キスの隙間で溶けるアイス(向日)

『あーつーいー』
「凛、それもう百回くらい聞いてんぞ」
『とーけーるー』
「それも何回目だよ」
『がっくんどうにかして』
「や、それどう考えても無理なお願いな」


まぁ凛が暑いって言うのも無理は無い。
今年はなんつーか異常気象かってくらい暑いもんな。


『学校に残れば良かった』
「今日は夜になっても気温下がらねーって樺地が言ってたぞ」
『マジか』
「おお、マジマジ。だから夕方に帰っても一緒だろ」
『がっくん帰ったらアイスちょーだい』
「アイス?うちにあったっけな?」
『んじゃ買って帰ろ』
「ま、その方が確実だな」


今日は14時に部活が終わったからその後うちで夏休みの課題をやることになっていた。
俺はまだやらなくていいっつったのに凛が聞いてくれなかったんだ。
侑士と自主練したかったのに凛の提案にアイツも「課題をはよ終わらせるのは大事やで岳人」と乗ったのだった。
クソクソゆーしめ。俺が毎年夏休みの課題ギリギリなことまで凛に言わなくったっていいだろ!


凛とは3年になってから付き合い始めた。幼稚舎の頃は仲良かったけど中学の時に疎遠になって高2の時に久しぶりに同じクラスになったんだ。
そっから再び仲良くなって春に俺から告白したんだった。


『岳人ーアイス何にするー?』
「んー何でもいい」
『じゃあアイスの実にしよー。梨とブドウ両方食べたいし』
「俺にも両方くれよ」
『えぇ』
「何でだよ!」
『ウソウソ、ちゃんと岳人にも両方あげるよ』


家の近くのコンビニでアイスを買って帰る。
家に着いた時には汗だくだった。
練習終わってシャワー浴びた意味全くねぇな。
ふと隣の凛を見ると首筋につーと汗が滴っている。
おお、何かそれすげぇドキドキすんだけど。


『岳人の部屋エアコンある?』
「おお」
『んじゃ早く涼もう。暑くて死にそう』


そういや凛がうちに遊びに来るのって初めてだ。
つーか二人きりになるのも初めてじゃねぇ?
家に来るってそーゆーことだけど今更気付いて内心かなり焦った。
見られてヤバいものは大体隠してあるからいいけど彼女と二人きりってどーすんだよ。
や、落ち着け俺。別に童貞ってわけでも無いんだからいちいち焦るなよ。
隣の凛にバレないようにそっと生唾を飲み込んだ。


『暑い』
「涼しくなるまでに時間かかるって。それまでアイスでも食おうぜ」
『うん、食べる』


暑さでへばったのか部屋に入るなり凛の口数が減った。
この殺人的暑さじゃ無理もねぇか。
凛は分化部だから俺と違って体力も無いだろうし。
アイスの実をコンビニ袋から取り出して渡してやる。


『ありがと』
「俺のも残しとけよ」
『がっくんもだよ』


二人同時にアイスの実を開けてそれぞれが口に一粒運んだ。
まだ凛の肌はじんわりと汗ばんでいてその口にアイスの実が運ばれていく。
何かエロく感じるのは気のせいだろうか?
つーか考えてみたら俺達キスもまだしてねぇのな。
だから凛の口元から視線が外せないんだと思う。


『そんなに梨味食べたいの?』
「は?」
『だってずっと見てるから。ほらあーん』


俺が見てたことに凛が気付いたらしい。
自分の口へと運ぼうとしていたアイスの実が直前で方向を変えて俺の元へと運ばれてきた。
や、なんかこの流れヤバい。
俺が見てたのはアイスの実じゃなくてお前の唇な。


半開きの口へと梨味のアイスの実が放り込まれる。ブドウ味程甘くはない梨の風味が口いっぱいに広がった。


『変な岳人』
「なぁ、もう一個くれよ」
『これが最後の一個なんだよー』


『だーめ』そう言って凛は自分の口にアイスの実を放り込んだからその腕を掴んでこちらへと向かせる。
そのまま濡れた凛の唇へとキスをした。
抵抗されそうに無かったからそのまま口内へと舌をねじ込むとまだ溶けかけのアイスの実が残ってたからそのまま貰うことにした。
やっぱ梨味のが俺好きかもしれない。


「悪い。ついやっちまった」
『がっくん、私にもアイスの実食べさせて』
「は」
『駄目?』


いきなりキスした罪悪感で謝ったら凛からの返事が想定外でかなり間抜けな声が出た気がする。
なんだよ、それ誘ってるようにしか聞こえないぞ。


「後悔すんなよ」
『岳人だからしないよ』


もしかしたら俺が思ってるより凛は強かなのかもしれない。
凛に誘われるがままにブドウ味のアイスの実を口に含んで二度目のキスを凛にした。
そうやってどちらかがアイスの実を口に含んでキスをするってのを無くなるまで続けたんだ。


「凛、俺今更止まらないからな」
『アイスで口元ベタベタになっちゃったね』
「お前絶対分かってたやつな」
『そろそろいいかなって思ってたんだもん』


確信犯かよ!こんな計算高い女だと思ってなかったぞ。
でもそんな凛も想定外だけどエロくてまた好きになりそうだった。


『がっくん、またアイス一緒に食べようね』
「お前が食べさせてくれるならな」
『ふふ、岳人ならいいよ』
「変わり過ぎじゃねぇ?」
『二人きりの時は緊張しちゃうだけー』


今も緊張してるようにはぜんっぜん見えないけどな!
まぁでも今更どっちでもいい。
俺をこんな風にした責任は取ってもらうからな。
ベッドへと押し倒してアイス無しの初めてのキスを凛へとそっと落としたのだった。


誰そ彼様より

夏とアイスって題材で何か書きたくて。
書きなぐった感がヤバい。上手くまとまってないし。でもどうしてもがっくんで書きたくて。
がっくんってリードするよりされる側なイメージ。可愛いよね!
2018/07/27

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