レクリエーション会議

『レクリエーション?』
「そ。夏の合宿は一週間あるからな」
「バレーの息抜きみたいなものだな」
「それで各校でレクリエーションを考えなきゃいけないんだよ」
「面白そうっすね!」
「今からその話し合いな」


レクリエーションって何だろ?
イマイチピンとこない。
皆で遊ぶってことでいいのかな?


「未来、毎日じゃ無いけどレクリエーションの時間があるんだよ。それで各校が考えてきたレクで皆で息抜きがてら親睦を深めましょうって感じかな」
『バレー以外で皆で遊びましょってこと?』
「簡単に言ったらそんな感じかな」


首を捻って考えていたら研磨が教えてくれた。
とりあえず自分の考えてたことで正解だったみたいだ。


「んでお前らなんかやりたいことある?」
「オレ!肝試しやりたいっす!」
「リエーフなかなか面白いこと言うな」
「楽しそうじゃないっすか?」
「そうなんだけどな、肝試しは森然が提案してきてるんだよなー」
「森然で合宿だからまぁ妥当だね」
「肝試しはじゃあ無理そうっすね」


リエーフが張り切って提案した肝試しはサクッと黒尾さん達に却下されていた。
森然が肝試しをやるからって言ってたけどオバケ屋敷みたいなものかな?
優生の表情がさっと暗くなった様な気がする。
オバケ屋敷苦手って言ってたもんなぁ。
肝試しもきっと苦手なんだろな。
そしたらまた手を繋いで一緒に回ってあげよう。


「未来」
『はい』
「お前は?何か無いの?」
『んー』


肝試しのことしか考えてなかったとは言えない。
七月の終わりだから暑いよね?
うーん。暑いのは嫌だし涼みたいよね。


『泳ぎたい』
「埼玉は海無いぞ」
「川も無いんですか?」
「どうだっけなー?」
『涼みたい』
「近くにあればいいだろうけどな」
「ちょっと確認してみるわ」
『お祭り行きたい』
「未来、それは合宿終わってからでいいでしょ」
「ちょうど帰ってきた次の日が花火大会だよ」
『ほんと?』
「じーさんが遅くなるから泊まりに来いって言ってたわ」
『また皆?』
「良かったな」
『はい!』


またもや皆でお泊まりだ。
しかも今度はお爺ちゃんお婆ちゃんもいる。
賑やかできっと楽しいんだろなぁ。
話は脱線した気がするけど気分はなんだかすっきりしてる。


「おー何か裏山ちょっと行くと軽く泳げる川があるらしいぞ」
「さすが田舎だな」
『泳げる?』
「そこそこ深いみたいだからな」
「んじゃ俺達は川で泳ぐってことで!」
「手抜き感あるけどま、いいか」
「ちゃんと水着持ってこいよ」
『はーい』
「他校にも知らせておくわ」
「川の水って冷たくて気持ち良いだろな」
『楽しみです!』


まさかの涼みたいって要望まで通ってしまった。
一週間の真ん中ら辺だといいなぁ。
川で泳ぐなんて初めてかもしれない。


「未来お前って泳げるの?」
『大丈夫ですよー』
「意外と運動神経悪く無いもんな」
『プール教室通ったもん』


小さい頃は水が大の苦手だったのだ。
きっと猫の名残だったんだと思う。
苦手なままじゃ良くないからってお婆ちゃんにプール教室に通わされたんだった。
泳げるようになるまでどれだけ嫌がっても泣いても連れてかれたもんなぁ。


「それなら大丈夫だな」
「溺れたりするなよ」
『しませんよ』


夜久さんは心配性だなぁ。
溺れる心配は無いはずだ。
最近泳いで無いけど…きっと大丈夫なはずだ。
深いところには行かないでおこう。
釘を刺されたのに溺れたりしたら確実に怒られてしまう。
合宿も川も肝試しも楽しみだな。


「他の学校は?何するんすか?」
「それは内緒な」
「黒尾さんズルいっすよ!」
「肝試しは被ったから言うしかなかったけどこういのは当日知った方が楽しいだろ?」
「海さんは知らないんですか?」
「黒尾だけしか知らないよ」
『夜久さんも?』
「俺にも一切教えてくんないんだよコイツ」
「主将のグループLINEでしか話さないことになってんの」


走の何気無い一言を黒尾さんがさらっと受け流している。
森然は肝試しって聞いたけど他の高校は何をするんだろ?
翔陽と渉に聞いたら分かるかな?


「ちなみに聞いても多分教えてくれないからな」
「言うなってことになってるんだな」
「烏野のチビちゃんとかうっかり口が滑りそうだよなぁ」
「だから聞いてやるなよ」
「「「っす」」」
『じゃあ当日の楽しみにしとく』
「それが一番だな」
「じゃ、話し合いは終わりな」
「練習戻るぞー」


川で泳ぐってのがレクリエーションになるのか謎だけど森然のヒトに確認したってことはOKを貰ったってことなんだよね?
あ、新しい水着を買ってもらわないと。
中学のはさすがにキツい気がする。


「未来、泳ぐとき水着の上にTシャツ着なよ」
『何で?』
「日焼けするよ」
『あぁ、そうか。日焼けはやだなぁ』
「だからちゃんと泳ぐとき用のTシャツも持ってきなよ」
『うん、分かった。研磨ありがと』
「別に」
「未来のために言ったわけじゃ無いもんな」
「クロ、煩いよ」
『何が?』


今日は黒尾さんと研磨が一緒に帰ってくれる日だ。
大体いつも日替わりなのだ。
そろそろ別に一人で帰れると思うんだけどな。


『私、一人でも帰れるよ?』
「急に何を言うのさ」
「親離れしたいんだろきっと」
『黒尾さん笑わないでくださいよ』
「未来が一人で帰れないと思ってるわけじゃないよ」
『え?違うの?』
「単に心配なだけだな」
『それって一人で帰れないと思ってるんじゃないの?』
「女の子は色々危ないことが多いんですよ」
『うちは直ぐだよ?』
「もし送らなくて何かあった時に後悔したくないから」
「直ぐ近くだから送っていきやすいしな」
『うーん』
「一人で帰るより楽しいだろ」
『それはそうだけど』
「未来が嫌だって言った所で一人では帰さないよきっと」


研磨が珍しいことを言ってる気がする。
最初は誰よりも送るの面倒だと思ってた気がするのにな。


『大事にされてる?』
「そうですね。未来ちゃんはうちの大事なマネージャーですからね」
「否定はしないよ」


そうか、大事にされるってこういうことなんだな。
お爺ちゃんお婆ちゃん以外から大事にされたことって初めてかもしれない。
それがなんだかくすぐったい。


『嬉しいです』
「良かったな」
「あ」
『どうしたの研磨』
「お婆さんからアップルパイあるよって連絡きた」
「研磨も良かったな」
『ちょっと寄ってく?』
「うん。アップルパイ食べたい」


いつもと同じ帰り道。
でも今日はいつもとなんだか少しだけ違う帰り道だ。
何かを発見するたびに世界が新しくなってく気がする。


誰かが居なくならなくても寂しいって気持ちになるってことだったり。
誰かに大事にされるってことがくすぐったいけど嬉しかったり。
皆で遊びに行ったのが楽しくて幸せってこういう気持ちなのかなって思えたり。
そのたびに世界が新しくなっていく。


こうやって少しずつ成長していけてることが嬉しい。
レンアイはまだまだ謎だけど明日からもこうやって変わっていけたらいいな。


2018/03/14
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