「大丈夫か未来?」
「プールに落ちたからなぁ」
「虎のせいだよ」
「お前ちゃんと髪の毛乾かさなかったからだろ」
午後の練習の休憩中。
未来が盛大にくしゃみをした。
おい、風邪引いたとか止めろよほんと。
まだ合宿折り返してもねえんだからな。
「未来ちゃーんちょっとごめんね」
『はい』
「クロ、熱はさすがに無いでしょ」
「一応確認な」
「俺のせいでごめんな未来」
『猛虎さんのせいじゃないですよ』
「黒尾、どうだ?」
「熱は無さそうだな」
「未来は念のため明日のレクリエーションは見学な」
『明日は川に行く予定だったのに!』
「残念だったな」
「未来の分まで川で遊んできてやるよ!」
『リエーフずるい!』
「未来、無理して風邪引いたら帰らされるよ」
『…はい』
結局止めの福永の一言にシュンとしながらも納得したようだった。
まぁ明日までは様子見だな。
「あーだから未来ちゃんあんなに元気無いのか」
「川に行くの楽しみにしてたからな」
「烏野とうちと音駒の1年で夕飯食べてますけど確かに静かですね」
「メシは食わせねえといけないんだけどな」
「夜久が居なくて大丈夫なのか?」
「芝山達が世話焼いてるみたいですね」
今日の夕飯は1年達で集まって食べるらしい。
リエーフが「俺が責任持って未来にちゃんと食べさせます!」って張り切って言ったから頼むことにした。
少しの不安もあったけど来年からは俺達は居ないのだ。
リエーフ達にも未来の世話はしてもらわないと。
おれはそれを少し遠目に赤葦とスガ君と見守っている。
「リエーフが責任持つって言ったんだけどな」
「その灰羽本人は日向と話に夢中になってるけどな」
「あー」
「芝山と犬岡が食べさせてますよ」
「まぁやっぱりそうなるよな」
「灰羽は木兎さんみたいですよね」
「あ!確かに。俺が引っ張ってくぜ願望が強い割に実際は引っ張られてる的な?」
「「あー」」
「俺上手いこと言ったろ?」
「実際リエーフ末っ子だしな」
「木兎さんは違いますよ」
「「!」」
三人で1年テーブルを見守りながら話に花が咲く。
木兎が末っ子じゃないってのは俺もスガ君も驚いた。
「つーか木兎は?自主練はいいのかよ」
「今日は終わるの意外と早かったんですよ」
「ここにも居ないよな」
「どうせ黒尾とコンビニだろ」
「トランプを買いに行くって言ってました」
「あーこないだ主将会議でトランプしたいって言ってたよ木兎」
「じゃあ今日辺りやるんだろな。頑張れよお二人さん」
「「………」」
「俺は主将でも副主将でもないし」
「夜久さん、たまには海さんと交代してもいいと思いますよ?」
「そうだぞ夜久ー」
「絶対に嫌だ!木兎と黒尾が居たら終わらないだろ!」
それで気付いたら朝になってんだぞ!
絶対に参加したくない。
そういうのは海のがさらっと切り上げれるはずだ。
「未来ちゃんの横がやっちゃんと山口になってんな」
「他のみんなは食べ終わったみたいですね」
「つーかリエーフと日向と影山がいねーな」
「月島は面倒臭そうだなぁ」
「でも付き合いそこまで悪くないですよね月島って」
「そうか?」
「木兎さんのスパイク練に付き合ってくれますしこないだも未来に付き合って散歩行ってましたよね」
「あぁ、確かに」
「月島はあぁ見えてもちゃんとしてんだぞー」
未来の両隣はやっちゃんと山口に変わっていた。その両脇に芝山と犬岡がいる。
対面に月島と尾長が座ってる状態だ。
あいつら未来に付き合ってくれてるんだなぁ。
ちゃんと友達が増えてるようで俺も嬉しい。
「赤葦はいいよなぁ」
「何がですか?」
「手間がかかるの木兎だけだろ?」
「まぁ」
「尾長とか木兎よりしっかりしてそうだもんなぁ」
「お二人は大変そうですね」
「うちは手間がかからないやつのが少ない」
「うちは4バカプラスへなちょこくらいかなぁ?」
「じゃあ夜久さんが一番大変ですね」
「それ嬉しくねえな」
「まぁまぁ夜久が一番面倒見が良いってことだろ?」
「は?」
「俺は菅原さんの方が面倒見が良いと思いますけど」
「俺もそっちー」
