続・脳内常時君色

俺こないだアイツらが喧嘩しねぇって言ったばっかじゃねぇ?
何で言ったそばから喧嘩してんだよ。
俺が悪いみたいじゃん。


「なぁ」
『何』
「なんじゃ」


俺の問い掛けに二人で返事すんなよな。
つーか喧嘩してんなら離れろよ。
何で喧嘩してんのに一緒にはいるんだよおかしくね?
で、その険悪な二人の雰囲気に俺は巻き込まれていると。
朝練から雰囲気悪かったもんなコイツら。


「何があったんだよお前ら」
『別に』
「ブンちゃんには関係なか」


いや、全然関係あるだろ!
お前らの険悪な雰囲気にクラス全体ビビってんだぞおい!


『丸井、お菓子ちょうだい』
「はぁ?」
『どっかの誰かさんのせいで甘いものが足りないの』
「誰のせいじゃろな?」


仁王の言葉をみょうじはガン無視だ。
あ、コイツがみょうじの菓子勝手に食ったのが原因かよ。
食い物の恨みは怖いっつーからなぁ。
仁王の膝の上であたかも仁王が居ないかのように振る舞うみょうじが怖ぇ。


「丸井、放課後までには頼んだよ」
「は」
「喧嘩をしてては部活に支障が出るからな」
「さすがに喧嘩中は同調出来ないみたいっスもんね」
「同じクラスのブン太にしか仲直りさせれねーしな」
「おい、ちょっと待てお前ら」
「頼みましたよ丸井君」
「来月には全国大会もある。そんな時期に喧嘩とはたるんどる」
「や、それ俺に言われても」
「頼んだからね丸井」
「ぐ、…わ、分かった」


結局幸村に押しきられたんだった。
貧乏くじだよなほんと。
つーか初めての喧嘩だろうしどう仲直りさせりゃいいんだよ。
全く方法が思い付かないんだけど。


「俺ちょっと彼女のとこ」
「『駄目(じゃ)』」


息ぴったりじゃねぇか!
あぁもうさっさと仲直りしろよ。
さっきから別の意味でクラスの注目集めてんだぞ。
クラスメイト達はまるで珍しいものを見たかのようにこっちを遠巻きに眺めている。
気持ちは分かる。俺もコイツらと親しくなかったら遠巻きに観察はしたい。
本日何度目かの溜め息が漏れた。


「さっさと仲直りしろよな」
『何が?』
「別に何も仲直りするようなことはないし。のうなまえちゃん」
『………丸井、お菓子ちょうだいってば』


あ、これ仁王は仁王で絶対に謝らないやつだ。
んでみょうじはみょうじで絶対に仁王が謝らないと許さないやつだ。
てことは平行線じゃねぇか!
おいもう昼休みなんだぞ!勘弁しろよほんとに。
とりあえずみょうじの機嫌を取ることにした。
何が悲しくて彼女以外の人間に俺のおやつを分けてやらなきゃいけないのか。


「仕方無ぇなぁ。ほら、限定のポッキーだぞ」
『あ』
「あー」


何だよ。せっかく俺が分けてやるってのにみょうじの眉間に皺が寄ったぞ。
突っ込んでも面倒臭ぇからその限定ポッキーを一本みょうじの口に差し出した。


「ほら。すげぇ旨いって評判らしいぜ」


不機嫌顔のまま一応それを咥えたからまぁとりあえず良しとしよう。
つーか今度は仁王が不機嫌顔だ。
あー俺がみょうじにポッキー食べさせたのが問題だったんだな。
けどこうなったのはお前の責任だから俺は謝らないぞ。


「なまえちゃん。まーくんも食べたいナリ」


仁王の言葉をガン無視したまま二本目にも手をつけてるからまぁ美味しかったんだろう。
自分で食えばいいのにこうやって仁王が言うときはみょうじに食べさせてほしい時だ。
お前はその前に他にやることあるだろ。


「お前さっさと謝っちまえよ」
「謝るようなことしてなか」
「じゃあ何でさっきからお前だけガン無視されてんだよ」
「ブンちゃんの気のせいじゃ」
「はぁ?」


ついにみょうじが喋らなくなっちまっただろい。
気のせいで済まそうとしてる仁王も仁王だ。
あぁもう後10分で昼休みが終わっちまう。
俺今日は彼女とメシ食う予定だったんだからな。それを断ったんだから早く仲直りしろよ。


