告白

授業の移動時間の合間、珍しく未来が一人でいる所を見付けた。
大体犬岡と一緒にいることが多いのにな。何やってんだあいつ?


「なぁ黒尾、あいつ何やってんだろな?」
「お、ほんとだ。あーあれって告白じゃね?」
「あ?」
「だってほら、見たことない男がいるし」
「あいつちゃんと告白を告白って理解出来るのかな?」
「どうだろなー?まぁ報告を待ちましょうよ」
「だなー」


確かに良く見てみれば未来の前を男が歩いているのが分かった。
男女二人の校舎裏って考えたらまぁ黒尾が言うように告白しかねぇよな。
隣で黒尾はニヤニヤ笑っている。


「お前何か言いたい時のそのニヤニヤ顔やめろ」
「いや、やっくん落ち着いてるなぁと思って」
「何がだよ」
「告白とか焦りません?」
「ねぇよ。見たことねーやつだったし」
「心配になったりしないの?」
「んーない。つーか色々聞いてくるのやめろ」
「やだ」


絶対に面白がってんなこいつ。
でも不思議と告白されるんじゃないかって黒尾に言われても別に何とも思わなかった。
木兎にデートに誘われたって言われた時の方がよっぽど焦ったと言うかイライラしたもんな。
未来と直接関わりがあるかないかで変わってくんのかもしれない。
まぁあの見知らぬ男が未来に俺達の知らない所で関係してるのかもしんねぇけどさ。


昼休み、いつもの様に皆で部室で昼メシを食べてる時。
未来にその話を報告されるかなと思ったら話してくる様子がない。
絶対に報告してくると思ったんだけどな。


「あ、未来ーさっきのやつどうなったんだよ?」
『何が?』
「2限終わって呼び出されてたじゃん」
『あー』
「俺も未来が歩いてるとこ見たー」


俺の聞きたかったことを犬岡が聞いてくれた。
それ、俺の聞きたかったやつ!
犬岡良くやった!
黒尾がその話にすかさず乗っかっている。


「あ、それ多分俺のクラスのやつです」
「虎のクラスメイトから呼び出されたの?」
『うん、多分』
「多分ってなんだよそれ」
「ちゃんと聞かなかったの?」
『知らないヒトだったんだもん』


周りのやつらもその話に興味津々だ。
まぁ未来がどう答えたか興味あるよな。


「で、何て言われたのお前は」
『一目惚れしたんで付き合ってくださいって』
「「「おお!」」」
「俺もクラスで色々聞かれたっす」
「虎は何て答えたの?」
「人見知りだから無理だろって言ったんですけど」
「まぁ山本の言うことだからなぁ」
「黒尾さんそれ酷くないっすか!?」


一目惚れねぇ。
未来に一目惚れって言葉理解出来たのかな。
まだ説明してないけど。


『一目惚れって何?』
「やっぱりそうなるよね」
「予測通りの返事だわー」
「一目惚れはそのままだよ未来」
『んー?』
「一目見て好きになりましたってのが一目惚れ」
『んー』
「あ、これピンときてないやつですね」
「お前ってほんと疎いよなー」
『リエーフうるさいなー』


やっぱり分かってなかったんだな。
部室には和やかな空気が流れている。
全員が「あぁやっぱりね」みたいな空気だ。


「で、未来は何て返事したのかな?」
『一目惚れって良く分からないのでごめんなさいって言ったよ』
「お、ちゃんと返事出来たのは偉いな」
「返事の仕方も間違ってないしな」
「未来にしてはちゃんと返事出来たよね」
「帰ってきてあいつ撃沈してましたもん」


付き合ってくださいって言われて何処に付き合えばいいですか?とか間抜けな返事をしなくて良かった。
未来はそれをする可能性があったし。


『でも面倒だった』
「何が?」
『好きなヒトが居ないなら試しに付き合ってみようとか』
「虎のクラスメイトってそんな感じのやつなの?」
「まぁちょっとチャラいとは思う」
「で、未来ちゃんは何て答えたの?」
『好きなヒトはいますよって答えておいた』
「えぇ!」
「未来いつの間に!」


未来の返事に芝山と犬岡が食い付く。
んーこれ多分違うと思う。
面倒だったから単に好きな人がいるって答えただけなやつだ。
まぁ嘘は言ってねぇしな。


「お前ら多分思ってるようなやつじゃねぇよ」
「何でですか黒尾さん」
「未来は恋愛の好きな人がいるとは言ってないもんな」
『はい。でも誰が好きなんだってしつこかったんで夜久さんって言っておいた』
「は?お前何言ってんの?」