手間がかかる部員ばかりだけど俺は別に面倒見が良いつもりは全く無い。
未来に関してはそんな感じだけど他の部員に対してはむしろスパルタだ。
赤葦も木兎の面倒を見てると言うよりは上手く操ってるようにみえるし。
「いやいやんなことねーべ」
「スガ君には負けるって」
「俺も夜久さんに同感です」
「そうか?」
「絶対にスガ君が一番面倒見が良いぞ」
「そうですよ」
俺と赤葦の言葉にスガ君は首を捻っている。
まぁ自覚は無いよな。
面倒見が良い悪いってのは性格だろうし。
褒められた時に謙遜するのもスガ君らしいと思う。
『夜久さーん』
「お、どうした未来」
『ご飯全部食べました!』
「お、未来ちゃん頑張ったな!」
「未来ほんとに?」
「菅原さんありがとうございます。京治酷い。ちゃんと全部食べたよ」
「未来ちゃんは全部完食しましたであります!」
「やっちゃんがそう言うなら本当か」
「はい!」
「ちゃんと全部食べたのなら頑張ったね」
『うん、頑張りが無駄にならないように頑張って食べた!』
「ん?」
「未来それどういう意味?」
『?』
「あぁ、一日練習を頑張ってもご飯を食べなかったせいでバテたら意味が無いからって意味な」
「「あぁ」」
いつの間にか未来は夕飯を完食したらしい。
やっちゃんが証人になってくれたから本当に頑張ったんだろう。
赤葦に褒められて嬉しそうにはにかんでいる。
「今からどうするんだ?」
『皆でお散歩してくる!』
「皆って十人で?」
「影山君と日向と灰羽君は行方不明であります!」
「やっちゃんそんな緊張しなくても」
「ひゃい!…あ!いやでも!」
『夜久さん笑いすぎです』
「何か変でしたか?」
「大丈夫だよ。じゃあやっちゃんと山口と月島と」
「尾長と」
「未来と犬岡と芝山で行くんだな?」
『うん』
やっちゃんの俺達に対する話し方が可愛くてつい笑ってしまった。
そんなに緊張しなくてもよくね?
つーか月島と尾長と芝山以外が心配なんだけど大丈夫か?
三人で後四人ちゃんと見てられるかすげえ心配なんだけど俺。
これに行方不明の三人加わったらもっと心配だ。
「未来ー!灰羽君達も散歩行くってー!」
『ほんと?楽しみだねえ!』
「では行って参ります!」
食堂の入口から芝山が顔を覗かせた。
やっちゃんがキリッと俺達に向かって敬礼してるけどリエーフ達も行くんだよな?
それって本当に大丈夫なのか?
意気揚々と未来とやっちゃんは出てったけど。
「なぁどう思う?」
「いやー心配だよね」
「そうですね。安定要素より不安要素の方が多いです」
「だよな」
「まだ主将会議まで時間もあるし俺達も付き合うべ」
「そうですね。迷子になられても面倒ですから」
「スガ君と赤葦って俺より優しいよなぁ」
「夜久何言ってんの?」
「もしかして俺達が行くなら自分は行かなくてもいいかなとか少しだけ考えました?」
「少しだけ」
「夜久も来ないと。言い出しっぺだぞ」
「拒否権無いですよ」
「や、分かってるって!」
二人に急かされたので腰を上げることにした。
俺よりスガ君と赤葦のがよっぽどお母さんしてるよなぁ。
これだけ人数いるのなら俺は芝山に未来のこと丸投げしてたかもしれない。
俺達も行くと未来達に伝えたら月島と尾長はホッとしてるようだった。
やっぱり付き合い良いよな月島って。
せっかくだから帰りにアイスを買ってやろう。
結局全員分のアイスを俺が奢ることになった。
俺とスガ君で男気ジャンケンをしたら見事に勝ってしまったのだ。
ちなみに未来のは無し。
明日元気になってたら倍買ってやる約束をした。
くしゃみしてるのにアイスを食べたがるなよ。
結局周りから一口ずつ恵んで貰ってたけど。
一人分以上になりそうなとこでストップをかけておいた。
俺が禁止した意味なくなるじゃねーか!
明日にはくしゃみ治まってるといいけどなぁ。
ずっと書きたかったおかんの会!やっぱりスガさんが一番だと思うんだよね!それか茂庭さん!岩ちゃんと夜久さんはスパルタおかんだもんねきっと。おとんの会もそのうち書きたいなぁ。
2018/05/01