失恋サッカー部

※二人は出てきません
青木目線


「青木の失恋を祝しましてー」
「かんぱーい!」
「「「「カンパーイ!!!」」」」
「お前ら楽しんでるだろ!」


丸井達を抜いた全員がカラオケのパーティールームに集まっている。
カラオケ屋の息子が格安でとってくれた。
みんながわいわいと楽しんでいる。


「青木ー!泣くなよー!」
「泣いてねぇよ!お前逆に泣かすぞ!」
「青木こわーい!」
「まぁまぁ青木は失恋したんだから気がたってんだよ」
「お前らほんとに慰める気あるの?」
「「「もちろん!」」」


代わる代わる俺の横に来て慰めの言葉をかけていく。
いや、慰め半分からかい半分だなこれ。
ただ単にクラスで騒ぐ口実みたいなもんだ。


さっき丸井から電話がきた。
あいつ俺が椎名のこと好きなのも告白したのも分かってんのにわざわざ俺に電話してきやがった。
椎名のことは何にも言わなかったけどあれだよな、牽制してんだよなこれ。
はぁと大きな溜め息を吐く。
まぁ失恋すんのは分かってたよ。ただこんなにすんなりあいつらがくっつくと思ってなかったから少しだけ面白くなかった。


「青木!怖い顔してるよ」
「あー片岡か。しゃーねーじゃん」
「まぁしょうがないけどさ!これですっぱり凛のことは諦めて次に行けばいいんだよ!」
「まぁな」
「青木はモテるんだしさ」
「いやまぁ否定しないけどさー」
「そこは少しは謙遜しろよ!」
「いや、俺モテる自覚あるし」
「あ!そうだ!こないだ隣のクラスの斎藤に告白されてたろお前?」
「「斎藤さん!?」」
「断ったよ。あいつ美人なんだけど何か性格キツそうじゃん?」
「青木!ちょっとこっちきて!」
「ん?片岡と鈴木どーしたんだよ、急に怖い顔して」


近くに座っていた同じサッカー部のやつにさらりとまた俺のプライベートを暴露されると片岡と鈴木に部屋の外へと出される。


「いきなりどーしたんだよお前ら」
「さっきの話!」
「斎藤さんに告白された話!」
「「詳しく聞かせて」」
「なんだよ、こえーな」
「「はやく!」」
「大した話じゃねーよ。昨日の始業式の帰りに告白されただけ。んで俺は断った。それで終わり」
「他には何にも言われなかったの?」
「何もなかったと思うぜ。お前ら何を心配してんの?」
「何でもない」
「は?いや気になるだろ。何で斎藤のことなんか気にしてんの?」
「青木、戻ろ。うちら二人がくっついて浮かれてたけど大事なこと忘れてた」
「は?」
「いいから、戻ろ」


俺の話を聞くと二人でごにょごにょと話してる。
何なんだよ。
聞いても答えてくれないから渋々と部屋へと戻った。


「みんなー」
「はーい注目ー!」


なんだ?今度は何だって言うんだ?
部屋に戻って座ると片岡と鈴木が手を叩く。
唄ってたやつもカラオケを止めて二人の方を向く。
カラオケ止められたら普通キレたりしねーのかな?
あーこれがB組の良い所か。


「大事なこと忘れてたの」
「青木の失恋のおかげで丸井と凛が上手くいってて浮かれてたんだけどね」
「俺の失恋関係ねーじゃん!」
「はい、青木は黙って聞いててー」
「丸井は我が立海常勝男子テニス部のレギュラーなのは皆知ってますね?」
「そりゃ有名だからな」
「モテてたもんねー」
「まぁ最近は他校に彼女いるっつって差し入れ貰わないし何なら知らねー女には愛想もわりーし笑わねーしだったけどな」
「そんな丸井に同校の彼女が出来たとしたら?」


「「「「「「「あー」」」」」」」


俺も片岡の問いかけに「あー」と声が漏れた。
俺らサッカー部だってモテる。かなりモテる。
けどテニス部はその比にならないぐらいモテる。
丸井は何でかここ最近女子を遠ざけてたけど、その前はかなりモテてた。
二人の言いたいことはなんとなく分かった。


「うちらはいいよ」
「何なら二人をこうやって祝福したくらいだし」
「でも他のクラスの女子がどう思うかは分かんないよね」
「まぁそうなるわなー」
「凛さんは帰宅部だしうちのクラスは仲良しだからそんなに気にすることでもないとは思うけど」
「丸井もいるし大丈夫なんじゃねーの?」
「そこで斎藤さんですよ」
「なんでそこで斎藤なんだよ」


何でその話の流れで斎藤の名前が出てきたのかさっぱりなんですけど。
鈴木がはぁと大きく溜め息を吐く。
なんだよ、俺だけわかんねー話なわけ?


