二日目

「未来ちゃん、未来ちゃん」
『んー』
「起きないと夜久さんに怒られちゃうよ」
『それは困る』


私を揺する気配がして意識が覚醒する。
夜久さんに怒られるのは本当に困る。
普段は優しいけど夜久さんは怒ったら怖い。
上半身を起こすと枕元に仁花ちゃんが居た。


『仁花ちゃんおはよう』
「おはよう。夜久さんから早く準備しなさいって伝言だよ」
『分かった』


そう言えば昨日はお風呂上がって研磨の横に座ってから記憶が無い。
ちゃんと戻って来れたのかな?


「未来ちゃんおはよう〜」
『白福先輩おはようございます』
「よく眠れた?」
『かなり。部屋に戻った記憶無いけど』
「それはね〜赤葦が運んできたんだよ」
『京治が?』
「孤爪君に頼まれたんだって」


顔を洗いに行ったら白福先輩が居た。
そうか、だから戻った記憶が無かったんだ。
京治にお礼言わなくちゃなぁ。
着替えて食堂に行くと賑わっている。
どこに座ろうかな?
音駒の皆は奥に座っててまだきっと気付いてない。


「未来ちゃん!ここ空いてるよー!」
『ありがとう』


朝から昨日のお小言を貰いたくなかったのでこそっと仁花ちゃんのお誘いを受けて烏野のメンバーが集まってる所にお邪魔させてもらうことにした。
翔陽とまだ話してないしいいよね。


「未来ちゃん?音駒のテーブル行かなくて大丈夫なの?」
『昨日、部屋に戻らずに卓球のとこで寝ちゃったから』
「怒られちゃうかもしれないからってことかな?」
「梟谷の赤葦さんが部屋まで運んできたもんね」
「それってあのすげえセッターか!?」


菅原さんと仁花ちゃんと話してたら京治の名前に反応した影山君と目があった。
食い付く勢いにちょっと押される。


『京治のこと?』
「梟谷のセッターだろ?」
『うん』
「あの人すげえよな!」
『多分?』
「王様、未来は分かってなさそうだよ」
『あ、ツッキー』
「ツッキー!?」
「日向、何か文句あるの?」
「や、別に」


烏野も音駒と同じで朝からワイワイしてるなぁ。
うちと似てるのかな?
遠くで猛虎さんが大声を出してそれを黒尾さんが「煩い」と一蹴してるのが聞こえる。


「未来?お前こんなとこで何やってんの?」
『夜久さんおはようございます。朝ご飯食べてますよ』
「ちゃんと全部食べろよ。後」
『京治にちゃんとお礼言う?』
「分かってんなら良し」
「夜久君、ちゃんと俺が全部食べるか見とくから」
「スガ君なら大丈夫か。んじゃ宜しく」


怒られるかなって身構えたけど大丈夫そうだった。
私の気にしすぎだったんだなきっと。
全部食べろと改めて釘を刺されたけど昨日のこともあるし言われなくてもちゃんと食べたよ。
夜久さんは既に朝ごはんを食べ終わったみたいでそれだけ言うと食堂から出ていった。


『翔陽は元気してた?』
「おれはずっと元気だぞ」
「呆れるくらいにね」
「月島!いちいちうっせーな!」
「ツッキーいちいち突っ込まなくても」
『補習は?』
「な、何とか」
「再補習とか止めてよ二人とも」
「「コイツと一緒にすんな!」」
『おお、息ぴったりですね』
「未来ちゃんそれ言っちゃうの?」


仲悪そうに見えてやっぱり仲良しなんだなぁ。
山口君と影山君の名前を聞いてそれぞれの名前で呼んでいいか聞いたら二人とも戸惑いながらも了承してくれた。
友達が増えたみたいで嬉しいなぁ。
ついでに菅原さんはスガさんで主将のヒトは大地さんで髭のヒトが旭さんってのも教えてもらった。
2年生は別テーブルだったみたい。
朝ごはんを何とか全部食べ終えて準備へと向かう。
あ!京治にお礼も言いに行かなくちゃ。
バタバタと準備を終わらせて梟谷の皆の所へと向かう。


『おはようございます』
「未来ー!おはよー!」
「バテずに意外と頑張ってんな」
『はい』


鷲尾さんがポンポンと頭を撫でてくれた。
うん、やっぱり海さんみたいだな。
お父さんみたいな感じ?
烏野だったらきっと大地さんがきっとそんな感じだ。
部活ってどこも家族みたいになってるんだなぁ。


