3年B組お花見だよ!

あーあ、何でこんな事になったんだ?
俺、二人でお花見したかったんだけど。


只今の時刻、18時30分。
近くの運動公園に隣接する有名な花見スポットに3‐B全員揃っている。
部活無し組が朝から場所取りを頑張ったかいがあったらしく絶景だ。屋台にも近い。
昨日の夜に回ってきた花見へのお誘い。しかも強制。
あいつら暇なのか?


「まーるーいー!眉間に皺寄りすぎ!」
「部活終わりで疲れてんだよ。片岡もそうじゃねーの?」


1.5Lの烏龍茶のペットボトルを持って片岡が隣にきた。空になった紙コップに注いでもらう。


「そりゃ疲れてはいるけど、どんだけ疲れてよーと楽しむ時は楽しむのがあたしだからねー。凛と二人で夜桜見たかったんでしょ?ドンマイ!」
「ぶっ!ゲホゲホっ!何でそんなことっ」
「顔に書いてあるぞー」


変なこと言うから気管に烏龍茶入ったじゃねーか!片岡はケラケラと笑って違うとこにお酌しに行った。
宴会のコンパニオンってあんな感じなのか?
ちなみに凛は鈴木と何人かの女子と買い出しだ。
腹減ったー。屋台でも見に行くかなー?
でも凛と行きてーしなー。


「よお」
「おー青木も部活だったんじゃねーの?」
「うちは日曜は終わるの早いからなー。15時には終わったし」
「15時に終わるとか羨ましいな」
「焼きとり買ってきたけど食う?」
「マジ?食う!お前やっぱいいやつだよなー」


青木が隣に座る。
サッカー部15時に練習終わるとかまじ羨ましい。焼きとりをすすめられたので遠慮なく食べることにした。
マジ死ぬとこだった。燃費わりーのも問題だよな。


「それこないだこいつら全員に言われたわ」
「あ?いいやつっての?」
「そ、カラオケでな」
「あ、お前を慰める会だったもんな」
「丸井がそれ言っちゃうの?」
「いや、だって事実だろい?」
「あー、まぁ…な」
「なんだよ」
「いや、もっと敵対心と言うか態度悪く接してくるかなと思ってたから拍子抜けした」
「は?何で?」
「俺、椎名さんに告白した男だけど」
「それ俺達が付き合う前の話だろ?気にしねーよ」
「諦めないって言ったら?」
「別にどうもしねーよ。それはお前の自由だし。だからって手放す気はさらさらねーからな。けど諦めないからって俺とお前が険悪になる必要ないだろ?お前凛の嫌がることはしないだろーしな」


急に何言ってんだこいつ?
青木が持ってきた焼きとりが全て皿の上からなくなる。あ、全部食っちまった。
はやく凛帰ってこねーかな?


「ふっあははっ!丸井、お前すげーわ!」
「いきなりどーしたんだよ」
「いや、何でもない。椎名さんのことは諦めるから安心しろ。てか不毛な恋愛過ぎて辛いわそんなん!」
「まぁ諦めれるならその方がいいだろな」
「言うねえ。ま、ちゃんと守ってやってな?」
「おう、任せとけ」
「んじゃ俺屋台回ってくるわー」


空になった紙皿を見つめ一瞬黙るもそのまま手をひらひらと振って去って行った。
お、あの集団は凛達だ!やっと帰ってきたぜ!


『丸井くん、お待たせ』
「おー買い出しお疲れお疲れ!」
『何か食べたいのある?色々スーパーで買ってきたんだけど』
「そこの唐揚げ食いたい」
『了解だよー』


女子達がスーパーで買ってきた惣菜をブルーシートの上に広げて行く。
凛は俺の隣に座ってその中から唐揚げを取ってくれた。
あ、なんかいいなこういうの。
紙コップとお茶のペットボトルを引き寄せ凛についでやる。
ザァっと風がふいて桜吹雪が舞った。


『わぁ!』
「おお、すげーな」
『みんなと話すのに夢中だったけどやっぱり桜綺麗だねぇ』
「おー」


二人で桜吹雪を見上げる。
一瞬だったけどライトアップと合わせて凄く綺麗だった。
代わる代わる俺らの横にクラスメイト達がやってくる。あいつら落ち着きとかねーの?


