合同練習

今日は青学と合同練習だ。
立海で練習してくれるのなら良かった。
じゃないとケーキどうしていいか分かんなかったし。
朝からケーキの仕上げをして学校へと向かう。
今日はブン太が迎えに来てくれて本当に助かった。一人でホールケーキ2つを持っていくのはさすがに大変だったから。


「凛、ケーキ何にしたんだ?」
『甘さ控え目の抹茶のシフォンケーキとカスタードとフルーツたっぷりのタルトにしてみた』
「どっちも旨そうだなそれ」
『抹茶のシフォンケーキには生クリームあるからね』
「どっちも食いてぇ!」
『ちゃんと大きなサイズで作ったから大丈夫だよ』
「だからこんなにケーキでかかったんだな」
『頑張りました』
「ありがとな!」


本当はもう少し小さめのサイズにする予定だったんだけどブン太とか赤也君は両方食べたいって言うかなと思ってギリギリでケーキのサイズを大きくした。
うん、私の決断は間違ってなかったみたい。


昨日帰りに幸村君に言われたのはケーキを部室に持ち込まないこと、誕生日のことは私とブン太と幸村君と柳生君だけが知ってること、青学は青学でこのことは部長さんと不二君と菊丸君しか知らないとのことだった。
てことでケーキを家庭科準備室の大型冷蔵庫へと運び込む。
あ、良かった。ちゃんと温度設定出来るやつだ。


『サプライズ柳君喜ぶといいね』
「アイツ鋭いからなぁ。俺も気をつけないと」
『私も気をつける』
「ま、赤也とか真田が知らないし大丈夫だろい」
『今日も頑張ろうねブン太』
「おお、俺今日はシングルスでも試合すんだよ」
『そうなの?』
「珍しいだろ?」
『楽しみにしとくね!』
「おお、カッコいいとこ沢山見せてやるからな!」


ブン太がシングルスで試合するなんて本当に珍しい。
朝からワクワクが止まらなかった。


「やぁ手塚元気かい?」
「あぁ。問題無い」
「今日こそ負けないからな手塚」
「真田副部長朝から堅いっスよ」
「真田は手塚と試合の予定あったかのう」
「仁王何を言い出すんだ!」
「越前!お前は俺と試合だからな!」
「誰でもいいっスけど相変わらず暑苦しいっスね切原さん」
「あー丸井久しぶりー!今日はダブルスで試合すんの?」
「や、どうだろな?まだ全部聞いてねぇ」
「今日は変則的に試合を組むと精市が言ってたからな」
「ふむ、うちもどうやらそうらしいな」
「賑やかなのはいいけどそろそろテニスコートに行かないかお前ら」
「桑原君、誰も聞いていませんよ」
「お前達、挨拶はそれくらいにしてそらそろ行かないと」
「大石、もうちょっと大きな声で言わないと」
「マムシ!俺とダブルスすんだから手抜くんじゃねぇぞ!」
「それはこっちの台詞だ」
『賑やかだなぁ』
「立海のマネージャーさんだね」
『はい』
「今日は乾の分もケーキありがとう。助かったよ」
『いえ、1つも2つもあんまり変わらないですから』


青学のバスが到着してみんながわいわいと挨拶を交わしている。
GWの合宿ぶりだもんね。
それを遠巻きに見守っていたら不二君に話しかけられた。
あぁそっか。不二君は誕生日のこと知ってるんだよね。


「凛ー!行くぞー!」
『はーい!』
「丸井とは相変わらず仲良しみたいで安心したよ」
『それ色んな人から言われます』
「去年とは全然違うからね。さ、僕達も行こうか」
『そうですね』


幸村君と手塚君を先頭に全員が歩き始める。
ブン太から声がかかったので私と不二君もそれに続いた。


「だいぶ落ち着いたみたいだね」
『そうですか?』
「GWはもうちょっとピリピリしてた気がするけど今は僕が椎名さんと二人で話してても気にならないみたいだし」
『確かに』
「あぁきっと君が信頼されてるんだろうね」
『皆さんが信用されてるんですよきっと』
「それもあるだろうね」


不二君は幸村君みたいな穏やかさんだなぁ。
GWの時はみんながピリピリしてて他校の部員とは芥川君以外話せなかったからなんだか新鮮だ。
ブン太は菊丸君と何やら話が盛り上がってるみたいだった。
他のみんなもそれぞれ青学の人達と話している。やっぱり中学の時から知ってるから仲が良いんだなぁ。


「今日の最後の試合が乾と柳の予定なんだ」
『そうなんですか』
「だからその間に椎名さんがケーキを取りに行ってくれるといいかな」
『あ、分かりました』
「事前に幸村と手塚で決めたみたいでね。僕がそれの伝達役かな。幸村から椎名さんに伝えるよりは分かりづらいかなって」
『皆さん色々考えてるんですね』
「あの乾と柳だからね。万全の準備をしとかないときっと二人は感付くだろうから」
『では隠密に頑張ります』
「頼んだよ」


