脳内常時君色

「なまえちゃん暑いナリ」
『最近ジメジメするもんね。ちゃんと水分補給しないと駄目だよ雅治』


暑いの特に苦手だもんね。
梅雨に入ったから特に雅治は辛そうだ。
まだ朝練すら始まってないのに大丈夫かな?
暑い暑いって言いながらも私にはくっついてくるんだよね。
でもちゃんとサボらずに朝練から出てるから偉いぞ雅治。


「なまえちゃん冷たくて気持ちいいのじゃ」
『平熱低いからかなぁ?』
「ゲ、先輩達朝っぱらから何してるんすか」
『赤也おはよー』
「何って見て分からんのか赤也」
「見てるだけで暑苦しいっス」
『私達の邪魔はしなくていいからさっさと練習に行くー』
「先輩達もそろそろ行かないと真田副部長にどやされるっスよ」
「へーい」
『じゃ、雅治今日も部活頑張りますか!』
「そうじゃのう。今日こそブンちゃんのワンダーキャッスル攻略するぜよ」
『昨日惜しかったもんね!』


ぐりぐりと雅治の頭を撫でたら満足したらしい。私の頬にキスを落として雅治は離れた。
暑くないのかって聞かれたら暑いけど離れちゃうのはそれはそれで少しだけ寂しい。
真田には怒られたくないからそろそろ行かなきゃね。
雅治が差し出した手を握りしめてコートへと向かう。


私と雅治は高校1年からミクスドのペアを組んでいる。この年に高校生男子の部に正式にミクスドが組み込まれたのだ。
女テニの部長に直談判して幸村が私を引き抜いたんだよね。
ちなみに雅治とは中学時代から付き合っている。
当初はみんなともペアを組んでみたんだけど雅治以外とはしっくり来なかったのだ。
結局ミクスド枠は私と雅治に固定するしかなかった。
試合で負けなしだから問題は無いはず。


「やぁ、二人とも。今日も仲良しだね」
『そりゃね』
「当たり前じゃろ」
「もうすぐ関東大会だから頼んだよ」
「全国まで負けなしで突っ走るぜよ」
『安心してね幸村』
「二人の心配はしていないよ」
『こうやって言われると嬉しいねぇ雅治』
「そうじゃのう」
「早速だけど今日は俺と弦一郎と試合だからね」
『わ』
「幸村本気か?」
「お前達の本気が見てみたいからね」
『久しぶりだね、幸村と真田と試合するの』
「おー怖い怖い」


幸村と真田と試合するのかぁ。
二人とも面倒臭い技沢山持ってるからなぁ。
でも雅治と二人だからね。負けてらんないよなぁ。雅治のイリュージョン次第になりそうだな。
雅治も隣でさっきの言葉とは裏腹になんだか楽しそうだ。


「そろそろ幸村達にも勝ちたいのう」
『私もそれ思ってた』
「ほんじゃ幸村の言う通りいっちょ本気でやってみるとするかの」
『オッケー』


私と雅治のペアが固定されてるのにはいくつか理由がある。
私が唯一雅治と同調出来るからだ。
手塚が二人とか跡部が二人とか幸村が二人とか考えただけでも戦いたくないよね?
うん、私だって嫌だ。それが出来るからペアの固定を幸村に許されたのだ。


「…疲れた」
『本気で来いって言ったけど向こうも本気で来るとは思わなかったね』


真田と幸村との試合はかなり体力を消耗させられた。
朝からこんなに厳しい練習になるとは思ってなくて私も雅治もぐったりだ。
結果二人には負けたけどいいとこまで追い詰めたもんね。
出来高は上々だったと思う。
もう朝練は休憩でいいよって言われたから木陰で雅治と休憩中だ。
ちなみに雅治は私の膝枕で横になっている。


「なまえー」
『はい、スポドリ』
「暑い」
『団扇がありますよー』
「アイツらにはまだ敵わんのう」
『全国までにはどうにか倒したいね』
「ん」


私達のが体力無いって言うのに珍しく神の子も皇帝も最初から本気モードだったのだ。
それに引き離されずに食らいついて行けたのは雅治の力が大きいんだろう。
イリュージョンはやっぱ大変なんだろなぁ。
あ、雅治寝ちゃったや。
私も朝練終わるまで後少し仮眠しちゃお。


「爆睡してますね」
「汗が引くと冷えるから寝るなって伝えたはずなんだけどね」
「コイツらって喧嘩したことも無いらしーぜ」
「ブン太も少しは見習えよ」
「ほう、また彼女と喧嘩したのか丸井は」
「ジャッカル!何ばらしてんだお前!」
「幸村君、そろそろお二人を起こさないと」
「起きんか!馬鹿者!」
「弦一郎、俺の隣で怒鳴らないでくれるかな」
「そうっスよ!鼓膜が破れるかと思ったっス!」
「む、すまない精市」


真田の怒鳴り声で意識が覚醒した。
同時に膝がもぞもぞとくすぐったいから雅治も起きたのだろう。
見上げると幸村達が勢揃いだ。


『みんなおはよー』
「なまえ、俺はまだ眠いー」
『雅治、多分朝練終わったから起きないと駄目だよ』
「…んー」


雅治が上半身を起こして私の正面から抱きついてくる。
眠い雅治は甘えただからなぁ。
その背中をよしよしと撫でてあげた。


「俺達のこと丸っきり無視だな」
「これもいつものことだよ丸井」
「真田副部長もだいぶ慣れたっスね!」
「さすがに二年以上経つからな」
「怒鳴ってもコイツらには聞こえないからなぁ」
「さ、私達もそろそろ着替えましょう」
「俺は別に慣れたわけでは」
「はいはい、弦一郎も行くよ」
「起きたのならば後はみょうじが何とかするだろう」


