Three of dad

四日目のレクリエーション。今日はせっかく川遊びが出来ると思ったのに。
昨日のくしゃみだってきっと偶然だったのに。
二日目はプールだったから川遊び楽しみにしてたのに。
なのになのに結局、川遊びは夜久さんに駄目って言われてしまった。


「おい、黒尾大丈夫か?」
「何が?」
「未来ちゃんだよ」
「あー珍しくゴキゲンナナメだもんな」
「と言うか初めて見たぞあんな仏頂面」
「逆に新鮮だよな」


こうなったら学校に居残ってプールにこっそり入っちゃおうと思ったのに黒尾さんに川まで連れてこられた。
川べりで石に座って足だけ浸しているけど暑いものは暑い。
何やら私の後ろで黒尾さんと澤村さんと鷲尾さんが話している。
監視役だから三人は川に入らないらしい。
それも後から副主将の海さん達に交代するらしいからやっぱりズルい。
ちなみに監視役は主将って決まってたのに木兎さんは川について一番に飛び込んでいったので鷲尾さんが代わりになったみたい。


『黒尾さん』
「駄目です」
『まだ何にも言ってない』
「川には入れません」
『……』
「ほんとこの顔は新鮮だな」
「未来ちゃん」
『はい』
「今日無理してさ、本当に風邪ひいたら後から後悔するよ」
『う』
「またぶっ倒れたら夜久達も木兎達も心配すんぞ」
『ぐ』


澤村さんと鷲尾さんからの圧が凄い。
言ってることは確かに間違ってないけど。
でもでもでもでも明後日の川遊びは烏野と梟谷と一緒じゃないもん。
この3校で遊べるの今日だけだし。
黒尾さんが二人の後ろでニヤニヤとこっちを見て笑っている。
この状況を楽しんでるんだと思う。ズルい。


『烏野と梟谷のみんなと川遊びしたかった』
「可愛いこと言うね未来ちゃん」
「これはちょっと許可したくなるな」
「うちのこ可愛いでしょ?ね?ね?」
「確かにな」
『じゃあ!』
「「「それでも駄目」」」
『!?』


今は少しだけなら仕方無いって言ってくれる流れだと思ったのに違ったらしい。
即答で三人に却下されてしまった。


『じゃあ膝まで』
「転けるなよ」
「そこまでどんくさくないだろ」
「意外と運動神経良いって聞いたぞ」
「未来ちゃん、転けたらずぶ濡れだし泳ぐの許されると思ってないですか?」
『そ、そんなことないです』


少しだけそう思ったのは内緒。
心を読まれそうだからサッと黒尾さんから目をそらした。スルドい。


「図星みたいだな」
「一ノ瀬は分かりやすいなほんとに」
『そんなこと』
「さーむらさん」
「なんだ黒尾」
「未来の膝まで川遊び付き合ってくれませんか?」
「お前は?」
「うちの問題児達をちょっと見に」
「木兎もだな」
「あーじゃあうちのやつらも頼む」


川に深い部分があって飛び込めるようになってる所があってそこでリエーフ達が騒いでいる。
声を聞く限り木兎さんと翔陽達もいるみたいだ。
そっちに黒尾さんと鷲尾さんが向かっていった。
は!保護者が居なくなった!楽しむなら今な気がする!


『澤村さん!膝までいいですか?』
「膝までだぞ」
『はい!』


石から立ち上がってパシャパシャと浅瀬を歩く。うん、座ってるより全然涼しい。


『澤村さんは暑くないんですか?』
「そりゃ暑いよ」
『一緒に膝まで浸かればいいのに』
「俺は今は監視員だからな」
『……私の?』
「今はそういうことになるかな」
『なんだかお父さんみたいですね』
「あー。うちの部員はは手がかかるやつ多いからな」
『翔陽達?』
「日向に限らずな」
『ツッキー?』
「未来ちゃんの中で月島ってそんな感じなの?」
『じゃあ飛雄?』
「んー日向と影山と田中と西谷かな」
『なるほど』
「あ、大きな石の上は滑るから歩かないように」
『はい』