私と不二君が話してるのも充分怪しい気がするんだけどそれは大丈夫なんだろうか?
まぁでも幸村君が決めたのならきっと大丈夫なんだろう。
さて、今日も部活は部活で頑張ろう。
いつもの倍の仕事量をこなさないとね。


忙しくテキパキと仕事をこなしていく。
今日も暑いからスポーツドリンクは切らさないようにしなくちゃいけないしタイルの量も沢山だ。その合間に洗濯もしなくちゃいけないな。
そろそろ救急箱の整頓もしなくちゃ。


「凛ー」
『ブン太?どうしたの?』
「お前の様子を見にきたの」
『私?元気だよ』
「嘘、俺が凛に会いたかっただけ」


慌ただしく準備を終えていつもの洗濯の時間。
ブン太がここに来るのは初めてだ。


『何かあった?』
「んー菊丸の彼女の話聞いてたらなんか凛の顔見たくなったっつーか」


ベンチに座ってタオルを畳む私の背中にブン太がのしかかってきた。
重いけどその重さ分愛されてる感じがするから不思議だ。
ブン太の可愛い言葉に思わず笑ってしまう。


「笑うなって」
『タオルを畳んだらそっち行くよ?』
「分かった」
『シングルスは誰と試合するの?』
「誰だっけな?不二とはやるみたいだぜ」
『楽しみにしとくね』
「おー。んじゃ俺戻るな」
『はーい』


何だったんだろ?別に落ち込んでるとかじゃなくてただほんとに私に会いにきただけだったみたいだ。
菊丸君とどんな話をしたんだろ?
まぁ元気そうだから良かった。
あと少しさっさと畳んでしまおう。


今日はいつも以上に女の子が多いなぁ。
青学が来てるからなのかな?
所々彼らへの声援も聞こえる気がするし。
ってことは東京から神奈川までわざわざ来てるってことになる。
テニス部男子の人気って凄いんだなぁ。
あ、今「リョーマ様〜」って聞こえた気がする。越前君もカッコいいもんね。


「椎名、青学のことばっか見とるとブンちゃんがヤキモチ妬くぜよ」
『え?』
「今越前のこと見とったじゃろ?」
『青学も人気なんだなぁって思ってただけだよ』
「つまらん」
『私が慌てるとこ見たかったんだね仁王君』
「からかいがいが無いのう」
『私も成長してるのー』
「そうそう次、丸井が不二と試合じゃ」
『あ!見なきゃ!』
「スコア係りを柳が探しておったぞ」
『ありがと!行ってくる!』


仁王君のからかいの言葉も最近は受け流せるようになってきた。
これも自信がついたってことなのかな?
仁王君はそんな私に大いに不満げだったけど。


「あ、凛ちゃんだ!」
『菊丸君?』
「俺ねー今休憩中だから不二と丸井の試合の見学すんの!」
『私と一緒だね』
「椎名、スコア付けを頼んでもいいだろうか?」
『そのつもりで来たから大丈夫だよ』
「では俺は赤也とダブルスをしてくるから宜しく頼む」
『はーい』


コートには既にブン太と不二君が居てその前のベンチに柳君と菊丸君が座っている。
私にスコアブックを渡して柳君は隣のコートへと向かっていった。


「俺、不二と丸井の試合なんて初めて見るかも」
『そうなんですか』
「丸井がシングルスってのがもう珍しいもんね」
『確かに』
「凛ちゃんは丸井の言ってた通りのこだね」
『え?』
「さっき丸井と話しててさーお互いの彼女の話になったの。あ、俺の彼女今日見に来てるんだけどね!」


「ほらあっこにいるよん」と菊丸君が指差した方にこっちを見て嬉しそうに手を振ってる女の子が居た。
東京からわざわざ見に来るくらいだからきっと仲良しなんだろなぁ。
隣で菊丸君も手を振り返している。


「あ、俺勝手にちゃん付けで呼んでごめんね!」
『あ、大丈夫です。ブン太も多分気にしないんで』
「そんなことないぞー。さっき丸井に凛ちゃんだねって言ったら一瞬嫌そうな顔したかんなアイツ」
『結局いいよって言ったんですよね?』
「そうそう。俺の彼女の話したら許可くれたよ!」


ブン太のヤキモチとか合宿以来聞いたことないからちょっと見てみたかった気もする。
不二君との試合楽しそうだなぁ。
今年でこうやって真剣にテニスやるのも最後だもんね。
悔いが残らないようにブン太が頑張れますように。


『ブン太とどんな話してたんですか?』
「んーと俺の彼女が幼馴染みって話をしてー、それからお互いの彼女自慢してたかなぁ」
『…………え』


お互いの彼女自慢!?
それは、ちょっと恥ずかしいかもしれない。
聞かなきゃ良かったかもしれない。
隣で菊丸君がどんな彼女自慢をしたのかを教えてくれているけどちょっとそれ恥ずかしいから聞けないよ。


