一枚上手な彼のセリフ5題(3.俺以外に騙されるなよ)

『ここ?』
「そ、ここっすよ」
『え、赤也ってこういうとこ来たりするの?』
「俺のこと何だと思ってるんすか」
『焼き肉とか食べ放題とかラーメンとか食べてそうだと』
「ま、それで間違ってねぇっすけど今日は凛先輩優先って言いましたよ」
『それは映画の話でしょ?』


確かに俺に付き合ってとは言ったけどここまで鈍感だとは思わなかった。
ったく、何で分かんないかねぇ。
カフェの前でいつまでも立話してるわけにもいかないし再び先輩の手を引いて入店する。
さっきまで照れてたのにもう手繋ぐことにも慣れちゃったみたいっすね。


「んで何食います?」
『ここのパンケーキ美味しそうだよ赤也!』
「そりゃここのウリがパンケーキっすもん」
『知ってたの?』
「女子に人気って聞きましたよ」
『そっかぁ。そうだよねぇ』


メニューを眺めながらキラキラとしていた凛先輩の表情が途端に曇る。
あ、これまた勝手に何か勘違いしてんだろな。
でも面白いから訂正はしてやんねぇ。
丸井先輩からオススメされたことは教えてやんねぇ。


『おおおお!パンケーキがほわっほわしてる!』
「ふわふわっすね」
『まさかここに来れるとは思ってなかったから嬉しい!赤也ありがとー!』
「初めて来たんすか?」
『うん、友達誘ったんだけどみんな彼氏と行ったらしくて』
「あぁ、先輩だけフリーなんすね」
『そうなんだよね』


そこはそろそろ彼氏作る気になってくれたらいいんじゃないすか?
何でそんな分かりやすく落ち込んでるんすか。
まぁそのしょんぼり顔も可愛いですけど。


「18歳までに初彼氏作らないと嫁き遅れるらしいっすよ」
『えっ!?』


あーんと大口開けてパンケーキを食べようとしてる凛先輩へとなんとなく思い付いたことを言ってみた。
大口開けたまま動きが止まって間抜け面だ。


『赤也それ、ほんと?』
「さぁ?」
『え、どっち?困るんだけど!』
「仁王先輩が言ってたんで嘘かもしんないっすね」
『仁王が言ってたのか。そうか』


この鈍感女は正真正銘のお人好しでもある。
だから仁王先輩の言うことも真正面からいつも受け止めているのだ。
普通「仁王先輩から」って聞いたら誰もが「なんだ仁王先輩の言ったことか」ってなるはずなんだけどなー。
凛先輩は未だに仁王先輩の良いおもちゃになってんだろな。


「先輩、嘘っす」
『え』
「さっき俺が適当に思い付いただけですよ」
『もー!信じたじゃん!止めてよー』
「そもそも騙されすぎなんすよ先輩」
『そんなことないよ?』
「仁王先輩に遊ばれてばっかだったじゃないすか」
『えー?そんなことないって』
「とにかく、もう俺以外に騙されないでください」
『赤也にも騙されたくないよ!?』
「俺は可愛い嘘しかつかないから大丈夫ですって」
『やだよやだよ!』


凛先輩のことだから仁王先輩に騙されたことにも気付いてないか。
そういうとこも気に入らないっていうのにあの先輩はそれを知ってて凛先輩にちょっかいかけるからなー。


「約束っすからね」
『えぇ』
「凛先輩返事は?」
『はい』
「じゃ約束ですよ」
『分かった』


釈然としない表情をしながらも促したら素直に返事をするとこもすげえツボ。
よくこの先輩丸井先輩達から手を出されずに済んだよなぁ。
あぁそっか。凛先輩が俺のこと好きだからか。
そんな女口説いても面白くはないもんなきっと。まぁ俺の気持ちを分かってるってのもあるんだろうけど。


「これで嫁き遅れることもなさそうだから安心しました?」
『うん、かなり』
「残念だなー。先輩が嫁き遅れたら俺が貰ってあげようと思ったのに」
『えっ』


パンケーキを食べて御満悦な凛先輩へとまたもや投下してみる。
あまりに驚いたせいかフォークからパンケーキが落ちたし。ちゃんと皿の上に落ちてくれたのなら良かった。


「凛先輩顔真っ赤すよ」
『もう!またからかった!』


そんな可愛い反応するアンタが悪いんすよ。
だからつい意地悪を言いたくなるし素直に告白したくなくなるんだし。
でもそろそろ本気出してもいいかもしんね。
あの二人のとこに返したくないし。
もはや小姑みたいになってるよな丸井先輩と仁王先輩って。
俺が好きだって言ったらどんな顔すんのかな?
でもやっぱりそれじゃ面白くないから俺からは言ってやんない。
だからさ、早く俺に好きだって言いなよ凛先輩。


仁王と真田もアドバイスはしてるんだよ!赤也が思い出すタイミングが無いだけなんだよ!
2018/09/24

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