テスト返却

『ブン太?大丈夫だった?』
「おお、最後が国語のテストっつーのは気分がいいよな!」
『得意教科だもんね』
「まぁな。おい、お前らどーなったんだよ?」


木金でテストが全て返却された。
最後が国語だったから俺は今とても気分が良い。つっても凛ほどは良い点数取れねえけどな。
俺の席の前に座っている片岡とその脇に立ち竦んでいる青木に声をかけた。


『ちはるちゃん?青木君?』
「え、二人とももしかして赤点なわけ?」
「赤点は不味いだろ」


俺からの問いかけに返事がなかったのを心配してか凛と鈴木と上田からも声がかかった。
おい、マジかよお前ら。


「ぎ、」
「ギリギリセーフ!」
「なんだよ。それなら早く返事しろよ。心配して損しただろい」
「つーかほんとにギリギリでセーフだなこれ」
「おい上田!勝手に見んなよ!」
「私のテストまで持ってかないでよ上田!」
「どーいうこと?」
「先生の温情だろ?ほら」


上田が二人の答案を俺の机に並べる。
それを三人でまじまじと眺めるとなるほど。
三角やら加点やらでギリギリ赤点を免れたらしい。
きっとコイツらの顧問に頼まれたんだろうな。


「あー」
『でもほら、赤点を免れたのは事実だよ!』
「ギリギリのギリギリだけどな」
「上田そんなに言うなよ」
「そうだよ上田!」
「青木が赤点取ったらお前も困るだろ」
「多少はな」
「上田手厳しい」
『ちはるちゃんも良かったね?』
「うん、赤点取らなくてほんと良かったぁ」


俺の机から自分の答案を引っ手繰りそれを抱きしめて片岡がホッとしたような声をあげた。
赤点だったらバレー部の監督にに怒られるっつってたもんな。


「あ、そうそう!上田の彼女は大丈夫だったの?」
「彼女?誰が教えたと思ってんだよ。全部大丈夫だったぞ」
「さすが上田、文武両道とはこのことを言うんですね」
『上田君凄いねぇ』
「や、俺そこまで成績良くねえって。苦手教科が無いだけだし」
「お前それ嫌みかよ」
「は?何でだよ」


苦手教科が無いとか真田とか柳とか柳生みたいじゃねえか。幸村は化学苦手だけど薬品の臭いが苦手ってだけだもんな。
上田がアイツらと同じって考えたら少しだけ化け物みたいに見えた。


「おい、丸井何だよその目」
「や、苦手教科が無いって真田達と同じだと思って」
『あー柳君も柳生君も幸村君もだよね』
「テニス部って化け物揃いだよねほんとに」
「アイツらと同じにされても。俺は苦手教科無いけど得意教科も体育くらいだぞ」
「あー」
「おい、鈴木。その途端にがっかりした目で見るのは止めろ」
「あ、ごめん。つい」


そういうことな。
鈴木ががっかりしたのなんか少しだけ分かる気がする。


「そういやお前ら全員大丈夫なんだな?後なんだっけ?」
『ジャッカル君だよ』
「そうそうそのジャッカルってやつも行くんだよな?」
「あ」
『ブン太ちゃんと聞いた?』
「や、まだ聞いてねえ」
『梨夏は?』
「え、丸井か凛が聞くと思ってた」
「ちゃんと確認しとけよ?八人ってもう伝えちまったんだから」
「じゃあ上田の彼女も行けるんだね!」
「会えるの楽しみだなぁ」
「俺達は毎年行ってんだって」
『幼馴染みっていいねぇ』
「ま、ジャッカルなら大丈夫だろ」
「何泊で行くんだ?」
「何泊でも。一泊三千円な」
「やっす!」
『いいの?そんな料金で』
「シーズン終わりだからなー。毎年部屋余るから気にすんな」


