側に誰かが居てくれるのって嬉しいな。
「歩きづらくない?」
『どうして?』
「なんだよ赤葦!照れてんのかよ!」
「西谷も未来に対して清水先輩と態度が全然違うよね」
「潔子さんはそりゃ友達じゃねーし」
『先輩だもんね』
「そうそれだよそれ!」
「もっと女子に免疫無いと思ってた」
「はぁ?んなわけねぇだろ」
『あ!保健室あった!』
一階の廊下を三人でお喋りしながら歩く。
何か起こるのかなと思ってたのにそんなことは全然無い。
ただ暗いだけだ。京治が地図を持って夕が懐中電灯を持ってくれている。
懐中電灯の灯りに照らされて保健室を見付けた。
「夜の保健室って何かありそうだな」
「西谷もやっぱり怖いんだ」
「雰囲気がちょっと」
『開けてみる!』
「未来マジか!」
「未来は怖いものとか無さそうだね」
『お爺ちゃんとお婆ちゃんが怒ったら怖いよ』
保健室の前に辿り着いて二人から手を離してそっとスライド式の扉に手をかける。
猫だし夜目がきくから暗いとこはあんまり怖くない。でも夕がいるからこれは言ったら駄目だよね。
カラカラと音を立ててゆっくりと扉が開いていく。
『真っ暗』
「だな」
「ですね」
ふと小さな声が聞こえた。
どこから聞こえるんだろ?キョロキョロと音の出所を探る。保健室の中から聞こえるのは確かなんだけど。
「未来どうしたの」
『何か聞こえるよ』
「赤葦ちょっと静かにしろよ」
三人で黙ると静寂の中にすすり泣く声が聞こえてくる。誰かが泣いてたのか。
『誰が泣いてるんだろ?』
「や、未来多分これそういうんじゃない」
「俺もそう思う」
『え?』
「シール貼ってさっさと次に行こうぜ」
「そうだね」
『泣いてるヒトはいいの』
「後で説明するから」
「あの奥の掲示板にチェックポイントが貼り付けてあるな」
なんだか外はムシムシしたのに保健室の中はひんやりしている。
冷房付いてるのかな?確認してみたけどエアコンは静かだった。
スタスタと夕が中に歩いてくからそれに京治と二人で続く。
「よしっ!んじゃ次行こうぜ」
「西谷は怖くなさそうだね」
「肝試しだろ?全然ヘーキ!」
『京治、手繋いでこ』
「俺も別に怖いわけじゃ」
「俺も繋ぐ繋ぐ!」
「はぁ」と京治から溜息が聞こえてきた気がする。え、何で?
優生みたいに怖いなら怖いって言えばいいのに。
「なぁ未来って誰と付き合ってんだ?」
『何がー?』
「西谷それ」
「昨日寝る時にそんな話になったんだよ。ちなみに潔子さんは駄目だからな赤葦」
「俺何にも言ってないけど」
「やっちゃんはフリーだぞ!」
『どういうこと?』
「だから未来は音駒の誰と付き合ってんのかって昨日話題になったんだよ」
『なるほど』
付き合うってなんだっけ?
あ、えぇと夜久さんに告白した先輩が言ってた気がする。
好きだから付き合ってって。
………あれ?
『付き合うって何?』
「マジか!」
「西谷、未来は恋愛にかなり疎いって黒尾さんが言ってたよ」
「そういうことな!じゃあ誰とも付き合ってないのかー」
『うん』
「烏野ではどんな話になったの」
「大地さんとスガさんと月島は居ないだろっつってた」
「あの三人は未来のことちゃんと分かってそうだからね」
『次どこ行くのー?』
「北館の理科室だって」
「あれだろ?人体模型が動くってやつだよな!」
『人体模型って動くの?』
「夜になると動くって話どこの学校にもねぇか?」
「まぁ、確かに」
本館の渡り廊下を通って北館へと向かう。
人体模型って夜になると動くのか。初耳だ。
あ、そうじゃなくて話の続き!
