初デート?

『黒尾さん、デートって何するんですか?』
「「「「「は?」」」」」


試験勉強最終日、未来がとんでもないことを言った。
全員の手が止まる。
そりゃそうだよな、未来が興味持ちそうなことには全く見えない。


「未来、何でも人に聞いたら駄目だよ。たまには自分で調べてみたら?」
『辞書には 男女が日時を定めて会うこと。って書いてあったけどよく分かんなかった』
「未来、お前誰かとデートすんの?」
「いつの間に!未来って彼氏とか居たの?」
「誰と行くんだよー。先輩?同級生?」


研磨が未来に言うも調べてもピンと来なかったらしい。不思議そうな顔をしている。
一年坊主達がその話に食い付く。
夜久と行くのかなとそっちを見るも不機嫌そうな顔をしてる。
ってことはやっくんでもないのか。


『彼氏じゃないよ。木兎さん』
「「「「「はぁぁぁぁ?」」」」」


俺以外全員の声が未来のうちに響き渡った。
まぁそうなるわな。
それはちょっと俺もびっくりしたわ。
未来のばーさんがキッチンから何事かと顔を出す。
それに海が謝ってばーさんは引っ込んだ。


「んで、いつの間にそんな話になったの?」
『こないだ連絡きたの。テストの最終日は部活休みだからデートしようって』
「未来、木兎さんの連絡先知ってたの?」
『合宿の時に京治に連絡先を聞いた時に木兎さんとマネさん二人とも交換した』


あ、やっぱり赤葦の呼び方は京治になったんだな。
そこは俺の予測通りで微笑ましかったけど木兎とデートねぇ。
やっくんの機嫌がこれ以上悪くなんのもちょっと面倒だしなぁ。


「木兎さんならデートって言うより」
「まぁ単にみんなで遊びましょうって感じだろな」
『そうなの?』
「まぁそうだろ。赤葦に聞いてみろ」
『そうする』
「あ、保護者同伴だって赤葦にだけ伝えといて」
『保護者?』
「俺まだ木兎にメシ奢ってもらってねーし。やっくんも行くだろ」
「まぁしょうがないよな」
「木兎には内緒って赤葦に言っとけよ」
『うん』


俺の提案に夜久が乗った。
まぁこれでやっくんの機嫌が悪くなることもなさそうだな。
しかし木兎も結構大胆なことすんな。
まぁあいつの場合は単純に未来と遊びたいだけなのかもしんねぇけどさ。


「木兎さんなのか」
「なら本当に遊ぶだけだよねきっと」
「もっと面白い話かと思ったのに」
『面白い話じゃないよ。私悩んでたのにー』


一年坊主達は興味を無くした様だ。
自分の勉強を進めている。
未来はそれに不満そうだったけど。
さて、俺も勉強に戻りますかね。


無事に中間試験が終わったその日。
未来と夜久と待ち合わせの駅へと向かう。
研磨を誘ったら新作のゲームが届くからと断られた。
海にも山本にも福永にも一年坊主達にもやんわり断られる。
まぁ木兎と一緒に遊ぶの疲れるもんなー。
試験明けはしんどいかもなぁ。


『あ、白福先輩と雀田先輩だ』
「お、ほんとだ」
「よく見れば木葉達もいるぜ」
『何見てるんだろ』


電車から降りると未来が先に梟谷の集団を見付ける。
やっぱり大勢で遊ぶつもりだったんだな。
ん?でも木兎だけがいねーな。


「よお」
『何してるんですか?』
「おお!やっぱりお前らが来たんだな」
「保護者って言うからにはこの二人かと」
「未来ちゃん久しぶり〜」
「制服姿も可愛いねぇ」
『ありがとうございます』
「んでお前ら何してんの?」
「夜久、あれ見て見て!」
「黒尾も見てみろよ」


集団に近付いて行くとみんなして何処かを見ている。
指を刺された方を向くと木兎が一人で居た。


『木兎さん何してるの?』
「木兎ね、本当は未来ちゃんと二人でデートする気だったんだよ〜」
「でも赤葦が未来ちゃんから連絡貰ったからね」
「俺は来る気なかったんですよ」
「私が未来ちゃんから連絡来たときに見つけちゃったの!」
「お前ら悪りーな」
「黒尾だって未来に赤葦に黙ってろって言わせただろ」
『木兎さんのとこ行かないの?』
「ワクワク顔してんなぁ」
「これ俺達が行って大丈夫なやつ?」
「「「「「あー」」」」


夜久が心配そうに梟谷の面々に告げると全員が微妙そうな顔をしている。
まぁ確かにしょぼくれモードに入っても面倒臭い。
しかしやっくんやっぱりここでもお母さん属性発揮すんのね。
二人で行かすのは嫌だった癖に。


「あ、未来ちゃん行っちゃったよ」
「マジかよ!」
「ほんとだ」
「未来どーすんだろ?」
「あれは木兎をこっちに連れてくるだろうな」
「ほんとだ〜こっち指さしてる」
「雀田、笑うなって」
「だって、最初凄い嬉しそうな顔してたのにこっちにきづいた時の顔見た?」
「まぁ何とも言えない面白い顔してたのは分かるけど」
「先輩達言い過ぎですよ」


俺達がどうしようかと考えてる間に未来が木兎を呼びに行ったらしい。
木兎の表情がくるくると変わる。
確かにそれは面白かった。


「なんだよー!黒尾も夜久も来るなら言っといてよ!」
『黒尾さんが内緒って言ったの』
「俺との賭けのこと忘れてませんかね?」
「あぁ!あれなー…覚えてるよ、ちゃんと」
「俺は単なる付き添い!」
「で、赤葦達は何でいるの?」
『私が白福先輩達見付けたの』
「そ、そうなの!偶然会ったの!」
「それでみんなで話してたんだよ〜」
「せっかくだし皆で遊びに行こうぜな?な?」
「部活が休みなのも今日までですし皆で行きませんか?」


木兎のテンションを下げないための梟谷の連携がすげー。
あたかも偶然そこで俺達に出逢いましたよみたいな流れになってる。


「なんだよお前ら!そんなに俺と遊びたいの?そんなに言うなら皆で行くか!」
「さんせ〜」
「わーい」
「ありがとな木兎!」
「ありがとうございます」


白福と雀田は棒読みだったけど木兎、お前それでいいの?
まぁしょぼくれないならいいか。


「んで、木兎は今日何して遊ぶつもりだったわけ?」
「んー?」
「まさか何にも考えてなかったんですか」
「いや、そそそそんなことないぞ」


赤葦に詰め寄られている。
目が泳いでるからあれは何にも考えてなかったんだなと予測した。
まぁ今日の主役に聞いてみればいいか。


「未来、お前は何したいの?」
『初めて』
「ん?何が初めてなんだ?」
『こうやって外で遊ぶの初めてなんです』
「そうなの?」
「わ、そしたら色々しなきゃだね〜」
「沢山遊ぼう」


電車に乗ってる時からいつもより浮かれてる気はしてたけどまさか初めてだったとは。あぁ友達なんて今まで居なかったって言ってたか。


「じゃあ記念日だな!よし、とりあえず行くぞ」
「おい!どこに行くんだよ!」
「木兎!ちゃんと説明しろって」


何かを思い付いたようだ。
木兎が歩き出す。それに木葉達が着いて行ってる。
その後を白福と雀田が続く。
赤葦は隣で小さく溜め息を吐いた。


「赤葦は予測がついてそうだな」
「記念日って言ったので多分ゲーセンに向かってますよ」
『ゲーセン?』
「ゲームが沢山置いてあるとこな」
「プリクラでも撮るのか?」
「多分」
「黒尾、そろそろ行かないとはぐれるぞ」
「じゃ行きますか。未来は夜久と手繋いでてよ。人がそこそこいるからね」
『分かった』
「赤葦も未来見といてね。人混み歩くの下手くそだから」
「分かりました」


四人で木兎達に続いた。
まぁ木兎は目立つからはぐれても木兎を目印にしとけば大丈夫だろう。


赤葦の言った通り木兎が最初に向かったのはゲーセンだった。
赤葦やっぱり木兎に関してはすげーわ。
けど12人でプリクラ撮るとか大丈夫なのかね?
プリクラの周りには女子高生がわんさかといる。
俺ら目立ってんなー。


「なーどれがいいー?」
「沢山入るのは多分あれだよ〜」
「そうだね、あれが一番人数入るかな」


木兎が沢山あるプリクラの機械をきょろきょろと見回してから白福達に聞いた。
勝手に決めるタイプに見えるんだけどな。
そこは素直に聞くんだな。
未来は初めて来るゲーセンに興味津々のようだ。


「女子だけでだったら12人とか余裕だったんだけど」
「流石に狭い」
『ここ押すの?』
「そうそうここ押してー」
「木兎、狭いから動くなって」
「尾長!ちゃんと入れって」
「はい、すみません」
「木兎さん足踏まないでください」
「撮るよ〜」
「みんなちゃんと入りなよ」


案の定ぎゅうぎゅう詰めになった。
女子達は前列でお気楽だ。やっくんも小見も前列。リベロは比較的小さいからな。
何とか入るようにみんな必死だ。
別に写らなくてもよくねぇ?


「全員ちゃんと写らないと写るまで撮り直しになるんですよ」


俺のやる気のなさに赤葦が気づいたのか小声で教えてくれた。
誰かって?そんなの聞かなくても木兎だろう。
そういうことなら俺もちゃんと写っとかないとな。
これをもう一回やれと言われるのは嫌だ。


何ショットか撮られ木兎の納得の行く1枚があったのであろう。
許可が降りたので白福と雀田が落書きコーナーへと向かう。
未来と木兎もそれを見に行った。


「お前らほんと大変だな」
「慣れです」
「黒尾も結構慣れたんじゃねーの?」
「毎日はちょっとキツい」
「夜久は?」
「俺は意外と平気。木兎だけなら楽かな」
「夜久と学校交換してぇ!」
「うちのリベロとか小見大変だぞ」
「あー」
「お前らの木兎をしょぼくれさせない連携面白かったわ」
「俺もそう思った」
「あれも」
「いつものことなんで」


四人居なくなったプリクラの中で8人で喋る。
四人居なくても狭いなここ。


「終わったよ」
「はいこれ〜」
『黒尾さん!プリクラ凄い!』
「三人で撮ってくるから」
「ちょっと待っててね〜」
「あ、ちゃんと、次どこ行くのか考えておいてね」


白福から出来上がったプリクラを受け取ると三人は別のプリクラ機に向かって行った。
すっかりなついてますね。
ちょうど12分割にしてあったから尾長がそれを切っていく。
一年誰か連れて来てやれば良かったかもなー。


「木兎、次はどーすんの?」
「打ち上げに決まってんだろ!テスト終わったんだから!」
「「打ち上げ?」」


木兎の言葉に夜久と返事が被った。
赤葦がまたも隣で溜め息を吐く。


「木兎さん、カラオケってちゃんと言わないと黒尾さん達には伝わりませんよ」
「おお!そうそうカラオケ!」
「あー。まぁいいんじゃね?」
「カラオケも多分行ったことないだろうしな」
「木兎、連続で曲入れるの無しな」
「えぇ!」
「この人数で何曲も一人で歌われたら迷惑なの」
「木兎さん、今日は我慢してください」
「分かった」


何で木兎も他の奴らには不満気なのに赤葦の言うことは素直に聞くんだろ?
あ、逆か。赤葦の言うことだけはちゃんと聞くから赤葦が副主将なんだろうなきっと。


「プリクラ楽しかった?」
『かなり楽しかったです。音駒のみんなとも今度撮りたい』
「研磨行くかなぁ」
『お願いするから大丈夫』


三人がプリクラを撮り終えてカラオケへと移動する。
夜久が小見と話したいからって未来の手を引くのは俺の番。
やっくんって本当に気遣い凄いと思う。
音駒のお母さんだわ本当に。


『京治、次はどこに行くの?』
「カラオケですよ」
「未来、お前って歌えるの?」
『歌えますよ!オンチじゃないもん』
「意外だな」
「ちょっと俺も意外でした」
『京治まで酷い』
「すみません。そういう目立つこと苦手そうだと思ったので」
『目立つのは苦手』
「あ、赤葦!未来のチアガールの写メみる?」
『黒尾さん!』
「チアなんてやってるんですか?」
『違うやってない!』
「体育祭の応援合戦のやつな」
『あれはチア部の部長さんに頼まれたから』
「しゃーなしやったんだよな。ほらこれ」
『駄目ですって!』


未来を挟んで反対側を歩く赤葦にスマホを渡す。
未来はそれを阻止しようと俺の手を捕まえようとするけどこの身長差だとね、届きませんよね。


「印象が全然違いますね」
「横に行くともっと可愛いのあるぞ」
『京治駄目だって!黒尾さんも忘れてたのに酷い!』
「本当だ、これ可愛いですね」
「可愛いんだから別に見せてもいいでしょ」
「あ」


はたと赤葦の手の動きが止まった。
ん?何か見られちゃまずい写メとかあったかな?


『京治?どうしたの?』
「いや、体育祭にお姫様抱っこの写真あるとは思わなくて」
「それ海が撮ったの。いい笑顔してるでしょ?」
『それは!海さんが呼ぶから!』
「見たことないくらい良い笑顔ですね」
「あ、ついでにそのスマホに赤葦の連絡先入れといて。なんかあった時のために」
「そうですね。分かりました」


あんまり未来をからかうと拗ねるから話題を変えておく。
赤葦の連絡先は聞こうと思ってたとこだったしちょうど良かった。
海と夜久と研磨にも教えていいかと聞くと即了承してもらえた。


カラオケか。歌うのが嫌いじゃないのならまた音駒でも行かされるだろなぁ。
まぁこいつの世界が広がるのは良いことだ。
もっと沢山色んな経験をさせてあげよう。
部活も頑張ってもらうけどな。


コンビニで買い出しをしてカラオケへと到着した。
一部屋いくらの料金でやってるとこ。
大人数の時はこっちの方が安い。
カラオケでも全員に歌わせるとかするなよ木兎。
俺はどっちかと言うとカラオケ苦手なんだからな。
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -