安西先生、恋がしたいです(仁王)

只今現実逃避真最中。
現実は何でこんなにも冷酷なんだろうか?
トキメキ探してバスケ部の見学にに来てみたもののカッコいいなと思ったその人は既にマネージャーと付き合ってると周りの女子生徒が話しているのが聞こえた。
やっぱりあれかマネージャーってものにならなきゃ恋は始まらないのだろうか?
かと言って既に高校生活の3分の2を終えている私に今更マネージャーなんて出来るはずもない。
くそう、1年の時に楽だからと帰宅部を選んだ自分を悔やむことになるとは。


安西先生、私切実に恋がしたいです。


『ってことでバスケ部も駄目でした』
「カッコいいなと思って直ぐに失恋するとはのう」
『ついてないです私』


三年間クラスメイトな腐れ縁の仁王へと昨日の放課後の出来事を報告する。
私はこんなにも切羽詰まってるのに彼はいつも通り飄々としている。何ならどこか楽しそうにもみえる。
私の話ってどこがそんなにも楽しいんだろ?


「テニスは見にこんのか?」
『えぇ』
「テニスしてるまーくんはカッコいいぜよ」
『それ自分で言っちゃうの』
「ほんじゃ幸村とかか?」
『あー幸村君はカッコいいよね』


確かに仁王が言う通り幸村君はカッコいい。
それこそ王子様みたいだと思う。


「ならば一度見にきんしゃい」
『テニス部人が多いから嫌ー』
「おまんなら幸村に会わせてもいいぜよ」
『仁王、幸村君は何か違うの』
「さっきカッコいいと言ったじゃろ」
『確かにカッコいいけど何か想像つかない。幸村君は孤高の存在でいてほしい。手が届かない王子様的な?』
「女子の言うことはよく分からんのう」


幸村君を目の前にしても私は緊張してきっとろくに話せないだろう。
それって恋する以前の問題だと思うの。
確かにとてもカッコいいとは思うけど。


「何でバスケ部なんじゃ」
『運動部って言ったらバスケ部だと思ったから』
「ふーん」
『え、仁王が言ったよね?そんなに恋したいなら運動部の見学にでも行ってこいって。そしたらトキメキ転がってるって』
「バスケ部だとは言ってない」
『えぇ』
「まーくんもう眠いからあっち行きんしゃい」


そのまま仁王に手でしっしと追い払われてしまった。相変わらず気まぐれなやつめ。
運動部と言えばバスケって私の意見間違ってないよね?
好きなスポーツ漫画はって聞かれたらSLAM DUNKか黒子のバスケって答える自信あるし。
バスケ漫画には青春が詰まっているのだ。


諦めたらそこで試合終了ですよ。


安西先生の声が頭に響いた気がする。
あの超絶有名な名言だ。
そうだよね!うん、私諦めずに頑張るよ安西先生!


かと言ってバスケ部はもう無理だ。
せっかくときめいたのに彼には可愛い彼女が居たわけだし。
そしたら今日はバレー部でも見てこようかな。
カッコいい人いるといいなー。


「で、昨日はどうだったんじゃ」
『漫画みたいに上手くいかなかった』
「は」
『カッコいい人居なかったんだよう!ハイキューみたいなイケメン居なかったんだよう!』
「声がでか過ぎるのう。ま、うちのクラスにバレー部はおらんから良かろ」
『仁王、私どうしたらいいんだろ』
「テニス部見にきんしゃいってずっと言っとるじゃろ」
『人が多すぎてコート見えない』
「いいから一回来てみんしゃい」
『うーん』
「まーくんと約束じゃよ」
『そんなに言うなら一回だけだよ』
「恩に着るぜよ」


仕方無い仁王がしつこいから一回だけ見にいってあげよう。
この際後輩でもいいかなとか思ってたから切原君以外にも2年生はいるだろうしその確認をしてもいいよね。
私が了承すると仁王は表情を綻ばせた。


放課後、仁王に言われた通りに急いでテニスコートへと向かう。
何だって最前列を確保しなくちゃいけないのか。
せっかく見るのなら最前列じゃなきゃ駄目だなんてワガママもいいとこだと思う。
一緒に行こうって言ったら嫌そうな顔したし。


急いだおかげでテニスコートを一番見渡せる位置をゲットしたよ私!
行動としては100%頑張ってるよ安西先生!
ただし仁王に指定されたこの場所ってレギュラーコートだった気がする。
てことはアイツらしか居ないじゃないか!
や、幸村君始めテニス部レギュラーはイケメンだ。我が立海誇るイケメン揃いだ。
目の保養にはなるけれどやっぱり恋のトキメキって転がってないんじゃないかと気付いて少し落ち込んだ。
仁王の言うことやっぱり聞くんじゃなかった。
気付いた時には既に遅し。
右にも左にも後ろにも女子生徒がぎゅうぎゅうしててサッカー部を見にいけそうにもなかった。


レギュラー陣が部室から出てくると周りからキャーキャーとした黄色い声が飛び交っている。
みんな一生懸命だなぁ。
あ、仁王ちゃんと部活間に合ったんだ。
気怠そうだけどちゃんと部活には出てるんだなぁ。中学の時はよくサボってて真田君に怒られたって言ってたけど。
あ、幸村君は相変わらずカッコいい。
立ち姿からカッコいいとかね、貴重だよね。


『おお!凄い!』


テニス部の練習って久しぶりに見た気がする。
と言うかこうやってマジマジとちゃんと見るのは初めてだ。
自分で言うだけあって仁王も確かにカッコいいなぁ。


「椎名?何してんだこんなとこで」
『あ、丸井だ久しぶりー』


休憩中だろうか?丸井が先に私に気付いたみたいでフェンスへと近寄ってきた。
周りから一際大きく声が上がるも丸井はそれにガン無視している。
少しは愛想を振り撒くとかしないのかな?


「丸井君!差し入れ持ってきたの!」
「おお!後からちゃんと貰うからありがとな!」


あ、思い出した。
丸井はこういうやつだった。
差し入れの有り無しで態度が変わってくるんだった。


「んで何してんだよ」
『仁王に一回でいいから見学に来いってお願いされたから』
「あーそゆことな。んじゃついでに俺の天才的妙技堪能していけよ」
『分かったー』


私の言葉に納得したように頷いて丸井は練習へと戻っていった。
中学3年の時は同じクラスだったけど高校は同じクラスにならなかったから久しぶりに話した気がする。


そのまま最後までテニス部の練習を見学した。
結局練習中に丸井以外の人間が寄ってくることもなく仁王すらこちらに来ることはなかった。
まぁでも彼らのテニスは相変わらず凄い。
みんなカッコ良かったので目の保養にはなった。


さて帰ろうと思ったのに周りの女子達の動く気配が無い。
えぇと身動き取れないんですけども。
さてどうしようかと悩んで居たら彼らがこっちへとやってきた。
どうやら差し入れ手渡しタイムらしい。
キャーキャーとした声に混じってお目当ての部員を呼ぶ声が聞こえる。
これが終わるまでは帰れそうにもないな。
周りに聞こえないように俯いて小さく溜息をついた。


「仁王君がこっちに来る!」
「嘘!仁王君がこっちに来るの珍しいよ!」


ふいに後ろの女子からそんな声が聞こえたものだから顔を上げると確かに仁王がこちらへとやってきている。
そうか、仁王が差し入れを貰いに来るのは珍しいことなのか。
まぁ単なる気まぐれだろうと眺めていたら真っ直ぐこちらへ向かってきた。


『お疲れ仁王』
「カッコ良かったじゃろ?」
『確かに目の保養にはなったなぁ』
「なんじゃ、これでもときめかんかったのか」
『んーだってねぇ。テニス部だし』
「困ったのう」


さっきの丸井以上に仁王は周りからの呼び掛けを無視している。
まるで私の声以外は聞こえてないみたいだ。
と言うか困ったとは何故に?
意味の分からないことを言うのはたびたびあるけれど私がときめかなくて仁王が困ることって何かあったかな?


「椎名、好いとうよ」


仁王が口元に人差し指を立てたことによって私の周りの女子は黙りこんだ。
そして私に言ったのだ。
あんぐりと開いた口が塞がらない。
この男はなんて言葉を言ってくれたのだろうか。
キャー!と今日一番の声が私の周りの女子達から上がった。
私が『キャー』って言いたい。


「ときめいたじゃろ?」


フェンスに顔を寄せて私にだけ聞こえるように仁王が囁くから私はもう頷くしかなかった。
いきなりあんなこと言ってどうするつもりなのか。
全身が熱いのはきっと気のせいじゃない。


結局このことが原因で次の日には私が仁王と付き合ってるという噂が学校中に回っていた。


『噂になってるけどいいの?』
「俺は構わんよ」
『そっか』
「椎名はどうなんじゃ?」
『私もいいかなって』
「まーくんのカッコ良さにやっと気付いたんじゃろ」
『そうだね』


詐欺師に騙された感はあるけれど安西先生、私も恋が出来たみたいです!


レイラの初恋様より

題名が好きで書いちゃったお話。安西先生が分からないとこのお話は面白くないよね。SLAM DUNKを読んだこと無い方はごめんなさい。
2018/06/21

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