ありがちな運命の出会い
(恋の予感がします)

どどどどうしたらいいの?
これはいったいどうすればいいの赤葦君!
私はこの状況に混乱しつつある。


「合宿?」
『明日から一週間関西の高校であるの』
「みょうじ明日から居ないの?俺寂しいんだけど!」
「木兎さん、俺達も明日から森然で合宿ですよ」
「あ、そうだった!」
「それでみょうじさんはどこの高校に行くの?」
『えぇと稲高だっけな?先輩がそう言ってた』
「稲高?」
「いなこーって稲荷崎か!?」
『それは分からないですけど』
「みゃーつむとみゃーさむに宜しくな!後アラン!」
『みゃーつむみゃーさむ?』
「男子バレー部に双子がいたらそれがその二人だよ。気を付けてね」
『うん?』


あの時は赤葦君の言ってる意味がさっぱり分からなかったけど今ならちょっと分かる気がするー!
ミャーツムミャーサムアランって木兎先輩が言うからてっきり外国の人だと思ったのに今私の目の前にいる双子は普通に日本人なんですけれど!


新体操の合宿で稲荷崎高校へとやってきた。
今日だけ学校の体育館の問題で男子バレー部と半分ずつ使うとは聞いてたけどまさか最初に双子に遭遇するとは思ってなかったよ。
余所見をしてたせいで体育館の入口でうっかりぶつかってしまったのだ。
前を見てなかった私のせいだけど転がった私をそっくりな双子が見下ろしている。
赤葦君、命の危機かもしれません私。
双子は微動だにせず私をじぃっと見つめている。


「お前ら練習始まるで。何突っ立っとんや」


ひょいと双子の後ろから新しい人が顔を覗かせた。やっとここから逃げれるかもしれない!
あ、でもこの人ってもしかして。


『アランさん?』
「は?知り合いなん?」
「アラン君狡いッスわ!」
「や、初めましてやで」
『あ、ごめんなさい。木兎先輩が宜しくって言ってました』
「「あー」」
「お嬢ちゃん梟谷なん?」
『はい』
「コイツらが手も貸さんとごめんな」
『あ、私こそいつまでも座り込んでてごめんなさい』
「「あぁっ!?」」


アランさんが手を貸してくれて漸く私は立ち上がることが出来た。
いつまでも座り込んでるとか恥ずかしかったよね。
私に手を差し出したアランさんに対して双子が声を上げている。
双子ってタイミングバッチリなんだなぁやっぱり。


「みょうじ!練習始まるよ!」
『はい!直ぐいきます!あ、えぇとミャーツムさんとミャーサムさんも木兎先輩が宜しくって言ってました。では』
「ちょい待ち、俺の名前は宮侑や。ミャーツムやないで」
『ご、ごめんなさい』
「ほんで俺は治な。ちゃんと覚えなかんで」
『分かりました』


二人の間ををすり抜けて体育館へと入ろうとしたら同時に両腕を掴まれてしまった。
えぇ!?関西人怖いんですけど!
えぇと金髪の方が宮侑君でそうじゃない方が宮治君だね。うん、これくらいならちゃんと覚えられる。
ちゃんとそうやって返事をしたにも関わらず双子が私を解放してくれる気配はまだない。
どういうことなんでしょうか?


『あの』
「自分名前は何て言うん?」
「あ!サム!俺が聞こうと思っとったのに!」
「お前らいい加減にせんと北に怒られるで」
『みょうじなまえです』
「何年?」
『2年です』
「ほな俺らと同じやな!侑と治って呼んでくれてえぇからな」
「仲良うしてな」
『はい』
「侑、治何してん」
「「ゲッ!」」
「練習始めんで。その子も迷惑やろ?はよ離したり」


また一人増えた。
でもその人のおかげで私は解放されたので頭を下げてさっさとその場を後にすることにした。


「なまえちゃんまたなー」


そんな言葉が背中へと投げ掛けられたけど関西の人ってこんなにもフレンドリーなの!?
赤葦君、初めての関西は驚きが沢山だよ。
一週間合宿頑張れるかな?