黒尾は今にも吹き出しそうなのを耐えてるし他の連中はぽかんとしている。
俺もそれにはかなりびっくりした。


『あの、夜久さん怒ってます?』
「いや、怒ってねぇけど少し驚いた」
「未来はそれでいいの?」
『何がですか?』
「周りの人達が未来は夜久のこと好きなんだって勘違いすると思うよ」
『夜久さんが迷惑じゃないならそれでも別にいいです。バレー部のヒト達が分かってくれてたらいいから』


俺の聞きたいことを海が聞いてくれた。
でもこの話を聞いてうちの一年坊主達ちゃんと理解出来るのかねぇ。
ちらっと様子を伺う。
三人と山本は多分何か勘違いしている。
……あーこれは絶対に勘違いしてるな。


「お前ら、未来は別に夜久のことを恋愛対象として好きって言ってるわけじゃねぇからな」
「え?」
「そうなんですか?」
「違うの?」
「でもそんな風に聞こえたっす」
「好きな人が誰かってしつこくされて面倒だから適当に俺の名前を出したんだろ?」
『夜久さんならそれも分かってくれるかなって』
「未来としてはそれが黒尾でも海でも良かったわけだろ?」
『はい』
「だとさ」


今度は黒尾が俺の言いたいことを引き継いでくれた。
黒尾も海も察しが良くてありがたい。
四人もちゃんと納得した様だ。


「それなら未来は夜久さんと付き合っちゃえばいいのに」
『何で?』
「そしたら告白されることもなくなるよ」
「おい、リエーフそれは駄目だ」
「何でですか!夜久さん未来のこと嫌いですか?」
「いやそうじゃなくて」
「リエーフ、夜久に怒られたくなかったらそれ以上は喋ったら駄目だよ」


リエーフの馬鹿がとんでもないことを言い出した。
一応直ぐにそれに対して駄目出しをしておいたし黒尾もリエーフを止めてくれたけど未来は何やら真剣に考えこんでいる。
何を考えてんだろ?


『リエーフ、それは駄目だよ』
「えぇ」
『トクベツは一人だけなんだから。簡単に作ったら駄目なんだよ』
「なんだよそれ」
『私はまだトクベツは居ないけど皆いつかトクベツ出来るかもしれないでしょ。だから駄目だよ。バレー部のみんな好きだし』


その後に黒尾さんも海さんも夜久さんも猛虎さんも研磨も福永さんも走も優生もリエーフも監督もコーチも皆好きだからって続けて言った未来になんだか一気に場が和んだ。
話が変な方向に行かなくて良かった。


そこで未来の告白されたって話は一応終わった。
すげーびっくりしたけど、まぁ話が一段落ついたのなら良かった。
黒尾だけは何か言いたそうにまた俺のことをニヤニヤ顔でみてるけど。


先に未来と一年坊主達を教室へと返した。
後は俺達先輩の話し合い。


「虎、未来が夜久君を好きだって話を嘘だったって言ったら駄目だよ」
「おお、分かってる」
「なぁ、そういえば未来のことひっぱたいた女子ってお前ら二人のクラスだったよな?」
「いきなりどうした海」
「いや未来が夜久のこと好きって噂が回ると不味くないかなって思っただけ」
「「あぁ」」


海の言葉を聞いて黒尾と返事が被った。
最近全然話してねぇしちょっと忘れてた。
どうすっかな?


「犬岡に未来から目を離さないように伝えておくよ」
「宜しくな研磨」
「未来も誰でも良かったのなら海さんにしとけば良かったのになぁ」
「虎、未来が夜久君のこと名前出したのは一番夜久君になついてるからだと思うよ。変な意味じゃなくてね」
「お母さんだもんな夜久」
「まぁな」


しばらくは様子を見るってことで俺達の意見がまとまった。
まぁ早々にまたひっぱたかれることはないだろうけど。
心配するにこしたことはねぇよな。


嘘でも俺の名前を出してくれたことをすげぇ嬉しく思った。
黒尾でもなく海でもなく俺の名前。
我ながら結構重症だと思う。
多分今日のことで俺の気持ちは海と研磨にはバレた気がする。
なんとなくだけど。


いつかはバレることだしまぁいいか。
心配なことはまだ色々あるけど犬岡もいるし、まぁ大丈夫だろう。
しばらくは全員で様子見だな。
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