ありがとうの言葉が
こんなにこそばゆい、
あたたかな午後

ねこねこ幻想曲ポカポカ陽気のある日の午後


俺、今日は爺ちゃんと遊ぶために来たんだけどな。
まだ帰ってないとか聞いてない。


「ごめんなさいね。将棋からまだ帰ってないのよ」
「そうなんだ」
「アップルパイ作りましたからなまえちゃんと一緒に食べて待ったらどうかしら?」
「そうする」
「ほんとに研磨君はアップルパイ大好きなのねぇ」
「お婆さんのアップルパイ美味しいから」
「あら!そう言ってくれると作り甲斐があるわぁ」


居間へと通されるとなまえが縁側でゴロゴロしている。
休みのなまえは人の姿でも猫の時と大して変わらないのかもしれない。


「なまえ?何してるの?」
『お昼寝するかしないか悩んでるの』
「あら!まだゴロゴロしてるの?お客様がいらっしゃったんだからシャキっとしなさいな。シャキっと」
『んー研磨はお客様じゃないもん』
「お客様じゃなかったら何だって言うの?」
『家族ー?』
「面白いことを言うのねなまえちゃんは。はい、アップルパイですよ。紅茶も直ぐ出しますからね。お爺さんが帰ってくるまで研磨君の相手をしていてちょうだい」
『はーい』
「お婆さんは?出掛けるの?」
「ちょっとデパートに行く用事があるからお留守番ついでになまえのことを頼んでもいいかしら?」
「別にそれくらいいいよ」
「じゃあ行ってきますからね。なまえちゃん研磨君に迷惑かけたら駄目よ」
『うん』


さくさくと俺となまえのアップルパイと紅茶を用意してお婆さんは出掛けていった。
なまえは未だに縁側でゴロゴロしている。


「なまえ、アップルパイ食べるよ」
『んー食べたい』
「ならこっちに来なよ」
『でも眠い』
「じゃあ俺先に食べるから」
『えぇ。研磨ズルいー』


相当眠いらしくなまえがそこから動く気配は無い。
寝るかアップルパイ食べるために起きるかの二択しかないんだよ。
それ夜久君やクロが相手だったら小言を言われてると思うんだけど。
俺は面倒だからそんなこといちいちしない。
なまえがぶちぶち言ってるけど無視して一人でアップルパイを食べることにした。
やっぱりお婆さんのアップルパイは美味しい。


『研磨ー研磨ー研磨ー』
「なまえ、一度呼べば気付くよ」
『お腹空いた』
「アップルパイあるよ」
『でも眠い』


俺にとってなまえのうちは勝手知ったる他人の家になりつつあるからいつも通りゲームをしてると背中へとなまえの声が飛んできた。
なまえってさ、海君夜久君クロには無茶なワガママ言わないのに俺達2年には結構グイグイワガママ言うよね。
俺達が怒らないの気付いたんだろなぁ。


「とりあえず寝ればお腹空いてるの気にならないと思うよ」
『お腹空いてるから寝れないよ?』
「じゃあテーブルの上にアップルパイがあるから食べなよ」
『うぅ、動きたくない』
「そんなんじゃお婆さんにも爺ちゃんにもクロ達にも怒られるよなまえ」
『研磨しか居ないもん』
「あそ」


くたっと縁側に横になったまま恨めしそうにこっちを見ているのが横目にも分かる。
さっきから俺となまえの話はずっと平行線だ。アップルパイを持ってきて欲しいんだろうけどそこまで俺、親切じゃないし。


『研磨、アップルパイ食べたいよう』
「食べたらいいよ」
『こっち持ってきてよ研磨ー』
「俺、忙しい」
『今、モンスター倒したの見えたよ』


爺ちゃんの影響なのか見てる分にはゲームの流れを読めるようになってるから厄介だ。
確かに今ちょうどナナテスカトリを倒した所だった。
なまえがあまりに煩いし面倒だけどゲームに集中したいから仕方無くアップルパイを持ってくことにした。


「ほら、ここに置いておくよ」
『えぇー』
「何その不満気な感じ」
『枕』
「は?」
『床が硬い』
「床だから硬いのは当たり前だよ」
『うん、だから枕』
「持ってくればいいの?行かないけど」
『研磨の膝があるよ?』
「嫌だし」


何を言い出すかと思ったらそんなの絶対に嫌だ。したことないけど絶対に面倒臭い。
人の頭とか重そうだし。


『えぇ』
「そんな声出しても無理なものは無理だよ」
『減るもんじゃないし』
「そういう問題じゃないよ」
『今日携帯ゲーム持ってないの?』
「一応あるけど」
『ならいいでしょー』


全然良くないけど。
なまえを甘やかしてクロ達みたいに犬岡に怒られたくないし。


『縁側のがポカポカして気持ちいいよー研磨ー』


俺、何回も拒否したのになまえは諦めるつもりはないらしい。
このやり取りもなんか面倒になってきた。
結局俺達2年もなまえには甘いのかもしれない。はぁと大きく溜息をついて携帯ゲームを取りに行くことにした。渋々だけど。


「ほら、これでいいんでしょ!」
『うん、研磨ありがとう』


半分投げやりに足を投げ出して柱にもたれて座るとなまえは満足そうに俺の太股を枕にする。
確かにここなまえが言うように暖かいな。
まぁここでゲームすればいいか。
これでなまえも黙ってくれるだろうし。


『研磨ー』
「何」
『アップルパイ食べさせてー』
「は?それくらい自分で食べなよ」
『横になってるから無理だよ』


さっき俺にここでゲームすればいいって言ったよね?
食べさせてって何それ。
ワガママ過ぎると思うんだけど。


『アップルパイ食べたら寝るからお願い研磨』
「あぁもう分かったよ。はい、食べな」


この攻防をこれ以上続けてもなまえが納得するまで俺はゲームが出来なさそうだからもうさっさと食べさせることにした。
成長してるけど相手を見るようになってるからなぁ。
区別がついてるのは良いことだとは思うけど。
俺の考えてることなんて全然分かってないんだろな。
フォークで一口大に切って食べさせてるけどただただ幸せそうにしている。


『研磨ー』
「アップルパイもう無いよ」
『うん、もうお腹いっぱい』
「じゃあどうしたの?」


アップルパイを食べさせ終わったからやっとゲームが出来ると思ったんだけど。
と言うかやっぱり頭って重たい。
もうこれ以上はなまえのお願い聞きたくないよ。


『あのね、研磨が最初の友達なの』
「犬岡じゃなくて?」
『走は研磨の後だよ。最初に呼び捨てにしたの研磨だもん』
「あぁ、そういうこと」
『だからね、ありがとう研磨』
「別に。何にもしてないよ」
『今日もありがと。研磨と友達になれて良かった』


それだけ言ってなまえは昼寝に入ったらしい。
と言うことは俺と福永達への態度はなまえの中では違うのかもしれない。
俺は別にそんなんじゃないのにな。
けれどその『ありがとう』が嫌じゃない自分がいた。なんか変な感じするけど。


誰そ彼様より
紫季様リクエスト。
ねこねこで主人公が研磨に甘える夢とのリクエストでした。
ifの話も考えたんですけど無理でした(´・ω・`)
終わらせないと駄目なのかもなぁ。
友達にはワガママが言えるねこねこ夢主ちゃんでした(笑)
2018/06/29


Modoru Main Susumu
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