赤面ショコラティエ

「っと、時間くっちまったな。続きさっさと終わらせるか!」
『うん、ごめんね』
「なんでお前が謝るんだよぃ」


丸井君の腕の中から解放される。
私、今凄い顔してると思う。
ハンカチで涙をごしごしと拭う。
まさかこんなに早く恋が実るなんて……


『もしかして夢?』
「ぶっ!お前何言ってんの!俺はちゃんと目の前にいるだろ!」


ポツリと呟くと丸井君が吹き出した。
そして私の頭をくしゃくしゃと優しく撫でる。
ちょっと恥ずかしい。嬉しいけど恥ずかしいねこれ。
机に戻る丸井君の後に続いた。


「失礼シマース」
『失礼します』


プリントの束を抱え職員室へと向かう。
担任は私達の姿を捉えると片手を上げた。


「おー!ご苦労様ー!そこの机に置いといてくれな。なぁ、お前らもう教室行った?」
「は?」
『え?』
「あぁ、まだなのか。うちのクラスほんと仲いいよなぁ。3年B組、俺なんかもう金八先生になれそうだよ!」
「『はぁ』」
「ま、教室行ったらわかるから。お疲れ!」


先生の言ってることがさっぱり分からない。
教室がどうしたと言うのだろうか?
二人で首を傾げながら教室へと戻る。
誰か残ってるのかと思ったら誰も居ないようで静かだ。
廊下から見る限り不思議な所はない。


ガラッと丸井君が教室の扉を開けた。


「うわ、マジかよこれ」
『わぁ』


二人とも驚いたと言うか少しだけひいた。
ような声が出た気がする。


パッと見は誰も居なくなった静かな教室だ。
その一角がいつもと違いカラフルに彩られている。
そう黒板だ。
大きく「椎名丸井おめでとー!」と書いてあり周りにみんなのメッセージが名前付きで書いてある。
二人して呆然とした。


「すげーなこれ」
『うん、みんなの気合いが入ってるよね』


椎名を幸せにしなかったら丸井!許さねーからな!青木ケースケ

凛!四年間の片思い成就おめでとー!鈴木梨夏

丸井!凛のこと宜しく頼むね!幸せに出来なかった時はどうなるか分かるよね?(笑)片岡ちはる

などなど全員がみっちりコメントを残している。
なんだか嬉しいような恥ずかしいような。


そろりと丸井君を見ると同時にこっちを見てくれた。
そして二人で顔を合わせて笑った。


「先生の言ってたのはこれか。これ、先生見たってことだよな?」
『あのニヤニヤ顔の意味が分かったね』
「あいつら何でもう知ってんだよマジかー」


がしがしと丸井君が照れくさそうに頭をかいた。
少し顔が赤くなってる?かな?


「凛、お前顔赤いぜ」
『ままま丸井君だって顔赤くなってるよ!』
「いいや、お前の方がぜってー赤い!」
『いや、これ嬉しいけどかなり恥ずかしいよ』
「まーな。あいつらよくここまでやるよな」


ちょっと待ってろと言い丸井君がケータイを取り出し何やら誰かと電話をし始めた。
んーこれ明日には消されちゃうよなー。
みんなの力作だしなー。
んー写メ撮っていいかなぁ?丸井君は楽しそうに電話中だ。
その間に私は黒板をカメラにおさめる。
全体図から個人のメッセージが読める様にと何枚か追加でパシャリ。


「終わったぜぃ。お前写メ撮ったの?」
『うん、このまま残しては帰れないし。でもみんなからのメッセージ消しちゃうのは惜しいから』
「まぁな。あ、後で俺にも送っといて」
『いいの?』
「お前いいのってなんだよ。いいに決まってんだろ?俺彼氏なんですけど。てか昔もこんなやりとりあったな」
『わ、分かった。送っとくね。電話何だったの?』
「あー青木に電話した。お前何やってんだよって。そしたら今みんなでカラオケだとよ」
『え?みんな?部活は?』
「それが笑っちまったのがよー俺らの5、6限目の態度がおかしかったのを心配して全員部活休んだらしーぜ」
『えぇ!』
「俺と凛が資料室で話してたのを片岡と鈴木が聞いてたらしい。お前気付いた?」
『全然!』


だよなーとまた丸井君が笑う。
釣られて私も笑顔になった。


「カラオケは青木を慰める会だから遠慮しろってよ」
『青木君が自分で言ったの!?』
「いや、途中で片岡が青木のケータイ奪って教えてくれたぜ」
『そうなんだ』
「まぁ誘われても行かねーけどな」
『何で?』
「いや、部活も休みになったしせっかくだから二人でデートしようぜデート」
『えぇ!』
「俺とデートすんの嫌なの?」
『いや、違くてそうじゃなくて!……展開が速くてついていけない』
「お前やっぱり面白れーのな!」
『面白くないよー!打算的な女だよー!』
「ほんとに打算的な女って自分で自分のこと打算的とは言わねーだろ。ほら、帰るぞ!」
『あ、丸井君待って!』
「何だよ、まだデートに文句あるのかよー」
『そうじゃなくて黒板!消しとかないと!』
「あ、わりー。そうだな」


二人で黒板を綺麗にし教室を出る。
そっと片手を取られると手を繋ぐ形になった。


『ままま丸井君!』
「いいじゃん。俺お前の彼氏だしー」
『恥ずかしいよ!』
「こんなカップルそこらじゅうに沢山いるだろ!」
『えぇ』
「よし、ケーキバイキングいこーぜ!」
『ケーキは食べたいけどやっぱり恥ずかしいよぉ』
「お前は俺の彼女だから、気にすんな!顔かなり赤いぞ」


私の手を握りスタスタと昇降口までの廊下を歩いていく。
周りのざわざわとした喧騒が彼には聞こえないようだ。
恥ずかしい。顔がかなり熱い気がする。


でも初デート楽しみだな。
また新しいケーキ発見出来たらいいな。

back
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -