鈍感な彼のセリフ5題(3.俺、お前のこと好きだぜ)

『どう?』
「おーちゃんと少しずつ成長してんな」
『良くなってるならいいんだけど』
「そんな気にして作っても旨くなんねえぞ」
『丸井はそうやって簡単そうに言うけどさー』
「もっと食べた人が喜んでるとこ想像しながら作ってみろって。んで作るのを楽しめよ。肩の力抜いてさ」
『分かったよ。いつもアドバイスありがとね』


今日も合格は貰えなかった。
まぁそんな簡単に美味しいクッキー作れるはずがないよね。
料理初心者なわけだし?
焦げたりはしてないんだけどなぁ。
丸井のアドバイスを聞いてちゃんと今日も頑張ってみよう。


「つーか意外だったわ」
『何が?』
「直ぐに面倒だから無理だって俺に代わりに作れって言うと思ってた」
『いくらなんでもそんなことしないよ!』
「まぁ、そうだよな。椎名だもんな」
『丸井のクッキーは私が作るより美味しいだろうけどそこはやっぱり自分で作らなきゃ意味無いよきっと』
「バレなきゃよくね?」
『気持ちが伝わんないじゃん』


丸井のことが好きじゃなかったとしてもそれはやっちゃいけないと思う。
そんな風に自分を誤魔化すと後々絶対にしんどくなるから。


「気持ち込めろって俺が言ったんだな」
『そうだよ。そしたら伝わるって丸井が言ったんだぞ』
「おお、こんだけ頑張ってたら大丈夫だろい」
『そうかなぁ?大丈夫かなぁ?』
「なんだよ。いきなり気弱だな」
『んー迷惑じゃないかなとか考えちゃうよね』


自分で作ったクッキーを丸井の机から拐ってかじってみる。
不味くはないけど美味しくもない。
普通の味だ。あれこれ気にしすぎて気持ちが込もってないとは言われたけどまだなんか足りない気がするんだよなぁ。


「大丈夫だって!俺お前のこと好きだぜ!椎名のことは俺が保証してやるよ!」
『あ、ありがと』


なんだよそれ!なんだよそれ!
いきなり反則だよ!
突然過ぎてテンパってお礼を言うことしか出来ないじゃないか!
平常心!平常心を保って私!
身体中が沸騰しそうなのをなんとか抑える。


「なんだよ、急に黙って」
『や、丸井は天然のタラシだなぁと思って』
「はぁ?何言ってんだよ」
『何でもない!』
「変なヤツ」
『愛情以外にもなんか足らなくない?』
「ちゃんとレシピ通り作ってんだろ?」
『そのはず』
「なら心をちゃんと込めりゃ大丈夫だって」
『えぇ』
「色々考え過ぎなんだよ。好きなヤツが美味しくクッキー食べてるとこ想像して今日は作ってみろよ」
『分かった』
「んじゃそろそろ部活行くわ」


そう言って丸井はまだ残ってるクッキーを丁寧にしまい始めた。
別に残したっていいのに初日以降ちゃんと持ち帰ってくれている。
そういうとこも好きだなぁ。


「お前なら大丈夫だから頑張れよい」
『うん、ありがと。丸井も部活頑張ってね』
「おー」


私も帰って明日のためのクッキーを作ろう。
丸井の美味しそうな顔は嫌って程知っている。
私の作ったクッキーを食べてあの表情になってくれたら確かに嬉しいかもしれない。


さっきの言葉が頭をぐるぐると巡っている。
「俺お前のこと好きだぜ!」
あぁもうこの言葉だけで満足かもしれない。
やっぱり告白は出来そうにないけど誕生日はちゃんとお祝いしよう。


恋愛感情の無い好きでも異性に言われたらドキドキするよね!
2018/04/19

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