鈍感な彼のセリフ5題(4.なんで赤くなるんだ?)
「だいぶ良くなってきたんじゃね?」
『ほんと?』
「ほんとほんと。これでいつでも嫁に出してやれるぜ」
『丸井はいつから私のお父さんになったんだ!』
「ん?そんなのクッキーのレシピ教えた時からだろい」
『お父さんじゃなくてもうなんかそれお母さんだよ』
「まぁそんな落ち込むなって。味は良くなってきてんだからさ」
昼休み、今日も今日とて丸井にクッキーを味見してもらう。
うん、だいぶ良くなってきてるみたいだ。
これなら丸井の誕生日に間に合うかな?
「つーかそろそろ俺にも教えろよ」
『何を?』
「お前の好きなヤツだって。こんだけ協力してやってんだから俺にだって知る権利あるだろ」
『えっ』
「俺に言えないような相手なのか?あ、もしかしてテニス部だったりすんのかよ?」
『丸井以外にテニス部で親しい人居ないよ』
「そりゃそうだよな。じゃあ誰だよ!教えろよ」
なんだってそんなに人の好きな人を知りたがるのか。
丸井ってもっと他人に対して興味無い感じだったでしょ?
『何でそんなに人の好きな人知りたいの?』
「そりゃどうせなら上手くいって欲しいだろ?もっと協力してやりてえじゃん」
眩しいくらいに清々しい笑顔で丸井は言った。
これもし私が好きだって言ったら丸井はどうするんだろ?
『どうかなぁ?上手くはいかないかもなぁ』
「は?何でだよ?」
『友達だとしか思われてないからさ』
「あー俺とお前みたいな関係?」
『そうだね』
「そっから意識してもらえばいいんじゃねえよ?」
『ん?』
「仲は良いんだろ?なら望みが無いわけでもないだろ」
『そっか』
「おお!頑張れよい」
そうやって言ったってことは丸井ももしかしたら意識してくれるかもしれないってことだよね。そういう解釈をしていいんだよね?
今日も良い天気だなー。
午後は昼寝しないように気を付けないとなぁ。
丸井との会話が途切れてぼんやりとそう思ってる時だった。
開いた窓から突風が吹き込んできたのだ。
『痛っ』
「どうした?」
『目に何か入ったかも』
「大丈夫か?」
『分かんない』
「ちょっと見せてみろって」
チクリとした痛みに反射的に目を閉じるも遅かったらしい。
これはきっと今の突風でゴミか何かが入った気がする。
私の前の席に座っている丸井が私の顎をグイッと上に向かせた。
「椎名、ちょっと目を開けろって」
『うん』
「痛いだろうけど我慢な」
痛みにじわじわと涙が浮かんでくる。
と言うか丸井の顔が近いよ!かなり近いよ!
じいっと私の目を覗き込んでいる。
あぁもうまただよ!全身が沸騰しちゃいそうだ。
目を閉じたいのに閉じれない。
「あー糸屑みたいなのが入ったんだな」
『取れた?』
「おお、もう大丈夫だぞ」
『ありがと』
「つーかなんで顔赤いんだよ?」
『や、今のは誰にされても恥ずかしいよ!』
「そーか?」
『そうだよ!びっくりしたじゃん!』
「椎名が男慣れしてなさすぎなんだって」
『慣れてないよ!』
「椎名って素直だよなほんとに」
『ちょ!笑わないでよ!』
顔は熱いし丸井は楽しそうだし私も何を返事してるのかちょっとよく分からないよ!
あぁもういっそこの勢いで好きだって言っちゃえばいいんだろうか?
いや、無理。さすがにそれは無理。
その代わり丸井の誕生日にはちゃんと伝えてみよう。
と言うかそろそろ気付いてくれたっていいと思う。
私の好きな人は丸井だよってさりげなく態度には出してるよね?
友達も「凛は頑張ってるよ」って言ってくれたよ!
鈍感すぎない丸井?
それが書きたかっただけのお話。
ぶっちゃけ現実にこの展開って早々ないよね?自分で鏡見ちゃうよね?
2018/04/20