一枚上手な彼のセリフ5題(5.あんたの気持ちなんてとっくに知ってる)

『赤也終わった?』
「終わったっすよ」
『じゃあ行こうか』
「どこに行くんすか?」
『内緒』


誕生日当日、凛先輩は約束通り部活を手伝いにきた。
終わって制服に着替えて俺を迎えに来たとこだ。今日は邪魔も入らなかったしさくさく日誌が書けたから俺も帰る準備は出来ている。
内緒とか凛先輩の癖に生意気なんすけど。


「ま、んじゃ凛先輩に任せますか」
『うん、任せて』


さりげなく凛先輩の手を取っても頬を赤くしただけで反応はあんまり無かった。
まぁきっと丸井先輩達が凛先輩にも上手いこと言ってるんだろう。
じゃなきゃ二人で誕生日お祝いするだなんてこの先輩が言うはずもない。


『赤也、あのね私話したいことがあるの』
「なんすか」
『聞いてくれるかな』
「いいっすよー」


だいぶ涼しくなってきたよなぁ。
もう夏も終わりだし来年こそは凛先輩と二人でプールに行ってもいいよなー。
今年は邪魔なのが七人も居たしなー。
なんてそんなことを考えながら歩いていても凛先輩から続く言葉は出てこない。
いやもうここは告白するしかないとこっすよ。
もろそんな雰囲気なのに今更照れるとかなんだよ。相変わらず可愛いすぎでしょ先輩。


「せんぱーい?」
『うん?』
「凛先輩が話があるっつったんですけど」
『そ、そうだよね。それは分かってるんだけど』


あぁもう、バッカじゃねぇの。
もう仁王先輩達にだって「赤也はおまんのこと好きぜよ。絶対に」とか「俺が保証するからさっさと告白してこい」だとか言われるはずなのにまだ言えないとか。凛先輩らしいっちゃらしいけど。ま、いいか。


「アンタの気持ちなんてとっくに知ってるっつーの」
『えっ』
「だからアンタが俺のこと好きなことくらい知ってるって言ってるんす」
『嘘だ』
「先輩バレバレなんすよ。ほんとそういうとこかーわい」
『な、んで』


金魚が口をパクパクしてるみたいなんだけど。
さっきは頬だけだったのが今は耳まで真っ赤になってるし。ほんと俺のこと大好きっすよね。


「そりゃ俺だって凛先輩のこと好きですし。見てりゃ分かりますよ。俺のこと好きなんだって」
『い、いつから』
「それは内緒」
『え、赤也ズルい!』


そんなこと絶対に教えてやんねぇ。
こんな恥ずかしいこと一生教えてやんねぇから。
まさかの一目惚れだったとか言えるわけないし。


「んで俺と付き合ってくれるんすか先輩」


凛先輩は俺の問いかけに首を縦にゆっくりと振った。
なんだよそのクソ可愛い仕種。


「んじゃもう俺のことで仁王先輩や丸井先輩に相談しに行くの止めてくださいよ」
『え!?』
「先輩はもう俺の彼女なんだからいちいちあの人達にあれこれ話さなくてもいいっすよね?」
『赤也って仁王達のこと嫌いだったの?』
「そんなんじゃなくて自分の彼女が他の男と一緒にいるの普通に考えたら嫌だと思うんすけど」
『あ、そっか』
「だから俺の目の届かないとこであの二人と一緒にいるの禁止ね。分かった?」
『分かった。幸村とかジャッカルとかはいいの?』
「丸井先輩と仁王先輩じゃなきゃいいっすよ」
『みんなでご飯とかは大丈夫?』
「そりゃあの二人だって尊敬してる先輩だし別にいいけど何でそれを…」


このタイミングでこれを言うってことはだ。
なんかすげぇ嫌な予感がした。


「今からどこに行くんすか」
『ご飯食べにだよ。あ、大丈夫だからね?奢るし』
「だからどこに行くんですか?」
『駅前の焼き肉食べ放題に』


あ、これ俺の嫌な予感当たってる気がする。
絶対にあの先輩達勢揃いしてる。


「二人きりでお祝いしてくれると思ってたんすけど」
『え!?二人だよ!』


サプライズ下手くそ過ぎでしょ凛先輩。
思いっきり挙動不審になってんじゃん。
まぁこのタイミングで告白してこいって誰かに言われたんだろなー?
意外と仁王先輩辺りに言われてんだろなぁ。
八割人のことからかってるけど残りの二割良いアドバイスするもんなあの人。


