二日目

ピピピ、ピピピと目覚まし時計の音で意識が覚醒する。
ん、もう朝か。時刻は午前6時。
起きたら自分の部屋のベッドに居た。
研磨の背中にくっついて寝た気がするけどきっと誰かが部屋まで運んでくれたのだろう。
もっかい寝たいけどやること沢山だ。
ジャージに着替えて行動を開始することにした。


居間の向こうの和室はまだ静かだ。
皆まだ寝てるんだなぁ。いいなぁ。
えぇととりあえず洗濯機回さなくちゃ。
後、今日の朝御飯何だろう?
洗面所で顔を洗って歯みがきをしてから洗濯機を回しお婆ちゃんのノートを確認する。
どうやら今日の朝御飯は和食らしい。
焼き鮭と肉じゃがとお味噌汁とご飯とだし巻き玉子。それとお婆ちゃん特製のお漬け物。
またもやがっつりご飯だ。
きっと黒尾さんと夜久さんの好みを反映させた結果なんだろうな。


炊飯器にお米をセットしてお味噌汁と肉じゃがの野菜を切っていくことにした。
7時にはご飯食べれる様にしなくちゃなぁ。


「未来、おはよう」
『海さんおはようございます』
「味噌汁の良い匂いするな」
『ちゃんと出汁から取ったよ』
「偉い偉い。ちょっと待っててな」
『はい』


お味噌汁が出来上がった所で海さんが起きてきた。
洗面所へと向かったみたいだ。
お味噌汁の横で肉じゃががグツグツと煮えてきた。
後はだし巻き玉子と焼き鮭だ。


「未来、何か手伝おうか?」
『だし巻き玉子作って欲しいです』
「それくらいなら出来るぞ」
『じゃあ宜しくお願いします』
「他には?」
『グリルで鮭焼くだけ』
「分かった」
『じゃあ洗濯物干してくる』
「宜しく頼むな」
『はい』


残りは海さんが引き受けてくれたから洗濯物を干しちゃうことにした。
先にやっとけば後から楽チンだもんね。
5人分の洗濯物は大量だ。


「未来、はよ」
『夜久さんおはようございます』


居間の縁側から庭に出て洗濯物を干していたら後ろから夜久さんの声がする。
二番目は夜久さんだった。
じゃあきっと次は黒尾さんで最後が研磨かな?
研磨寝起き悪そうだし。


「朝メシはー?」
『海さんがやってるー』
「おー、見てくるわ」
『はーい』


二往復してやっと洗濯物を干し終わった。
物干し竿が洗濯物でいっぱいだ。
全部干せて良かった。


「未来、はよー」
「おはよ」
『黒尾さんと研磨おはよう』


やりきった感で干し終わった洗濯物を眺めていたらやっと黒尾さんと研磨が起きてきたみたいだ。
研磨はやっぱり眠そうだ。


「未来、朝御飯出来たぞ」
『海さんありがとうございますー』
「洗濯物ありがとな」
『沢山だった』
「頑張った頑張った」


既に人数分の朝食がテーブルに並んでいる。あ、漬け物出さなくちゃ。


『納豆と生卵と味のり食べる人ー?』
「俺いらない」
「全部欲しい」
「納豆ー」
「俺は生卵と味のりかな」
『はーい』


漬け物のついでに納豆と生卵と味のりの有無も聞いておいた。
私はいつも食べないけどお爺ちゃんが毎日どれか食べるのだ。


それぞれに欲しい物を渡して漬け物を出した所でテーブルに座った。


「朝から頑張ったなお前ら」
「こんなに沢山いらないよ」
『お婆ちゃんのノートに書いてあったから』
「夜久と黒尾のせいだなきっと」
「肉派」
「魚のが旨いだろ」
「二人とも両方あるんだから朝から喧嘩は止めて」
「そうだぞ」
『いただきます』
「「「いただきます」」」


お味噌汁の良い匂いがする。
やっぱり朝御飯は和食が一番だよね。


「あ、未来」
『何ですか?』
「これ飲んでみ」
『何これ?』
「これ飲むと夜も人間のままなんだって?」
『何で?』


食後のお茶を皆で飲んでる時だった。
黒尾さんから小さなカプセルを渡される。
何でそんなものを黒尾さんが持ってるのだろうか?