雅治の意識が完全に覚醒した時にはもうコートに誰も居なかった。
鍵は私か幸村か柳が持ってるからね。
任せてくれたんだろう。
雅治がサボりたい雰囲気を醸し出してるけど何とか宥めて教室まで向かった。


「なまえちゃんほれあーん」
『今日は何ー』
「チョコレートをブン太から貰ったぜよ」
「正しくは奪ったな」
『丸井ありがとー』
「お前ら全く俺の話聞かないよな」


丸井と雅治とは同じクラスで窓側の一番後ろの席が丸井。その前が雅治の席だ。
私は雅治の膝の上に座ってチョコレートを食べさせられている。
これもいつもの光景で私達に突っ込んでくるのはうちのクラスじゃもう丸井くらいしか居ない。


『あ、これ美味しい。雅治も食べる?』
「食べる」
「おい、俺まだいいって言ってねぇ」
『はい、雅治あーん』


丸井のものは私達のものって中学の時から決まってるの本人はまだ自覚してないのかな?


『あ、手にチョコ付いちゃった』
「どこじゃ?」
『ここ』


人差し指に付いたチョコを雅治に見せるとさもそれが当たり前かのように舐めとってくれた。
舌の感触がくすぐったくて笑ってしまう。


「お前らなぁ」
「どうしたんじゃ顔が赤いぜよ」
「目に毒だろ」
『何で?』
「あーお前らに言っても無駄だったわ。彼女に会いたくなったし」
『早く仲直りしなよ丸井』
「おー、行ってくるわ」


まだ昼休みの時間は残ってるしね。
さっさと彼女と仲直りして丸井もイチャイチャしてくるといいよ。
二人で丸井を『行ってらっしゃい』と見送った。
チョコレートのことはすっかり頭から無いらしい。置いてってくれたから雅治と美味しくいただくことにした。


『あ、最後の一個』
「なまえちゃん食べていいぜよ」
『いいの?』
「おん、大丈夫じゃき」
『じゃあいただきます』


雅治が食べさせてくれると思ったのに最後の一個は違うらしい。
気まぐれなとこあるからいいんだけどね。
自分の手でチョコレートを口に放り込む。


「やっぱり食べたいナリ」
『ん?』


そんなこと言ってもチョコは既に私の口の中だ。どうするんだろ?って思ったらネクタイを引っ張られて雅治の顔が接近する。
ここ教室なの雅治分かってるのかな?
唇が重なって溶けかけのチョコレートが私の口の中から拐われた。


「お前ら何してんだよ」
「ブンちゃんおかえり」
『あ、丸井おかえり』
「チョコ美味しかったぜよ」
『ん、美味しかったねぇ』
「場所を考えろよお前ら」
「誰も見とらんかったし」
『気にするの丸井くらいだよ?』


唇に残ったチョコを舐めとる。
うん、このチョコレートほんとに美味しかったな。また自分でも買おう。
雅治も珍しく気に入ったみたいだし。


「や、俺以外のヤツらは諦めてるだけだろ。ドン引きだぞ」
『別に』
「周りに何言われても気にならんしのう」
『仲直りは出来たの?』
「まぁな」
「良かったな」
『丸井も彼女とイチャイチャしてくれば良かったのに』
「や、お前らみたいには無理だろ普通。人前でキスしたらぶん殴られるぞ俺」
『えー』
「えー」
「俺が間違ってるみたいに言うなよ」
「早く大人になりたいナリ」
『そしたらずっと一緒に居れるもんね』
「や、それは大人になっても無理だろい」
『えー』
「ブン太が冷たい」
「仕事とかあるだろ?」
「嫌じゃ」
『丸井冷たいねぇ』


現実的過ぎるでしょ丸井。
雅治となら24時間でもそれこそ四六時中一緒に居たいのになぁ。
丸井はそうじゃないんだろうか?
だから彼女と喧嘩するんだよ。


「俺はなまえちゃんと一緒に居れる仕事するから大丈夫だからな」
『うん、心配してないよ』
「お前らほんとバカップルだよな」
『褒め言葉だよ』
「そうじゃのう」


呆れたように丸井は頬杖をついて言ったけれどその言葉はもう聞き飽きてるし何なら私達にとっては褒め言葉だ。
雅治の考えてることは聞かなくても分かるし雅治も同じだろう。
私達には境界線なんて無いんだから。


「おい幸村」
「どうしたんだい跡部」
「アイツらをどうにかしろ」
「ふふ、どうしてかな?」
「せめて同調中にいちゃつくのは止めろ」
「あぁ、手塚が二人になってるからね」
「青学の連中が可哀相だろ」
「確かにそうかもね」
「お前面白がってねぇか?」
「俺の時はしないでって言ってあるから」
「お前!」
「氷帝と試合の時は跡部になってもらおうかな」
「冗談でも聞きたくねぇよ」
「本心だよ」
「!?」


レイラの初恋様より
優衣様リクエスト。
ミクスドペアで恋人同士。いつでもどこでもラブラブの仁王夢とのことでしたがこんな感じになりました!
素敵なリクエストで書いてて楽しかったです☆
リクエストありがとうございました!
2018/06/13


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