「なぁ、なまえちゃんて彼氏おるん?」
『え?』
「木兎さんが彼氏なん?」
『違いますよ』
「ほんじゃ赤葦とか?」
『赤葦君は単にクラスメイトで新体操と男子バレーが使う体育館が同じなだけです』
「毎日なまえちゃんのレオタード姿見れるとか!赤葦ムカつくわー!」
「ツム、それ本人の前で言うてえぇの?」
「なんやサム!なまえちゃんのレオタード可愛ぇやろ!」
『別に大丈夫ですよ』


その日から何故か毎日二人が時間を見つけては構いに来るようになった。
そんなに関東人が珍しいのだろうか?
稲荷崎の新体操部の人に怒られても全く気にしてないみたいだった。
私以外にも梟谷の部員は沢山いるのにな。
やっぱり初日にぶつかってしまったのがいけなかったのだろうか?
あ、これぞまさに目をつけられたってやつかもしれない。
何故かお昼までこの二人と一緒に食べるようになってしまった。


「じゃ今は彼氏おらんの?」
『居ないですねぇ。と言うか居たことないです』
「「はぁ!?」」
『えっ?』
「こんな可愛ぇのに今まで彼氏おらんかったとか!」
「東京モンの目、節穴過ぎるやろ」
「せやな。あ!ちゅーことはなまえちゃんてもしかして処、アイタっ!サム何すんねん!」
「そんな下世話なことここで聞かんでもえぇやろ」


私を放置して双子の掛け合いがヒートアップしていくのも三日目にして慣れた。
それが面白くて笑ってしまうのだ。
目をつけられたことには変わりはないけれど初日のような怖さは二人から感じられないから仲良くなれて良かったのかもしれない。


「なまえちゃんって出身どこなん?」
『宮城ですよ』
「あーだから色白さんなんやな」
『両親が北海道出身なんで。やっぱり珍しいですか?』
「おん」
「かなり」
『白すぎて少しくらいは日焼けしたいんですけどね』
「「それはあかん!」」
『え?』
「色白さんは色白さんやからえぇんやって!」
「せやからなまえちゃんは日焼けしたらあかんで?」
『日焼けしたくても赤くなっちゃうから大丈夫ですよ』


あぁそうか。私が関東人とかじゃなくて色白だから珍しいんだな。何か納得してしまった。
二人して色白の何がいいかを話してくれるけどそれ私に言うの?
少しだけ恥ずかしいんだけどな。


『ってことがあったの』
「へぇー!なまえモテモテだな!」
『夕!そんなんじゃなくてきっと私が珍しいだけだよ!』
「でも仲良くやってんだろ?なまえにもやっと彼氏が出来るチャンスが来たんだなぁ」
『だから違うってば!』
「ま、合宿も頑張れよ!」
『合宿もじゃなくて合宿を頑張ってるってば!』
「おれも埼玉で頑張ってるからさ!負けんじゃねーぞ!」
『ん、ありがと』
「じゃまたな」
『はーい』


従兄弟なんかに相談したのが間違いだったかもしれない。
やっぱりここは赤葦君辺りに聞けば良かったのかも。


「なまえ?」
『あ、治君だ』


お風呂上りに合宿所の外で従兄弟に電話した時だった。
切って直ぐに治君に声をかけられたのだ。
いつの間にか私を呼び捨てにするようになってたけどそれもだんだん気にならなくなった。
確か今日から男子バレー部も合宿って言ってたな。


「ソイツのこと好きなん?」
『えぇ!?』
「今溜息ついとったやろ?」
『別にそんなんじゃ』


夕は単なる従兄弟だ。そうやって言いたかったのに気付いた時には治君の胸の中だ。
ぎゅっと顔が治君の胸板に押し付けられている。え?なんで?どうして?


「嫌や。他の男のことなんて考えんとって」
『お、さむ君?』
「ツムはしゃーないにしろ俺ら以外は目に入れんとってや」
『く、苦しいよ治君』
「嫌や。離したない」


急に何を言い出すの治君!?
それってまるで告白みたいじゃない!?


