氷帝ディヴェルティメント(Chapter U)

跡部さん何てこと言ってくれたんだ。
コイツに跡部さんが怒った理由を説明しろだなんて練習試合終わっちまうだろ。
俺、今日越前と試合なんですけど。


「日吉、イライラしててもしょうがないよ」
「分かってるよ」
『何で怒ってんのさ日吉ー』
「馬鹿なお前のせいだよ」
『えぇ、私は馬鹿じゃないもん』
「じゃあ跡部さんが怒ってる理由分かるだろ」
『えへへ』
「分かんないならやっぱり馬鹿だな」
「二人ともさっさと説明しないとアップの時間無くなっちゃうよ?」
「滝さん」
「じゃあ滝さんがコイツに教えてやってくださいよ」
「それはほら二人の仕事だからね」
『見捨てないで滝先輩ー』
「うん、ちゃんと見ててあげるから頑張ってね」
『はい!頑張ります!』
「椎名さん頑張らなくていいからちゃんと理解してくれるといいんだけど」
『うん、頑張るよ!』


コイツ絶対に凰の言ってること理解してないだろ。
頑張らなくていいって凰が言ってるのにその返事が頑張るよってどういうことだよお前。


「凰、頑張れよ」
「俺だけに任せないでよ日吉」
『あ!ドリンクの準備しなくちゃ!』
「それはもう1年が全部やったぞ馬鹿」
『馬鹿って言う方が馬鹿なんだよ!だから日吉のバーカバーカ!』
「殴るぞお前」
『殴ってみたらいいじゃん!いつも結局殴ってこないから日吉結局優しいんだよねー』
「チッ」
「滝さん、笑うと日吉に聞こえますって」
「もう聞こえてますよ」
『ねぇ、まだ正座してなきゃ駄目?』


話がコロコロ変わってくんですけど。
コイツ何でこんなに馬鹿なんだ?
勉強は出来るのに思考回路はかなり馬鹿だ。


「もう跡部さん居ないから足を崩してもいいと思うよ」
『凰ありがとー!』
「跡部さんが怒ってんのは勝手に青学に行ったことだろ」
『跡部先輩が青学って言ったもん』
「それ絶対に椎名さんの勘違いだよ」
『えぇ』
「跡部さんが言い間違えるわけないだろ」
『跡部先輩だって人だよ。間違える時だってあるよ!』
「滝さん笑いすぎですって!」
「ゴメン。面白すぎてちょっと無理」


コイツやっぱり一回くらい殴らないと理解出来ないんじゃないのか?
知らないうちに自分の拳をぎゅっと握りしめてたみたいだ。
爪が手の平に食い込んだ痛みで気づいた。
血は出てないみたいで良かった。


「跡部さんが間違えてたら俺達も青学に居たはずだろ?」
「椎名さん以外はみんなこっちに居たよ」
『あ、確かに』
「お前の勘違いって分かったか?」
『でもなぁ、それくらいで怒らなくてもいいでしょー?』


コイツ結局開き直りやがった。
まぁ跡部さんが怒ってんのは八つ当りみたいなもんだけどな。
滝さんに言われた言葉に相当イライラしてんだろな。


「とりあえずちゃんと謝っておけよ」
『んー仕方無いなぁ』
「宜しくね椎名さん」
「跡部って部長だけど結局俺達に面倒見られてるよね」
『お、滝先輩良いこと言いますね!』
「お前それ跡部さんに直接言うなよ」
『分かった!』


足を崩してよろよろと立ち上がりながら俺の言葉に元気良く返事をしてるけどこれ絶対に跡部さんに言うだろ。
もうこうなったら機嫌悪くなった跡部さんには隣にコイツを置いておくことにする。
少しはマシになるかもしれない。


『足が痺れてヤバい』
「おい!急に立ち上がるからだろ!」
『日吉ムーリー!』
「だからって俺にすがりつくなよお前!」
「面白ーい」
「滝さん、日吉に怒られますよ」


何でそこで俺なんだよ!
近いからとかそんな理由なんだろうけどだからって俺に抱きつくな!
イライラするだろ!
それを楽しそうに写メに撮ってる滝さんにもイライラしてきた。


『歩けないんだもん』
「滝さんに運んでもらえ」
「俺はそーゆーのパス」
「凰」
『凰でかいからおぶってもらうの大変じゃん』
「お前!」
『日吉の背の高さちょうどいいんだよー』
「俺だって凰と身長そんなに変わらないだろ!」
『凰は高すぎなんだよ日吉』


つーか俺に抱きついた所で足の痺れなくならないだろ。
俺は何でコイツに振り回されてんだろ。
かと言ってそろそろアップに向かわないとそれこそ跡部さんに怒られるだろ。
仕方無いな。
コイツを連れてくのが一番手っ取り早い気がしてきた。


「お前後からまた跡部さんに怒られるからな」
『は?何でさ』
「分かんないならもう気にすんな」
「お、日吉は腹を括ったみたいだね」
「滝さん、煽らないでくださいよ」
「もういいです。気にしないんで」
「じゃあ四人で向かおうか」
『日吉ありがと!』


椎名を抱き上げてコートに向かうことにした。
忍足さんや向日さんにからかわれる気がするけどもういい。
跡部さんは少し怖いけどまぁ説明したら分かってくれるだろ。


コイツ無防備過ぎてほんと腹立つ。
何で楽しそうなんだよ。
『眺めが良い!』なんてはしゃいでる。
滝さんも滝さんで椎名と楽しそうに会話してるし。


「凰、跡部さんどう思うかな?」
「少なくとも機嫌はまた悪くなるかもね」
「だよな」
「俺もフォローはするから」
「ありがとな」
「俺はフォローしないよ」
「滝さんがしてくれないのは知ってます」
「いつだって楽しんでますもんね」
『フォロー?何の?』
「お前はもう余計なこと気にすんな」
「そうだね。椎名さんは気にしなくていいよ」
『ふーん』
「つーかお前もう足の痺れ無くなってるだろ。自分で歩け」
『やだよ。もう少しこの景色楽しませてよ!』
「落とすぞ」
『そしたら跡部先輩に言い付けるもん』


コイツ!
何でこうも俺の機嫌を損ねる様なことしか言わないんだ?
あーきっと誰に対してもだな。
滝さんと凰に両肩をポンポンと叩かれた。
凰はいいとして滝さんは何か違うよな。
いつもこの人のせいで物事が悪化してる気がする。

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