不条理(仁王)

「ほんとにいいのー?」
「今日も仕事で帰ってこんのじゃ」
「彼女が居ないのにうちに連れ込むなんて悪い子だよねー」
「おまんも乗り気だったじゃろ」
「だって寂しそうだったんだもん」


彼女が出張で帰らん日にそこら辺で拾った女子をうちへと連れ込んだ。
独りで家に帰るのはちと寂しかったから。
ただそれだけの理由。
部屋へと連れ込んだ所でソファへと押し倒す。
ベッドへは連れていかない。
あっこは俺と凛だけの場所じゃから。


『おいコラ何してるのかなー?』
「きゃっ」


連れ込んだ女にキスをしようとした所で髪の毛を後ろからグイッと引っ張られた。
振り向かなくてもこれは分かる。
俺の愛しい愛しい彼女の声じゃ。
ドスの利いた声にそろそろと女から身体を離した。


『うちの彼氏がごめんなさいね。これタクシー代。夜遅いから気をつけて帰ってね』


凛が万札を差し出している。
女はそれを奪う様に引ったくると荷物を持ってさっさと出て行った。
それを見送ってどさっとソファへと座る。
ちとこの空気が気まずいのう。


凛も俺の隣に座ってこちらを呆れた様に見つめている。
何か言ってくれた方がまだましなんじゃがの。


『で』
「出張はどうしたんじゃ」
『予定が終わったから寂しがり屋なまーくんのために急いで帰ってきたんですけど』
「そうか」
『雅治、嬉しそうにしてるけど状況は最悪なんですけど』


凛が怒るのは仕方無いことじゃろう。
でも俺からしたら凛が隣にいることの方が大事だから。
さっきの女のことなんかもう頭に全く無い。


「俺は凛がおればそれで」
『それは知ってる』
「じゃあもういいじゃろ」
『良くないでしょ!私が居ないたびに女の子を連れ込むとかどうかしてるよ!』
「一人は寂しい」
『雅治、それは騙されないよ』
「本心で言っておるのに」
『早く説明して』


イライラしておるのう。
空気がピリピリとしてる。
でも俺の隣には凛が居てそれだけで幸せじゃ。
笑ってても怒ってても凛は可愛いから。


「クラブで拾っただけじゃ」
『またクラブ?』
「賑やかだから」
『それで』
「気付いたら首に巻き付いておった」
『もう!バカなの?』
「凛がうちにおらんから」


俺の言葉に呆気に取られてるみたいだった。
そんなポカンとした顔も可愛い。
早くさっさとプロポーズに返事しないからいかんの気付いてくれんかな。


『雅治がそんなんだから決心つかないんだよ』


「はぁ」と大きく溜め息を吐いている凛に手を伸ばすもぴしゃりと振り払われてしまった。
今日はなかなか機嫌が直らんのう。
現行犯だからこれもいた仕方無いのかもしれんけど。


「俺のことついに嫌になったか?」
『それも聞き飽きた』
「のう凛」
『もう!離してってば!』
「嫌じゃ」
『駄々っ子みたいなことしないでって』
「機嫌直してくれんかのう」
『むーりー』


口を開けば否定の言葉ばかりじゃ。
抱きしめても腕の中で暴れてるから口を塞ぐことにした。
最初からそうすれば良かった。
凛の口を自らの口で塞ぐ。
俺が心からこうしたいのは凛だけだ。


『んっ!んう!』


俺から逃げようともがいている身体を押さえつけて口内を蹂躙していく。
何度も何度も。
抵抗の力が弱まった所でそっと口を離した。


「のうそろそろ俺に一途になってくれんかのう」
『どの、…口が、』
「凛がうちにおってくれたらこんなことせん」
『バカ、なのかな』
「凛に関してはそれでいいかもしれんのう」
『しょうがないねえ』


俺の腕の中で諦めた様に柔らかく凛が頬笑むから再びキツく抱きしめた。


『その代わり次浮気したらぶっ殺すからね』
「凛に殺されるなら本望じゃよ」
『駄目。死んでも浮気しても駄目だよ』
「凛がおったらそれでよかよ」

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