部長からの相談

「椎名さん?ちょっといいかな?」
『幸村君?何かあった?』
「ちょっとお願いがあってね」


珍しく仁王君じゃなくて幸村君が洗濯室に現れた。
幸村君から私にお願いってなんだろう?


「21日の県大会予選トーナメントの日が弦一郎の誕生日なんだよ」
『真田君の誕生日!』
「だから試合の後に弦一郎の誕生日を祝ってあげようと思ってね」
『ケーキですか?』
「うん。ま、アイツにケーキは似合わないけどさ。せっかくの誕生日だから」
『サプライズですか?』
「そうだね、その方が楽しそうだね」
『何のケーキにします?』
「椎名さんに任せるよ」
『甘さ控えめで考えてみます』
「頼んだよ」


それだけ言うと幸村君は練習に戻っていった。
真田君の誕生日かぁ。
何のケーキ作ろうかなぁ?
ビターのチョコレートタルトでもいいかなぁ?
せっかくだからミルクチョコとビターチョコ両方作ろうかな。
そしたらブン太とか赤也君も喜んでくれるよね。


「真田の誕生日?」
『うん。幸村君がケーキ作ってって』
「アイツがケーキなぁ」
『いつも皆で誕生日お祝いしてるの?』
「まぁな。もう毎年恒例みたいになってんぞ」
『楽しそうでいいねえ』


いつもの帰り道。
ブン太と自宅までの道をのんびり歩く。
五月は風が気持ちいいなぁ。


「凛の誕生日もちゃんとお祝いするからな!」
『まだまだ先だよブン太』
「今から楽しみにしておけよ」
『もう』
「あ、今度うちにメシ食いに来いよ」
『ブン太のうち?』
「母さんが連れて来いって」
『ブン太のお母さん?』
「ちび達も会いたいって煩いからな」
『弟君達可愛かったよねー』


ブン太のお母さんと会うのは緊張しちゃいそうだけどあのミニブン太二人には会いたいかもしれない。


「28日の勉強会の後ならいいだろい?」
『うん、そうだね』
「アイツら大喜びだぞきっと」
『ちょっと緊張しちゃうけど楽しみにしておくね』
「お前が来るなら夕飯も豪華になるぞきっと」
『そうなの?』
「どこのうちも客が来るとそんな感じにならねえ?」
『確かに。あ、ならブン太も今度うちに遊びにおいでよ』
「それなら一緒にケーキでも作るか」
『わ、いいねいいねー』


ブン太はうちに来るのに緊張とかなさそうだ。
私が色々考えすぎなのかなぁ?
うちのお母さんに初めて挨拶した時もそんな感じだったよね確か。
ブン太と話してるとやりたいこと沢山尽きないなぁ。
ちはるちゃん達とも遊びに行きたいし結華ちゃん達ともまた遊びたいし。
勿論二人でだって出掛けたい。
沢山沢山楽しみだなぁ。


「凛、顔がにやけてんぞ」
『ブン太とやりたいこと沢山あるなぁって』
「そりゃ間違いねえな」
『ブン太は何が1番やりたい?』
「あ?そんなの決まって…や、何でもない」
『え?どっち?決まってるなら教えてよー』
「聞いて後悔しねえって約束する?」
『ブン太が私とやりたいことでしょ?』
「おう」
『後悔するようなことないと思うんだけど』


いったい何をそんなに言いづらいことがあるんだろ?


「凛とやりたいことは色々あるけどまぁ俺も健全な男子高生だからな。ってことはそーゆーことだ。あー…こんだけ言えば分かるだろい?」


全く想定外のことを言われた気がする。
そ、そっち?
考えてなかったから凄いびっくりしたしなんだかあの時のことを思い出して恥ずかしい。


『遠回しの方が恥ずかしくない?』
「俺も言ってから気付いたっつーの」


私だけかと思ったけどブン太の頬もほんのり赤く染まってるみたいだからホッとした。


『いつでも大丈夫だよ』
「おー」
『けどなかなかタイミングがね』
「難しいよなぁ」


世の中の高校生の皆さんはそこら辺どうしてるんだろう?
考えてみてもよくわからなかったから明日ちはるちゃんと梨夏にも聞いてみよう。


「まぁしばらくは我慢しとくわ」
『分かった』
「凛も我慢しとけよ」
『なっ!』


さらりと恥ずかしいことを言われた気がする。
それってまるで私がブン太としたいみたいじゃん。
や、別にしたくないわけじゃないけど。
言い返したいのい返す言葉が見つからない。


「凛は俺に触りたいとかねえの?」
『え?』
「俺、毎日お前に触りたいのになー」
『だって毎日触ってるよ?』
「俺は手繋ぐだけじゃ足りないんだって」
『私はブン太が隣に居てくれたらいいから』
「ほんっと欲が無いよなお前」
『あるよ!煩悩の塊だよ!』


それなら煩悩を言ってみろよって言われて大した数が言えなくてブン太に爆笑されたんだった。
そんなに笑わなくてもいいのに。


「ま、でも俺はそんな凛のこと好きだぜ」
『笑いながら言うことじゃないよ!』
「事実だって」
『それは知ってるよ!』
「凛も少しは言うようになってきたよなぁ」


私の言葉にブン太はどこか嬉しそうだ。
そんな喜ばせる様なこと言ったかな?


『何で?』
「前だったら俺が好きっつったら無条件で照れてただろい?今じゃ突っ込む余裕あるもんな」
『慣れたとかじゃないよ』
「分かってるよ。あれだろ?俺がお前のこと好きだって確信をちゃんと持ってんだろ」
『疑ってたとかじゃないよ』
「それもちゃんと分かってるって。なんつーか上手く言えないけどこの変化が嬉しいんだよな」
『そうなの?』
「照れてるだけの凛も可愛かったけども」
『もうまたそうやってー』


確かに少しだけ余裕が出てきてるのは事実だ。
最初は斎藤さんのことも少しだけ不安だったけどこないだはそんなことなかったもんな。
ブン太が私のことをちゃんと好きでいてくれてる自信がついたんだと思う。


『後四日で県大会予選トーナメントだねえ』
「まぁ県大会だからな。心配することねえぞ」
『常勝立海だもんね』
「気付いたら終わってんな」
『その後に戻ってきてから真田君の誕生日会?』
「そんな感じだな」


バタバタするだろうけど真田君の誕生日だし幸村君に頼まれたんだ。
美味しいケーキを作ろう。
その次の週には決勝リーグと勉強会とブン太のうちでご飯だし。
今月末まで予定が沢山だ。


ブン太が1番やりたいことは当分は無理そうだよね。
こればっかりは我慢してもらうしかないと思う。
ブン太なら大丈夫かな?
さて、明日の差し入れはミニチョコレートタルトでも作ってみよう。
21日の試作品だ。
評判が良かった二つを当日の誕生日ケーキにするのだ。

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