「やぁやぁ二人とも」
「次は鈴木かよ」
『あ、梨夏』
「楽しんでるー?」
「お前、酒とか飲んでねーよな?」
『えぇ!』
「飲んでるわけないでしょ!そこら辺うちらは健全だよ!ナチュラルハイなだけさ!」


紙コップと今度は緑茶のペットボトルを片手に鈴木がやってきた。
テンションがいつもと違う。ほんとに酒とか飲んでねーだろな?


「もうね、朝からここに居たんですよ!今日は顧問の都合で部活休みだったし。そりゃテンションも壊れますよ!」
「『あー』」
「すまん」
『ごめん』


朝からこの時間までここに居るんじゃテンションもおかしくなるわなー。
疲れるだろうし。んで無理矢理テンションあげてんだろなこいつ。


「何かあれですね人がひっきり無しじゃない?」
『そうなんだよねー』
「慌ただしいんだよな」
「披露宴ってきっとこんな感じだよね」
「ぶっ」
『えっ』
「いや、何となくだよ。なんとなーく」


「じゃあね」と言いたいことだけ言って鈴木は去って行った。あいつ爆弾落として行きやがった!
凛は顔を赤くして俯いたままだ。


「屋台見に行ってみよーぜ」
『あ、うん』


周りにもニヤニヤ見られてたから気分転換に屋台を見に行くことにした。
立ちあがり靴を履く。凛が同じように靴を履いたのを確認して「荷物全部もってこい」と小声で伝える。
頭にクエスチョンマークが出てたけど大人しく荷物を持ったので手を引いて歩き出す。
冷やかす声が聞こえたけど無視だ無視。


『まままま丸井君!』
「ん?」
『手!手!みんな見てたよ!』
「おー見せつけてやればいーんだよ」
『もう』
「お前荷物持ってきた?」
『一応全部持ってきたよ』
「よし、んじゃこっからは二人な」
『えぇ!みんなは?』
「一応全員と話したと思うしま、いーだろ」
『うーん』
「俺は凛と二人で回りたかったんだけど」
『それは嬉しい、です』
「じゃ気にすんな」
『分かった』


屋台を見に行こうかと思ったけど人が多いからやめて公園に流れている人工的な小川沿いを歩く。
喧騒が少し遠ざかった。
光に照らされた桜が綺麗だ。


「なぁ、凛」
『んー?』
「いつか披露宴やることになったら全員呼んでやろうな!」
『ええええええ』


立ち止まり二人で桜を見上げてる時に伝えた。
驚いたみたいですげー間抜けな声が隣でしてたけど。


「まぁいつになるかわかんねーけどさ」
『うん』
「俺がパティシエでお前がショコラティエとかすげー良いケーキ屋?チョコレート屋?出来そうじゃね?」
『恥ずかしい。と言うかまたまた展開が早すぎませんか?』
「いーじゃん、お前は俺のなんだし。俺はお前のだぜ」


ふっと目線を桜から凛にうつすと視線が重なった。
顔を真っ赤にしててすげー可愛い。
その頭をくしゃくしゃと撫でた。


「よし、そろそろ帰ろーぜ。あんま遅いと心配すんだろ」
『あ、もうこんな時間なんだね』
「なんだかんだクラスでの花見楽しかったな」
『今度は部活のみんなで来てみたい?』
「んージャッカル次第ってとこかな」
『ジャッカル君に奢らせる気だ!』
「せいかーい!」


のんびり二人で歩きながら凛のうちへと向かう。
何気ない会話をしながら。
何でもないこういう時間も大事なんだろなーなんて柄でもないことを考えて一人そっと笑った。

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