「凛ちゃん?照れてんの?」
『や、何か第三者から聞くのって恥ずかしくないですか?』
「んーでも自分がどう思われてるか知りたくない?」
『本人から聞けるからなぁ』
「そっかぁ。俺はね本人から聞くのも好きだけどどうやって自分のこと周りに話してんのかなって知れるから第三者からの話も好きだよー。俺の彼女テレ屋さんだからあんまり直接言ってくんないしね」


そう言って菊丸君は照れたようにはにかんだ。
言われて見れば確かに気になるような気がする。ブン太はこれでもかって私のことを好きだって言動で表してくれるけど周りにどう私のことを話してるのかって今まで聞いたこと無かった。


「ね?聞きたくなったでしょ?」
『うん』


私の心を見透かしたように菊丸君が悪戯っぽく言った。
あ、でもブン太の試合にも集中しなくちゃ!


「菊丸次は俺と試合だよ」
「幸村とー?」
『あ』
「じゃあ凛ちゃんまた後でね!」
「椎名さんは丸井の試合ちゃんと見ててね」
『うん、分かった』


菊丸君の話はとっても聞きたかったけどどうやら幸村君と試合らしい。
ブン太の試合も見たかったからちょうど良かったかもしれない。
不二君とブン太の試合はなかなか白熱した展開だった。
どちらも楽しそうにテニスしてるなぁ。
あ、でも楽しそうにテニスをするのはみんな一緒かもしれない。


「負けちまったー!」
『惜しかったねブン太』
「僕も負けるかと思って少しだけヒヤヒヤしたよ」
「それ勝った人間に言われたくねぇ」
「僕も負けてらんないからね」
『二人とも楽しそうだったね』
「試合じゃシングルス多分しねぇからな」
「椎名さんは英二と何を話してたの?楽しそうだったよね」
『え』
「あ、そうだぞ凛。俺の試合所々それで集中してなかっただろい」


何てことを言ってくれたの不二君!?
ブン太が私のことをジトッとした目で見ている。


『さっきブン太が菊丸君と話してたこと?かな』
「何だよそれ」
「あぁ、何だか楽しそうだったね二人とも」
「あーあれか」
『うん』
「何の話をしてたんだい?」
「菊丸の彼女の話を聞いてただけだぞ」
「本当に?」
「ほんと。別にいいだろい」
「僕はそれでいいけどね。椎名さんは気になるんじゃないかって」
『えっ』
「あーじゃあ後からな」
『分かった』


予想に反してブン太の反応は微妙だった。
え、何を話してたんだろ?菊丸君は凄い楽しそうだったのにな。
私の頭をポンと触って不二君と次の試合に行ってしまった。
あ、私もボーッとしてちゃいけない。
足りなくなったスポーツドリンクの補充をしなくちゃ。


「凛ー」
『お疲れ様』
「おーすっげぇ疲れた」
『お弁当あるよ?』
「ん、お前のも食べるわ俺」
『疲れてるねぇ』
「午前ずっとシングルスだったんだよ。楽しかったけどなー」


午前の練習が終わって昼食の時間。
天気も良いし今日はみんなテニスコートのそれぞれ好きな場所で昼食を取るみたいだ。
部活中にブン太と二人でご飯って初めてかもしれない。
さっきの微妙な感じはもう無くなってたから良かった。


「さっきのやつな」
『ん?さっき?』
「不二と話してた時の」
『あぁ、何か嫌だった?』
「違ぇ、なんか菊丸とは彼女の話で盛り上がったけど不二に聞かれるのが気恥ずかしかったんだよ」
『そうなの?』
「おーアイツとそういう話すること今まで無かったからな」
『そっか』
「心配させたか?」
『少しだけ。でも理由が分かったから大丈夫だよ』
「ん、ならいいわ」
『お昼食べようか』
「今日のおかず何にしたんだ?」
『今日はハンバーグだよ』
「お前ケーキもあんのに弁当まで作ってほんと頑張るよなぁ」
『お弁当はまだ少しお母さんに手伝ってもらってるけどね』


最近はお弁当も自分で作るようにしてる。
お母さんは作るって言ってくれるけどちゃんと自分でも作れるようになりたかったんだ。
その方がブン太が喜んでくれるような気がしたから。
あれ、結局菊丸君と何を話したのかは教えてくれないらしい。
やっぱり後で菊丸君に教えてもらおう。
ちゃんと私のお弁当も美味しそうに全部食べてくれたから良かった。


午後の練習も頑張らないとな。
菊丸君と話す時間が少しでもありますように。


青学が練習試合にきたよ( *・ω・)ノ
長かったから二回に分けちゃうよ。
ブン太は菊丸とかジローとかがっくんと仲良さそうなイメージ。
2018/06/19

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