「仕方無いっすね」
『だから二人きりだってば!』
「先輩達にはお世話になったし行くっすよ」
『みんなは居ないよ赤也!』
「あーはいはい。そういうことにしとくっすね」


今更そんな慌てたら余計に怪しいって言うのにこの先輩には隠し事出来ないんだろな。
隣でまだ二人きりだと主張してたけどそれを適当に聞き流しながら焼き肉食べ放題の店へと向かった。


『予約してた立海テニス部です』
「こちらになります」


危ね。吹き出すとこだった。
もうこの時点でアウトなの何で気付かないかな?まぁそれがこの人の可愛いとこなんだろな。
個室へと通されると思った通り先輩達が勢揃いしていた。


「赤也、誕生日おめでとうな!」
「遅かったよなー!俺もう腹減っちまってさ」
「あれ?あんまり驚いてないみたいだね」
「だから言ったであろう。椎名がエスコート役ではサプライズにならないと」
「赤也!さっさと座らんか」
「その顔じゃと上手く言ったみたいだのう」
「切原君と椎名さんの場所はちゃんと隣同士で空けておきましたからね」
『あ、柳生ありがと』


先輩達相変わらずっすね。
ま、俺もこの先輩達と一緒の四年間半楽しかったけどさ。


「あ、凛先輩」
『何?』
「俺結局大事なこと聞いてないっす!」
「そんなの後にしろよ赤也ー」
『あ、誕生日おめでとう』
「そっちじゃねぇし」
「椎名は相変わらず鈍感じゃのう」
「おい、初日から喧嘩なんてするなよ赤也」
「まったく、成長したとはいえやはりまだ子供な部分がありますね」
『え?え?』
「赤也!何が不満だと言うのだ!」
「大事なことなんすよ真田先輩!」
「む」
「真田に言い返すくらい赤也にとっては大事なことらしいからさ。椎名ちゃんと赤也に言ってあげなよ」
『え?』
「簡単な言葉でいいんだ椎名。ただお前が赤也をどう思ってるか伝えてやるだけでいい」
「は?お前まだ言ってねぇの?」


結局先輩達って俺のこと大好きじゃね?
凛先輩も含めてさ。
凛先輩はまたもや顔を赤くしちゃってるし。どーすんだろ?


『わ、私』
「なんすか」
『赤也のこと好き、だよ』
「俺もっす」


「そこはちゃんとお前も男らしく好きだと言ってやらんか赤也!」とまさかの真田先輩が言ったところで場が和んで焼き肉食べ放題が始まった。
まさかの真田先輩があんなこと言うとか。


「椎名が赤也のものになっちゃったのう」
「そうだよなぁ」
「返しませんからね」
「「えー」」
「二人とも切原君をからかうのはそのくらいにして」
「大体お前ら彼女いるだろーが」
「は?」
「おいジャッカル!赤也にはまだ言ってなかったんだぞ!」
「そうじゃそうじゃ」


あんの野郎!彼女居ねぇとか嘘だったのかよ!
変な心配して損したし!


「赤也、二人を怒ったら駄目だよ」
「彼女いることなんて俺全然聞かされて無かったっすよ!」
「俺達からしたら椎名も赤也も可愛い妹弟みたいなものだからね」
「そうだぞ赤也。あの二人の気持ちも少しは分かってやれ赤也」
「何か先輩達花嫁の父親みたいになってません?」
「ふむ、強ち間違っては無いぞ赤也」


げ。何でか幸村先輩達三強の方が雰囲気がおかしくなってません?
結局その後三人に彼氏としての心得なるものを散々教え込まれることになった。
結局先輩達がいるとこうなるんだよ。
成長したと思っててもきっといつまでたってもこの人達には敵わないんだろう。
ジャッカル先輩は涙ぐみながら凛先輩に俺のこと頼むって懇願してるしそんな俺達を柳生先輩は穏やかに見守っている。
凛先輩はあの二人の先輩に何やらまた教え込まれてる気がする。
ま、彼女がいるのなら別に放っておいてもいいか。


や、ちょっと待て!
今二人が凛先輩に渡したのどう見てもコンドームだし!あぁもう変なこと教え込まないでくださいっすよ。


赤也誕生日おめでとう!結局先輩達がいるといつもの可愛い赤也になっちゃうのでした(笑)
一枚上手な彼のセリフの意味(笑)
2018/09/25

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