氷帝ディヴェルティメント(Opening)

「おい忍足、凛はどうした?」
「今日はまだ見てないで」
「跡部昨日ちゃんと伝えといたのかよ」
「青学と練習試合だと伝えたはずだ」
「跡部、それあかんわ」
「ちゃんと伝えただろ?」
「椎名に余計な情報は言わなくていいんだよ」
「あーアイツもしかして」
「跡部さん」
「どうした樺地」
「手塚さんから電話です」
「手塚だと?まさか当日になって来れねぇとか言わねえよなアイツ」


今日はうちの学校で青学と練習試合の予定やった気がする。
青学が到着する一時間前には来いと言われとったからマネージャー以外は全員揃っとる。
青学の手塚からこんな時間に電話っちゅーことはアイツ直接青学に向かったんとちゃうんかな。


「俺だどうした手塚」
「あ?うちのマネージャーがそっちにいるだと?」
「あぁ、そうか。分かった。宜しく頼んだぞ手塚」


跡部の声だけでも凛が青学にいるってことが分かった。
跡部の言ったことをどう勘違いしたら青学で練習試合することになるんやろ?
百歩譲って青学で練習試合やとしてもうちの学校からバスで向かうやろ。
ほんまうちのマネージャーはアホのこやわ。


「凛青学に居たんだろ?」
「あぁ」
「だからアイツには学校に何時に来いって情報だけのが良いって何回も言ってんだろ」
「いや、それだとアイツが成長しねぇ」
「跡部諦めた方がいいぞ」
「凛は天然だから成長とか無理だC〜」
「跡部さん、顔が怖いです」
「部長、疲れるだけですよ」


凛がアホなのは今に限ったことやない。
最初からアホやったわ確か。
うちの監督を女子テニス部の監督やと勘違いして入部届けを出したのが始まりや。
最近はマネージャーになりたいって言う女子も減っとってそれを監督は普通に受理したんやった。
別に募集してないわけやない。
女子達が牽制しあってマネージャーにならないようにしてるだけや。
だからどんな女強気な女がマネージャーやるんやろと思ってたら入ってきたのは単なるアホで拍子抜けしたのを覚えとる。


「跡部さん」
「どうした日吉」
「アイツは教育云々の問題じゃないですよ」
「椎名さん勉強は出来るんだけどね」
「ウス」
「俺は諦めねぇ」
「何でそんな意地になるんや跡部」
「そうだぞ、諦めた方がぜってー楽だぞ」
「アイツ俺達が卒業してちゃんとやっていけるのか心配しか無いんだよ」
「長太郎達いるから大丈夫だろ」
「跡部って意外と心配症だったんだね〜」
「俺達は凛の将来に責任があるんだよ」
「誰かが責任取ればいいんじゃない?」
「滝さん?」
「だから、誰かが凛と付き合っちゃえばソイツの責任だよね」
「あぁ」


滝はいきなり何を言うてんのやろ?
けど滝の言葉で空気が変わった気がする。
まぁ俺達は俺達であのアホのこに手は出さない。抜けがけはしないみたいな暗黙の了解みたいになっとったもんな。
アホなんやけどいちいち世話焼きたくなるんよアイツ。
滝はなんやら楽しそうだ。
わざと煽ったんやなアイツ。


「これで跡部の肩の荷が降りるよ」
「あぁ」


滝の言葉に跡部は機嫌が悪くなった。
まぁそうやなぁ跡部が一番気に入っとるもんなぁ。
せやけどそれを黙って見とるのも面白ないしなぁ。
俺も参戦してみよか。


こうして滝の一言で水面下でのマネージャー争奪戦が始まった。
あのアホな嬢ちゃんのことや皆一筋縄ではいかんやろな。
せやから面白いんやけど。

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