にゃんとすばらしいよるでしょう(丸井)

只今絶賛体調不良。体調に引きずられてか精神的にも芳しくない。仕事でストレスも溜まっていてダブル?いや、トリプルパンチを食らっているような気がする。
真っ直ぐ家に帰って大好きな入浴剤で湯船に浸かっても何か物足らない。いつもだったら癒されるのに今日は相当重症らしい。
仕方無くベッドに入ってみてもまだ時間は早いから眠くもない。大好きな映画を流してみても内容が入ってこない。これはもうほんと駄目かもしれない。


ミュージカル調のその映画のBGMを聴きながら布団を頭からすっぽり被ってまるまってみた。ずっとこのままならいいのになぁ。眠くは無いけど何にも考えずにこうやって丸まっていたい。


「お前こんな時間から何やってんだよ」


ぼーっとしていたら頭上から声が降ってきた。この声は紛れもなくブン太だ。ブン太こそ何をやってるのか。合鍵は渡してるけどしばらく仕事が忙しいから会えそうにないってこないだ言ってたような気がする。


「おい、寝てんのか凛」
『起きてる』
「なんだよ。起きてんなら返事しろよ」


まだ布団を被ったままだからブン太の姿は見えない。けど声色で呆れてるのが何となく分かった。きっとベッドの前で仁王立ちになって私を見下ろしてるんだろう。今はブン太の相手してあげれるほど余裕無いから無理だよ。


「お前メシ食ったのか」
『お腹空いてない』
「ま、そうだろな。なんだこの冷蔵庫空っぽじゃねぇか。そんなことだと思って買い物してきて良かったぜ」


声が遠退いたと思ったら冷蔵庫を開け締めする音が聞こえる。最近忙しくて自炊してる暇無かったんだもん。と言うか料理を作ることすら億劫になっていた。結果朝は食べないし夜も適当だ。


「腹減ったー。ちょっと待ってろよ」


私はお腹空いたなんて一言も言ってないのに。私の返事なんて聞かずにブン太は料理を始めたようだ。え、何しに来たんだろ?単にお腹が空いて自分の家に帰るのが面倒になったとかそんなのかな?鼻唄混じりにトントンと小気味良く包丁の音が聞こえる。何作ってるんだろ?お腹は空いてないはずなのに少しだけ興味が湧いた。けれど布団から出る気にはまだなれなかった。すっぴんだしもう寝る気満々だったし隈が酷くて見せたくないし。


「おい、起きろって」
『やだ』
「んなワガママ言うなよ」
『お腹空いてない』
「食べなくてもいいからとりあえず顔見せろ」
『やだ』
「は?何でだよ。お前もしかして俺に会わない間に整形でもしたんじゃねぇよな?」
『は?』
「こないだ鼻が気に入らないとか言ってたじゃねぇか」
『そんな暇無いよ』
「いいや、だから俺に顔見られたくねぇんだろい」
『違うってば』
「んじゃさっさと顔見せろ。俺を安心させろよ凛」
『あ!』


無理矢理にでも布団を剥がそうとするから捲られないように頑張ってたのにブン太に敵うわけもなく呆気なく布団を剥ぎ取られてしまった。乙女心を気遣うとか無いのかな?


「なんだ整形してねぇじゃん」
『だからしてないって言った』
「そんなに剥れるなよ。ほらお前の好きなもん作ってやったから食うぞ」
『ブン太の好きな食べ物じゃなくて?』
「俺は好き嫌いねぇし。さっさと起きろ」


布団を剥ぎ取られても寝転んだままの私をブン太が無理矢理起こす。急かすように引っ張るので仕方無く観念してベッドから降りることにした。と言うか何で突然うちに来たんだろ?


『私の好きなものばっかだ』
「だろい?俺がぜーんぶ愛情込めて作ってやったんだから感謝しろよ?」
『うん、ありがとブン太』
「んじゃ食うか」
『いただきます』
「好きなだけ食え食え」


さっきまでお腹空いてないって思ってたのにいざ目の前に好物が並んだら身体は正直だった。出来立てでご飯には湯気が立ち上っている。炊飯器はあるけどお米も無かったはずだからわざわざ買ってきたんだろう。


『美味しい』
「そりゃ俺が作ったからな」
『ブン太ありがと』
「泣くなよ。これくらいならまたいつでもしてやるから。な?」


久しぶりに手作りの料理を食べたような気がする。どれもが美味しくてささくれだった身体と心を癒してくれるみたいだった。それと同時に涙が溢れてくる。私本当に色々限界だったのかもしれない。


「泣きながら食うとメシがしょっぱくなんぞ」
『だって、う…うぅ』
「あー分かった。泣きたきゃ泣いていいから。今日は泊まってってやるし」
『仕事、忙しいって…言ってた』
「まぁな。でも今日は久しぶりに早く終わったんだよ。だから連絡したのにお前返事も寄越さねぇし」
『鞄の中に入れっぱなしだった』
「最近元気無かったしなー。見にきて正解だったぜ」


泣きながらご飯を食べる私はすっぴんだし隈が酷いし不細工だったと思う。けれどそんなこと気にならないみたいにブン太は私の頭をポンポンと撫でてくれた。


「まずはメシな」
『はい』
「残さず食えよ」
『分かった』


それからブン太と二人で他愛もない話をしながら夕飯を平らげていく。ブン太のご飯も久しぶりに食べたような気がする。最近お互いほんと忙しかったもんな。
食べ終わって洗い物は二人でやることになった。私がやるって言ったのに「二人のが早く終わる」とブン太が譲らなかったのだ。


「着替えあったよな?」
『一通り揃ってるよ』
「ネクタイも?」
『ワイシャツはあるけど』
「ま、一日くらいネクタイ同じでもいいか。とりあえず風呂入ってくる」
『うん』
「直ぐ戻ってくるからちゃんと起きて待ってろよ?」
『分かった』


ブン太の手作りご飯のおかげか心も身体も癒されたらしく眠たかったのだけど起きて待ってろって言われてしまったからうとうとしながらもちゃんと待つことにした。
お気にいりの映画の内容も今度はちゃんと頭に入ってくる。


「おー今にも寝そうだな」
『うん、眠い』
「ちょっとは元気になったか?」
『うん』


ミュージカル調の映画だからか音楽が子守唄代りになってブン太がお風呂を出てくる頃にはだいぶうとうとしていた。
私の隣にしゃがんでブン太が顔を覗き込んでくるのが分かる。けど眠い。


「お前って俺が居ないと駄目だよなぁ」
『うん、そうかも』
「その癖しんどい時しんどいって言わねーし」
『ごめん』
「や、責めてねぇから。昔から放って置いても寂しいとか言わないしなぁ」
『ブン太も仕事頑張ってるだろうし』
「んで限界きてしんどくなっても俺に会ったら直ぐ元気になるよな」
『そうだね』
「っとそこで寝んなよ。ベッド行くぞ」
『うん』
「立つ気全くねぇなぁ。ったく仕方無え」


ベッドに連れてってくれるんだろう。抱き上げてくれるから自然とブン太の首へと腕を回す。眠たくてふわふわ身体が浮いて変な気分だ。


「降ろすぞ」
『うん』
「隈酷いことになってんな」
『不細工でごめん』
「隈くらいで人相変わんねえだろい。何言ってんだ」
『自分でも酷い顔だと思って』
「ま、2、3日したら直るだろ」
『何で?』


ベッドに私を横たえて布団をかけてくれた後にブン太が隣へと潜り込んできた。当たり前のように私を引き寄せて腕枕をしてくれる。あ、これはもう腕じゃなくて肩に近いかもだけど。
隈ってそんな直ぐには直らないよね?


「お前が完全に元気になるまではこっから会社行く」
『ブン太の会社遠いよ?』
「その分早起きすりゃいいんだって」
『でも』
「決めたからお前が反対すんなよ?いいな?」
『…はい』
「んでお互い仕事が落ち着いたら一緒に住もうぜ凛。マンション買いてぇよな」
『え?』


突然の申し出に睡魔が一瞬で飛んでしまった。一緒に住むってのはまだ分かるけどマンション買いたいとは?


「一軒家も有りかと思ったけどマンションも有りだよなー」
『え、借りるんじゃなくて?』
「違え。買うの」
『何で?』
「何でってどうせそのうち結婚すんだろい。それなら先に買っておいてもいいだろ」
『あー』
「そのうちプロポーズもちゃんとしてやるから今日は寝ろ。俺の夢見てぐっすり眠れよ凛」
『う、うん』
「んじゃおやすみ」
『おやすみなさい』


私の額にキスを落として部屋の電気をリモコンで消した。色んなこといっぺんに言われたような気がするけど暗くなってブン太の体温が心地好くって直ぐに睡魔がやってくる。
昔から私が駄目な時は直ぐ気付いてくれるもんね。そのたびにこうやって元気付けてくれたよね。ブン太が居てくれたら本当に隈も直るような気がするから不思議だ。
ブン太に会う前までは寝れるかすら不安だったのになぁ。それが一瞬でこうなっちゃうなんてブン太は本当に凄いね。
こんな私なのにいつも隣に居てくれてありがとう。


誰そ彼様より

リハビリ。最推しでリハビリ。ただひたすらキャラに甘やかされるお話を書きたくて。次誰で書こうかな。
2018/11/30

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