『京治、昨日はありがとう』
「孤爪に頼まれただけだから大丈夫」
『気付いたら記憶無かった』
「爆睡してたからね」
『お礼だけ伝えに来たの』
「ちゃんとカプセル飲んだ?」
『あ、今から飲む』
「忘れたら駄目だよ」


京治に昨日のお礼を伝えるとカプセルのことだけ小声で指摘された。
すっかり忘れてた。
音駒の所まで戻ってこっそりとカプセルを飲んだ。
今日帰るの遅くなるって聞いたもんね。
京治が言ってくれて良かった。


『リエーフやっぱり手足長くていいねぇ』
「日向の速攻止めたもんな!」
「灰羽君、凄いなぁ」


只今、音駒と烏野の試合中。
翔陽達が入っての烏野との試合はこれが最初だ。
昨日は2セットとも勝てたけど今日はどうかな?
皆調子良さそうだし大丈夫かな?
正反対に烏野の空気は途中からなんだかピリピリし始めた。
どうしたんだろ?昨日はそんなことなかったのにな。
うちとの試合から翔陽が試合に出ることはなかったみたいだった。


『翔陽ーなんかあったの?』
「あ、一ノ瀬さん」
『烏野ピリピリしてる?』
「そんなこと、多分無い。…少しだけ。でもきっと何とかなる」
『大丈夫?』
「おれもっと上手くなりたいから。まだどうしていいのか分かんないけど大丈夫!」
『そうか』
「ぜってえに負けねえからな!」
「次も止めてやる!」
「負けねーし!」
『じゃあまたね』
「またな!」


リエーフ!翔陽と話してたのに!
烏野が帰るって聞いたから翔陽と話したかったのにリエーフが横入りしてきたから話が終わってしまったじゃないか。
でもあの感じなら大丈夫なのかな?


「未来ちゃーん、敵の心配してどうするのさ」
『黒尾さん?』
「アイツらなら心配ねーよ」
『うん』
「次は一週間合宿だからな。お前も体力つけとけよ」
『頑張ります』
「んじゃ俺達は試合に戻りますよ」
『はい』


烏野が帰っても私達はもう少し練習がある。
翔陽が大丈夫って言うならきっと大丈夫なんだろう。
後少し練習頑張らなくちゃ。


「未来ー何してんの?」
『あ、マネさん達とグループLINE作ったの。後烏野の1年生の皆とも』
「色々成長してんなぁ」
『友達増えた!』
「んじゃ梟谷グループ+烏野の1年でも作ろうぜ!」
『楽しそうだね』
「未来が烏野メンバー招待しろよ」
『分かった』


帰りのバスの中、黒尾さん達先輩は静かだから寝てるんだと思う。
起きてるのは1年の私達だけ。
隣の優生と話してたら通路の向こうのリエーフと走が話に入ってきた。
その流れでリエーフがグループLINEを作ってくれたからさくさくと皆を招待していく。
渉は走が招待してるみたいだった。
きっとこないだラーメン食べに行った時仲良くなったんだろう。


ピコンとメッセージの通知が届いた。
ツッキーから個人メッセージだ。


ツッキー:それって参加しなくちゃ駄目なの?

未来:うん

ツッキー:面倒なんだけど

未来:ツッキー以外皆入ったよ

ツッキー:考えとく

未来:分かった


ツッキーは入りたくないみたいだ。
何でだろ?友達沢山の方がきっと楽しいのになぁ。
ツッキーみたいな人初めてかもしれない。


「未来ー月島はー?」
『面倒だって』
「月島って烏野の眼鏡?」
「灰羽君、眼鏡って」
「事実だろ?んであのそばかすが山口だよな?」
『そうだよ』
「ま、面倒なら別にいいか」
「強制は出来ないからね」
『ツッキーって不思議』
「月島?」
「変わってるとかじゃなくて多分ああいう性格なんだよ月島は」
『そうなの?』
「そういう人もいるよ未来」


そうなのか。
じゃあきっとあの不機嫌顔もいつものことなのかな?
今度仁花ちゃんにこっそり聞いてみよう。
1年のグループLINEはツッキー以外が入ったけど何故か翔陽と飛雄は発言が無かった。


次の合宿も楽しみだな。
夏休みに入るし。
花火大会も皆で行く約束したし。
体調崩さない様に気を付けなくちゃ。


2018.03.06
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