通行人Xの悲劇(丸井)

神様、仏様助けてください。
私は今非常にピンチであります!


昼休みに友達が彼氏とご飯を食べるからって教室を留守にしたから私もたまには違う場所でお昼ご飯を食べようと思ったのが間違いだったかもしれない。
目の前にはぎゃんぎゃんと口喧嘩でお互いを罵りあう男女がいる。


「また浮気!?いい加減にしてよブン太!」
「だーから、違うって何度も言ってんだろい。キャンキャン喚くなよ。チワワじゃねぇんだから」
「はぁ?その言葉信じれると思ってるの?今年に入って何回浮気したと思ってんの?」
「だからお前の勘違いだろ?毎回毎回くだらないヤキモチ妬きやがって何言ってんだよ」
「ブン太が悪いんでしょ!」


口を挟もうにもその隙間が無さそうだ。
あぁもうどうしてこんなことになったんだ?


美味しくお昼ご飯を食べるためのベストな場所を探してたら視聴覚室が目に入ったのだ。
ここなら冷房あるから涼しくて美味しくご飯を食べれるだろうと思って入室したらそこには先客が居た。


「お前遅すぎ。俺もう腹減っちまってよ……つーか誰?」
『あ、えぇとすみません。お昼ご飯を美味しく食べるために視聴覚室に来ただけなんですけど』
「ふーん。ま、いいけど。つーか腹減った。何か食いもん持ってねぇ?」
『私のお弁当なら』
「沢山あんの?」
『いつもは友達に分けてるのである程度はあると思います』
「んじゃ今日は俺に分けてよ」


先客は1つ年上の丸井先輩だ。
有名人だから話したことはないけれど顔と名前は知っている。
屈託無く笑う顔がとてつもなくカッコいい。
最初は誰もが憧れる先輩と話せたってことだけでうかれていたのがきっと間違いだったんだと思う。


『誰かを待ってたんじゃないんですか?』
「あ?あーいいのいいの。遅いアイツが悪いんだから。つーか早くメシくれよ」
『大したお弁当じゃありませんが』
「お前親の作った弁当にその言い方は無ぇだろい」
『いえ、お弁当は自分で作ってるので』
「それならいいか。結構旨そうじゃん!エビフライ食っていい?」
『どうぞ』


まさか丸井先輩に自分の手作りのお弁当を食べてもらう日が来るとは思ってなかった。
何を食べても旨い旨いと先輩は言ってくれる。
もっと怖い先輩だと思ってたから意外でとても驚いた。


「あー食った食った!」
『お口に合いましたか?』
「おー全部旨かったぜ!お前料理上手なんだな」
『料理好きなので』
「やっぱ女の子はそうでなくっちゃなー」


先輩の隣に座ってお弁当を半分こして食べ終わったら隣で何やら深く溜息を吐いている。
何でだろう?聞いてもいいのかなと思ってる時だった。


「ブン太ー?遅くなっちゃった!担任がなかなか離してくれなくてさー!ってその女誰?」
「あーコイツ?」
『あの』


がちゃりと視聴覚室の扉が開いてこれまたとびきり綺麗な女の人が入ってきた。
先輩もどう説明していいか一瞬悩んだらしい。
そう言えば自己紹介なんてものしてなかったもんなぁ。
私から話そうと思った時には綺麗な先輩の猛攻撃が始まってしまっていた。
浮気とかじゃなくて単にここで出会しただけなのにだ。
何回か口を挟もうとしたものの私の言葉は完全にスルーされてしまう。


「いい加減にしてよ!私が彼女なんだよ!」
「だから俺の話少しは聞けって」
「いっつもいっつも色んな女子から差し入れ貰ってさ!私に悪いとか思わないわけ!?」
「はぁ?俺にって持ってきてくれた食べ物を断れっつーのお前」
「普通は当たり前でしょ!」
「勿体無いだろい、何言ってんだ」
「アンタ私の彼氏の自覚あるの!?」


そうこうしてるうちにますます喧嘩がヒートアップしているようだ。
まさに売り言葉に買い言葉とはこういうことを言うのだろう。
もはや口を挟むことすら私は諦めつつあった。


「んじゃもういいわ」
「は?」
「俺のために作ってきてくれたものをお前は断れってんだろ?そーゆーの無理だし。つーかお前が俺に何か作ってきたこと無いしな」
「料理なんてしたら手が荒れるから嫌だしそれでもいいって言ったのブン太でしょ!」
「それでもいいとは言ったけど差し入れ断れとは言われてねぇし」
「言われなくても断るのが普通でしょ」
「だーかーらもういいって。お前とは別れる。んでコイツと付き合うわ俺」
「『は?』」


どうしよっかなー?こっそり視聴覚室から出てこうかなー?とか考え事をしていたら隣から爆弾を落とされた。
思わず綺麗な先輩と声が重なってしまった。


「本気で言ってるのブン太」
「おお、コイツが作る料理旨いしどっかの誰かさんと違って差し入れ貰うなとは言わねーしな」
「こんな普通のこの何処がいいのよ」
「だからワガママ言わないとこだって。お前謝ったりもしねぇし」
「謝るようなことしてるのはそっちじゃん!」
「約束の時間に遅れてきといて謝りもしなかったのはどこのどいつだよ」
「それは」
「綺麗だけど中身空っぽだよなお前って」
「はぁ?」
「だからもう終わりな」
「アンタなんてこっちから願い下げよ!」


顔を真っ赤にして綺麗な先輩は捨て台詞を残して視聴覚室から飛び出していった。
丸井先輩はその背中に向かって「じゃあな」と隣で呟いている。


「あー疲れた。せっかく旨いもん食ったのに既に腹減りそうなんだけど」
『あの』
「お前名前何て言うの?」
『椎名です』
「バーカ。下の名前だよ」
『あ、すみません。椎名凛です』
「何年?」
『2年ですよ』
「赤也と同じか」
『切原君とは同じクラスですよ』
「赤也とねぇ。ま、都合はいいか。んじゃ凛そういうことだから」
『何がですか?』


先程の口喧嘩に体力を消耗したのか机に突っ伏したまま先輩は顔をこちらに向けた。
そういうことだからって何がそういうことだからなのだろうか?


「さっきの俺達の話聞いてた?」
『一応は』
「お前と付き合うって俺アイツに言っちゃったからさ。そういうことな」
『え?』
「明日から弁当俺のも作ってこいよ凛」
『先輩はあれは冗談じゃ』
「冗談も何も明日には3年中にこの話回るぞ」
『えっ!?』
「赤也が同じクラスならま、大丈夫だろい」
『大丈夫って何が?何がですか先輩!』
「や、ほら嫌がらせとかあるかもだろ?」
『えぇぇぇぇ!?』
「お前の反応新鮮だなぁ」
『先輩、笑ってないで訂正してきましょうよ!』
「嫌だ、ね。俺お前の弁当の味付け好きだし」
『即答しないでくださいよ先輩ってば!』
「明日から宜しくな凛」


結局予鈴が鳴るまでこの攻防は続いたけれど先輩は私の提案を全て却下した。
せめてお弁当係りで妥協してほしかったのに。
「彼女が居ないってのは面倒」との理由で彼女にされてしまった。
そんな理由で私を彼女なんかにしないでほしい。まだ都合の良い女扱いされた方がマシだと思うのに私の提案にまたもや「変わったヤツだなお前」と笑って却下されてしまった。


「ここに来なかったら教室まで迎えに行くからな凛」
『え』
「赤也と同じクラスってのは聞いたし」
『あっ!?』
「お前もう俺からは逃げらんねぇよ。ドンマイ」


「んじゃまた明日の昼休みになー」と先輩は爽やかに笑って3年の校舎へと戻ってしまった。
さようなら私の平凡ライフ。
明日からはようこそ非凡ライフ。
うん、全然嬉しくないのは何故だろうか?
あぁでも教室に来られるのは一番不味い。
目立ちたくはないから約束した通り先輩にお弁当を作っていくしか無さそうだ。
でもまたあの旨いって美味しそうな顔を見られるのは少しだけ楽しみな気がする。


レイラの初恋様より

ブン太と後輩ちゃん。
初めて後輩夢主で書いたかもしれない。
これはまた続きがいつか書きたいなぁ。
2018/07/13

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