不穏

あー今日も疲れた。
合宿になると普段の部活よりも練習量が増える。
その分他校の奴らと試合出来たりするのはいいんだろうけど。
三校連続で試合させるとか流石にハード過ぎるだろい。
最初が青学で次が四天宝寺だろ?最後が沖縄の比嘉か。
曲者揃いで本当にキツかった。


今は夕飯と風呂が終わった就寝までの自由時間だ。
凛まだ起きてるよなー?
ちょっと連絡してみるかな。


「丸井?いるかい?」
「おう、いるぜー」


部屋の扉をノックする音が聞こえる。
これは幸村の声だな。
ちなみに今は部屋に俺一人。
ジャッカル達はまだ風呂だ。多分真田と時間が被らない様にしたんだろう。
返事をすると扉が開き、そこには幸村と真田と柳が居た。
三人してどうしたんだ?


「ちょっと話があるんだけどいいかな?」
「大丈夫だぜ。三人してどうしたんだよ」
「俺もまだ詳しい話は聞いていない」
「柳もまだなのか?」
「俺と弦一郎が聞いた話だからね」
「なんだよ」
「ちょっと場所を変えようか」


幸村の空気がぴりついている。
なんだ?俺別に今日は試合負けてねぇぞ。
真田がだんまりなのがまた怖ぇ。


「俺何かしたか?」
「丸井が何かしたわけじゃないよ」
「お前が悪いわけではない」
「ちょっとね、俺も機嫌が悪いんだ」
「精市の気分を害したとなると、部長副部長のミーティングの時か?」
「蓮二は流石だね。そうだよ、その時の話」


誰にも聞かれたくないと幸村が言うから俺達は外までやってきた。
無人のコートまで四人で歩く。


「柳生達はいいのか?」
「全員で移動すると目立つだろう?」
「明日また幸村が話すことになっている」
「で、何があったんだよ。お前かなり怒ってんだろ」
「その前に丸井、1つ聞いてもいいかい?」
「なんだよ」
「最近跡部と電話しなかったかい?」
「チッその話かよ」
「精市、俺には何の話かさっぱり分からないんだが」
「直ぐ分かるよ」


あぁ、なんで幸村がこんなにピリピリしてるのか分かった気がする。
幸村は自分のことで滅多に怒ったりしない。
これは多分俺のために怒っているんだろう。


「26日の夜にな。電話がきたぜ」
「何て?」
「お前の学校に椎名凛って名前の女がいるのは本当かって。それが俺の彼女なのは本当かって確認だったよ」
「何故、跡部が椎名のことを」
「そこまで聞いてねぇ。興味無かったしな」
「そう」
「で、お前は何をあいつに言われたんだ?」


あの電話には俺はかなり驚いた。
何で跡部が凛に興味を持つのかさっぱり分からなかったからだ。
でも今日で何となく分かった。
凛は小さい頃に跡部に会ったことがあったんだな。


「ミーティングが終わってからね、跡部に弦一郎と二人で呼び止められたんだよ」
「その時に跡部が言ったんだ。お前のとこのマネージャーうちに貰うぞと」
「急に何を言ってるんだって言ったんだけどね」
「凛はそう簡単に人にやれねぇぞ」
「まぁ弦一郎が怒鳴ってそこで話は終わったんだけどね」
「何て言ったんだ弦一郎」
「椎名は犬や猫ではない!貰うなどと軽々しく言うものではない!」
「勿論だよ。まぁそのせいでどうして跡部がそう思ったのかって話が聞けなかったんだけどね」


跡部って馬鹿なんじゃないかって思う。
うちに貰うぞってことはそういうことだよな?立海から氷帝ってことだろ?
凛の意思ってのはそこに入ってなさそうだし。凛が氷帝に行くなんて絶対に無い、と思う。
けど何故かざわりと不安が過った。
だから合宿に連れて来たくなかったんだよ俺は。


「だからね気を付けないといけないと思ってね」
「そうだな。凛は氷帝にはやれねぇ」
「椎名は良くやってくれているからな。マネージャーが居なくなっては困る」
「マネージャーとしてもだしね、お前の安定剤が居なくなったら俺達も困るんだよ」
「椎名と付き合う様になってテニスが昔に戻ったからな」
「おう。ありがとな」


跡部と俺も一回話さなきゃなんねぇよな。
俺は凛の彼氏なわけだし。
あいつ諦め悪そうだから嫌なんだよ。


「柳生達にも俺から話しておくから」
「分かった」
「後、跡部に挑発されてテニスの試合とか勝手にしないでよ丸井」
「お、おう」
「お前もだよ弦一郎」
「無論だ」
「一番心配なのは赤也だが」
「赤也は前科があるからな」
「黙ってても跡部から話したら一緒だもんなぁ」
「俺が見張っておこう」
「弦一郎が見てるなら大丈夫だね」
「一応誰かしら赤也にはつくようにしておこう」


赤也は中2の時に勝手に試合した過去があるからなぁ。
俺も気を付けないとな。
幸村に釘を刺されてなかったら跡部の挑発に乗ってたかもしれねぇ。


「幸村、真田、柳ありがとな」
「当たり前のことだよ」
「椎名は良く働くマネージャーだ。先程蓮二も言ったが居なくなっては困る」
「俺達はお前が安定してるのも嬉しいからな」
「おう」
「これで一応話は終わりかな」
「凛にはどーすんだ?」
「それはお前が決めることだよ」
「俺?」
「跡部から聞くよりはお前から話した方がいいとは思うが」
「自分で決めるのが一番だろう」
「さぁ戻ろうか。就寝時間が近付いてるからね」


幸村に促されて合宿所へと四人で戻る。
俺が凛に話す?
跡部のことを?
何て話せばいいのかさっぱりわかんねぇし。


「丸井、ごちゃごちゃ一人で考えても答えは出ないぞ」
「柳」
「椎名はどんなお前でも受け止める度量はあると思っていたのだが」
「そんなこと分かってるよ」
「怖いのは分かるが。お前の口から聞きたいと思うはずだ」
「分かったよ、話してくるわ俺」
「そうするといい」


迷っていたら柳に背中を押された。
そう言えば凛と付き合う前もこんな感じだったろなぁ。
俺、友達にもほんと恵まれてるわ。
俺の不安が杞憂で終わりますように。
凛に部屋に行くとの連絡を入れた。

back
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -