幼なじみの延長線上には恋が転がっている(5)
馬鹿なの?いい加減気付きなさいよ!
『英二ー』
「んー?どしたの凛ー」
今日はこないだと逆で私が英二の家を訪れた。
あの日は英語の課題を見てあげてその後眠くて眠くて英二を見送りもせずに寝ちゃったけどなんだかとても良い夢をみた気がする。
内容は覚えてないけれど起きたときとっても幸せな気持ちだったもんなぁ。
夢の内容を覚えて無いのが残念だったり。
『日本史の課題やった?』
「もちもち!当たり前じゃん」
英二は大五郎に持たれてテニスの雑誌を読んでるみたいだった。私が部屋に入ったと同時にその雑誌をパタンと閉じてくれたのが嬉しい。
いつだって私のこと優先にしてくれるもんね。
『分かんないとこあったの』
「んじゃ見せて。俺が教えてあげるから」
『うん』
日本史なんて覚えることが沢山ありすぎて苦手だ。
英単語は覚えれるのに戦国武将の名前なんて何度聞いても覚えられない。
英二は何でこんな覚えることが沢山の教科が得意なんだろう?けれど相手が苦手な教科を得意ってのはお互いを補ってるみたいでなんかいいよね。
英二に教えられるがままプリントに武将の名前を書き込んでいく。徳川の歴代将軍の名前とか順番に覚えれるわけないし!
なのに英二は私の隣で何を見るでもなくさくさく答えていくから凄いなぁ。
「ほい!これで全部終わりだねー」
『英二全部覚えてるの凄いね』
「にゃははー凛だって英単語なら楽勝でしょ?」
『そうだけど、戦国武将とか多すぎて覚えれる気がしない』
「受験で日本史選ばなきゃだいじょーぶだいじょーぶ!」
確かに政経辺り選んでおけば受験は大丈夫な気がする。あぁそっか、もうすぐ受験だ。
私はこの話題を最近意図的にしないようにしていた。でもそろそろちゃんと話さないといけない。
『英二はこのまま青学の大学だよね?』
「そだよー。推薦貰えるしね!凛も青学でしょ?」
『ちょっと悩んでる』
「へ?」
英語は私の得意教科で先生がこのままなら外国語大も視野に入れて進路を考えてもいいんじゃないかって言ったんだ。その方が留学先も沢山選べるって。
てことはつまり英二と離れてしまうことになる。留学だってずっと海外には行ってみたいと思ってた。
けれど本当にそれでいいのか悩んでた。
海外に留学するってことは英二とずっと一緒にいれないってことだし。
「凛?」
『先生がね、海外に留学するなら外国語大のがいいかもって』
「あ、そっか。凛はずっと留学したいって言ってたもんね」
『そうなんだよね』
「んーそっかぁ」
『英二?』
日本史の課題が終わったので英二はいつもの定位置、大五郎を背もたれに座っている。
この話を英二にするのは初めてで私は緊張していた。英二に対してこんなに緊張するなんて初めてかもしれない。
「凛とはお別れだね」とか言われたらどうしよう。「外国語大に行かないでよ」って言われたらどうしよう。
「その方が凛のためになるんならそっちの方がいいんじゃないの?」
『え』
「ちょーっと寂しいけど俺も俺で大学でもテニス続けるもんね。だから凛もちゃんとやりたいことやりなよ!」
英二は私がどうして悩んでるかなんて全く気付いてないみたいだった。寂しいって言ってくれたのは嬉しいけれどもっと他に何か言うことないの?
「凛ー。どうしたのさ、何で悩んでんの?」
『だって学校別になっちゃうよ?』
「でも家から通うでしょ?」
『それはそうだけど』
「ならいつだって会えるよ!俺もこっから通うしね」
どうしてこうも呑気にしてられるのか。
私が逆の立場だったら不安でしょうがないのに!
『帰る』
「凛?怒ってんの?」
『怒ってない』
「俺なんかした?」
『してない。もう眠いから帰る』
「ならいいけど、ほんとだいじょーぶ?」
『うん。大丈夫。また明日ね』
「明日ね凛ー」
英二はどうして私の気持ち分かってくれないんだろ。だからって青学の大学にしなよって言われても困ったけれど大学が離れちゃう不安とかは全然無さそうだった。
こんなの私の方が好きみたいじゃん。
複雑な感情に支配されてもやもやしたまま英二の家から帰ることにする。
そろそろ気付いてくれたっていいでしょ英二!
(何年私に片思いさせれば気が済むの!)
珍しく山あり谷ありをかけた気がする。
2018/10/01