「あっ!サム何してん!俺かてなまえちゃんギューってしたいやろが!」
「遅かったツムが悪いんやろ」
『侑君?』


視界は治君の胸板で何も見えないけれど侑君の声が背後からした気がする。
振り向こうにも治君が頭をがっちり押さえてるから身動き取れないけど。


「んじゃ後ろからギューってするわ俺」
「暑いやろツム」
「サムが離れれば問題無いで」
「嫌や」
「ほな俺も嫌やー」


後ろからも人の体温を感じる。
と言うことは本当に侑君にも後ろから抱きしめられてるの?
コツンと私の頭に侑君の頭が乗せられたみたいだ。


「なぁ俺ら一目惚れやってん」
「ちっちゃくて白くて天使かと思ったわ」
「ほんで何も言えんかった」
「アラン君が先になまえを起こしてもうたから焦ったなー」
「ほんまそれや。俺らどっちがなまえ起こすか水面下で牽制しあっとったのにな」
「せやから仲良くなれて良かった」
「好きやでなまえ」
「俺もなまえのこと大好きや」


えぇと私今告白されてるんですかね?
しかも双子両方から?
嘘でしょ?夕の言うことなんて大体いつも当たらないと思ってたのに!
私がそんなこと考えてるなんて双子は知らないだろう。
頭上でどちらがより私のことを好きなのか言い合っている。
そんなこと今まで人に言われたことなくて頭の中は混乱混乱混乱だ。


「なぁ」
「俺ら別にどちらか選べとは言わへん」
「どっちのことも好きになってや」
「なまえ?聞いとるん?」
「アカン!ツム!なまえ気失っとる!」
「あちゃー、北さんに怒られるやろ」


思わぬ展開と双子によるサンドイッチによる酸欠で私は気を失ったらしい。
次の日にバレー部の部長さんから直々に謝られた。


「迷惑やろしもう寄らんようにするでほんまごめんな」
『あの!迷惑…じゃないです』
「さよか」


北さんの申し出を受けてしまったら侑君と治君に会えなくなる。
そう思ったら急に寂しくなって断ってしまった。
私の言葉に北さんはただ表情を少しだけ和らげるだけだった。


「なまえー帰らんとってー!」
「アホやろツム」
『二人ともごめんね』
「サムやって寂しいやろ!」
「せやけど帰らんのは無理やろ」
『また遊びに来るね』
「おん、俺らも遊びに行くからな」
「浮気したらアカンで」
『し、しないよ!』
「お前らまだ付き合ってないやろ」
「「北さん!?」」
「みょうじさんの気持ちちゃんと聞いたんか?」
「「!」」
『あの、えぇと狡いとは思うけど私…二人のこと嫌いじゃないよ』
「遠回しやから却下」
『治君!?』
「ちゃんと言ってくれんと俺ら分からんなー」
『侑君も!?』
「コイツらアホやでちゃんと言ってやらんとまた離してもらえんくなるで?」
「アランの言う通りやな」
『ふ、二人のことどっちも好き…です』
「やっぱり帰したなーい!」
「あー俺も今のはツムに賛成」


電車の時間が迫っていたので北さんとアランさんが二人を引き剥がしてくれた。
二人を好きだなんて私は狡いと思う。
けれど二人ともそれでいいって言ってくれたからいいんだよね?
北さんもアランさんもその選択が間違ってるとは言わなかったし。
また時間を見つけて二人に会いにこよう。
私の大好きな二人にだ。


レイラの初恋様より
松本 翠様リクエスト。
宮ツインズの両落ちで、稲高での練習試合(他の部活)で来ていた一目惚れされた後で、もうプッシュされるとのリクエストでした。
ちゃんとインプットしたとは思うんだけどまだまだ侑と治の違いちゃんと書き分けれないなぁ。
早く次の新巻読みたい!侑と治の回想あるのにぃぃぃ!
初の宮ツインズ書けて楽しかったです!
リクエストありがとうございました!


Modoru Main Susumu
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