小さな悩み事

私は今かなり悩んでいる。
忘れてたわけじゃないけど、気付いたら丸井君の誕生日まで一週間きっていた。
忘れてたわけじゃないんだよ!ちちち違うんだよ!
色々ありすぎてプレゼントを考えてる余裕がなかったんだ。


どうしよう。ケーキを作るのはもちろん決まってるけど、ちゃんとしたプレゼントもあげたい。
何をあげたら喜んでくれるかな?


「難しい顔をしとるのう」
『仁王君?また休憩中?』
「そうじゃ。まーくんは休憩中なり」
『そんな困った顔をしてた?』
「しとったな」
『そうか』


いつものように部活で洗濯室にに居たらいつものように仁王君が表れた。
もう慣れたものだ。
きっとこないだのことがあったからわざわざ様子を見に来てくれてるんだろう。
タオルを乾燥機へと移してベンチへと座る。
仁王君は入り口を開けたままその場に立っている。これもいつもだ。
あぁきっと誰に見られても大丈夫な様にしてるんだなぁ。


「何を笑ってるんじゃ」
『え?笑ってた?』
「一人でニヤニヤしておったぞ」
『みんな優しいなって思ってただけだよ』
「なんじゃそれ」
『ふふ、分かんなくていいんだよー』
「それで何を悩んでおった?」
『え?』
「また何かあったんか?」
『違うよ』


仁王君が急に真剣な顔付きをする。
あ、これ何かきっと勘違いしてる。
慌てて否定をする。そうだ、丸井君も居ないし仁王君に聞いてみよう。


『丸井君の誕生日プレゼントどうしようかなぁって』
「あぁ、そろそろブンちゃんの誕生日じゃな」
『ケーキはホールで作るんだけどさ。ちゃんとしたプレゼントもあげたいなぁって』
「ケーキもちゃんとしたプレゼントじゃろ」
『そうなんだけど、せっかくだから残るものをプレゼントしたくて』
「そんなものか?」
『うん、だから悩んでる。必要ないものはあげたくないし』
「お前は相変わらず真面目じゃの」
『真面目じゃないよ。喜んでほしいだけなの』
「何をあげても喜ぶと思うがのう」
『それが困るんだよー』


仁王君に相談してもちゃんとした答えは出なそうだ。
このままじゃ本当にケーキだけになってしまう。
二人でうーんと悩んでると仁王君が何かを閃いたようだ。
手招きをされたのでそちらへと行く。


「ブンちゃんが喜ぶことなら分かるぞ」
『え?何々?教えて?』
「それはのう―――――」
『えっ?』
「いいから。やってみんしゃい」


仁王君が言ったのはとても簡単なことだった。
そのアドバイスを告げて練習へと戻って行く背中を見送る。
本当にそんなことでいいの?
これなら出来そうだ。あぁでも結局それは残るプレゼントじゃないよ!
私は再び頭を悩ませた。


洗濯も終わりコートで試合のスコア付けをしてる最中。
コートには赤也君と丸井君。
隣には柳君がいる。あ、柳君に聞いたら良さげなアドバイスが貰えるかもしれない。


『柳君、相談があるんだけど』
「どうした?何かあったのか?」


仁王君と同じ反応に思わず苦笑する。
これきっと他の人に言ってもそんな反応するんだろなぁ。
丸井君、テニス部の皆は本当に優しいんだねぇ。


『丸井君の誕生日プレゼント』
「そっちか」
『それしか悩んでないよ』
「あぁ、そうだな」
『何か欲しいもの知らない?』
「ふむ、最近の丸井の欲しいものか」
『本人に聞きたくなくてさ』
「聞いた方が早いと思うぞ」
『でもやーなーのー』
「椎名が」
『あげたものなら何でも喜ぶだろうって意見は却下します』
「それは困ったな」


柳君が続けそうな言葉を先回りして却下すると隣で苦笑いをしてる。
それはもう仁王君に聞いたんだよ。
ごめんよ柳君。


「中学の時に欲しかったのはわたあめの機械だったぞ」
『あぁ、お菓子作るおもちゃ喜びそうだよねぇ』
「弟達と遊べるだろうしな」
『うーん』
「しっくり来てないようだな」
『それもいいんだけど』
「では丸井の好きなメーカーのリストバンドではどうだろうか?」
『リストバンド?』
「最近新しいのを買おうか悩んでいたからな」
『おお!じゃあそれにする!』


やっとやっとプレゼントになりそうな情報を柳君から教えてもらう。
新しいのを買うか悩んでいたのならプレゼントしても困ることはないだろう。
帰ってから調べてみよう。


『柳君ありがとう』
「役に立ったのなら良かった」
『かなり役立ちました!』


後は何のケーキを作るか考えるだけだ。
最近チョコレート尽くしだったからバースデーケーキはチョコレート以外のものにしようと思ったんだ。
二人で行ったケーキバイキングで食べたショートケーキの生クリームを再現出来たらいいなぁ。


「凛」
『ん?なぁに?』
「今日何かいいことあった?」
『何で?』
「部活終わってすげー楽しそうな顔してんじゃん」
『あー、あったあった!』
「何があったんだよ」


部活が終わった帰り道、丸井君と手を繋ぐのもだいぶ慣れてきた。
機嫌が良いことを丸井君に突っ込まれた。
ついその勢いでご機嫌なことを言っちゃったけどその理由を伝えることは出来ない。
どうしようかな?内緒とか言うと多分不機嫌になるしなぁ。


『今は内緒?』
「なんだよ気になるだろい」
『ちゃんとそのうち話すから』
「やだ」
『えぇ、ワガママだよー』
「凛、今話せって」
『今は駄目ー』
「俺に隠し事すんの?」


とりあえず内緒って言ってみたけど、やっぱり不機嫌になっていく。
でもでもこれ絶対に言いたくない。
丸井君にも不機嫌になってほしくないけど。


『隠し事とかじゃなくて来週になったら分かるから』
「んー」
『丸井君に隠し事したいわけじゃないんだよ。でも今週は駄目なの』
「来週になったら話してくれんの?」
『約束する!』
「お前こうなったら絶対言わなさそうだしなぁ」
『丸井君が話さなかったら嫌いになるって言うなら話すけど』
「いや、大丈夫。それは言わねぇ。ちゃんと待つわ」
『ありがとう』
「その代わり何かご褒美くれな」
『えぇ!』
「いいじゃん。俺ちゃんと諦めたし」
『分かった』


逆に約束をさせられたけど、まぁいいか。
丸井君ならそんな難しいことはきっと言わないだろうし。
と言うか丸井君もしかして自分の誕生日忘れてない?
来週になったら話すってとこで誕生日のこと感付くかなと思ったのに。
どうやら大丈夫そうだ。


『ご褒美何がいい?』
「来週になったら話す」
『気になるよ!』
「俺と同じ反応すんなよ」
『お菓子作るとかじゃないの?』
「それはご褒美になんねぇし。毎日作ってきてるだろ」
『確かに』


来週に話すとか何だろう?
気になる。でもこれ聞きたいって言ったら私の話も聞きたいって言うから黙っておこう。


うちまで送ってもらって丸井君を見送る。
よし、とりあえずリストバンドを調べよう。
19日までには届けてもらわないと。
買いに行く暇ももうないし。ちゃんと見つかりますように。
喜んでくれたらいいなぁ。

back
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -