仲直りの方程式(丸井)

アイツ、部活まで俺のこと無視すんのかよ。
や、無視じゃねーな。やることはやってる。ただ俺に対して"だけ"すげぇ無愛想。
俺には無言でタオル渡して、俺以外にはいつも以上に愛想振り撒いてるように見える。
仁王の体調の心配までしてるじゃねーか。
ここまで露骨にされると仲直りしようって気持ちがみるみる萎んでいく。


「丸井先輩、椎名先輩に何しちゃったんですか?」
「お前、俺に聞くのかよ」


目の前のネットを蹴ってやろうか、そんな血迷ったことを考えていたら赤也がやってきた。
心配してるってよりは楽しんでんなこれは。おかげでネットを蹴って真田や幸村君に怒られるリスクは回避出来たけど、全然感謝出来そうにもねぇ。表情がワクワクしててムカつく。


「で、何が原因なんですか?」
「別にお前に話すことじゃねーし」
「えぇ!いいじゃないっすか!教えてくださいよ!」
「アイツに聞けばいいだろ。うっぜ」
「ちょ!俺は丸井先輩のために聞いてるのに!」
「どうせ仁王辺りに聞いてこいって言われたんだろ」
「は!?そんなわけ!」
「あるだろバーカ、顔に書いてあんぞ」


仁王じゃなきゃ誰がんなことするんだよ。
赤也じゃあるまいし、彼女と喧嘩した理由そう簡単に周りに知られたくねぇ。
ジャッカルにだってまだ話してねーんだからぜってぇに嫌だ。
慌てる赤也の顔にタオルを投げ付けて練習に戻った。


「皆心配してるよ」
「知ってる。あ、もしかして赤也に喧嘩の理由聞きに来させたの幸村君?」
「俺はそんな無駄なこと赤也にさせないかな」
「んじゃやっぱ仁王だな」
「外れ、真田だよ」
「は?真田ぁ?あの真田が何で?」


部活が終わって凛は赤也と仁王と柳生を連れてさっさと帰ってった。
ジャッカルも店の手伝いとかで急いで帰ってったし、真田と柳はコートで自主練中。
ってことで部室には俺と幸村君しか居ない。
柳生を連れてったってことは今頃俺の愚痴を三人に話してんだろ。
凛が柳生を誘う時は大抵俺と喧嘩してる時だから簡単に想像出来る。
んで、俺は今から幸村君に説教されるってワケだ。
げんなりしながら幸村君との会話に応じたらまさかの真田が赤也の差し金だった。
驚いて幸村君に視線をやれば俺の反応が面白かったのか小さく笑っている。


「あの真田がって感じだよね」
「そりゃそうだろ」
「それくらい皆心配してるってことだよ。もう一週間経つんだけど」
「あーもうそんなに経ったのか?」
「…お前、もしかして覚えてないの?」
「や、覚えてる。覚えてるって幸村君!」


説教されんのは嫌だなと、着替えながら適当に話を流そうとしたら幸村君の周りの温度が下がった。
危ねぇ、本当に説教されるとこだった。
ヒヤリとしたとこで慌てて真剣な顔作って幸村君に向き直る。幸村君の真剣な説教はマジ困る。


もう一週間過ぎちまってたのか。
アイツとはクラスが違うから教室だとあんま気になんねぇんだよなぁ。
部の練習だって普段そんなに関わりねーし。
まぁそれでも自分と周りへの態度の違いは見えるからイライラはしてたけどよ。
ジャージを脱いだとこで幸村君の様子をそっと窺う。まだ大丈夫だよな?


「俺はさ、お前から折れた方が良いと思うんだよね」
「や、それは。…つーか、幸村君達に迷惑掛けてないだろ?何か迷惑掛けたか?」
「へぇ、そういう態度取るんだ」
「いやいや、心配してんのはわかってるって!そうじゃなくてだな!」


ヤベ、口が滑った。ヒヤリと背中が冷える。慌てて弁解したとこで部室の空気がすっと元に戻った。あっぶね、幸村君怒らせるとマジ怖いから気を付けねぇと。
赤也といい幸村君といいなーんか今回に限ってしつこくねぇか?まぁ赤也は真田の差し金だったけど、あの真田が心配すんのも珍しい。
いつもだったら部の空気を悪くしない限り口は出してこねぇのに。


「何でお前らそんなこと」
「教えてあげない」
「はぁ?」
「理由は自分で考えるといいよ」
「ちょ、幸村君!」
「じゃまた明日。鍵は蓮二に頼んであるから」


俺の疑問をさらりとかわして幸村君は帰ってった。あの意味深な態度は何だったんだ?去り際の笑顔が綺麗過ぎて怖かったんだけど。


「言われなくてもわかってるっつーの」


喧嘩の理由だって大したことじゃない。
ただほんの少しアイツを蔑ろにしちまったってだけだ。浮気とかそんなんじゃなくてほんっとどうしようもなく些細なこと。
だからさっさと俺から謝っちまえば済む話。
いつもならそうしてる。けど、けどもだな。
なーんか納得いかねぇの。


「どうするかなぁ」
「どうもこうも無いと思うが」
「柳!?真田も何してんだよ」
「自主練が終わっただけだ」


ぼーっとしながら考えてたらいつの間にか二人が戻ってきてたらしい。
タイミング悪すぎだろ、ダサい一人言聞かれたじゃねーか。
さっさと帰ろうかと思ったのに二人は扉から動く気配がない。
あーこれ第二回お説教タイムだ。
俺は赤也みてぇに世話を焼かれたくないんだけど次から次へとなんなんだよ。


「…何か話あんだろ?」
「今回はやけに喧嘩が長引いてると思ってな」
「あまり女子を泣かせるようなことをするな」
「は?アイツ泣いてたのかよ」
「言葉の綾でそう言ったまでだ。だが今回も原因はお前だろう?」


あ、理解出来た。何で今回はいつもみたく素直に謝りたくねえのか。
こうやって外堀埋められてんのがムカつくんだ。
全部ぜーんぶいつものこと。幸村君達が心配してんのだって俺と凛のことを考えてくれてるのはわかってる。赤也と仁王だって多少面白がってるとこはあるだろうけど、それでも心配はしてるはずだ。
でもそれが、なーんか気に食わねえ。
こうやって真田がさも俺が悪いみたいに決めつけるのも腹が立った。
や、実際今回も俺が悪いけど。


「真田はいつも俺が悪いっつーけど、違ったらどーすんの?」
「椎名が悪かったことなど過去に一度も無かったはずだ」
「過去は過去じゃね?」
「丸井、八つ当たりを俺達にしないでくれ。苛立つのはわかるが」
「八つ当たりじゃねえって。あー赤也の気持ちがここでわかるとはなぁ」
「赤也は今関係無いぞ」
「違えよ。こうやって色々言われてる赤也の気持ちが理解出来たってこと。俺も含めて相当お節介じゃん」
「お前が世話を焼かれたくないのは知っている。それならば無駄な喧嘩は減らせと前にも助言したはずだ」
「なら少し放っといてくれたっていいだろ。幸村君にも言ったけど何か部に迷惑掛けたか?俺の調子だっていつも通りだろ。アイツも普通に仕事してんじゃん。何が問題なんだよ」


赤也にイライラさせられて、幸村君にも痛いとこ突かれて、止めを二人が刺そうとしてくる。こう一日に何回も何回もあれこれ言われたら俺だって我慢出来ねえ。
口調は必然的に荒くなっていく。
ガキっぽいのは百も承知だ。けど、こんだけ言われたらストレス溜まるだろ?
幸村君だって柳だってわかっててやってんだよなぁ?
いつもの俺ならあれこれ言われんのが面倒になってさっさと謝ってる。
けど、今回は逆効果だ。プツンと糸がキレた。


「放っておいた結果がこれだ。一週間経過している」
「問題視してるわけじゃなく俺達は友としてだな」
「俺が悪いから嗜めてるってか?そんなのいつ俺が望んだんだよ。誰も求めてないっつーの!アイツだってお前らにそこまで言ったか?凛がそこまで言うわけねぇじゃん!」


柳や真田に怒鳴ったところで何か好転するわけじゃない。それもわかりきってる。
ガキっぽい癇癪起こしても二人に通用するはずねえ。あー多分誰にも通用しねぇな。
怒鳴ったって柳は涼しい顔してるし、真田は眉間に皺を寄せるだけだ。
それがまた俺のイライラに拍車をかける。
まだ真田に殴られた方がマシだ。くそだせぇ。


「帰るからそこ退けよ」
「待て、まだ話は」
「弦一郎、そこまでだ」
「だがな蓮二」
「俺は赤也じゃねえんだよ」


苛立つままにロッカーを閉める。
手を伸ばしかけた真田を柳が止める隙に部室から抜け出した。
何で赤也はアイツらの話をちゃんと聞けるんだ?俺の話も仁王の話も文句言いながらもキレずに聞いてる。すげぇな赤也。
やっちまったなと思ったけど、謝るつもりは更々なかった。
凛との仲直りはまだ出来そうにもない。


翌日、俺は初めて朝練をサボった。
起きてもイライラが収まってなかったからだ。
帰ってから弟達と遊んで一緒に菓子まで作って散々ストレス発散したはずなのに、起きてから余った大量の菓子のこと考えてげんなりした。
いつもだったら家族で食って、凛にも渡して、それでも残ったら赤也達に食わせてる。
そういうのもなんか馬鹿馬鹿しくなっちまった。


堂々と朝練をサボるわけにもいかずいつも通り弁当作って余った菓子まで持って家を出る。
家族に余計な心配かけたくねーし、仕方無ぇ。
ゆっくり歩いたところで朝練には充分に間に合う時間に学校に着いちまった。
凛にも真田達にも合わせる顔はなくてそのまま教室へと向かう。


「何やってんだろな」


誰も居ない教室に独り言が溶ける。
今から向かえば問題ない。寝坊したって幸村君に謝って頭下げりゃそれでいいはずだ。
わかってても簡単には動けなかった。
ここに居ると登校してきたクラスメイトにあれこれ聞かれるに決まってる。んで事情を説明したとこで俺が悪いんだから散々責められる。想像してうんざりした。
サボったって問題が増えるだけだな。乾いた笑いを飲み込んで教室からも逃げ出した。


仁王の定番サボりスポットの屋上でだらだら時間を潰してホームルームギリギリに教室に駆け込む。
あっちこっちから飛んでくる挨拶を適当に返して席に座れば仁王が何か言いたげにこっちを見ていた。
素知らぬフリをして後ろの席の友達に話し掛ける。そのまま仁王の視線には気付かないフリを続けた。


「丸井君、少しお時間宜しいでしょうか?」
「あー」


午前中は何事もなく過ぎた。仁王は相変わらず何か言いたげだったけど、徹底的に避けて近寄らなかった。
元々アイツはクラスじゃあんまり話さないからそれで問題無かったっつーのに昼になって柳生がやってきた。
購買にパンでも買いに行くかと教室から出たら待ってたんだ。
気付かないフリすりゃ良かったのにそこに居たのが柳生だったからつい立ち止まっちまった。


「購買ですか?」
「まぁそんなとこ」
「では私もご一緒しましょう。丸井君とお昼を食べようと思いまして誘いに来たんです」
「はぁ?仁王じゃなくて?」
「仁王君ではなくて丸井君ですよ。予定が入っているのならば遠慮しますが」


何を言われるかと身構えたのに柳生は至っていつも通りだ。まぁ普段柳生が俺を昼に誘うことなんてほとんどないから何か考えがあるんだろうけど、それにしたって自然体過ぎてなんか気が抜けた。


「予定なんて入ってるわけねーだろ」
「それなら良かったです。さ、行きましょう」
「他に言うことねーの?」
「丸井君は何か言ってほしいのですか?」
「お前そういうとこズルいよな」
「丸井君は既に自分で理解しているじゃないですか」
「そうやって言い切るとこだよ」
「私は自分の考えを述べているまでですよ」


断るのも違う気がして連れだって購買に向かう。クソ、調子狂う。昼になんかあるだろうと予測してたけど、まさか柳生が来るなんて考えてもなかった。
購買でパンを買ってそのまま適当な空き教室に移動する。カフェテリアに行くのかと思ったのに柳生が選んだのは空き教室だ。


「んで、どうしたんだよ比呂士」
「特に何もありませんよ。たまには丸井君と昼を食べようと思っただけです。他意はありません」


席に座って弁当を広げてからパンに齧りつく。いつもの癖でパン買っちまったけど、今日は弁当だけで充分だった気がする。朝練してるとすげぇ腹減るけど今日は出てないからな。失敗したぜ。
やっちまったなと反省しつつ柳生に声を掛ける。比呂士って呼んでも表情変えないから何考えてんのかさっぱりだ。
凛のことか、昨日の真田達とのやり取りのことか、それとも朝練をサボったことか、何か小言を言われるかと思ったのに質問を柳生は否定する。


「他意はないって言われても行動が怪しすぎるだろい」
「確かにそう捉えられても仕方ありませんね。強いて言うならば」
「おお」
「私は中立ですよとお伝えに来たまでです」
「…は?」
「そのままの意味ですよ」
「そんなの直ぐ言えば良かったんじゃねーの?」
「昨日、仁王君と切原君と椎名さんとカフェに行ったんです。なので平等に丸井君とも昼食を取ろうと思ったまでです」
「あぁ、どうせアイツ何か言ってたんだろ?お前を誘う時はいっつも俺と喧嘩してる時だもんな」
「いいえ。プライベートなことなので何を話したかは言えませんが少なくとも貴方の愚痴を聞かされたことはないです」
「嘘臭ぇ」
「ですが事実です」
「じゃあ何を話してんだよ。いっつもお前が一番に誘われてんじゃねーか」
「本人に聞くのが一番かと」
「比呂士のケーチ」
「ケチで結構。軽口を叩く余裕が出来たのは良いことですね」
「お前やっぱずりぃわ」
「とんでもない。私はいつも真摯に物事に取り組んでるだけですよ」


比呂士って呼ぼうがケチ呼ばわりしようがズルいって抗議しようが柳生は表情を崩さない。
なんだよ、全部わかってるようなこと言って。
ムカつく反面、何でか柳生には怒る気になれねぇ。
多分柳生がいつも通りだからだ。
舌打ちしたって柔和に笑うだけだしな。


「あぁ、伝言を思い出しました」
「あ?」
「幸村君から今日はミーティングのみなので来たくないのならば来なくて結構とのことです」
「…」
「話ならばいつでも聞きますよ」
「いやいい。朝練サボって部活までサボったらどんどん行けなくなりそーだし」
「おや?おかしいですね。椎名さんから貴方は今日体調不良で朝練を休んだと伺ったのですが」
「は?」
「おっと、私としたことが間違えてしまいました。体調不良ならば今日はミーティングのみなので休んでも大丈夫だと幸村君は言ってましたよ」
「比呂士お前やりやがったな」
「人間誰しも間違えることはありますよ。丸井君もサボったと言ったのは単なる言い間違いですよね?」


策士ってのは本当は柳生みたいなヤツのことを言うんじゃねーのかな。まんまと騙された。仁王から変な影響受けてるとしか思えねぇ。
しかも柳生が言うには何でか凛が俺を庇ったらしいし。ほんと何やってんだよ。


「丸井君?貴方が部活をサボったとなると私は幸村君に報告しないといけないのですが」
「あー悪い。間違えたわ」
「そうですか、それなら安心しました」


心底ホッとしたような表情してっけど、お前全部わかってやってんな。
脱力して机に突っ伏す。謝りたくねぇって気持ちまでどっか飛んでっちまった。
凛にも真田達にも謝らねーとなぁ。


「柳生」
「どうかされました?」
「あんがとな」
「いいえ、お礼を言われるようなことはしていませんよ」
「そう言わずに持ってけって。お前のおかげで目が覚めた」
「そうですか。ならばいただいておきましょう」
「アイツまだ怒ってっかな?」
「椎名さんのことですから心配はしてるでしょうね」
「わかった」
「では私は先に戻ります」
「また放課後な」
「ええ、失礼します」


突っ伏したまま顔だけ上げて柳生を見送る。
まさかサボってんのがバレてねぇとはなぁ。いや、違え。凛が俺のために嘘吐いたってのは多分全員気付いてる。真田と赤也は怪しいけど他は全員気付いてんだろ。
気付いても敢えて指摘せずに凛の言うようにしてくれたってことだ。
ここまでしてもらったらもう何も言えねぇ。
昨日の真田達に対する苛立ちや起きてからのイライラも後ろめたい気持ちもすっかり無くなっている。


