「そうなのよ、来週の金曜日から四日間」
「念願の海外旅行なんじゃ」
「未来は?」
「留守番予定だけど一人でうちには置いておけないでしょ?」
未来のうちで例のごとく夕飯を御馳走になった後のお茶タイム。
俺と夜久と海と研磨とじーさんとばーさん。
他のやつらはじーさんが町内会の集りの時に貰ってきた去年の花火の売れ残りに夢中だ。
庭で何やら楽しそうに騒いでいる。
ま、福永がいるから大丈夫だろ。
研磨は話を聞いているのかいないのかばーさんのアップルパイに夢中だ。
「でね、四人にお願いがあるんですよ」
「未来一人じゃ心配だから泊まりに来てくれってとこでしょ」
「研磨君は話が早くて良いのう」
どうやら話を聞いていたらしい。
まじっすか。
「メンドイ」
「あら、ちゃんとアップルパイ用意しておこうと思ったのに」
「クロが良いならいいよ」
「旅行はもう決まってんだろ?」
「今更キャンセルはしたくないわよねぇ」
「そうじゃのう」
「最初から俺達に頼む気満々でしたね」
ばーさんのアップルパイを用意するとの言葉に研磨が陥落した。
海がにこにことじーさんとばーさんに向かって言う。海も断ることはしないだろう。
夜久は何でか静かだ。
「学校には近いし布団も来客用のお布団がちゃんと四組ありますから問題は無いと思うのよ」
「あの俺達一応年頃の男子なんですけど」
「別に何かあったらあったでいいもの」
「それはそれでのう」
そうきたか。
そっちの方はそうやって考えてんだな。
まぁ、うちには合宿があるって言えば問題ねぇしなぁ。
「未来を一人にしておくのも心配は心配だよな」
ぽつりと夜久が言った。
確かにな。このうちセキュリティがしっかりしてるとは言えねぇもんな。
「まぁ四人いれば何とかなるか」
「未来ちゃんがご飯は作れますから」
「マジで?」
「一応一通りのことは叩き込んでありますよ。私の娘ですもの」
「少しだけ容量が悪いんじゃがの」
「俺が手伝いますね」
「ちゃんと四日間の食費は置いていきますから」
「宜しく頼む」
「これだけ言われたらな」
「俺はアップルパイあればいいし。ゲーム機使ってもいい?」
「研磨君と遊ぶために買ったやつだからいいぞ」
「じゃ決まりだな」
「じゃそろそろ帰るか」
「そんな時間だな」
花火に夢中になってる未来と部員達に声をかけてこの日はお開きにした。
その帰り道。山本達と少し距離を取って四人で歩く。
「海君料理出来るの?」
「多少はね」
「未来がメシ作れるとか想像出来ないよなー」
「分かるそれ」
「俺も」
「あのお婆さんが作れますって言うなら大丈夫だよ。俺も手伝うしさ」
「未来の散歩は三人が一日交代で付き合ってね。俺行かないから」
「研磨、たまには未来に付き合ってやれよ」
「面倒臭い」
「孤爪は泊まりに了承したことがもう偉いからなぁ」
「絶対嫌だとか言うと俺も思った」
「ばーさんのアップルパイに釣られただけだもんな」
「クロ、うるさいよ」
「とりあえずこれ他の奴らには秘密な」
「リエーフとか俺も泊まりたいって言い出しそうだもんなぁ」
「未来にも伝えておかないとな」
「あーそっちのが大事」
リエーフや犬岡は俺達も混ざりたいですって言いそうだもんなぁ。
未来のことがなかったら問題ねぇけどあいつら寝てる未来を悪戯で起こしかねないし。まぁ無理だわなぁ。
ま、海と夜久と研磨だしどうにかなるだろ。
未来また泣かねぇといいけどな。
2017.12.08