音駒のお母さん

「夜久さーん!お菓子買ってもいいっすかー?」
「買いすぎるなよ!」
『夜久さん!アイス食べたいアイス!』
「未来、溶けるからアイスはまた夜に買いに行くぞ」
「夜久さん!焼きとり!焼きとりも焼いていいですか?」
「ウインナーにしとけ」
「夜久さん!」
「どうした芝山?」
「未来が居なくなりました」
「さっきまでそこに居ただろ!?」


だから俺は2年がいいって黒尾に言ったんだよ。
アイツぜってー面白がって1年四人を荷物持ちにしたんだと思う。
未来が行きそうなところか。


「俺が探してくるからお前らはこの海のメモ通りに籠にいれてって」
「「「っす!」」」


芝山と犬岡がいりゃ大丈夫だろ。
リエーフはお菓子大量に籠に入れるんだろなぁ。
買いすぎるなよって言ったのにだ。
つーか未来どこに行ったんだ?
スーパーはさほど広くはない。


「未来!お前何やってんだよ」
『夜久さん!花火!花火が売ってますよ!』
「はいはい。分かったから後でな」
『え?』
「先に食料品買わないとだろ?」
『あ!』
「アイス買えねぇからって興味無くしてふらふらしてたんだろ」
『す、すみません』
「ほら行くぞ。後から花火もちゃんと買ってやるから」
『ありがとうございます!』
「ほら行くぞ」


食料品売場には居ないと思って出た所に未来がちょうど居た。
花火フェアと書いてある一画であちらこちらを楽しそうに眺めている。
直ぐ見付かったから良かったもののいちいち居なくなられるのは面倒だ。
未来の手を引いて食料品売場へと戻った。


「お前らは何をやってたわけ?」
「灰羽君がお菓子売場から動いてくれなくて」
「芝山!それ言うなよ!」
「リエーフ、何でカートの下の籠がお菓子で一杯になってるのかな?」
「俺と芝山は返してこいって言いましたよ夜久さん」
『リエーフ、こんなにお菓子買ったら駄目だよ』
「未来までそんなこと言うなよ!」
『夜にアイス買いに行くんだもん』
「アイスかよ」
「アイスあるなら俺返してきます!」
「さっさとしろよ」


リエーフがお菓子を返してる間にさっさと移動した。
後ろからリエーフの声がするけど気にしねぇ。
ま、後から追い付いてくるだろ。


「後は何を買うんだ?」
「飲み物っす!」
「あー重そうだな」
『ポカリがいい』
「俺緑茶」
「夜久さん、僕はコーラがいいです」
「分かった分かったから。二本ずつ持ってこい。後烏竜茶も二本な」
「「っす!」」
『はーい』


レジでお金を払ってから花火売場へと向かう。
四人とも目キラキラしてんな。
まぁこんだけあったらそうなるか。


「夜久さん、これ何すか?」
「ロケット花火は近所迷惑になるから駄目」
『夜久さん、これ!これ可愛いです!』
「あー落下傘花火なー。これ昼やらねぇと見えないだろ。どこ飛んでくかわかんねーし」
「夜久さん、これは?」
「バラエティパックか。芝山は普通の持ってきて偉いなぁ」
「夜久さん、これ!こっちも買いましょ!」
「あー派手そうなやつ持ってきたなぁ。まぁこんくらいならいいだろ」
『線香花火買ってもいい?』
「バラエティパックに入ってんだろ」
『沢山やりたい』
「んじゃ買うか」


あんまり遅くなると黒尾達が心配するだろうしさっさと花火の会計を済ませて帰ることにする。
1年四人で正解だったかもな。
2年だと研磨は役に立たなさそうだし。


リエーフ達三人が歩く後ろを未来と歩く。
重たい荷物は三人が持ってくれたから楽チンだ。
未来は花火を抱えて満足そうだ。


「お前ちゃんとカプセル飲んだ?」
『朝、黒尾さんに言われたから飲んだよ』
「ならいい」
『みんなでお泊まり嬉しいね』
「良かったな」
『はい!』


俺と海と黒尾と研磨と赤葦とじーさんばーさんで作ったグループLINEでカプセルのことを報告したら二人はすげー喜んでた。
これなら今まで行けなかった泊まりの学校行事に行かせてやれるって。
コイツの思い出が増えるのは俺も良いことだと思う。
昨日と今日使って残りは98個。
俺達は未来にどれだけ思い出作ってやれるかな?


『夜久さん、ぼーっとしてると危ないですよ』
「未来じゃねぇし大丈夫だって」
『私も大丈夫です』
「お前知らないとこ行くと直ぐ迷子になりそうだよな」
『なりません』
「直ぐ迷子になるってじーさん言ってたぞ」
『そしたら夜久さんに探してもらうから大丈夫』
「まず迷子にならない努力しろよ」
『夜久さんなら見付けてくれるもん』
「まぁな」


きっとコイツの言う夜久さんって言葉の中には黒尾とか海も入ってると思う。
それでもこの言葉はグッときた。
すげぇ嬉しい。


「夜久さん、未来!」
「置いてっちゃいますよー」
「二人とも歩くの遅いっす!」
「お前らが速すぎんだよ!」
「俺腹ペコなんすよ」
「灰羽君、あんまり揺らすと破れるって」
「大丈夫大丈夫!」
『あ』
「リエーフ!ちゃんとしろって」


三人が後ろを振り向いて俺達を急かす。
芝山がリエーフにせっかく注意してんのにわざとビニール袋を揺らしたんだろう。
案の定破れて中のお茶やジュースが落ちた。
あーあ、どうすんだこれ。


『リエーフやらかしたー』
「こんなんで破れると思わなかったんだよ」
「ったくしょうがねぇなぁ」
『エコバッグあるよ』
「あるなら最初から言ってよ未来も」
『言う暇なかった』
「あっこ普通にビニール袋くれるもんな」
「じゃそれに入れてさっさと帰りましょう」


未来が取り出したエコバッグに溢れたジュース類を入れ直してリエーフへと持たせる。
もう片方のジュースの入った袋は破くなよと注意をして。


「さ、帰んぞ」
『夜久さん、アイスいつ買いに行きます?』
「夕飯終わってからな」
「俺も行きたいっす!」
「僕も」
「俺も俺もー!」
『じゃあまたみんなで行こうね』


またコイツら引率して俺がコンビニ行く流れなのかなこれ。
まぁいいか。黒尾でも海でも大丈夫だろうけど俺が付き合ってやることにした。


こっから帰ってバーベキューの準備してバーベキューしてコンビニにアイス買いに言ってそっから花火してとか結構ハードだな。
明日は学校だし。
まぁたまにはいいか。
未来も楽しんでるし1年坊主達も楽しそうだ。


海が食べ物の調理に回るから俺は黒尾と火起こしするかな。
海のことだしもう準備終わってるかもしんねぇけど。
どうせなら俺も今日くらい楽しもう。
なんだかんだあっという間に二日間終わっちゃったもんな。


この話を後から黒尾達に話したら呆れられた。
真面目に色々考えすぎだって。
研磨すら初日から結構楽しんでたらしい。
や、少しはお前らもしっかり考えろって思うんだけど。


2018.01.06
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