伸びをしてから立ち上がって両手で頬を張る。
まだ昼休みの時間は残ってるから菓子を持って凛に謝りに行くか。
柳生のおかげですんなり謝れそうだ。


「よお」
「ブン太?何してるの?」
「謝りにきた。変な意地張って長引かせて悪かった」
「それはいいけど、もう大丈夫なの?朝練来ないから驚いたんだよ」
「おお、大丈夫だから心配すんな。ほんとごめん」
「もう冗談でもアイツのことは気にしなくていいからって周りに言わないでよ?差し入れ貰うことに対して怒ったんじゃないからね」
「わかってる。お前そういうの許してくれるから甘えてた。今度からは…何て言うのが正解なんだ?」
「それ私に聞くの!?」
「ちょ、痛え!怒るなって!差し入れ貰うのに向こうに彼女さんに悪いとは思うけどって言われたら何て答えんのが正解なんだよ!」
「知るわけないでしょ!」
「わかった!悪かったって!彼女は許してくれてるって言うから!な?ごめんて凛!」
「彼女のこと凄い大切だけど俺のために我慢してくれてるって今度から言う?」
「おお、約束する」
「絶対だよ?」
「わかった。わかったから怒るなって。仲直りした側からまた喧嘩したくねぇよ」
「まだ仲直りしたつもりないのに」
「俺は許してくれると信じてっから」
「調子いいこと言うなぁ」
「だってお前俺のこと大好きじゃん。俺も大好きだけど」
「…ばぁか」
「照れてんの?」
「うっさい!」
「弟達と作った菓子あんぞ」
「え、食べたい!」


空き教室を出て直ぐに凛のクラスに向かった。
危うくもっかい喧嘩するとこだったけど、何とか免れたと思う。危ねぇ、発言には気を付けねーと。幸村君といい凛といい全部の発言拾ってくるからなぁ。
紆余曲折あったけど、柳生達のおかげで仲直り出来た。
凛は菓子が気に入ったのか上機嫌だ。
余った菓子はミーティングの時にでもみんなで食えばいいよな。


「これ美味しい」
「だろい?張り切って生地作ったかいがあったぜ」
「何かいつもより凝ってるよね」
「あーストレス発散的な?」
「あ、そう言えば朝にね、真田と柳に謝られたよ」
「まぁちょっとな。後でアイツらにも謝るわ」
「うん、それがいいよ。みんなブン太のこと一番理解してくれてるんだから」
「そうか?ジャッカルはそうだとしても真田は微妙じゃね?」
「ブン太だってそうやって言いながらもみんなのことわかってるでしょ?何が好きかとか嫌とか」
「そりゃ当たり前だろい」
「ってことはみんなも一緒ってことだよ」
「そんなもん?」
「そんなもの」


菓子を齧りながら凛が頬笑む。
俺のこと一番理解してんのはアイツらじゃなくてお前だろい。
凛の頬についたクリームを親指で拭って舐めとるとちょうどいい甘さだ。
これからはもうちょい喧嘩減らそう。
アイツらに心配させんのも違うしやっぱり彼女には笑ってて欲しいから。


(アイツらやっと仲直りしたみたいだぜ)
(ブンちゃんは手が焼けるの)
(そういやお前らっていつも何話してんだ?喧嘩すると絶対四人でどっか行くだろ?俺は何でか誘ってもらえないし)
(ジャッカルは丸井に付いてて欲しいって椎名の配慮ぜよ)
(そ、そういうことなのか?)
(アイツは出来た女じゃ。俺らの前で愚痴すら言わん)
(意外だな。てっきり愚痴を聞いてるかと思ったのに)
(そういうのはフェアじゃないらしい。だから専らやけ食いに付き合っとるだけ。俺はそう甘い もん食わんのに)
(それはそれで大変そうだな。アイツらってどんだけ喧嘩しても別れたいとは絶対言わないよな)
(その選択肢が頭にないんじゃろ)
(それなら喧嘩する回数も減ってほしいよな)
(それは…どうだかの)
(おい、また何かあったみたいに聞こえるぞ!?)
(ふっ)
(おい仁王!笑って誤魔化すんじゃねぇ!)

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