夜の散歩も黒尾さんと海さんと夜久さんとで代わりばんこで付き合ってもらっている。
ちなみに研磨には断られた。眠たいから嫌だって。
ちょっとだけ酷いと思う。
今日は最終日。
なんだっけ?音駒と縁のある烏野?ってとこと練習試合らしい。
研磨が朝から少し楽しそうな顔をしている。
『研磨、楽しそう?』
「何で?」
『なんとなくそんな風に見えた』
「ちょっと楽しみかな烏野は」
『おお!やっぱり!』
烏野を迎える準備をしていると外が騒がしい。
どうやら到着したらしい。
ぞろぞろと真っ黒の集団が現れる。
…………でかい!怖いヒトが沢山いる!
集合との監督の声でみんなが集まる研磨の背中に隠れて様子を伺う。
「未来、同じ高校生だから。そんなにびびらなくても」
『び、びびってないよ!でもでも大きいよ』
「あ」
『あ?』
研磨の真ん前から声が聞こえた。
そっと背中から相手を盗み見る。
あのオレンジ頭は……確かこないだみた。
烏野だったのか。
挨拶を終えて体育館へと向かう。
「研磨!音駒だったんだな!」
「あ、うん」
「何で教えてくれなかったんだよー」
「だって聞かれてない…」
「あ、音駒のマネージャーなの?」
『う、うん』
「おれ烏野一年の日向翔陽!」
『一年の一ノ瀬未来です』
研磨と歩いてたらオレンジ頭くんが駆け寄ってきた。
このヒトは走と同じだ。
眩しい気がする。太陽みたいな笑顔で挨拶されたので一応自己紹介をしといた。
猛虎さんと烏野の坊主のヒトがきてガンを飛ばし合っている。何故にこんなことに。
睨み合ってて怖い。再び研磨の背中に隠れていると夜久さんと烏野の爽やかそうなヒトが二人を叱りにきた。
あの爽やかなヒトもきっとおかーさん属性なんだろうなぁ。
と、綺麗な女のヒトがきた。さっき気付かなかったけど烏野のマネージャーかな?
猛虎さんが綺麗なマネさんを見て走り去っていった。
「未来、烏野のマネさんに色々場所教えてあげて」
『わぁ!』
「ほら、研磨の背中に隠れてないで」
夜久さんに促される。
あの綺麗なマネさんと話させるとか夜久さん鬼だと思う。
渋々と夜久さんの方へと行くとマネさんに宜しくねと微笑まれた。
猛虎さんが走り去るだけのことはあると思う。
私もなんだかちょっと恥ずかしくなった。
お互いに自己紹介をして水道の場所やらを案内する。
烏野のマネさんは三年生で清水潔子ってお名前らしい。
やっぱり名前は身体を表すんだなって走と初めて会ったときのことを思い出した。
さっきのオレンジ頭くんの名前も似合ってたしなぁ。
試合が始まった。
オレンジ頭くんの速攻に驚いた。
あんなに速いのは見たことない。
監督もコーチも驚いている。
この一ヶ月でバレーの知識も少しは増えたけど、お爺ちゃんと国際大会の試合を見たりもしたけどあんなの見たことなかった。
翔陽凄いんだな。
ぼんやり考えてたら監督があれはセッターがバケモンなんだとタイムアウトの時に言ってた。
セッターの仏頂面黒髪くんも確かに凄いとは思うけど私は何故か翔陽から目が離せなかった。
練習試合が終わる。なんと三試合もやった。
みんなほんと体力バケモンだと思う。
翔陽なんて終止楽しくて楽しくて仕方無いみたいな表情だった。バテたりしないのだろうか?
監督も楽しそうだ。
猫と烏のごみ捨て場の決戦?ってやつらしい。
ボトルを洗いに水道へと移動する。
清水先輩がいた。
「未来ちゃん、今日はありがとうね」
『こ、こちらこそ。烏野凄かったです』
「負けてばっかだったけどね」
『でも翔陽のあの速攻初めて見ました』
「ふふ、あれ凄かったでしょ」
『かなり』
「どんどん上手くなってくんだよ、日向」
『全国で会えたらいいですね』
「うん、きっと大丈夫。またね」
『はい、またです』
戻ると夜久さんに頭を撫でられた。
初対面のヒトと仲良くやれて偉いぞと褒められたのだ。
清水先輩が優しかったからだと思う。
なんだろう、あの柔らかな空気感?が良かったんだと思う。
それぞれに別れを告げて宮城を後にする。
一週間あっという間だったなぁ。
疲れたけど楽しかった。
『ふわぁ』
「未来、寝たら起きないんだから我慢してよ」
『えぇ』
「犬岡辺りに背負わせるから別にいいんだけどさ」
『眠い、研磨何やってるの?』
「GW前に出たゲーム」
『面白い?』
「うーん、普通かな。もう終わるし」
『もう!?』
「結構簡単だったし」
帰りの新幹線は研磨の横だった。
寝るなと釘を刺されたので頑張った。
あのヒトゴミの中背負われるのも申し訳ないなと思ったのだ。
なので研磨のゲームを隣で観戦していた。
最短でRPGを攻略してたらしくボス戦はぎりぎりでハラハラした。
「未来ちゃん!」
『お婆ちゃん!』
「おかえりなさい」
『ただいま!お爺ちゃんは?』
「車で待ってますよ」
無事に眠らずに東京へと辿りついた。
改札を抜けるとお婆ちゃんの姿を見つける。
帰ってきたんだなと思うと嬉しくなった。
お婆ちゃんが監督とコーチにお礼を言い黒尾さん達とお話している。
眠くなってきた。目をこすりながらそれをぼーっと見つめる。
「未来、明日は部活休みだからな」
「ゆっくり休めよ」
『はい』
「まだ寝たらダメだよ。車まではちゃんと歩きなよ」
『うん』
「じゃあまた明後日ね」
それぞれに挨拶を交わし(眠気のピークだったから返事をしただけだけど)お婆ちゃんと車へと向かう。
『お婆ちゃん、黒尾さん達と何を話してたの?』
「未来ちゃんのことよ」
『うん?』
「知って黙って守りますなんてそう簡単には言えないでしょう?ほんと良いこ達ねぇ」
『みんな優しいの』
「えぇ、ほんとに良かった。今度ねお食事にお誘いしといたのよ」
『黒尾さんと研磨だけじゃなくて?』
「あと二人とはお会いしたことがなかったでしょう?だから四人で是非いらしてくださいなって」
『お礼?』
「えぇ、そうですよ。これからもお世話になるでしょうしねぇ」
お爺ちゃんの車の中で合宿のことを二人に報告する。
どうやら明日四人がご飯を食べに来るらしい。
ちょっと楽しみだ。
お爺ちゃんもお婆ちゃんも元気そうで良かった。
学校に知ってるヒトが居てくれることにほっとしていた。やっぱり今まで二人で守ってきたものだったから心配だったみたいだ。
よくは分からなかったけど。
明日はゆっくりとみんなで楽しもう。
流れ行く街並みを眺めながらゆっくりと瞼を閉じた。