氷帝ディヴェルティメント(Chapter T)

滝のせいで空気が悪くなっただろ。
どーすんだよこれ。
早く凛を連れて来いってんだ青学。


青学を待つ一時間がすげー空気が重かった。主に跡部がだけど。
滝と侑士は楽しそうだな。
ジローも大して気にしてねえな。
つーか滝の言った言葉の意味理解してんのかな?
凛がいねえから1年にドリンクの準備をさせる。
何で俺がって思っただろ?
レギュラーの部室にいるよりはマシだったんだよ。
ピリピリしてる跡部とよくアイツら一緒にいれるよなー。
宍戸は我慢してんだろきっと。
俺はそんなとこぜってえに居たくないけどな。
触らぬ神に祟りなしってこういうことじゃね?


青学もバスで来るっつーからそろそろ着くかなって時間に出迎えに行ってやった。俺って優しくねえ?


『岳人せんぱーい!』
「お前何で青学に行っちまったんだよ」
『跡部先輩が青学で練習試合って言いましたよ?』


青学のバスが到着すると同時に凛が一番に降りてきた。
不味い。凛を出迎えに来たみたいになってねーかこれ?
俺の姿を視界に捉えると小走りで向かってくる。
犬みたいで可愛いんだよなコレ。


「ちげーよ。青学と氷帝で練習試合だバカ」
『ええ!?そうだったんですか!?』
「仮に青学で練習試合だったとしてもこっからバスで向かうだろ」
『あ、確かに』
「ほらさっさと跡部に謝ってこいよ」
『怒ってますかね?』
「かなりな」
『やだなぁ』
「入って直ぐに謝っちまえば許してくれんだろ」
『お、それにします!』


俺の提案にパンと両手を鳴らして凛は部室に去っていった。
よし、まぁこれなら大丈夫だろ。
跡部の機嫌が悪いのは凛のせいじゃねえけどな。


「今日は向日が出迎えか」
「おーたまたまな」
「なぁ向日ー凛ちゃん相変わらず天然さんだなー?」
「お前らが出発する前で良かったわほんと。手塚ありがとな」
「大したことはしていない」
「向日さん!凛めっちゃ面白いっすね!」
「桃城お前もかよ」
「何がっすか?」
「何でもねえ。立話もなんだし行くぞ」
「何回か来てるし別に道案内いらないと思うんすけど」
「越前、そう言って前回ジュースを買いに言って迷子になったのは誰だったかな?」
「乾先輩!あれは桃先輩が絶対にこっちだって言うから!」
「てめぇ越前!お前も着いて来ただろーが!」
「キャンキャン煩せーぞ桃城」
「あ!やんのかマムシ!」
「こらお前達、氷帝に着いて早々に喧嘩をしない」
「おーいし、桃と海堂に何言っても無駄だよ」
「向日さんテニスコートってあっちすよね?」
「あー合ってんぞ」
「勝負だマムシ」
「上等だ!」
「こら!二人ともまた迷子になるよ!ってもう行っちゃったよ」
「タカさん、止めるならもっと強引に止めなきゃ駄目だよ」
「強引になんて俺には無理だよ不二」
「相変わらず賑やかだなお前ら」
「うちの部員がすまない」
「手塚も大変だな。つーか大体の方向しか言ってねえけど迷子になってねえかな?」
「俺達もそろそろ行こうか」
「途中で桃と海堂を回収しないとなぁ」


手塚はよくもまぁこんな曲者だらけの部員をまとめてるよなぁ。
うちは跡部くらいだから楽だけどさ。


案の定道で迷ってた桃城と海堂を回収して青学にクラブハウスの空いてる一室を案内した。
こっからならテニスコート見えるし迷わねえだろ。
跡部が越前のためにクラブハウス下に自販機設置してくれたからアイツも迷わずに済むだろうし。
俺様な癖に跡部って周りに対して甘いんだよなぁ。


『岳人先輩助けてください!』
「はぁ?」


部室に戻ると凛が正座をさせられて居た。
その前に全員並んでいる。
とりあえず跡部に青学をクラブハウスに案内したことを報告した。


「んでどうしたんだよコイツ」
『跡部先輩が反省するまで正座しろって酷いんですよー』
「凛、お前が悪い」
「宍戸、コイツ跡部になんつったの?」
「部室に着いて早々におはようございますって元気よく入って来て不機嫌な跡部に謝りもしねえで『跡部先輩機嫌悪いんですか?何かあったんですか?』って言いやがった」
「滝、笑うのを止めろ」
「ゴメン。でもちょっと無理かな」
「俺はちゃんと跡部に謝れって言ったぞ」
『あ!そうだ!遅刻してごめんなさい!』
「今更やで嬢ちゃん」
「馬鹿だな相変わらず」
「椎名さん、遅刻に対して跡部さん怒って無いよ」
『そうなの?』
「うす」
「とりあえず跡部、青学も到着したんだから準備しねえと」
「分かった。お前ら今日は一敗もするんじゃねえぞ」
「言われなくてもそのつもりだぜ」
「凰、コイツにちゃんと俺が何で怒ってんのか説明しとけ」
「俺がですか?」
「若と一緒に頼んだぞ。行くぞ樺地」
「うす」
「ちょ!跡部さん!」


凰と日吉に無理難題を言って跡部は樺地を連れて出て行った。
凰は困った顔をしてるし日吉は唖然としている。
まぁそうだよな、凛に色々理解させんのはかなり難しい。


「ほな俺達も行こか岳人」
「そうだな侑士」
「宍戸、ジロー起こしてよ。樺地行っちゃったし」
「滝、また俺にそうやって無理を押し付けんなよ」
「凛に説明しなきゃいけない凰と日吉よりは楽でしょ?」
「…まぁな」
『えっ!』
「黙ってたと思ったら反応するとこそこかよ」
『跡部先輩何で怒ってるのかなって』
「凰、コイツ殴っていいか?」
「駄目だよ日吉」
『え?え?日吉まで怒ってるの?』


ほんと馬鹿だよな凛って。
馬鹿なこ程可愛いっつーけど限度があるだろ。
まぁ面倒だから凰と日吉と凛と滝を置いて俺達はコートに向かうことにした。
滝はきっと凰と日吉がどうやって説明すんのか聞きたくて残ったんだろ。
凛にいくら説明しても理解出来なくてそれに日吉がイライラするとこまでは俺も簡単に想像出来た。


「んで、侑士はどーすんの?」
「どうもせんで。今まで通りや」
「ふーん」
「お前ら少しはジローを一緒に運ぶ気とかねえのかよ」
「宍戸もジロー起こせばいいだろ」
「起きたらこんな苦労しないだろ!」
「簡単やで。今日のオーダー教えたり」
「ジローは誰と試合だっけな?」
「おいジロー、不二と試合だぞ。そろそろ起きろ」
「んー?不二って青学の不二ー?」
「そうだ」
「え?マジマジ!?不二と試合とか俺ちょー楽しみだC〜」
「起こせるならさっさと起こしてくれよ」
「オーダーなんてお前も知っとったろ」
「逆に何でそれで起きること知らねーんだよ」
「知ってたって!忘れてただけだ!」
「激ダサやな宍戸」
「ほんと激ダサだぞお前」
「宍戸、口癖二人に取られてるC〜」
「お前のせいだろが!」


さて、どうやって青学に勝ちに行くかな。
まぁ今日苦労すんのは宍戸と凰だろな。
ゴールデンペアが相手だと大変だよなぁ。
さーて、跡部に怒られたくねーし練習試合でも本気出して行くしかねーな。


凛が誰を選ぶかちょっと俺も楽しみになってきた。
俺?俺はそんな張り切って参戦する気はねえかな。
ちょこちょこ首突っ込むつもりではいるけど。
滝は完全に傍観するつもりでいるみたいだけどな。

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