「青木は凛のことしか見てなかっただろうし去年は凛も居なくて部活に打ち込んでたから知らないだろうけどねー」
「うちら去年もかなり大変だったんだからね!」
「はぁ?何がだよ」
「丸井の愛想がなくなったのは分かってる?」
「おぉ、急にだったよな?夏ぐらいだっけ?」
「5月ね」
「あの時ね、丸井はA組の斎藤さんに仁王君と二股されてたのよ」
「はぁ?俺全然知らねー」
「まぁあんたはサッカーと凛にしか興味なかっただろうしね」
「つか何でお前が知ってんだよ」
「ジャッカルに聞いた。と言うか問いただした」
「何でまた桑原にそんなこと聞く必要があったんだよ」
「あんたねー丸井があんな風になって最初の被害者誰だったと思ってんのよ!」
「B組の女子だったんだからね!」
「訳も分からず急に丸井があんな風になったから周りの女子達はその怒りの矛先こっちに向けてきたんだよ」
「だからジャッカルに聞いた。あ、この話丸井にしないでよ。あいつに気を遣わせたくてこんな話してるんじゃないんだから」
「お、おう」
「かなり大変だったよねー」
「そうそう直接受け取って貰えないとなるとうちらに渡せって酷かったもんねー」
「あー俺も言われたことあるわー」
「周りが諦めるまで大変だったよね」
「丸井が他校に彼女いるって言ってからおさまったっけ?」
「そうそう確かそんな感じ」


そんなことがあったとか。知らねー。
つか女ってこえーのな。


「でね、ここからが本題」
「まだ本題じゃなかったのかよ」
「私ね、その後になんとなーくそれとなーくA組のこに話を聞いたの」
「斎藤のこと?」
「そう、何でそんなバレるような二股をしたのか」
「あーまぁな。丸井と仁王って仲良かったもんな」
「寂しかったんだと」
「はぁ?」
「そのタイミングで仁王君に告白されたらしいよ」
「いやでも俺は斎藤と丸井が付き合ってたなんて知らねーよ?」
「そこなんだよねー。誰にもバレたくないって言ったの斎藤さんなんだよねー」
「したら寂しいもしょうがなくね?」
「まぁ普通はそうなるよね」
「それで二股か。女ってまじ怖い」
「あんなに美人なんだから内緒にしとかなきゃ良かったのにな」
「それにね斎藤さんは仁王君より丸井のが好きだったらしいよ」
「マジか」
「そして今度は凛を好きな青木に告白したわけでしょ?」
「あーあーあーなんとなく分かったわ」
「丁寧に説明したかいがありました」
「俺が椎名さんに告白したの知られたらマズイ、よな?」
「多分丸井と凛が付き合ってもマズイかもしれない」
「「「「だよねー」」」」


女子達が一斉に頷いた。
そんなにヤベーの?


「でも丸井はきっともう凛と付き合うのを隠したりはしないと思うんだ」
「トラウマだろうしね」
「何かあるかもしれないし」
「何にもないかもしれない」


「つまり俺達に気をつけとけって言いたいんだろ?」
「まぁそんな感じかな」
「ごめんね、みんな」
「別にちーちゃん達が悪いんじゃないし」
「そうそう丸井と凛ちゃんが悪いわけでもないじゃん」
「少し気を付けて見てればいいんだろ?」
「うん、ありがとう」


クラスの中での意見がまとまった。
うちのクラスやっぱすげーわ。
誰かしら異論とかないわけ?


「お前らすげーな」


俺がぽつりと呟くとみんなが驚いた顔をしてる。
どーしたんだこいつら?


「青木のがすごいでしょ」
「それは青木でしょー」
「ぶはっ!それお前が言うの?」
「お前が一番すげーんだよ」


皆がそれぞれに俺のことを褒める。
いや、急に褒められても。
なんだよどーしたんだよ。焦るだろ。


「普通さ、恋敵と自分を振った相手の心配をフラれたその日にしないよね」
「「「「「「ねー(なー)」」」」」」


皆がうんうんと頷いた。


「いや、丸井はいいやつだし。普通、好きだった女を嫌いにはならねーだろ」


「青木が幸せになれること祈るよ」
「俺もー」「あたしも!」「はーい、俺もー」「私もです」


なんだこいつら。くそ、泣きそう俺。
すっと片岡がハンカチを差し出してくれたからそれを受けとる。


「泣いて明日から元気出せ」
「んで可愛い彼女見つけましょー」
「よし、カラオケすんぞカラオケ!」
「あたし唄うー!」
「おー唄え唄え!」
「こうやって集まるのも後何回出来るか分かんないもんねー」
「次は丸井達も呼ぼーぜ」


再び周りが賑やかになってきた。
あぁマジでこのクラス良いクラスだな。
スンと鼻をすすって隣を見たら片岡が微笑んで俺を見てた。


こいつ意外と可愛いのな。

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