猟奇的な彼女(丸井)

「凛?なぁ!怒んなって」
『怒ってないし』
「差し入れくらい別に貰ったっていいだろい?」
『そうですね』
「お前全然その言い方そうですねって感じじゃねぇし」


差し入れくらいで怒るなよなー。
お菓子はいくらだって食えるんだよ。
そんな俺に差し入れを断れなんて無理じゃねぇ?
部活が終わって差し入れ貰ってからずっとこんな態度。不機嫌MAX。
何が気にくわなかったんだよ。差し入れなんていつも貰ってんだろ?


『監禁とか出来たらいいのになぁ』
「はぁ?」


不機嫌さを隠さずに恐ろしいことを口にする。
誰をとは聞かない。多分って言うか絶対に俺のことだから。


『ほっぺに丸井ブン太は椎名凛にベタぼれですとか書いてもいい?』
「嫌だ」
『ブン太私のこと嫌いなの?』
「嫌いなわけねぇだろ。けどそれは絶対に嫌だ」
『冷たい』
「じゃあお前なら出来んのかよ」
『え?やだよ』
「だろい?」


次々に飛び出てくる案を却下していく。
不機嫌な時はこれがエンドレス続く。
あーもうどうしたら機嫌直るんだよこれ。
そもそも機嫌が悪い原因が全くわかんねぇし。


『ブン太、今日みんな帰ってくるの遅いからちょっとうちに寄ってって』
「監禁とかすんなよ」
『今は無理だよ。自分で働いてからじゃないと』


さらりと怖いことを口にしたけどもう突っ込まねぇ。
聞かなかったことにしておこう。
ったく黙ってたら可愛いのにこいつの性格はどっかおかしい。
まぁそんな凛のことが好きな俺もそうなるとどっかおかしいんだろうな。
こいつの猟奇的な独占欲は嫌いじゃねぇし。


凛のうちに着いて部屋へと通される。
誰もいねぇってわざわざ言うってことはやりたくなったってことか?
まぁ今までも凛から誘ってきたことはあったしな。
ベッドに座りブレザーのジャケットを脱いでとりあえずネクタイを外した。


『ブン太、ちょっと手貸して』
「おお」
『両手』
「これでいいのか?」
『うん』


何すんだろって思ってたら俺の両手にかしゃんと手錠が嵌められた。
は?こいつ何してんの?
驚いて凛を見てみると嬉しそうな表情を浮かべている。
俺、今日帰れるかな?


「凛?」
『今日ね、告白されたでしょ』
「何でそれを!」
『私ね居たの』
「ちゃんと断っただろい」
『そうだね』
「なら何でこんな機嫌悪いんだよ」
『ブン太が報告しなかったからじゃん』
「いや、言っても機嫌悪くなるだろお前」
『それにね、あの綺麗だけど変人な椎名さんは止めてって言われたのも聞いたんだよ』
「げ」
『ブン太それに対して何て答えたのかなー?』
「別れねぇよって言ったろ」
『変人ってとこ否定しなかったんだもん!』


そんなことでこんな不機嫌だったのかよ。差し入れとか何も関係なかったし。
つか、変人なのは事実だろ?
何言ってんだよ。


「凛、落ち着けって」
『何でモテるかなぁ。ブン太が不細工になっちゃえばいいのに』
「俺が不細工になったらお前だって居なくなるだろ」
『居なくなりません。ブン太のこと大好きだもん。絶対にずーっと隣にいるもん』


俺のことをベッドへと押し倒して凛が目を爛々とさせて言った。
身動きが取れない様にご丁寧に俺の腹に馬乗りになっている。


『ブン太、大好き』
「俺も凛のこと好きだぜ」
『知ってる』


俺を好きだと繰り返しながらシャツのボタンを一つ一つ外していく。
なんつーかエロいよな。
全て外した所で凛が俺の首筋に吸い付いてきた。


『ブン太は私のものだから告白しないで欲しいんだよ』
「分かった。今度から告白される前に断るから。な?」
『まだ駄目』


1ヶ所キスマークを付けたくらいじゃ気が済まないらしい。
俺、明日も部活あるんだけどな。
首筋だけじゃなく上半身にもくまなくキスマークをつけてる様だ。
吸い付くだけじゃなくて時折こちらを向いてちろりと舌を出す。
そしてその舌を誘ってるかの様に身体へと這わす。


「凛、ちょ!もう止めろって」
『限界きた?』
「ちょっと辛いわこれ」
『じゃあ今日はこれくらいにしとくね』
「は?やらねぇの?」
『え?しないよ。今生理だもん』
「はぁ?」


こいつ!俺をその気にさせるだけさせといて生理だから無理だとか言いやがった!
鍵をポケットから取り出して俺の手錠を外してくれたのはいいけど。
なんだこれ、どっと疲れた気がする。


『ちゃんと収まったみたいで良かった』
「来週覚悟しとけよ」
『楽しみにしとくね』


シャツのボタンをはめてネクタイを締めた所で凛がそのネクタイを引き寄せた。
引き寄せられるままに俺と凛の顔は近付いていく。
そのまま凛にキスをされた。
珍しく触れるだけのやつ。


『あんまり激しくしちゃうとね。元気になっても困るし』
「あーそういうことね」
『私ちゃんとブン太のこと考えてるもん』
「さっきのはわざとだったろ」
『あれはお仕置』


まだ後少しくらいなら時間は大丈夫だなと時計を確認する。
やれないなら帰りますみたいな態度はなるべく取りたくなかったから。
またそれで幸村達に告げ口されも困るしな。


「凛ー」
『どうしたのさ』


俺から凛を抱きしめてみた。
何か久々な気がする。
いつも凛からばっかだったもんな。
俺の腕の中で凛は身体を固くする。
珍しい、多分緊張してんだこれ。


「たまには俺からだっていいだろい」
『やれないよ』
「お前なぁ、やれなくたっていいの。いっつもお前からばっかだしたまには俺から触らせろよ」
『うん』
「そんなこと気にしてたのか?」
『少しだけ』


珍しく素直だ。少しだけ耳が赤くなってる気がする。
照れてるなんて突っ込んだら怒られるから言わねぇけど。
いつもと違い俺の腕の中で大人しくしてる彼女のことがますます好きになりそうだ。


「俺が監禁してぇかも」
『え、自由がないのやだよ』
「じゃあ俺のこと監禁したいとか言うなよ」
『ブン太は私がいれば幸せでしょ』
「それはお前もだろ」


結局いつも通りだけど俺は凛が俺の彼女で良かったとしみじみ思った。

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