『付き合うって何?』
「そりゃえぇと…何て説明すればいいんだ赤葦?」
「俺に聞かれても」
『トクベツ同士ですよってこと?』
「まぁ多分そんな感じ」
『変なの』
「何でそう思ったの?」
『好きでトクベツならそれでいいんじゃないの?』
「周りに対してだろ」
『周り?』
「あぁそうかもね。周りに二人は付き合ってるからって宣言してるだけなのかも」
『どうして?』
「ほんっと疎いんだな未来って」
『あ、夕笑った!』
「悪い悪い!邪魔が入らないようにってことじゃね?」
『うーん』
「何か気に入らないの?」
『トクベツは一人だけって聞いたから付き合うって言わなくても邪魔は入らないと思う』
「みんながみんなそんなにシンプルじゃねぇんだって」
「例えば未来と西谷が付き合ってるとしてそれを周りに言ってなかったとするよね」
『うん』
「そしたら周りは二人が付き合ってることを知らないわけだから木兎さんが未来を好きになる可能性もあるわけ」
『そういうこと?』
「そうならないために付き合うってカタチが必要なんだろなー」
なるほど。確かにトクベツ同士好きならいいと思ったけど周りがそれを知らなくて好きになられたら大変だろな。
京治と夕の説明が分かりやすくて良かった。
「お!理科室発見!」
『人体模型動いてるかな?』
「や、人体模型は動かないよ」
『えぇ』
「夜になると動くって噂な!」
『なんだ』
「人体模型が動くのに期待するの未来くらいだよ」
「変わってんなお前」
ガラリと理科室の扉を夕が開ける。
変わってるのかな?あ、でもよく言われるからなぁ。やっぱり普通のヒトとは違うのかな?
ひょいと三人で中を覗く。暗くて見えづらいけど人体模型は隅にひっそり佇んでいた。
「んで、シールはどこに貼ればいいんだ?」
「黒板に何か貼ってあるよ西谷」
「お、じゃああれだな」
二人が黒板に向かっている。
京治に手を引かれるまま後ろを付いていくけど人体模型から目を離さなかった。
動くといいな人体模型。
そしたらお爺ちゃんに土産話が出来るのに。
じぃっと人体模型を見つめていたらゆっくりと移動してる気がする。
あれ?暗いし気のせいかな?
二人が黒板を見ながらあれこれ話してるけど私の耳にはもう届かなかった。
やっぱりゆっくりゆっくりこっちに移動してる気がする。
「未来?どうしたの?」
「具合でも悪いのか?」
『あれ』
「あれって何だよ。暗いし何も居ないだろ」
「そうだよ未来何を言っ……」
私が指差す方を夕が懐中電灯で照らした。
ギギィと身体を軋ませながら人体模型がやっぱり動いている。
やっぱり人体模型って動くんだ!
「赤葦あれ何だ?」
「知らない」
『動画撮ってもいいかな?』
「「駄目」」
「シール貼ったし行くか」
「そうだね。次に行こう」
『動画は?お爺ちゃんに見せたいのに』
「昼間にまた来ればいいだろ」
「そうしよう未来」
『え、昼間は人体模型動かないでしょ?』
「とりあえずまた後からな」
「まだ五ヶ所もあるからね」
夕が私の手を取ってぐいぐい引っ張るから付いていくしかなかった。
せっかく良い土産話が出来たと思ったのに。
名残惜しくて後ろを振り向くも京治が背中を押すから断念するしか無かった。
「あれはちょっとゾクゾクしたな」
「そうだね」
『動画ー』
「何で怖くないんだよ」
『え?人体模型って動くだけじゃないの?』
「確か動くだけだと思うけど」
『なら怖くないよ?』
私の言葉に夕が吹き出して京治は困ったような表情を浮かべている。
『変なこと言った?』
「未来ってほんと面白いな!」
「普通の女子なら卒倒してるとこなんだけどね」
「俺ちょっとやっちゃんが心配になったかも」
「孤爪がいるから大丈夫なはず」
『木兎さん大丈夫かな?』
「…孤爪が苦労しそうだね」
「確かに!んじゃ次に行こうぜ!」
動く人体模型を見る機会なんてあんまり無いから貴重なのになぁ。
何で卒倒しちゃうんだろ?
仁花ちゃん大丈夫かなぁ?
残り五ヶ所、今度は動画か写真撮れたらいいなぁ。
『あ!』
「どうした未来」
「どうしたの」
『スマホ禁止だったの忘れてた』
「なんだよそれ」
「あぁ、そういうことね」
『動画撮れない』
「そんな落ち込むなって。きっと話だけでもじーさん喜んでくれるぞ!」
『かなぁ?』
「未来の話すことだから大丈夫でしょ」
スマホ禁止なことをすっかり忘れてた。
てことはさっきの人体模型も結局動画撮れなかったのか。残念だ。
落ち込む私を二人が慰めてくれている。
京治は手を繋ぐのにもう何にも言わないでくれた。
初めてのノヤさん!
この三人は初めてだから楽しいです(≧∇≦)
長くなるから前編後編にしちゃいますよ( ・∀・)ノ