「なぁみょうじ。俺がその仁王が食ったお菓子買ってやるから許してやれよ」
『そんなこと怒ってないし』
「や、怒ってんだろ?」
『違うし』


ポッキーを食べながらふいっと俺からも仁王からも顔を反らしてしまう。
コイツら何でこうも強情なんだよ。
その割に離れようとはしねぇし。


「んじゃ何でそんな風なんだよ。いつもなら仁王にポッキー食べさせてやってんだろ」
『…………雅治が』
「おー」
『雅治と一緒に食べたかったのに一人で先にポッキー食べちゃったんだもん』


俺達から顔を背けたままみょうじが可愛い一言をぽつりと呟いた。
仁王もそれを聞いて驚いたような表情をしている。この顔は珍しいな。
つーかなんだよそのくだらない内容。
俺と彼女の喧嘩だってもう少しマシな内容だぞ。


「だとよ。仁王なんか言うことは」
「なまえちゃんが可愛い」
『あ、ちょっと!雅治!苦しいってば!』


その前に謝れよお前。
や、みょうじの一言は確かに可愛かったけどさ。
仁王が背中からみょうじを抱きしめている。
ちゃんと仁王の言葉に反応したからもう大丈夫だろ。つーか俺はかなり疲れた。


「ブンちゃんこのポッキー全部貰ってもいいか?」
「あーもしかしてこれ?お前が食っちまったやつ」
「そうじゃ」
「んじゃ貸しな」
「ありがとな」
『ちょっと雅治!下ろしてってば!』
「どーすんの?」
「なまえちゃんとポッキー食べてくるぜよ」
「幸村達には黙っとくから見付かるなよ」
「分かっとる」


こりゃ5、6限は帰って来ないかもな。
まぁサボらせるなとは言われてないからいいか。
仁王はみょうじを抱えてポッキーを箱事机から拐って教室を出ていった。
何だよあの嬉しそうな顔。
そんな顔すんなら最初から喧嘩すんなっての。
時計を見たらまだ時間がある。
ほんの少しだけど俺も愛しい彼女の顔を見にいってくるかな。


「丸井」
「なんだよ幸村」
「仲直りさせてくれたのは良かったけど」
「授業をサボらせていいとは誰も言ってないぞ」
「は?何でお前ら知ってんだよ!あ!」
「やっぱりサボったんだなアイツら」
「へぇ、それで仲直りしたんスか」
「3年の廊下中にみょうじさんの声が響いてましたからね」
「丸井、お前がついていながらたるんどる!」
「そこまで俺が見てなきゃいけねぇのかよ」
「外周行ってきなよ」
「はぁ!?」
「ドンマイっス!丸井先輩!」
「ブン太、俺は付き合うからな」
「赤也、お前も走ってくるといいよ」
「!?」


結局みょうじのせいでサボったことはバレバレだったらしい。
おかげで外周走らされたし。
ジャッカルが付き合ってくれたけどな。
あ、ついでに赤也も。
もう頼むからくだらない喧嘩はすんなよ。


「なまえちゃん」
『汗拭かないと風邪ひくよー』
「好いとうよ」
『私も雅治好きー』


「朝とは全然違いますね」
「結局何が原因で揉めたのだ精市」
「みょうじが仁王と一緒に食べたかったお菓子を仁王が一人で食べちゃったんだって」
「くだらない」
「そうですね、もっと深刻かと思ってました」
「ともあれ仲直りしてくれたのならば良かったな」
「みょうじ!仁王!お前達もさっさと外周走ってこんか!」
「弦一郎、いきなり耳元で怒鳴らないでくれるかな」
「す、すまない」
「今から外周だと言うのに嬉しそうですね」
「アイツらは二人で居れればそれだけで幸せだろうからな」


レイラの初恋様より
優衣様リクエスト第二弾。
一回目リクエストの続きでラブラブカップルの初喧嘩とのことでした。
巻き込まれるブン太視点で書いちゃいました(笑)どっちかの視点より第三者の視点で書いた方が楽しいかなーと。
書いててとっても楽しいリクエストでした!
ありがとうございました☆
2018/06/18


Modoru Main Susumu
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