やっぱり澤村さんはお父さんぽいなぁ。
黒尾さんとはまた違うタイプのお父さんだ。
一歩下がって見てくれてる感じ?な気がする。


『東峰さんもお父さんぽいですね』
「あれは髭のせいだろ」
『はい』
「そこ認めちゃうんだ」
『いいお父さんになりそうです』
「嫁にも子供にも尻に敷かれそうだけどな」


尻に敷かれる?ん?
えぇと、恐妻家だっけな?
でもそんなんじゃなくて本当に良いお父さんになると思ったのだ。


「澤村」
「おー鷲尾どうしたんだ?」
「黒尾が俺より澤村のが適役だって言うからな。交代」
「あーうちのやつら何かやったのか?」
「そういうんじゃないけどな。澤村が居た方が抑止力になるってよ」
「お前のとこは木兎くらいだもんな」
「まぁな。じゃ、頼むな」
「分かった。んじゃ未来ちゃん足下気を付けてな」
『はい』


鷲尾さんが澤村さんと交代しにやってきた。
翔陽達何かしたのかな?


「澤村と何話してたんだ?」
『お父さんぽいですねって。あ、鷲尾さんもです』
「それって喜んでいいのか少し複雑だぞ」
『そうなんですか?』
「まぁいいか」
『翔陽達何かしたんですか?』
「や、そんなんじゃないぞ。ただ木兎を筆頭にはしゃぎすぎてるからな。木兎は赤葦に任せときゃいいけどって話なんだろ」
『翔陽達には澤村さんってことですね』
「そうだな」


リエーフと走と猛虎さんが一緒に楽しんでるんだろなぁ。もしかしたら福永さんも一緒かもしれない。
それを研磨が呆れたように見てて優生はハラハラしてて海さんは穏やかに見守ってるんだろう。
それで夜久さんが怒ってそれを黒尾さんが宥めるところまでは何となく想像出来た。


「飛び込む岩の上、風が吹いてて結構涼しかったぞ」
『ほんとですか?』
「飛び込まないよな?」
『夜久さんに怒られるの嫌だからしないです』
「怒ると怖そうだもんな」
『かなり』
「じゃあみんないるし行ってみるか」
『はい!』


川から出て鷲尾さんに着いていく。
思ってたより高そうだ。
みんなの楽しそうな声が聞こえる。


『楽しそうですね』
「結構高いからな」
『いいなぁ』
「一ノ瀬は明後日な。川は逃げないぞ」
『はい、楽しみにしときます』


川に飛び込む岩の上はちょうど日陰になってるみたいだった。
鷲尾さんの言ってた通り風が吹いてて涼しい。


「あ!未来!お前も飛び込むのか?」
「灰羽君!未来は今日は駄目だよ!」
『ここ涼しいよって鷲尾さんが教えてくれたから』
「一ノ瀬さん今日は川で泳げないのか」
「風邪が悪化したら困るでしょ」
「そんなの分かってるし!」


1年生は仁花ちゃん以外勢揃いだ。
賑やかだなぁ。
そろっと下を見てみようと岩の端まで行ってみる。


「未来、駄目だぞ」
『下を見るだけです。意外と高い』
「ここで涼むくらいなら許してもらえるだろ」
『鷲尾さんありがとうございます』
「未来ー!俺今日もう五回飛んだぞ!」
『木兎さん凄いですね』
「お前調子に乗って変な着水すんなよ」
「しねーって!大丈夫大丈夫!」


下をゆっくり覗いてみると思ってたより高かった。
ここから飛び込むのはちょっと勇気がいるかもしれない。後ろから黒尾さんが釘を刺してきた。分かってるもん。
岩の端に座ると鷲尾さんも隣に座ってくれた。
律儀に私の監視員をしてくれてるみたいだ。
既に五回も飛び込んでるとか木兎さん凄いなぁ。