そんな安くしてもらっていいのかよ。
上田はけろっとしてるけど。
まぁでも安くしてくれるって言うならそれはそれでいいか。


『じゃあまたあれこれ考えないとだね』
「何泊で行くかだよね?」
「最低三泊したい!」
「まぁそれくらいは泊まりたいよなぁ」
「んじゃとりあえずそう伝えとくわ」
『上田君ありがとう』
「ジャッカルにちゃんと確認しといてな」
『うん』


そういや部活でもまた合宿あるんだよなぁ。
神奈川が海だからって山で合宿。
今年はどこに行くんだろな?
つーか明後日柳の誕生日だ。
今思い出したわ俺。ちゃんと考えないとな。


部活が終わって凛を連れて幸村の所へ向かう。


『どうしたのブン太』
「色々幸村に話したいことあんだよ」
『私も?』
「もうすぐ柳の誕生日だろ?その話も含めてな」
『柳君の誕生日かぁ。何作ろうかなぁ』
「なんだよ知ってたのか」
『真田君の誕生日の時にジャッカル君に聞いた』
「そういうことな」


顧問と話すことがあるからと早めに自主練を切り上げた幸村は既に部室に戻っていた。
他には誰もいねえしちょうどいいな。


「二人してどうしたんだい?」
「ちょっと話すことあってな」
『柳君の』
「そうか、蓮二の誕生日だね」
「そうそれ」
「ちょうど良かった。関東大会前だけど明日青学と練習試合があるんだよ」
「それがなんでちょうど良かったんだよ」
「確か青学の乾は柳と誕生日一日違いだろ?合同で誕生日祝いしたらきっと蓮二も喜ぶと思うんだ」
『合同で?』
「突然だけどケーキ二つ頼めるかな?」
『明後日用意するつもりだったから大丈夫だけど乾君のケーキ何がいいかな?』
「つーか何で合同で誕生日祝いしなきゃなんねえのさ」
「一日前に祝われることは蓮二も想定しないかなと思ってね」
「あーそういうことな」
「ケーキは椎名さんに任せるからね」
『分かった』
「それ結局バレねえ?」
「大丈夫だよ。俺に任せておいて」


まぁ幸村がこう言うのなら大丈夫なんだろな。
凛のケーキが一日二種類食えるのは得した気分かもしんねぇ。
ま、真田の誕生日にも食ったけどな。


「あ、それと」
「なんだい?」
「今年はどこに合宿行くんだ?」
「そうだなぁ。赤也を連れてったこと無いから柳の伯父さんのペンションに行こうかって話してたんだよね」
『ペンション?』
「四年前も夏の合宿はそこだったんだよ」
「俺達今年最後だしちょうどいいかもな」
「丸井とはこれで一緒に戦えるのは最後だからね」
「まぁな」
「食事は椎名さんに任せちゃうけど大丈夫かな?」
『いつ行くの?』
「七月の終わりか八月の頭だね」
「全国大会の前な」
『分かった!下手ではないけど修行しとくね!』
「簡単なもので大丈夫だよ。蓮二とレシピ考えてくれていいし」
『頑張るね』
「あんま気負わずな」


幸村の言った言葉がじわじわと染みていく。
そうか、幸村達とテニス出来るのも後少しなんだな。
悔いを残さねえようにしないとな。
そんで俺は凛とパティシエとショコラティエになるんだからな。


「俺、ちょっと自主練してくるわ!」
「頑張ってね丸井」
「おお!」
『私も仕事してくるね』
「じゃあ俺も赤也をしごいてこようかな」
「赤点でも取ったのか?」
「英語が危なかったんだよね。俺の担任が英語の教科担任だったんだけど」
「あー」
「まけてくれたらしいからね」
「そういうことな。なら仕方無い」
「そういうことだね」


赤也も片岡や青木みたいに教科担任から温情を貰ったんだなこれは。
幸村の担任ってのがまぁ運の尽きだな。
この日はそっから最後まで赤也は幸村にしごかれていた。
ドンマイ赤也。


おっと!日常回になってしまった!
明日は青学が遊びにくるよ!(違)
2018/06/02

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