氷帝ディヴェルティメント(Chapter [)

『滝せんぱーい!』
「どうしたのさ凛」


一人でのんびりと優雅にティータイムを満喫してたら凛がやってきた。
他の部員はどうしたんだろうと先程まで凛が居たところを確認したらなかなかカオスだ。
向日が忍足に納豆を食べさせようと奮闘してるしジローは樺地とジンギスカンを楽しんでいる。
跡部と宍戸と日吉はケーキのテーブルに座らされて少しげっそりしてるようにも見えるし。
鳳はそれを困った様に眺めている。
軽食バイキングにしたのに結局宍戸と日吉は凛にケーキを食べさせられたのだろう。


『滝先輩とも一緒に楽しみに来たんですよー?』
「凛、跡部達に何したのさ」
『何もしてないですよ。やだなぁそんなこと言っちゃって』


何もしてないことは無いと思うのだけど凛にはきっと説明しても伝わらないからこれ以上は言わないでおく。
諦めが肝心なこともあるよねやっぱり。


「じゃあ何食べようか?」
『チーズフォンデュを発見したんですよ!ついでにチョコレートファウンテンも!』
「それは楽しそうだね。よし、行こうか」
『はい!』


凛に案内されるまま着いて行くと見事なチョコレートファウンテンが遠目から見ても分かった。
跡部はやっぱり俺達のこと甘やかしてるよね。
宍戸の言ってたことあながち間違ってないかもしれない。


『先輩!何から食べましょう?』
「好きなのからにしなよ。ほらイチゴとか美味しそうだよ?」


チーズフォンデュ用のフォークにイチゴを刺してチョコレートファウンテンへと持っていく。
イチゴにチョコレートがかかった所で凛へと差し出した。
あーんと口を開けるのでそこにイチゴを入れてあげると幸せそうに食べている。
ほんと俺達には無防備だよね凛ってさ。


『イチゴ美味しいですー』
「他にも沢山あるよ」
『食べる食べる!』


そう言いながらも自分でフォークを持とうとしないので俺があれこれ凛の口へと放ってあげた。
こんなに凛が甘えるのも俺達だけなのを跡部達はきっと知らないんだろなぁ。
俺達の目の届かない所だと凛は意外と大人しいのだ。
青学とか立海とか他校のテニス部にはだいぶ馴れてきたけどね。


「ねえ凛」
『ひゃい、にゃんですか?』


凛に今度はジャガイモにチーズをつけたやつを与えてみたらこれまた素直に食べた。
ふにゃりと表情が緩みっぱなしだ。
甘いものの途中に塩気のあるもの食べるのって美味しいもんね。


「俺達の好きなとこ教えてよ」
『先輩達のですか?』
「そう」
『みんな?』
「皆分教えてくれたら嬉しいかな」
『うーん。滝先輩だけにですよ?』
「皆には内緒なの?」
『うん、内緒です』
「何でさ」
『なんとなく?』


単なる気まぐれなんだろうか?
まぁ別に言わないからいいんだけどね。


『好きなとこかぁ』
「跡部から順番にさ」
『跡部先輩に限らずみんな好きですよ』
「何処が好きなのか聞いてみたかったんだけど」
『どこ?…うーん』
「そんな困る質問したかな俺?」
『嫌いなとこ無いもん』
「あぁそういうこと?」
『はい。だから好きなとこって難しいですよねえ』


一口サイズのシフォンケーキに少しだけチョコレートをつけて凛へと運んでやる。
普通に答えてくれると思ってたのに凛には少し難しい質問だったみたいだ。


「でも俺達きっとずっと一緒にはいられないよね」
『そうですねえ』
「そしたら凛はどうするの?」
『何がですか?』
「俺達のこと大好きでしょ?」
『当たり前じゃないですか』
「誰か一人を選んだりしないの?」
『またその話ですかー?』


あぁこの話って鳳が凛に聞いたんだっけな。
あれ?宍戸だっけ?
誰かから聞いた気がする。
でも俺も聞いてみたくなっちゃったんだよね。


「まあいいじゃん。考えてみなよ」
『無理かな』
「即答だね」
『その時になってみないと何とも言えないです』
「大学もあるしね」
『みんな大学でも一緒でしょ?』
「多分ね」
『そしたらまだまだ一緒にいられるから』
「俺達に彼女が出来てもいいの?」
『先輩達に彼女ですか?そしたら紹介してほしいなぁ』


恋愛の「レ」の字すら俺達には向いて無いらしい。
博愛主義者って言ってもいいのかな?


「恋愛出来るか心配してたのみんな」
『へ?』
「凛がさこの先恋愛出来るのかって」
『やだなぁ。それを言うなら先輩達もじゃないですか!だーれも彼女居ないし心配ですよ!少しは立海の皆さんを見習うべきです』
「そうだね」


逆に言い返されてしまった。
確かに俺達って凛が部活に馴染んでからは誰も彼女作ってないからなぁ。


「凛のせいだよきっと」
『私!?え?何でですか!?』
「内緒」
『滝先輩!そう言わずに教えてくださいよ!』
「凛が可愛いからいけないんだよ」
『そんな冗談言ってないで教えてくださいようー』


珍しく俺の言葉に慌てている。
いつもだったら本気にしないことの方が多いのにほんと面白いよねえ。
でも何でかは教えてあげないよ。
自分でたまには考えてみようね。


「俺そろそろ戻るから」
『ええ!』
「忍足と交代してくるね」
『さっきの答えはー?』
「凛をからかいたくなっただけだよ」
『ええ!滝先輩ひどーい!』


あまりに情けない顔をしていたのでフォローを入れておくことにした。
あれはきっと初めて自分が俺達に迷惑かけてるのかもしれないって思ったんだろなぁ。
発想がほんとずれてるよね。


「忍足、俺と交代して」
「凛のとこ?」
「アイツ自分で食べようとしないんだよね」
「滝が甘やかしたせいやろ」
「そうだね」
「ほな俺も甘やかしに言ってくるわ。ここ納豆臭くてあかんし」
「宜しく」
「任せとき」


凛は忍足に任せることにした。
さて俺はたまには宍戸と日吉のフォローに回ろうかな。
いつの間にか跡部はジローと樺地に混ざってるし。
向日はまだあれこれ納豆を堪能してるみたいだ。


いつまでこうしていられるかは分からないけど凛があの状態じゃ誰かが抜けがけするのは当分は無理そうだね。
それはそれできっとみんなホッとしてるんだろなぁ。


俺はきっとこれからもそんな凛達をのんびり見守ってくことにする。
観察してるのは楽しいからね。
今度樺地とも話してみようかな。

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