「じゃあもっかい飛び込むかな!」
「木兎さん、そこ未来がいるからあっちからにしてください」
「大丈夫だろ!な?」
『はい』
「木兎さん!覚悟!」
「おー!いつでもかかってこい!って三人がかりは卑怯だぞお前ら!」


木兎さんの監視はやっぱり京治がしてるんだね。
直ぐに木兎さんの後から京治がやってきた。
別に隣で飛び込むくらい平気だと思うんだけどな。
不思議に思ってたら京治の後ろから翔陽とリエーフと走が顔を出した。
え、何その大きな水鉄砲!私も欲しい!


「ハンデですよ木兎さん!」
「今、いつでもいいって言ったっす!」
「ってことですみません!」
「ちょ!マジか!」
「さっき後ろから急襲したせいですね」
「あかぁーし!冷静に分析してないで助けろって!」
「俺は中立派なんですみません」


木兎さんに水が容赦なく発射される。
こっちにも水飛沫がかかるけど冷たくて気持ちいい。


「おい木兎、冷たいから早く飛び込め」
「鷲尾!お前も助けろっ!」
「俺も赤葦と一緒で中立な」
「ひでー」
『木兎さんファイトです!』
「未来ー!未来だけだぞそんなこと言ってくれるの!」


集中攻撃をされてて木兎さんがちょっと可哀想になってしまったから応援をした時だった。
あんまり周りが見えてなかったんだろう。木兎さんがバランスを崩したのだ。


『あ』
「あ?」
「げ」
『木兎さん危ないです!』


落ちていく木兎さんに咄嗟に手を伸ばしてしまった。
別に助けなくても下は川なのに咄嗟に身体が動いてしまったのだ。
私は岩の端に座ってるわけで木兎さんに手を伸ばすってことは私も川に落ちてしまう。
落ちると思った時には既に遅かった。
衝撃に備えてぎゅっと目を瞑る。


「危なっ!」
『……あれ?』


バシャンと大きな音がしたのに冷たくない。
恐る恐る目を開けると腰の辺りから抱きかかえられていた。
あの音は木兎さんが落ちた音らしい。


「木兎のために手を伸ばすとは思わなかったぞ」
『ご、ごめんなさい』
「鷲尾、未来がごめんな」
「落ちたら怒られるもんな」
『助かりました』
「ちゃんと見といて良かったわ」


鷲尾さんが助けてくれたおかげで川に落ちずに済んだ。やっぱり鷲尾さんもお父さんだなぁ。
リエーフ達が夜久さんと菅原さんに怒られている。
誰が相手だろうと場所を考えなさいとのこと。
確かに木兎さんだったから良かったもののちょっと危なかった気がする。
京治はどうしたんだろうと思ったら既に下に降りていて木兎さんに何やら話してるみたいだった。


「黒尾ーそろそろ交代すっか」
「あーもうそんな時間か」
「涼しいから泳いでくるといいよ」
「鷲尾ほんとありがとな」
「大したことはしてないぞ」
「未来、お前はもうここ禁止な」
『えっ!』
「さっきみたいなことになると危ないからね」
「ほらさっさと下に行くぞ」
「水分補給もそろそろしないとだべ」
『はい』


結局、最後はお母さんズに引き渡されてしまった。
鷲尾さんと澤村さんにお礼を言って歩いて下に向かう。
やっぱり飛び込んだ方が楽しそうだよね。
その後は川遊びが終わるまでお母さんズとマネージャーの皆さんと麦茶を飲みながら日陰でのんびりした。
明後日は絶対絶対川遊び出来ますように。


お母さんがきたから次はお父さんで。
梟谷のお父さんは木葉ってサイトさんも結構あるんですが私の中では断然鷲尾。
春高バレーの時に木兎がしょぼくれてその時に「俺達のが強いから」って言ったとこがいいよね!
2018/05/24


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