「お前が寝てる間に昨日ちょっとあってな」
「実験がてらとりあえず飲んでみろよ」
『分かった』
「未来って疑ったりしないよね。俺少し心配になった」
「そこは研磨、俺達だからってことにしておこう」
「それならいいんだけどね」


黒尾さんが言うからとりあえず飲んでみることにした。
お茶で飲んでもいいのかな?
まぁきっと大丈夫だろう。


「何か変わった感じする?」
『何にも』
「まぁ夜になったら分かるだろ」
『うん、そしたら皆泊まれるね』
「は?」
『皆でお泊まりきっと楽しいと思う』
「今日大丈夫そうなら明日やるか?」
「研磨、嫌そうな顔しない」
「煩いと思う」
「布団結局沢山あったもんなぁ」
「ばーさんほんと凄いわ」
「部員全員泊まりに来た場合って項目あったもんな」
『明日バーベキューする?』
「全員分のメシ作るのは面倒だからな」


夜、猫にならないのなら皆でお泊まり出来る。
ちゃんとカプセルの効き目あるといいな。
洗い物を夜久さんと黒尾さんに任せてる間に布団を畳む。
既にちょっと疲れた気がしなくもないけど初めてうちに誰かが泊まりに来たのだ。
それがなんとなく楽しかった。


「洗い物終わったぞ」
「俺朝からどっと疲れた」
「未来は洗濯もしたんだぞ」
「二人とも洗い物くらいで疲れすぎ」
「何にもしてない研磨に言われたくないですー」
「そうだぞ」
「研磨は風呂係りって決まったからな」
『そろそろ行かないと』
「そうだな」
「うちが近いって楽だね」
「いつもよりのんびり登校出来るもんな」





部活を終えて五人で帰宅する。
早く皆に明日のお泊まりのこと伝えたかったのにまだ駄目だって言われた。
実験してからじゃないと駄目だって。
猫に戻っちゃったらやだなぁ。


夕飯を食べ終わってお風呂にも入った。
後は22時を待つだけだ。
四人でのんびりと縁側で麦茶を飲む。
研磨はいつものごとく居間でゲームをしてるみたいだ。


『大丈夫かな』
「まぁ大丈夫だろ。心配すんな」
「嘘をつく理由が無いもんなぁ」
「来月から忙しくなるな」
『来月?』
「インターハイの予選始まるんだよ」
『そうか』
「今年こそ全国優勝するぞ」
「「おう」」
「ねぇ、22時過ぎたけど」
「「「『あ』」」」


四人でのんびり話してたらいつの間にか22時過ぎてたらしい。
研磨が教えてくれた。
私はほんとにヒトの姿のままだ。


『わぁ』
「ほんとに人間のままだな」
「未来嬉しそうだな」
「これなら明日皆泊まりに来てもいいんじゃない?」
「じゃあ俺から皆に連絡しとくな」
『散歩!散歩行きたい!』
「人間のままでも散歩行きたいのかよ」


22時過ぎてもヒトもままなんて初めてだ。
自分の手の平をひらひらと動かして確認する。
嬉しい。ほんとに嬉しい。


「じゃあ黒尾行ってこいよ」
「海は?」
「俺は皆に連絡しなきゃいけないからな。あいつら質問責めしそうだし」
「俺は昨日行ったし今から研磨とマリカーやるわ」
「夜久君マリカー弱いじゃん」
「研磨とやったら誰でも弱いだろ!」
『黒尾さん、行こう!アイス買いに行こう!』
「はいはい、分かったから。んじゃ行ってくるわ」
「あ、ハーゲンダッツ」
「俺も食べたい」
「じゃあ俺のも頼むな」
『はーい』


今日は黒尾さんが散歩に付き合ってくれるらしい。
二人で玄関から外に出た。


「楽しそうだな未来」
『初めて!この時間にヒトなの不思議です』
「はいはい、嬉しいのは分かったけどあんまりキョロキョロしない様に」
『いつもと目線が違う』
「ったく。しょうがないな」


昼間と夜じゃ雰囲気ってのは全然違う。
いつもは猫の姿でしか歩いたことしかなかった道をヒトで歩くのは新鮮で黒尾さんに言われてもつい周りを見渡してしまう。
そしたら手を繋いでくれた。


『黒尾さん、いつもありがとうございます』
「どうした急に」
『黒尾さんが部活誘ってくれてなかったら今は無いから』
「あーそゆことね」
『こうやって毎日楽しいの皆のおかげ』
「俺以外の皆にもそうやって伝えてあげて」
『はい』
「ちゃんと全国連れてってやるからな」
『?』
「バレーするならさ、目指すのは全国大会なんだよ」
『そうなんだ』
「木兎みたいのがゴロゴロいるぞ」
『木兎さん?』
「あいつよりすげぇのいるかもな」
『楽しみ』


コンビニでアイスを買ってうちへと帰る。こうやってヒトのまま夜道を誰かと歩けるだなんて思ってもなかった。


『これも黒尾さん達のおかげ?』
「何が?」
『ヒトの姿のままなの』
「あー褒美だと」
『褒美?』
「未来が頑張ってるからそのご褒美だって」
『もっと頑張る』
「頑張り過ぎてまた熱出さないようにな」
『はい!』


うちに帰ると海さんと夜久さんがマリオカートをやってる所だった。
研磨は一人でゲームしてるみたいだ。


「アイス買ってきたぞ」
『ガリガリ君!』
「俺、後から食べる」
「俺らこれ終わったら食べるわ」
『研磨のやつしまってくるね』


あ、良いことを思い付いた。
冷凍庫に研磨のアイスをしまって居間に戻ると黒尾さんの隣へと座る。


『黒尾さん黒尾さん』
「なんだ?」
『和室で一緒に寝てもいいですか?』
「「「は?」」」


黒尾さんに聞いたのに研磨以外の三人から返事がきた。動きが止まってる気がする。
え、駄目なのかな?


「未来、クロと一緒に寝たいの?」
『何で?』
「そう聞こえたけど」
『お布団並べて皆で寝れるかなって』
「あぁそういうことね」
「未来、それは駄目」
『何でですか?』
「女の子だから駄目ですよ」


夜久さんと黒尾さんから駄目って言われてしまった。
皆で布団に入ってわいわいするの楽しそうだったのに。


「クロ、別にいいんじゃない?」
「研磨、そんな風に育てた覚えはありません」
「クロに育てられた覚えはないよ」
「や、普通に考えて駄目だろ」
『皆だけ布団に入ってわいわいするのズルい』
「あぁそういうことか」
「ほら海君も賛成してくれてるよ」
「どういうことだよ海」
「未来、小学校中学校の時って泊まりの学校行事どうしてたんだ?」
『全部休んだ』
「まぁそうなるよな」
「確かに休むしかないわな」
「だから未来はそれをやりたいってことでしょ?」
「でもここで許したら駄目な気がする俺」
「夜久は頭固いよな」
「この先のこと考えたら駄目だろ」
「今日だけならいいんじゃない?」
「黒尾は?」
「まぁ今日だけなら問題無いだろ」
「は?黒尾お前っ!」
「夜久、多数決だから」
「もう決まりだよ」
『いいの?』
「その代わり俺と海君の間ね」
『分かった!布団敷いてくる!』


夜久さんだけまだ不満げだったけど研磨も海さんも黒尾さんも賛成してくれた!
早速もう一組布団を増やすことにする。
お爺ちゃんお婆ちゃん以外と寝るなんて初めてだ。
あ、二回目か。宮城の合宿の時黒尾さんと一緒に寝た気がする。
でもあれも二人だったからな。
沢山なのは初めてだ。


『わくわくします』
「いや、寝るだけだぞ」
「わくわくしてたら寝れなくなるよ未来」
『でも楽しい』
「今日だけだからな」
『はい』
「普通はこうやって男女が一緒に寝るのは無いんだからな」
『トクベツだけ?』
「そうなるな」
『分かった』
「やっくんは過保護だよね本当に」
「誰にでもされると困るだろ」
「7月の合宿で他校のマネさん達と一緒に寝れるから楽しみにしとけよ」
『梟谷もくる?』
「勿論」
「監督が烏野も誘ったらしいぜ」
『わ』
「翔陽達来るんだ」
「まだわかんねぇけどな」
『清水先輩に会えるんですね』


今は皆で布団に入って話している。
こうやって皆で布団に入りながら話すのって一度やってみたかったんだ。
無理だって思ってたけど、それが叶うなんて。
嬉しい。本当に嬉しい。


「ちゃんと烏野のマネさんの名前覚えたんだな」
『バレー部のマネさんって皆優しいから好き』
「まだ三人しか知らないけどな」
『黒尾さん夜久さん海さん研磨本当にありがとう』
「俺もお前の成長が最近楽しみだよ」
「海君お父さんみたいなこと言うね」
「研磨だって似たようなことは考えてたろ」
「別に」
「最初はありがとうもごめんなさいもなかなか言えなかったもんなぁ」
「未来ちゃん成長してるよねほんとに」
「そろそろ寝るぞ」
「明日も部活だからな」
『はーい』
「んじゃ電気消すぞ」
「おやすみ」
『おやすみなさい』
「おー」
「おやすみなー」


黒尾さんが電気を消してくれた。
ヒトの姿のまま寝るなんて初めてだ。
わくわくしすぎて寝れないかと思ったけど直ぐに睡魔はやってきた。
明日も楽しみだな。


2017.12.26
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